高等学校商業 経済活動と法/不動産の貸借

賃貸借

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賃貸借(ちんたいしゃく)とは、アパートの借り住まいとその家賃のように、賃料を払ったり払わせたりして貸し借りする事である(民601)。 レンタルDVDを借りることも賃貸借である。賃貸借では、借りた物は消費されて消失するわけではない。つまり、賃貸借は、消費貸借とは別の貸借である。また、賃貸借では、所有権は移転しない。

賃貸借の目的物は、不動産でなくとも構わず、動産でもよい。

つまり、「賃貸借とは何か?」の説明は、次のようになる。

「不動産や動産を、賃料を支払わせたり支払って貸し借りすることを賃貸借という。」

建築物の貸し借りの場合なら、特別法として借地借家法の規制を受ける。

まあ、農地の貸し借りの場合なら、農地法の規制を受ける。

そして、一般に借り主の経済的な立場が弱いため、これらの特別法では、借り主の立場を保護している。


宅地の貸借

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宅地の貸借

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借地人(しゃくちにん)とは、土地を借りている人のこと。地主(じぬし)とは、土地の持ち主、あるいは貸し主のこと。なお、賃貸アパートなどに借り住まいしてるだけの人のことは「借家人」(しゃくやにん)といい、借地人とは異なる。(※ 借家人については、あとの節(建物の貸借についての節)で説明する。)

さて、(土地を借りている)借地人は、賃貸借の登記をしていないかぎり、地主が変われば、その新地主が明け渡しを要求すれば、借地人は出て行かざるをえない。 しかし、もし借地人が、賃貸借の登記をしていれば、明け渡し要求に対抗できる。

 
賃貸借の対抗要件

しかし、賃貸借の登記には、賃貸人(貸し主、地主)の協力が必要である。なのに、賃貸人は、賃貸借の登記に協力する義務が無いので、じっさいに賃貸借の登記がされる例は、あまり多くない(※ 参考文献: 斉藤隆亭『宅建士これだけマスター 2016年度版』、日本経済新聞社、1版、91ページ)。

そこで、借地借家法では、借地人の住んでいる建物の登記をしてあれば、新地主に対抗できるとしている(借地借家法10)。

建物の登記は、借地人が単独で出来る。

借地権の存続期間

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民法では、貸借権の存続期間は原則では最長で20年である(民604)。 しかし借地借家法では、借地権の存続期間は30年以上としている。契約時に、借地権の貸借期間について特に定めていなければ、借地権の存続期間は30年になる(借地借家法3)。

最初の更新では、存続期間は20年以上、その後は10年以上である(借地借家法4)。

また、期間が満了しても、つぎのように借地人は保護されている。期間が満了しても、地主は、自分で土地を使用するなどの正当な理由がないかぎり、借地人が借り続けるための契約更新を認めなければならない(借地借家法5,6)。

  • 定期借地権

その一方、あまりに借地人(借り主)の借りられる期間を長くしすぎると、地主が土地を貸すことをためらってしまいがちになりかねず、そのせいで不動産市場が悪化する恐れもある。このため、地主の権利も保護するため、50年以上の存続期間を条件に、さらに公正証書などの文書で契約することを条件に、存続期間をその後は延長しないでも土地を貸せる定期借地権という制度もある(借地借家法22)。

また、定期借地権では、期間満了の際に建物の買い取りをしないことも、特約で定めることができる。

  • 事業用借地権

事業のために用する建物を所有する目的で、10年以上50年未満の借地権が認められる事業用借地権という制度がある(借地借家法23)。期間延長は無く、期間満了とともに借地人は土地を明け渡さないといけない。この事業用借地権の契約は、地主に有利である。地主による濫用など防ぐためか(※ 要確認。いちおう、実教出版の教科書に、近い内容が書いてある)、法律は、この契約の成立の条件をきびしくしている。よって、この事業用借地権の契約をする際は、公正証書でしなければならない。

借地権の転貸

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「転貸」(てんたい)とは、いわゆる「また貸し」の事。

民法では、転貸のさいは、もとの貸し主の許可が必要であり、もし貸し主に無断で借り主が転貸すれば貸し主は契約を解除できる(民612)。 しかし、借地借家法では、借地の転貸では、裁判所の許可さえあれば、地主の許可は不要である(借地借家法19)。

賃借権の終了

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期間が満了して更新されなかった場合、その賃貸借の契約は消滅する。また、借地人が長いあいだ地代を滞納した場合、借地人の債務不履行のため、地主は契約を解消できる。

ただし、地代を払う日が数日だけ遅れるような場合だけなら、そう簡単には契約を解消できない。世間一般では、3ヵ月くらい遅れたら解約できるのが一般的である(※ 参考文献: 川井健『民法入門 第7版』、有斐閣、321ページ)。

建物の貸借

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アパートの大家(おおや)のように、賃貸契約で建物を貸す人物のことを「家主」(やぬし)という。

敷金と礼金

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(※ 検定教科書の範囲内。)

借家の契約では、借り主が敷金(しききん)や礼金(れいきん)といった金銭を、借り主から家主に対して払うのが一般的である。 つまり、家賃とは別に、さらに、さいしょの入居契約の時やその直後に敷金や礼金を、家主に払う必要がある(※ 一般に、敷金や礼金を家主に払わないと、そもそも建物を借りさせてくれないのが普通である。)。

民法では、ながらく「敷金」についての規定が実は無かったが、2017年制定(2020年4月から施行)の改正民法では敷金について制定された(改正民法622条の2)。


民間の実務では、「敷金」(しききん)とは、家賃不払いや、明け渡し時における借家の修理などのさいに切り崩すためのカネであり、借り始める際などに借り主が貸し主に払う。賃貸住まいの契約終了後(つまり、アパートから別の住宅へ引っ越すとき)、残った敷金があれば、借り主に返却される。

2020年4月からの改正民法により、残った敷金があれば、借り主が適法に貸借物を返却したならば、貸主(大家など)は借り主に敷金を返却しなければならない義務が明記された(改正民法622条の2)。

いっぽう、借り主の側も、原状回復の義務を負うことが、改正民法で定められた(改正民法 621条)。また、通常の使用に関する経年劣化については、借り主は原状回復の義務が無いことが、原状回復の例外規定として定められた(改正民法 621条)。


なお、じっさいの契約では、特約などで、明け渡しの修理の際には、どの程度の修理までに敷金を使っていいかの程度が決められることも多い。

敷金についての修理に利用する程度についての特約が無い契約では、貸し主と借り主が、敷金の返却額をめぐってトラブルになる事例も少なくない。

いっぽう、礼金(れいきん)は、契約終了しても返却されないのが普通である。礼金のことを「権利金」(けんりきん)ともいう。

(※ 権利金と礼金が同じものである事の参考文献: 中央経済社『ビジネス法務検定試験3級 公式テキスト』、東京商工会議所 編、2016年度版、137ページ)(※ 実教出版の教科書では「権利金」という言い方をしてる。いっぽう東京法令の教科書では「礼金」という言い方をしてる。なので「礼金」「権利金」の両方の呼び方とも高校範囲内。)

「礼金」「権利金」の「礼」や「権利」の意味は、家主が借り主の借家権を認めた事への、借り主からのお礼、という意味である。

法律

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家主から賃貸借の解約をする場合は、6ヵ月以上前に借家人に伝えないといけない。

また、家主に許可なく、借家の転貸は、許されない(※ 借地とは、異なる。)。借家の転貸の許されない法的根拠は、民法にもとづく(民612)。