高等学校国語総合/宇治拾遺物語
鎌倉時代の作品。成立年は、おそらく1212年~1221年ごろと思われている。作者は不明。
仏教の説話が多い。芸能や盗賊の説話もある。この作品での仏教のようすは、鎌倉時代の仏教が元になっている。
児(ちご)のそら寝
編集- 大意
昔、比叡山に、一人の児がいた。僧たちが、ぼた餅(ぼたもち)を作っていたので、児はうれしいが、寝ずに待っているのを みっともないと思い、児は寝たふりをして待っていたところ、ぼた餅が出来上がった。
僧が児を起こそうと声をかけてくれたが、児は思ったのは、一回の呼びかけで起きるのも、あたかも寝たふりを児がしていたかのようで、みっともないだろうと思った。なので、児が思ったのは、もう一度だけ、僧が声をかけてくれたら起きようかと思っていたら、僧たちは児が完全に寝入ってしまったと思い、二度目の声をかけなくなった。なので、ぼた餅が、僧たちに、どんどん食べられてしまい、児は「しまった」と思い、それでも食べたいので、あとになってから、僧の呼びかけへの返事をして「はい」と答えた。僧たちは面白くて大笑いだった。
一
編集- 本文/現代語訳
今は昔、比叡(ひえ)の山に 児(ちご) ありけり。 僧たち、宵(よひ。ヨイ)の つれづれに、 「いざ、かいもちひ せむ。」と言ひけるを、 この児、心寄せに聞きけり。 さりとて、し出ださむ(しいださむ)を待ちて寝ざらむも、わろかり なむ と 思ひて、片方(かたかた)に 寄りて、寝たる 由(よし) にて、出で(いで)来るを 待ちける に、すでに し出だし(いだし)たる さま にて、ひしめき 合ひたり。 |
今となっては昔のことだが、比叡山の延暦寺に(一人の)児童がいたという。僧たちが、日が暮れて間もないころ(=宵)、退屈しのぎに (=つれづれに)、「さあ、ぼたもちを作ろう。」と言ったのを、この児は期待して聞いた。そうかといって、作りあがるのを待って寝ないでいるのも、みっともないだろうと思って、(部屋の)片隅によって寝たふりで(ぼたもちが)出来上がるのを待っていたところ、(僧たちが)もう作りあげた様子で騒ぎあっている。 |
- 語句(重要)
- そら寝 - 寝たふり。
- 今は昔 - 今となっては昔のことだが。昔話の出だしの決まり文句。
- 比叡(ひえ)の山 - 京都と滋賀の境に比叡山(ひえいざん)がある。比叡山に延暦寺(えんりゃくじ)がある。延暦寺の宗派は天台宗。
- 児(ちご) - 公家や武家などの家の少年に学問や行儀作法などを習わせるために、少年が寺に預けられていた。
- 宵(よい) - 日が暮れて間もないころ。おおむね、日没から二時間後・三時間後くらいまで。
- つれづれ - することが無くて退屈。
- いざ - 現代の「さあ」に相当。呼びかけを表す。
- かいもちひ(イ) - 「かきもちひ」のイ音便。ぼた餅(ぼたもち)。おはぎの類。
- さりとて - 「さ ありとて」のつまった形。現代の「そうであるかといって」。この文での「さ」の指す内容は「心寄せに聞きけり」。
- わろかり - 良くは無い。形容詞「わろし」の活用。形容詞「あし」ほどの強い否定ではない。
- よし(由) - そぶり。
二
編集- 本文/現代語訳
この児、定めて 驚かさむ ず らむ と 待ちゐたる に、僧の、 「もの申しさぶらはむ。 驚かせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、 待ちけるかと もぞ 思ふとて、いま一声(ひとこゑ、ヒトコエ)呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、 「や、な 起こし奉り(たてまつり)そ。をさなき人は 寝入りたまひに けり。」と言ふ声のしければ、あな わびし と 思ひて、いま一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、 ひしひしと ただ食ひに食ふ音のしければ、ずちなくて、 無期(むご) の のち に、 「えい。」と いらへ たり ければ、僧たち 笑ふこと 限りなし(かぎりなし)。 |
この児は、きっと僧たちが起こしてくれるだろうと待っていたところ、僧が「もしもし、起きてください。」というのを、(児は)うれしいと思ったが、ただ一度(の呼びかけ)で返事をするのも、(ぼたもちを)待っていたかと(僧たちに)思われるのもいけないと考えて、もう一度呼ばれてから返事をしようと我慢して(=「念じて」に対応。)寝ているうちに、(僧が言うには)「これ、お起こし申しあげるな。幼い(おさない)人は 寝入ってしまいなさった。」と言う声がしたので、(児が、)ああ、情けない(=「あな わびし」に対応。)と思って、もう一度起こしてくれよと思いながら寝て聞くと、むしゃむしゃと、ひたすら(ぼたもちを)食べる音がしたので、どうしようもなくなり(=「ずちなくて」に対応。)、長い時間のあとに(児が)「はい」と(返事を)言ったので、僧たちの笑うこと、この上ない。 |
