地形と気候
編集西アジアとは、東はアフガニスタン、アラビア半島、北西はトルコまでの地域である。イラン、イラク、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イスラエル、トルコなどは西アジアである。
西アジアの気候はほとんどの地域が乾燥気候である。例外的に、トルコの沿岸部やイスラエルは、地中海に面するため、地中海性気候であり、夏に小雨である。
この地域の大きな川として、ティグリス川とユーフラテス川がある。
宗教と言語
編集西アジアの宗教は、イスラム教が信仰されている国が多い。
ただし、イスラエルではユダヤ教が信仰されている。イスラエルは、文化などがヨーロッパに近い。
イスラム教には、大きな宗派が2つ、スンニ派とシーア派がある。スンニ派が多数派であるが、イランのイスラム教徒はシーア派である。
トルコではイスラム教が信仰されている。
イラクやトルコに、少数民族のクルド人がいる。
イラクは、古代文明であるメソポタミア文明の発祥地のあたりの地域でもある。
アラビア半島は、イスラム教の発祥の地でもある。
イスラム教徒が、おいのり(お祈り) をするとき、祈る先の方角は、サウジアラビアにあるメッカという都市にある カーバ神殿 に向けて、お祈りする。
石油
編集世界の石油の約3分の2が、西アジアと北アフリカに埋蔵している。また、石油の産出量は、世界の約3分の1が、西アジアと北アフリカで算出している。
西アジアの中でも、サウジアラビアがもっとも産出量が多い。ついで、イラン、アラブ首長国連邦、イラク、クウェートなどで産出量が多い。
日本は、サウジアラビアなどから石油・原油を輸入している。
- 歴史
第二次大戦前には欧米諸国の国際石油資本(メジャー)によって油田や石油産業が支配されていた。だが、第二次大戦後は、アジア・アフリカ諸国が自分達で石油産業を国有化していった(いわゆる「資源ナショナリズム」)。
石油産業・油田の国有化のため、西アジアの産油国は1960年にOPEC(オペック、石油輸出国機構)を結成した。さらに1964年にはOAPEC(オアペック、アラブ石油輸出国機構)が結成され、石油産業などを国有化していった。
1973年に起きた第四次中東戦争ではイスラエルとアラブ諸国の戦争になったが、この第四次中東戦争の際アラブ諸国は、イスラエルに味方する多くの先進国に反発し、石油価格の値上げや供給の削減を行い、その結果、1973年に先進国で第一次石油危機になった。
また、イラン革命(1979年)後に、第二次石油危機になった。
いわゆる「オイル・ショック」とは、これらの石油危機のことをいう。なお「オイル・ショック」は和製英語である。
現在のOPECの加盟国は、サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦、など。
トルコとイスラエルは、OPECには加盟してない。
工業
編集バクー油田により、バクーで石油化学が発達している。
いっぽう、自動車などの製造業は、西アジア・アフリカでは、遅れている。
このため、サウジアラビアやイランなどのアラブ系の産油国の経済は、石油産業に頼るモノカルチャー的な経済であるという弱点があった。 将来的に石油資源が枯渇するという予測もあるので、産油国は石油産業のモノカルチャーから脱却しようとしている。
農業
編集西アジアでは遊牧とオアシス農業が、古くから行われている。
ティグリス川・ユーフラテス川などの河川沿いで、水をひいてきて、小麦、ナツメヤシ、野菜、綿花、果実などを栽培するオアシス農業である。つまり、オアシス農業では、稲(米)は栽培してない。
また、イランでは灌漑(かんがい)用の水の蒸発を防ぐために、地下水路であるカナートがある。
カナートの縦穴は、土砂を排出するためにある。
このほか、サウジアラビアなどでは、機械で地下水を汲み上げて周囲に散布するセンターピポットによる農業もある。
遊牧では、羊やラクダやヤギなどの乾燥に強い動物を飼育している。アラブ系の遊牧民をベドウィンという。遊牧民は、簡易的なテントを持ち運び、それに住む。
古くは、農業の行えない地域では遊牧が多かったが、近年では灌漑などの普及により、また政府が定住化を促したこともあり、遊牧民は減ってきている。
パレスチナ問題
編集1948年にユダヤ人が一方的にパレスチナに入植し、イスラエルの建国を宣言した。
その動機は、ユダヤ人の考えでは、パレスチナはもともとユダヤ人が住んでいた祖先の地であるから、である。
また、このような考え(パレスチナは、ユダヤにとっての祖先の地である)をシオニズム運動といい、19世紀後半ごろからシオニズム運動が活発になった。
そして、ユダヤ人が世界各地から多くイスラエルに移住してきた。
このユダヤ人のパレスチナ入植に対し、周辺のエジプトやシリアなどのアラブ人の諸国は反発し、数度の戦争になった(中東戦争)。
