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担保(たんぽ)とは

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日常語での「担保」

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日常語の「担保」(たんぽ)は、法律用語の「担保」と意味がすこし違うが、大まかな意味は同じなので、まずは日常語の「担保」の意味を学ぼう。

日常でいう「担保」(たんぽ)という言葉は、たとえば、「土地や建物を担保にして、銀行からカネを借りる」などのように、世間一般では使われる。 なお、もしカネを返済できない場合、担保にされた土地や建物は、差し押さえされたあと、競売されて換金されるのが普通である。

いっぽう、保証人や連帯保証人などをつけて、カネを借りることも、「担保」(たんぽ)という。もし、カネを借りた本人がカネを返せない場合、保証人のところに請求書や借金取り などが来ることになるわけである。

つまり、カネを借りる際などに、もしカネを返せなかった場合の見返りとして、なんらかの物や権利を債権者(貸し主)に渡すことが、世間でいう「担保」である。

法律用語な「担保」

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さて、法的に、担保(たんぽ)とは、物を担保にする場合と、人を担保にする場合がある。

物(例:土地、建物)による担保のことを物的担保という。

いっぽう、人(例:保証人、連帯保証人)による担保のことを、人的担保という。

また、物的担保の権利は、担保にされた土地や建物などといった物についての権利なので、よって物的担保の権利は物権である。なので、物的担保の権利のことを「担保物権」ともいう。

担保物権には、留置権、質権、抵当権、などがある。

担保物権

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留置権

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留置権とは、たとえば、時計屋が修理をした時計の代金を客が払わない場合、客が代金を払うまで、ずっと時計屋が時計を占有できて、客に時計を返さなくてもいい権利のように、留置権とは債務者が債務の弁済を履行するまでのあいだ、その物を占有できる権利である。

自動車の修理業者が、修理代金を払わない客に対して、代金が払われるまで、その客に自動車を返さないでいるのも、留置権によって認められる。

ただし、留置権で占有してる物は、けっして債権者は、留置したものを売却などしてはいけない。(民295)

なぜなら、留置権は、あくまで、債務者に弁済をうながすために、弁済するまでのあいだ、占有しつづけても良い、とする権利であるから。

※ 「同時履行の抗弁権」とは、留置権は、別々の権利である、・・・というふうに法学書では一般的には解釈されている。(※ リンク: 「同時履行の抗弁権」については『高等学校商業 経済活動と法/売買の売り主と買い主の責任』を参照のこと。)

先取特権

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たとえば債務をかかえている会社が倒産したとき、その会社の従業員がその月の給料を貰えなくなったら、困る。

そこで、債務者(例の場合は、会社が債務者)の財産の中から、日常的な給料は優先的に払われる。(民306,308) このように、債務者の財産の中から、優先的に弁済を受けられる権利のことを先取特権(さきどり とっけん)という。(民303)

先取特権をされる対象は、給料、日常品の供給、葬式の費用、などの場合に認められる。

また、アパートなどの家賃も、先取特権の対象になる。

質権

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たとえばAがBからお金を50万円ぶん借りるとき、Aが自分のもっているダイヤの指輪をBに渡して、もしAが返済しなかったら、Bはそのダイヤの指輪を競売に掛けて、その売りあげを手にいれてよい、というのが質権(しちけん)である。


つまり、(高額な)物を債権者に渡し、債務者が弁済をしない場合には、その渡された物を競売に掛けて換金して、債権者は、競売でのその物の売りあげ(競売代金)から、債権者が優先的に弁済を受けられる、というのが質権である。(民342)

質権では、質権の対象になった物(質物)が、じっさいに債務者(借り主)から債権者(貸し主)に渡される。

また、このように、質物をじっさいに債権者に渡して占有させることを「質入れ」という。


※ 抵当(ていとう): いっぽう、「1000万円の借金の返済が債務不履行の場合に、土地や建物を競売してもいいが、しかし自分で使用するので、貸し主に渡さないでおきたい」というような場合もある。たとえば、仕事でつかう土地や建物は、もし貸し主に渡してしまっては、借り主は仕事ができなくなり、よって借金をかえすための金儲けもできなくなってしまい、貸し主にとっても本末転倒である。このように、債権者には不動産を渡さないでおいて、債務不履行の際に競売に掛けてもらう場合には、「抵当権」(ていとうけん)という権利が使われる。(くわしくは、抵当についての節で説明する。)