- 語句(重要)
- ・さだめて - 現代の「きっと」という意味の副詞。動詞「さだむ」+接続助詞「て」。
- ・驚かさむず - 「驚かさむ と す」がつまった形。「おどろかす」は現代の「起こす」。「むとす」がつまって「むず」になる。「驚かさむ と す」=「起こそうとする」。「おどろく」だと、現代の「目が覚める」「はっと気づく」。
- ・な起こしたてまつりそ - 「な・・・そ」で、おだやかな禁止「・・・するな」を表す。起こし申し上げるな。
- ・をさなき - 意味は「幼少である」、「未熟である」。幼い(おさない)。形容詞「をさなし」の連体形。
- ・いらへむ - 現代の「返事をする」。「いらへ」は動詞「いらふ」の未然形。「む」は助動詞で婉曲をあらわす。
- ・もぞ - 現代の「・・・すると困る」。古語の「もこそ」と同じ。
- ・念じて - 現代の「我慢して」(がまんして)。
- ・あな - 感嘆「ああ」。
- ・わびし - つらい、情けない。
- ・かし - 願望を表す助詞。「起こせかし」の意味は「起こして欲しい」。
- ・ひしひしと - ここでは、現代の「むしゃむしゃ」。
- ・ずちなし - どうしようもなく。「術(すべ)なくて」と同じ。※現代語「術」(じゅつ)と「ずち」の発音が似ている事に注目して覚えよう。
- 語句
- ・もの申しさぶらはむ - 丁寧な呼びかけ。今で言う「もしもし」。
品詞分解
編集今(名詞) は(格助詞) 昔、比叡の山 に(格助詞) 児 あり(ラ行変格動詞・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 僧たち、宵(よい) の(格助) つれづれ に(格助)、 「いざ(感嘆詞)、かいもちひ せ(サ変格・未然) む(助動詞・意思・終止)。」 と(格助) 言ひ(四段・連用) ける(助動詞・過去・連体) を(格助)、 こ(代名詞) の(格助) 児、心寄せ に(格助) 聞き(四段・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 さりとて(接続詞)、 し出ださ(四段・未然) む を(格助) 待ち(四段・連用) て(接続助詞) 寝(下二段・未然) ざら(助動・打消・未然) む(助動詞・婉曲・連体) も(係助詞)、 わろかり(形容詞・ク活用・連用) な(助動・強・未) む(助動・推・終) と(格助) 思ひ(四段・連用) て(接続助詞)、 片方 に(格助) 寄り(四段・連用) て(接続助詞)、 寝(動詞・下二段・連用) たる(助動・存在・連体) よし にて(格助)、 出で来る(いでくる)(動詞・カ行変格・連体) を(格助) 待ち(四段・連用) ける(助動詞・過去・連体) に(接続助詞)、 すでに(副詞) し出だし(しいだし)(四段・連用) たる(助動・完了・連体) さま にて(格助)、 ひしめき合ひ(四段・連用) たり(助動詞・存在・終止)。
こ(代名詞) の(格助詞) 児、定めて(副詞) 驚かさ むず(助動・推・終止) らむ(助動・現推・終止) と(格助) 待ちゐ たる に(接助)、 僧 の(格助)、 「もの申しさぶらはむ。 驚かせたまへ。」 と(格助) 言ふ を 、 うれし と は 思へ ども(接助)、ただ(副詞) 一度 に(格助) いらへ む も(係助)、 待ちける か(係助) と(格助) も(係助) ぞ 思ふ と(格助) て(接助)、 いま 一声 呼ばれて いらへ む と(格助)、念じ て(接助) 寝たる ほど に(格助)、 「や、な起こしたてまつりそ。 をさなき人は寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな(感嘆詞) わびし(形容詞・シク活用・終止) と(格助) 思ひ(四段・連用) て(接助)、 いま(副詞) 一度 起こせ(四段・命令) かし(終助詞) と(格助)、 思ひ寝 に(格助) 聞け(四段・已然) ば(接助)、 ひしひしと(副詞) ただ(副詞) 食ひ(四段・連用) に(格助) 食ふ(四段・連体) 音 の(格助) し(サ変・連用) けれ(助動詞・過去・已然) ば(接助)、ずちなく(ク・用) て(接助)、 無期 の(格助) のち に(格助)、 「えい。」(感) と(格助) いらへ(下二・用) たり(助動・完了・連用) けれ(助動詞・過去・已然) ば(接助)、 僧たち 笑ふ(四・体) こと 限りなし。(ク・終)
