物理学 > 電磁気学II


はじめに 編集

電磁気学がからんでくる現象は数多いが、 これらの現象のうちの多くは 次の2つの方程式によって記述される。

ガウス単位系では、

 
 

ここで、

 
 

でありまた、

 

である。 更に、

 

(Aは、

 

のある関数。) となる。

note: 実際には現在ではほとんどの分野で、古くなっているGauss単位系ではなく、 SI単位系が用いられている。(特に工学の分野ではそうであるようである。) ただし、特殊相対論と組み合わせた 電磁気現象を見るぶんには、Gauss単位系でもそれほど不自由がないので、 こちらを用いている。

ここではこれらの式がどの様に書かれるかを見ていく。

comment: 過去の遺物である Gauss単位系を今さら用いるのは、教育的 見地からしても問題である。 Gauss単位系が相対論に適合しているというのは誤解である。 (たとえば電荷保存則を見れば明らかである。)

Gaussの法則 編集

空間中に電荷を置くと、 その回りには、 等方的に

 

の電界が生じる。 ただし、これはSI単位系で書かれた式であり、 ガウス単位系では、

 

と書かれる。 放射状に電界が広がるという描像は変化していない ことに注意。 これを一般化すると、 ある表面積分を行なったとき、

 
 

が成り立つ。 ここで、

 

である。(電荷密度の定義) ここで、

 

は電荷密度である。 ガウスの定理を用いて この式の 左辺を空間積分で書き変えると、

 
 
 

よって、

 

が成り立つ。 同じ計算をすると、ガウス単位系では

 

となることが分る。

ここで、

 

の第0成分を書き変えると、 (

 
 

に注意。 )

 
 

となり、確かに現象と一致する。

単極磁子は存在しない。 編集

上で、ある電荷があるとその回りに放射状の電界が生じることを 述べたが、磁場についてはその様な対応物、つまり磁荷が存在しないことが 実験的に知られている。 (一般的な磁石はS極とN極が対になっているので磁荷と呼ぶことはできない。) このことを用いて電荷の場合と同じ計算をすると

 
 
 

(これは磁荷密度が常に0であることによる。) 上と同様にガウスの定理を用いて書き換えると、

 

が成り立つことが分る。

ここで、

 

で、

 

と選ぶと、

 
 
 

となり確かに式が現象を説明することがわかる。 (この結果は、ガウス単位系でもSI単位系でも同一である。)

電磁誘導 編集

磁場の時間変化が電場を引き起こすという法則が レンツの法則として、知られている。

 

(SI単位系での式) これは円形のコイル(半径a)を使ったときの表式であるが、 そうでないときに一般化すると、

 
 
 

ストークスの定理を用いて書き変えると、

 

よって、

 

が従う。 Gauss単位系では

 

となる。

ここで、

 

で例えば、

 

と置くと、

 
 
 

となり、上で現象から得られた式のz成分と一致する。 x成分、y成分はそれぞれ

 

,

 

と置くと求めることが出来る。 よってこの場合も式が現象を説明することが わかる。


電流の回りの磁場と変位電流 編集

直線的に流れる電流の回りには、

 

の磁束密度が生じることが知られている。 (SI単位系での式。) (aは電線からの距離。) これを一般化すると、

 

となる。 ストークスの定理を用いて線積分を 面積分に変換すると、

 
 

よって両辺を比べることで、

 

が得られる。実際にはこの式が 上で得られた式と一致するには もう1つ現象を付け加える必要がある。 例えば、平板 コンデンサに対して電荷が蓄積していくとき、 コンデンサの間の空間には電場の時間変化が現われる。 このとき、%電荷の時間変化には コンデンサの間の空間には(電流からの寄与が無くても) 磁場が生じることが知られている。 この項は、通常の電流と比べて変位電流と呼ばれる。 数式では、(SI単位系では)

 

としたものに等しい。 これら2つの寄与を足し合わせると、式

 

が得られる。 ガウス単位系では、

 

ここで、

 

で例えば、

 

を代入すると、

 
 
 
 

となり確かに一致する。 y,z方向については

 

,

 

とおけばよい。


電磁波の伝搬 編集

真空中では、

 

が成り立つので、

 
 

が得られる。 ここで、

 

がゲージの自由度を持つことを考慮して この方程式を簡単にすることが出来る。 ここでは、

 

(ローレンツゲージ) をとる。 すると、上の式は簡単になって、

 

となる。 ここで、

 

である。 この式は速度cで伝搬する波の波動方程式であり、 真空中を電場や磁場が光の速さで伝搬することが分る。 実際にはこのことから光がこのような波(電磁波と呼ぶ)の 一種であることが知られた。 電磁波は振動数によって様々な名前で呼ばれる。