さて、質権の話題に戻る。

質権の対象になる物は(つまり、質物になれる物は、あるいは、質入れできる物は)、動産、不動産、債権などである。

なお、法律にさだめる競売以外の、法律にさだめのない方法では売却・換金などをしてはいけない。また、そのように、弁済期に弁済できない場合には法律でさだめのない方法で換金するという契約(流質契約)を債務者としてもいけない。(民349)また、この流質契約を禁じる目的もあり、質の対象物の所有者は、債務者(借り主)が所有者のままである。

しかし例外的に、商法上の商取引から生じた債権を担保にする場合については、流質契約が認められている。(商515)

抵当権

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たとえば、「1000万円の借金の返済が債務不履行の場合に、土地や建物を競売してもいいが、しかし自分で使用するので、貸し主に渡さないでおきたい」というような場合もある。たとえば、仕事でつかう土地や建物は、もし貸し主に渡してしまっては、借り主は仕事ができなくなり、よって借金をかえすための金儲けもできなくなってしまい、貸し主のとっても本末転倒である。このように、債権者には不動産を渡さないでおいて、債務不履行の際に競売に掛けてもらう場合には、「抵当権」(ていとうけん)という権利が使われる。

抵当権では、登記が必要である。

また、抵当される物が、登記の対象物である必要があるので、抵当の対象は通常は不動産である。そもそも民法では、不動産しか、抵当権の対象にしてない。(民369)

ただし特別法によって、船舶や自動車や航空機や建設機械や農業用動産などの動産を抵当にできる事も定められている。(商法848(船舶の抵当については商法で規定)、自動車抵当法、航空機抵当法、建設機械抵当法、農業動産信用法) 船舶などについても、登記・登録の制度が存在している。

さて、不動産の抵当についての話題に戻る。 対抗要件について登記が対抗要件であることを民法177条で定められているように、抵当権についても登記によって第三者に対抗できる。

ひとつの物に、複数の抵当権を設定することもできる。その場合、先に抵当した順に、一番抵当、二番抵当、三番抵当、・・・となる。

説明を簡単にするため、人物が4人いるとして、ある人Aの所有するある不動産に一番抵当を設定した人Bと、二番抵当を設定した人Cは、みんな別人だとしよう。同様に、三番抵当を設定したDも、A,B,Cとは別人だとしよう。

競売で得られた売上は、まず、一番抵当の債務の弁済に優先的に与えられる。つまり、Bが優先的に売上を貰えるわけだ。よって、もし、この段階で、競売の売上が一番抵当の債務の弁済に必要な金額に届かなければ、二番抵当以降(二番抵当も含む)は原則的に弁済をまったく受けられない。つまり、CやDは、まったく売上を貰えない。

一方、もし、競売の売上が、一番抵当の弁済ができるほどの売上だったとしよう。すると、今度は、二番抵当の弁済に、優先的に、競売の残りの売上金額が使われる。この段階で、もし、競売の売上が二番抵当の債務の弁済に必要な金額に届かなければ、三番抵当以降(三番抵当も含む)は原則的に弁済をまったく受けられない。つまり、Dはまったく売上を貰えない。


  • 例題(※ Wikibooksオリジナルに作成した問題です。もし専門家の読者が入れば、査読などをお願いします。)

具体的な金額で例えてみよう。

たとえば、Aが借金を期日までに返せなくて、抵当に入れられた土地が競売に出され、競売でAのその土地が2000万円で売れたとしよう。 抵当権の一番抵当の債権者Bは1200万円の債権をAに貸していた。(つまり、BはAに1200万円を貸していて、担保として土地を抵当に入れさせた。説明を簡単にするため、利子、利息などは無視する。以下のCやDについても同様に利子などは無視する。)

二番抵当の債権者Cは700万の債権をAに貸していた。(つまり、CはAに700万円を貸していて、担保として土地を抵当に入れさせた。)

三番抵当の債権者Dは500万円の債権をAに貸していた。(つまり、DはAに500万円を貸していて、担保として土地を抵当に入れさせた。)

B,C,Dのそれぞれの受けられる弁済は、どうなるか?


