高等学校商業 経済活動と法/無効と取り消し

無効 編集

殺人をうけおう契約や麻薬売買の契約は、その契約は法では保護されない。そして、このような契約(殺人契約、麻薬売買の契約)に、したがう法的義務は無い。このように、ある契約に、最初から法的な強制力が働かないことを無効(むこう)という。

無効な契約は、最初から存在しなかったものとして扱われ、最初から法的な効力が発揮しないものとして扱われる。 また、ある契約などが無効であることを主張するのに、時間の制限はない。


取り消し 編集

いっぽう、詐欺や強迫(きょうはく、※ 「脅迫」ではない)による契約は、取り消されるまでは、その契約は有効であるものとして扱われる。しかし、取り消しによって、最初にさかのぼって、効力が無くなる。もし取り消さないままでいると、有効でありつづける。

「強迫」とは、おどして恐怖心をいだかせること。刑法の「脅迫」(きょうはく)と意味が似ているが、民法では「強迫」と書く。

だまされたり、おどされたしたせいで、被害者側の行った意思表示は、民法では「瑕疵ある意思表示」(かしある いしひょうじ)という。つまり、「瑕疵ある意思表示」とは、詐欺または強迫によって、被害者側のしてしまった意思表示のことである。

(※ 国語の解説

「瑕疵」(かし) - きず、欠点などのこと。

)

もし、ある契約が、詐欺や強迫などによる契約で、取り消し可能な契約であっても、もし被害者側が詐欺に気付いたり強迫の原因が無くなったあとに、契約内容に納得がいってれば、あらためて、その契約を承諾してもいい。このように、取り消し可能な契約を、あらためて承諾することを、追認(ついにん)という。追認した契約は有効となる。


取り消しできる期間には、制限がある。 民法126条「取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」とある。

つまり、追認できるようになってから5年に取り消さないと、もはや取り消しできなくなる。また、法律行為のときから20年が経過した場合にも、もはや取り消しができなくなる。

なお、19歳の未成年が親などの法定代理人の許可をもらわずにバイクを買う契約をする、などの契約も取り消せるのが慣習である。(※ 東京法令出版の検定教科書で紹介されてる例。)