高等学校商業 経済活動と法/手形と小切手の意義と性質
予備知識
編集ニュース
編集手形および小切手の制度は、日本国内では廃止の方針です。
読売新聞 著『手形の廃止 中小企業が決済で困らぬよう』 , 2025/04/14 05:00
なぜなら電子上の法人インターネットバンクが発達し、そのほうが安全で簡便なので、そういう電子上の手法に移行するという国の方針です。
それに伴い、手形・小切手の制度は廃止されます。
本書では以下に、学習用として、制度の概要を残しておく。
- ※ 時間のない場合は、この単元は後回しにして良い。廃止の方針なので。どうしても学習する際も、細部の暗記ではなく、理解を優先する勉強をするのが良い。
予備知識
編集手形も小切手も、銀行が発行する。そのため、銀行に当座預金(とうざ よきん)と言う口座を作る必要があった。(なお、一般に当座預金口座には利子はつかず、口座だけで儲けるには不適。)
手形は、借金の一種のようなもの。普通、企業が手形を使う。(個人では手形を使えない。銀行が許可しないだろう。)
銀行が、取引先の企業に、手形を発行した。
取引先企業は、その手形を使って、必要事項を記入することで、お金を借りたり貸したりする。
小切手は、その小切手を銀行にもっていくと換金できる、という証書のようなもので、これも普通は企業が使う。小切手に 50万円と署名をいれて書いたら、署名を入れた人の口座から50万円がひきおとされて、換金される。
現代では、銀行振り込みのシステムがあるので、小切手よりも銀行振込みのほうが安全である。
また、手形などは制度が複雑なので、詐欺が昔からあった。このため、企業向けのネットバンキングに移行するほうが安全である。
手形・小切手の意義
編集手形には、約束手形と為替手形の2種類がある。
国際間の取り引きの決済は、為替手形を用いてなされる事が多い。(※ 検定教科書の範囲内。実教出版の教科書に記述あり。)
約束手形
編集約束手形(やくそく てがた)とは,振出人(ふりだしにん)Aが受取人Bに対して、一定の期日に、一定の金額を払うことを約束する証券である。
為替手形
編集為替手形(かわせ てがた)とは、振出人Aが支払人Cに対して、一定の期日に一定の金額を受取人Bに支払うように委託(いたく)する有価証券である。
CはBへの支払いの委託を受けただけでは、支払いの義務はない。CがBへの支払いの委託を引き受けた場合に、Bへの支払いの義務が発生する。
小切手
編集小切手(こぎって)とは、振出人Aが支払人甲銀行に対し、小切手の持参人または受取人Bに一定の金額を支払うように委託する有価証券である。
手形・小切手の性質
編集手形行為と小切手行為
編集手形は、振出、裏書などによって、法律的な権利・義務が発生する。
このように、手形に法律上の権利・義務を発生させる一定の行為のことを手形行為という。
同様に、小切手に法律上の権利・義務を発生させる一定の行為のことを小切手行為という。
のちに学ぶが、手形保証も手形行為である。また、為替手形の引受も、手形行為である。
手形行為独立の原則
編集ある手形が偽造により無効だとしても、その手形に裏書をした場合、その裏書は有効である。
このように、同一の手形にされた複数の手形行為は、それぞれ独立しており、他の手形行為の効力の有無に影響されない。これを手形行為独立の原則という。(手7、77条2項)小切手でも同様に、同一の小切手上になされた複数の小切手行為はそれぞれ独立しており、他の小切手行為の効力の有無に影響を受けない。(小切手10)
例
- AからBに振り出された手形に、BがCに対して裏書をしたとする。もしAからBに降りだされた手形が(偽造などにより)無効になっても、BからCへの裏書は有効である。
手形の用紙
編集手形・小切手に用いる用紙は法律上は制限されていないが、実務上は、全国銀行協会連合会が制定した統一手形用紙あるいは統一小切手用紙を使用しなければならない。統一手形用紙・統一小切手用紙を用いないと、銀行が取り扱ってくれない。
(※ 範囲外:) 統一手形用紙は、銀行に当座預金口座を開設しないと、交付してもらえない。
手形・小切手の偽造と変造
編集偽造
編集他人の名前を使って勝手に手形行為をすることを、手形の偽造という。小切手についても同様である。他人の名前を使って勝手に小切手行為をすることを、小切手の偽造という。
手形・小切手の偽造では、偽造された者は責任を負わないのが原則である。偽造者は、無権代理人に準じて責任を負う。(手77・2項、11)
なお、偽造者は刑法上の有価証券偽造罪(刑法162、163)などにも問われる。(※ 検定教科書の範囲内。実教出版の教科書に記述あり。)
変造
編集手形の記載内容を権限なく勝手に変更することを、手形の変造という。(小切手も同様。)
変造後の署名者は、変造された文言にしたがって責任を負い、変造前の署名者はもとの文言にしたがって責任を負う。(手77・1項 VII、小50)