中東戦争は4度起きたが(第一次中東戦争 〜 第四次中東戦争)、いずれの戦争でも、イスラエルがアメリカ合衆国の支援を受けて勝利する一方、アラブ諸国は敗れた。
この戦争の被害もあり、多くのパレスチナ人が難民となった(パレスチナ難民の発生)。
パレスチナ人は、パレスチナ国家の再建のため、パレスチナ解放機構(PLO、ピーエルオー)を結成しており、イスラエルに対する抵抗運動を続けている。
クルド人問題
編集イランやイラクやトルコなどに少数民族のクルド人がいる。クルド人は独立を求めており、たびたびイラクやトルコなどそれぞれの国で、独立要求や自治の要求をしている。
クルド人はクルド語を話し、イスラム教を信仰している。正確な人口は不明であるが、約3000万人と一般に推測されている。
各国の地誌
編集サウジアラビア
編集原油の埋蔵量・産出量が、世界でも上位。ペルシャ湾の沿岸(えんがん)を中心に油田が開発されている。
国土のほとんどが砂漠気候である。
イスラム教の聖地であるメッカとメディナはサウジアラビアにある。サウジアラビアの首都はリヤドである。メッカは、首都ではない。
王制の国であり、国王・王室の権力が強い。国会や憲法は無い。
宗教は、国民のほとんどがイスラム教徒である。
イスラエル
編集国民の多くがユダヤ教を信仰しており、ユダヤ人の国である。シオニズム運動によって建国された。
首都のエルサレムは、ユダヤ教の聖地、キリスト教の聖地、イスラム教の聖地となっている。
公用語はヘブライ語とアラビア語。
いっぽうパレスチナ人は居住地を失い、難民となった。
イスラエルはOECD(経済協力開発機構)に加盟している。 ※ OECD と OPEC とを混同しないように。
イスラエルには、すでに核保有をしてるとの疑惑がある。(※ 核疑惑については、「地理」教科書の範囲外。)
イラン
編集1979年にイラン革命により、宗教指導者であるイスラム法学者ホメイニを国家元首とする、宗教的な国になった。 イラン革命以前は、王制の国であり、パーレビ国王が支配していた。
イランの首都はテヘラン。
ペルシャ語が公用語になっている。
イラン人は、自分たちイラン人を周辺のアラブ諸国とは区別しており、「イラン人はアラブ人ではない」のように考えてる。
イランのイスラム教徒は、少数派のシーア派である。
イランは原油を算出する産油国でもある。
アメリカ合衆国と対立している。イスラエルとも、対立的である。
イランに核開発の疑惑がある。(※ 核疑惑については、「地理」教科書の範囲外。)
トルコ
編集トルコは、ボスポラス海峡の両側に領土があるため、ヨーロッパとアジアにまたがる。
トルコの首都はアンカラ。
ボスポラス海峡近くにあるイスタンブールは経済的に繁栄しており観光業などでも有名だが、しかしイスタンブールは首都ではない。
トルコの宗教ではイスラム教が信仰されてるが、世俗化・政教分離がすすんでおり、あまり戒律が厳しくはない。
トルコの経済はEUとの貿易が経済の中心である。また、トルコはEUへの加盟を申請している。
トルコは文字にローマ字を使用している。かつてアラビア文字を公用的に使用していたが、近代化政策のため、アラビア語の使用を廃止した。
トルコはNATO(北大西洋条約機構、ナトー)およびOECD(経済協力開発機構)に加盟している。
トルコには、少数民族クルド人の民族問題がある。
イラク
編集イラクの首都はバグダッドである。
イラクはメソポタミア文明の発祥の地であると、一般に考えられてる。
第二次大戦後、イランとのあいだで領土問題があり、1980年にはイラン・イラク戦争が起きた。このイラン・イラク戦争のとき、欧米諸国はイラン革命の広がりを恐れて、欧米諸国はイラクを支持した。
1990年に独裁者のフセイン政権のもと、クウェートに侵攻し、翌年、アメリカ軍を主体とする多国籍軍とのあいだで湾岸戦争が起きた。
イラクは敗退したが、フセインは生き残り、処刑されなかった。
2003年、アメリカ軍とのあいだでイラク戦争が起きた。このイラク戦争の結果、フセインは処刑された。
イラク戦争後、テロリストがたくさんイラクに流入し、この地域でテロがたびたび発生している。
その他の国
編集アフガニスタン
編集2001年のアメリカ同時多発テロのあと、アフガニスタン政府が犯行グループをかくまってるとされ、アメリカ軍に攻め込まれた。
アラブ首長国連邦
編集7つの王族の首長国の連邦国家なので、アラブ首長国連邦という。アブダビ、ドバイ、シャルジャなどの首長国からなる。
アラブ首長国連邦の首都はアブダビ。産油国。 近年、ドバイが商業的に栄えている。
その他の国
編集バーレーン、イエメン、オマーンなどの国がある。
時事
編集テロ
編集2003年のイラク戦争後、イラクおよび周辺地域にテロリストが流入しており、この地域がテロの多発地帯になっている。