仮定法

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仮定法現在

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共通知識
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中学で習う仮定法過去および仮定法過去完了による実現しなかった願望の表現とは別に、「仮定法現在」というのがあるが、しかし「仮定法現在」は願望の表現ではなく、かつては提案や要求など (demand や insist など) で仮定法現在が使われていた歴史もあったが、しかし古風な表現方法であり、なので21世紀ではあまり使われない。古風な文体を意図的に書く場合などで、仮定法現在を用いる場合もある。

Tom demanded that I apologize to her. 「トムは私が彼女に謝罪することを要求した」 ※インスパ、ブレイク、ジーニに似た例文

It is necessary that every member follows these rules. 「会員は全員、その規則を守る必要がある。」※ジーニアス、青チャートに似た例文

It is necessary that everyone obey these rules. 「皆がそのルールを守る必要がある」


It is necessary that ~

または

It is important that ~

などで、仮定法現在がある(青チャート、インスパ)。

動詞では、demand(要求する), insist(主張する), propose(提案する), suggest(~提案する) ,order(命令する) ,advise(忠告する), request(依頼する) , などである(青チャート、インスパ)。


イギリス英語では、これらの用法(It is necessary などや、demand,insistなど)の場合には should を補う。shouldを補った場合、とくに仮定法として読まなくても、意味が一致する(助動詞 should自体の意味が仮定法的な「べき」という意味だという点はひとまず置いておく)。

なので、仮定法現在は実質、アメリカ英語である(ジーニアス)。

なお、歴史的には、shouldを補う用法のほうが新しい。ブレイクスルーいわく、17世紀以降、イギリス本国では仮定法現在の言い回しに違和感がもたれて、should をおぎなうようになった、という経緯がある。なんとなくイギリス英語というと「古い」という想像をしがちだが、しかしそうとは限らないケースのひとつである(ブレイクスルー)。


なお、動詞でinsist やsuggest を使っていても、意味が命令や要求でない場合は(suggestが「示す」の意味の場合や、insistの主張内容が要求などでない場合)、shouldも仮定法現在も使わずに、ふつうの直説法を使う(ジーニアス)。裏を返すと、insist,suggestに続くthat節が直説法か仮定法かで、insist または suggest の意味が変わる、とも言える(インスパ)。


なお発展的事項だが、動詞だけでなく、suggestion や insistence などのこれらの動詞の名詞形でも仮定法現在は使われる(インスパ)。


また、「仮定法現在」では、提案や要求(ジーニアス)などを表す際に(if節ではなく) that 節の中で仮定法現在が使われるのが普通。仮定法現在は、やや命令調というか、要求の意味合いが強い。

また、あらたまった表現でもある。参考書の例文だと、要望や命令の用法でも、司法がどうこうとか、法案がどうこうとか、あるいは会社や団体などの規則がどうこうとか、そういう場での例文としても使われている(ジーニアス、ロイヤル英文法)。司法以外の民間人が使っても構わないが、あらたまった言い方ではある。

仮定法過去や仮定法過去完了は婉曲的な表現であるので丁寧な表現として使われる場合もあるが、しかし仮定法現在は命令の調子が強まるので注意する必要がある。


このため、文法教育として「仮定法現在」はあまり論理的ではなく、なので文法参考書でも、あまり紹介していない参考書もある(桐原フォレスト、エバーグリーン)。中学参考書および桐原フォレストなど一部の参考書で述べている仮定法の特徴は、仮定法過去および仮定法過去完了だけの特徴である場合もあるので、学習の際にはそこに注意が必要である。

一部の参考書にある情報
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ほか、ロイヤル英文法は、法律の文体にある if と動詞の原形をつかった文体も「仮定法現在」だと述べているが、しかし他の参考書では if については言及していない。

ほか、仮定法の未来というのは、一般的な文法参考書では見当たらない。


ほか、青チャートとロイヤル英文法とブレイクスルー(章末「さらに進んで」)が言うには、祈願や願望を表す

God bless you! 「あなたに神のおめぐみがありますように.」

も仮定法現在とのこと。

なお、

May god bless you!

