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時効

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たとえば人Aが人Bにカネを貸しても、10年以上も催告しないで放置していると、カネを返すように取り立てられる債権が消滅してしまい、以降は取り立てる事ができなくなってしまう。 このように、時間の経過によって債権が消滅する制度のことを時効(じこう)という。

裁判でも、あまりにも昔のことについては、領収書などの証拠が散逸するなどしてしまう。なので、時効の制度がある。

この時効の特徴をあらわした格言として、「権利のうえに眠る者は、保護するに値せず」という格言がある。(※ 実教出版の教科書に紹介されてる。)

時効によって、ある権利が消える場合の時効のことを消失時効という。いっぽう、時効によって、(占有者などが)ある権利を取得できる場合の時効のことを取得時効という。


  • 消滅時効の期間
飲食代金、宿泊費 ・・・ 1年
商品の代金 ・・・ 2年
医療費、工事請負の代金 ・・・ 3年
商取引による債権、地代、家賃など ・・・ 5年
一般の債権 ・・・ 10年

※ 2017年の民法改正案の可決により、改正民法の施行後の2020年以降から、消滅時効の期間が変更します。しかし、2017年の時点では、まだ、改正前の民法が有効なので、本wikibooksでは、改正前民法での時効の期間を記載します。


※ 範囲外: 2017年の民法改正と、時効の期間

2020年以降からの改正民法の施行後は、原則として、時効の期間は「5年」未満の時効の期間が、「5年」または「10年」に統一される。つまり、


  • 2020年以降の民法での消滅時効の期間
飲食代金、宿泊費 ・・・ 5年または10年
商品の代金 ・・・ 5年または10年
医療費、工事請負の代金 ・・・ 5年または10年
商取引による債権、地代、家賃など ・・・ 5年または10年
一般の債権 ・・・ 5年または10年

という事のようである。

なぜ、こうなるかというと、2016年の民法にあった職業別の短期消滅時効が、改正民法では削除されているからである。(現行民法170条~174条が削除される。また商法522条も削除される。)

また、2020年施行の新民法では、債権者が権利を行使できる事を知ってから、5年のあいだ、権利を行使しないでいると、時効が消滅する。さらに、債権者が権利を行使できる事を知らなくても、10年のあいだ、権利を行使しないでいると、時効が消滅する。(改正後の民法166条)


消滅時効

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債権の消滅時効の期間は、一般に10年であるが(民167(1) )、これには例外が多い。商行為についての債権は、迅速な取引をする必要があることから、時効の期間が5年である。(商法522 ) また、商品の代金は2年の時効、飲食代金は1年で時効、などのように、債権の種類のよっては、より短期の時効が定められている。(民169〜174(2) )

なお、地上権の時効20年である。(民167(2) )

取得時効

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ある人のもつ所有権は、消滅時効そのものによっては消えないが、しかし他人の取得時効によって所有権が上書きされ、もとの人の所有権が消える事はある。

他人の物でも、その物の占有をつづけて、公然かつ平穏と、所有の意思をもちながら、20年のあいだ継続して占有すると、取得時効により、その物の所有権を取得できる。(民162)

所有の意思を持ちながら、という要件があるので、たとえばアパートに借り住まいしてるだけのような場合は、所有の意思が認められないので、取得時効は適用されない。

なお、占有をつづけているその者(人物)が、「自分の物である」と信じるに足る正当な理由があれば、取得時効は10年に短縮される。

動産も不動産も、取得時効の対象になる。つまり、土地も時効取得の対象になる。(※ なので、土地や建物などを時効取得によって他人に奪われないように、要注意のこと。)

さて、法律では、ある事実を知ってる場合を「善意」といい、知らない場合を「悪意」という。 事項取得の話題では、「自分の物である」と最初っから勘違いしてる状態が「善意」に分類される。いっぽう、他人の物である事を知っている場合、「悪意」に分類される。

そして、「自分の物である」と勘違いしてしまっても仕方のないような正当な事情があれば、「善意無過失」に分類される。

まとめると

・ 善意無過失で、公然かつ平穏と占有を続けていれば、時効取得により10年で所有権を取得できる。
・ 悪意(他人の物である事を知っている場合)でも、公然かつ平穏と占有を続けていれば、時効取得により20年で所有権を取得できる。

時効の中断・停止・援用

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時効の中断

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「時効の中断」とは、一定の法律行為により、時効がゼロにリセットされ、その時点から新しく時効が始まることです。

※ 日常語での「中断」という名前の語感が法の実態と異なっていて分かりづらいので、2017年の法改正(2017年の民法改正)により「時効の中断」(※旧)は「時効の更新」(※新)に名称が変わりました。


時効の停止

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たとえば、もし、時効の終わり近くに、大地震などの大災害が発生した場合に、時効がそのまま進行するのは不合理であり、時効の進行を止める必要がある。

そこで法では、もし、時効の終わり近くに、権利の行使が不可能または著しく困難な事情がある場合(債権者が死亡したり、あるいは債権者が未成年または成年被後見人であるのに法定代理人がいない場合、あるいは大地震などの大災害が発生した場合)には、時効の進行が停止する。(民158〜161)

※ 「中断」(更新)とは異なり、「停止」では時効はリセットされないです。
※ 法改正(2017年の民法改正)により「時効の停止」(※旧)は「時効の完成猶予」(※新)に名称が変わりました。

訴訟を起こした場合にも、時効は停止する。つまり、訴訟を起こせば時効は完成猶予する(民147条1項1号)[1]

時効の援用

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時効によって利益を受ける当事者が、時効を主張することを、「時効の援用」(じこう の えんよう)あるいは単に「援用」という。

裁判所は、時効によって利益を受ける当事者からの援用が無い限り、裁判所は時効を取り上げない。

時効の利益の放棄

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高利貸しが、借り主に時効を放棄させる事は、法律で規制して、時効の放棄をできなくさせる必要がある。

そこで、時効の完成前には、時効は放棄できない、という規定になっている。(民146) この規制により、金銭を貸す際に、借り主に時効の放棄をさせることはできない。

  1. ^ 三木裕一ほか『民事訴訟法 第3版』、有斐閣、2021年1月15日 第3版 第8刷発行、P58