  • 答え

この場合、AとBは債権の全額が戻って来る。

なぜなら、不等式

2000 > 1200

なので、明らかに競売の売りあげ金額2000万円は、Bの債権額1200万円より大きい。

そして、残りの金額は、

2000ー1200=800

なので、800万円が残りの金額である。

で、Cの債権額が700万円なので、Cも債権の全額が戻って来る。

すると、BとCに弁済したあとの、競売の残りの金額が、

2000ー1200ー700=100

なので、100万円しか残ってない。しかしDの債権額は500万円だから、 つまり、Dは、100万円しか弁済を受けられない。Dは500万円を貸したのに、100万円しか戻ってこないのである。


根抵当

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企業どうしの継続的な取り引きにおける融資などでは、取引をするたびに、いちいち契約を結びなおしていては、手間が掛かる。そこで、具体的な金額を決めずに、抵当権を設定することが認められており、これを根抵当(ねていとう)という。

なお、保証人制度における「根保証」(ねほしょう)とは、この根抵当に保証人を立てることである。「根保証」を悪用した詐欺で、さいしょの契約交渉の時には少ない保証金額で被害者を安心させて保証人にさせて、のちに、それを大幅に上回る金額の保証を被害者に請求する、という手口がある。

たとえば、「50万円を保証すればいい」と聞いて安心して連帯保証人になったら、なんと1000万円の保証を請求された、「根保証」というものだった、なんていう詐欺の可能性もありうる。

このように根抵当や根保証の悪用の被害をすこしでも防ぐためもあってか、民法などの法律では規制があり、根抵当を設定する場合には、あらかじめ一定の限度額を設定しなければいけない。(民398の2 〜 民398の22)

民法上に規定がない担保

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譲渡担保

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抵当権では、所有権は債務者(借り主)のままだった。しかし、所有権を債権者に移すのが、譲渡担保である。 譲渡担保では、目的物そのものは引き渡さないので、債務者は目的物を使い続けられる。仕事で使う機械や設備、土地などを、引き渡さないで済むので、債務者は仕事を続けられる。

法律では譲渡担保については規定が無いが、取引き慣行として譲渡担保が認められている。また、判例でも、譲渡担保は認められている。

たとえば、債権者Aが債務者Bに100万円を貸してたとしよう。 そして、譲渡担保として、Bの所有してた設備を、債権者Aの所有権に移したとしよう。

所有権だけが移るので、目的物(例の場合では「設備」)は、債務者Bが占有しているままである。

もし債務(借入金など)が弁済されれば、所有権はもとの持ち主に戻る。 つまり、債務が弁済されれば、AからBに所有権は戻る。弁済しおわってから、所有権がもどるので、同時履行の関係には無い。

(例、おわり)


なお、債務者が弁済しおわるまでのあいだ、債権者が債務者から「賃料」などとして利息分を取る場合も多い。(検定教科書にある例。) たとい債務者が弁済できなくても、とくに競売にかけたりはしないのが一般的である。(※ 参考文献: 山野目 章夫『民法 総則・物権』、有斐閣、第5版、196ページ)

動産・不動産のどちらでも、譲渡担保の対象にできる。

所有権留保

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割賦(かっぷ)販売や月賦(げっぷ)販売やローン、クレジットなどの分割払いでは、たとい品物を買い主に渡していても、買い主が代金の全額を支払い終えるまでのあいだ、品物の所有権は売り主にある。(割賦販売法 7)

買い主は、買ったばかりで代金をまだ払いおえなくても品物を占有できて、その品物を使える。しかし、代金を完済し終えるまでは、買い主は品物の所有権を持ってない。

所有権が売り主にあることによって、売り主が代金を請求できる権利をより確実にするなどの狙いがある、などと考えられている。

このように、品物の所有権を、代金の全額が支払われるまで、買い主が留保しているので、このような権利の仕組みのことを所有権留保という。

クレジットカードによる分割払いの場合、弁済しおわるまでの商品の所有権は、信販会社にある。(※ 東京法令出版の検定教科書にそういうふうに書いてある。)

仮登記担保

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