という言い方もある(青チャート)。


青チャートは

Long live the Queen! 「女王万歳」(←「女王が長生きされますように」)

も仮定法現在だと言っている。2022年9月、英国エリザベス女王が死去したけど、どうするのでしょうかね、これ?

なお、これらの用法では should を使わない。

提案や依頼としての仮定法

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仮定法(仮定法過去および過去完了)は、本来は実現しなかったことを意味する表現であると覚えるほうが良い。

だが、実現するかどうか分からないことの表現として仮定法を使うことで、提案や依頼などにおいて控えめで丁寧な表現として使う用法もある。


たとえば、提案を意味する

Would you mind if I 動詞-ed ~? 「(私が)~してもよろしいでしょうか?」

も仮定法である。

ここでの mind は、「嫌だと思う」「気にする」という意味である。

「(私は~しようと思ってるのですが、)私が~しても気にしませんか?」という感じの婉曲表現によって、提案を表す表現技法なので、仮定法に分類するのが相応しい。


ドンマイは和製英語

Never mind. 「気にするな」

と言う意味の、英語があります。失敗した人などを励ます場合に、 never mind が使えます。

日本語では、よくスポーツの敗者などにドンマイと言いますが、しかし don't mind にそのような用法はありません。ドンマイは和製英語だと思ったほうが良いでしょう。

ほか、「~かしら?」を意味する動詞 wonder を使って、

I wonder if you could ~ ? 「~していただけませんか?」

という仮定法の表現もある。

could が助動詞 can の過去形なので、仮定法だと考えることもできる。

なお、一般に仮定法において、もし従属節を過去形にせず can にすれば

I wonder if you can ~ ? 「~していただけますか?」

と、より直接的な表現になる。


仮定法の条件説の接続詞は、基本的には if であるが、仮定法でのifは省略される場合もある。

仮定法でif を省略した場合、願望をあらわす内容の仮定法なら

Were I ~. や「もし私が~なら(・・・したのに)」

Had I known ~, I would have ○○ . 「もし~だと知っていたら、○○したのに。」

Should there be ~, 「もし~があるなら、」

のように倒置が起きてSとVの順序が入れ替わるので、疑問文と同じ語順になる。

文法の理論上は、were, had, should 以外の文頭も理論的には可能だが、しかし実用上はまずこの3種類の語句しか、仮定法においてのifの省略文による倒置では文頭に来ることはないのが普通であり(桐原フォレスト)、まれに could や might が来ることもあるだけである(ロイヤル英文法)。この用法のつもりでの Didは今では非標準(ロイヤル英文法)。

なお、前置詞を使った何らかの熟語や不定詞や分詞構文や副詞 without や but for などを使うことでも、ifを省略することもできるが、この場合は倒置は起きない。この場合は、if が「省略」ではなく、if の「代用」として別の表現方法を使っただけである(ロイヤル英文法)。

なお、願望を表す意味での仮定法で無い場合は、倒置が起きないのが普通(ロイヤル英文法)。


ifの代わりには when は仮定法では用いないのが普通。


※ 条件節の省略

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中学で習うような could や would や should を使った丁寧な依頼などの表現は、仮定法からの派生的な婉曲表現だとも考えることができる(ロイヤル英文法)。

たとえば、

Could you do me a favor? 「お願いがあるのですが。」

は、仮定法の条件節が省略された形だという考えもある(ロイヤル英文法)。

仮定法の慣用表現

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It's time ~
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It's time I was leaving. 「そろそろ失礼しないといけません。」


「 It's time + 仮定法過去」で、「そろそろ~してもいいころだ」の意味になる。

ここでいう「~してもいいころだ」とは、許可ではなく、「本来ならもう~されているべきなのに、まだ~していない。(~するべきだ)」のような意味「。

ロイヤル英文法いわく、「潮時」をあらわす表現。

この It's time 構文では、仮定法過去完了ではなく、普通、仮定法過去が使われる(桐原フォレスト)。


ただし実際には、仮定法で言うよりも不定詞表現

It's time (for ~) to 不定詞

のほうがよく使われる(ジーニアス)。


ほか、仮定法とは意識されない場合が多いが、助動詞 should を使って

It's time you should 動詞の原型

のように、より直接的に「~べきだ」と言う表現もある(ロイヤル英文法)。

If it were not for ~
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下記の If it were not for ~ などの構文で、「もし(今)~がなければ」という現在の事実に反する仮定を言える。

If it were not for ~ 「(現在の事実について)もし~がなければ」

なお、過去の事実に反する仮定を言う場合は、下記のようになる。

If it had not been for ~ 「(過去の事実について)もし~がなければ

これらは文語(書き言葉)的な言い回しである(ジーニアス、ロイヤル英文法)。


If it were not for your help, I would not ~ 「もしあなたの助けがなければ、私は~だったろう。」

なお、これらの表現における肯定形は存在しない(桐原フォレスト)。


If を省略してもいいが、その場合は倒置が起きて、 Were it not for の語順になる。

Were it not for your help, I would not ~ 「もしあなたの助けがなければ、私は~だったろう。」

※ 中学の復習

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現在のことがらの仮定法。(仮定法過去)

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実際に実現されていないか、実現される見込みの無いことについて述べるときには、仮定法(かていほう)が用いられる場合がある。

たとえ現在のことであっても、過去時制を用いることを、If節の文中で、つぎのように書くのが仮定法である。

If I were[was] a bird, I would fly to Osaka.(「もし私が鳥だったとしたら、大阪まで飛んでいくのに。」)

※通例、be動詞の過去形は主語の人称に関係なく were を使用する。 このように現在の事柄に関して、現実的でないことを述べるには、一般に過去の時制を用いる。

上の文は「もし私が鳥だったとしたら、大阪まで飛んでいくのに。」という意味であるが、けっして実際には「私」は鳥ではなく、空を飛ぶことが不可能なことから、ここでは仮定法を用いている。

仮定法では多くの場合、条件を仮定する意味の if 節が加わるのだが、その節の動詞は過去形にする。ただし、動詞がbe動詞だったときには、その動詞は主語に関わらず、were とする。ただし、口語的にはwasが使われることもあるようであることには注意。上の例ではif節の動詞がamであることから、仮定法にしたときの動詞はwereとなっている。

また、if節の主文については(例文の場合「 I would fly to Osaka.」)、通常助動詞 would(あるいはcould) を用いる。通常の過去形を用いることはあまりなされないようである。

このような、現在の実現不可能なことがらについて、「もし〜だったら、・・・するのに」という事を強調するために過去形を用いる用法を、仮定法過去(かていほう かこ)という。

つまり、仮定法過去は、現在の実現不可能なことについて、述べている。


仮定法でない場合
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いっぽう、仮定法ではない、通常の

If I am a bird, I fly to Osaka.

でも、意味は「もし私が鳥だったら、大阪まで飛んでいく。」となってそれほど意味は変わらない。しかし、この構文は仮定法ではないため、実現できることを主に表す。

仮定法を使うのはあくまでそのことが不可能だということを強調する意味である。

過去のことがらの仮定法。(仮定法過去完了)

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ここまでは現在のことに関する仮定を行なう文を紹介してきた。過去のことについて仮定を行なう場合にはここまでの動詞の時制を過去完了にすればよい。 例えば、上の文に対応する文として、

If I had been a bird, I would have flown to Osaka.

となる。 意味は 「もし私が(あの時)鳥だったとしたら、私は大阪に飛んでいっただろうに」 となる。

また、I wish - から始まる文では、その目的語節として仮定法が用いられることが多い。これはwishが'願う'という意味の単語で、その後に非現実的な願いが続くことが多いことによる。例として、

I wish I were a bird.

があげられるが、ここで were は、be動詞 am を仮定法にしたものである。

それ以外の場合でも何らかの起こるかどうか分からない条件があるときのことについて述べるときには、仮定法が用いられることが多い。この時にはif文が伴わないことも多く、if文に対応する主文だけが述べられるようになることが多い。 これに対しては文脈で判断するしかないが、過去の時制でないときに突然、過去形が現われるように見えるため、実際にはそれほど判別に苦労することはないと思われる。