絵仏師良秀 (えぶっし りやうしやう)
編集- 大意
昔、絵仏師の良秀がいた。ある日、隣家からの家事で自宅が火事になって、自分だけ逃げ出せた。妻子はまだ家の中に取り残されている。良秀は、家の向かい側に立っている。
良秀は燃える家を見て、彼は炎の燃え方が理解できたので、家なんかよりも絵の理解のほうが彼には大切なので、炎を理解できたことを「得をした」などと言って、笑っていたりした。良秀の心を理解できない周囲の人は、「(良秀に)霊でも取りついたのか」と言ったりして心配したが、良秀に話しかけた周囲の人に、良秀は自慢のような説明をして、たとえ家が燃えて財産を失おうが絵などの仕事の才能さえあれば、家など、また建てられる金が稼げることを説明し、今回の火事の件で炎の燃え方が理解できたので、自分は炎が上手く書けるから、今後も金儲けが出来るので、家を建てられることを説明した。さらに、良秀の説明・自慢は続き、そして世間の一般の人々は才能が無いから物を大事にするのだと、良秀は あざわらう。
けっきょく、良秀は、その後も絵描きとして成功し、『よじり不動』という絵が有名になって、世間の人々に褒められている。
一
編集- 解説
良秀は、あまり、妻子の安否を気にしてない。まだ妻子が火事の家の中にいるを知らないのではなく、知っているが気にしてない。
- 本文/現代語訳
これも今は昔、絵仏師良秀といふありけり。家の隣より火 出で来て(いできて)、風おしおほひてせめければ、逃げ出でて(いでて)大路(おほち)へ出でにけり。 人の描かする仏もおはしけり。 また、衣(きぬ)着ぬ妻子(めこ)なども、さながら内にありけり。それも知らず、ただ逃げ出でたる(いでたる)をことにして、向かひのつらに立てり。 |
これも今となっては昔のことだが、絵仏師の良秀という者がいた。(良秀の)家の隣から出火して、風がおおいかぶさって(火が)迫って(「せまって」)きたので、逃げ出して大通りに出てきてしまった。(家の中には、)人が(注文して)描かせていた(仏画の)仏も、いらっしゃった。また、着物も着ないでいる妻子なども、そのまま家にいた。(良秀は)それも気にせず、ただ自分が逃げ出せたのを良いことにして、(家・道の)向かい側に立っていた。 |
- 語句
- 良秀(りょうしう) - 人名。「良秀」の読みは「リョウショウ」または「ヨシヒデ」と読む。この作品の主人公。彼の詳細は不明。
- 人の描かする仏 - 他人が描かせた仏。「の」は格助詞で主格を表す。「描かする」の「する」は使役の助動詞「す」の連体形。
- おはしけり - いらっしゃった。
- 衣着ぬ - 最後の「ぬ」は、打消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」。「衣着ぬ」の意味は「着物を着ない」。
- さながら - 現代の「そのまま」という意味の副詞。
二
編集- 本文/現代語訳
見れば、すでにわが家に移りて、煙(けぶり)・炎くゆりけるまで、おほかた(オオカタ)、向かひのつらに立ちてながめければ、 「あさましきこと。」 とて、人ども来とぶらひけれど、騒がず。 「いかに。」 と人言ひければ、向かひに立ちて、家の焼くるを見て、うちうなづきて、ときどき笑ひけり。 「あはれ、しつる せうとくかな。年ごろはわろくかきけるものかな。」 と言ふ時に、とぶらひに来たる者ども、 「こはいかに、かくては立ちたまへるぞ。あさましきことかな。物(もの)のつきたまへるか。」 と言ひければ、 「なんでふ物(もの)のつくべきぞ。年ごろ不動尊の火炎(くわえん)を悪しく(あしく)かきけるなり。今見れば、かうこそ燃えけれと、心得(こころう)つるなり。これこそせうとくよ。この道を立てて世にあらんには、仏だによくかきたてまつらば、百千の家もいできなん。わ党(たう)たちこそ、させる能もおはせねば、物(もの)をも惜しみたまへ。」 と言ひて、あざ笑ひてこそ立てりけれ。そののちにや、良秀がよぢり不動とて、今に人々、めで合へり。 |
見ると、炎は既に自分の家に燃え移って、煙や炎がくすぶり出したころまで、(良秀は)向かいに立って眺めていたので、(周囲の人が)「大変なことでしたね」と見舞い(みまい)に来たが、(まったく良秀は)騒がない。 (周囲の人が)「どうしたのですか」と(良秀に)尋ねたところ、(良秀は)向かいに立って、家の焼けるのを見て、うなずいて、ときどき笑った。(良秀は)「ああ、得が大きいなあ。長年にわたって、不動尊の炎を下手に描いていたなあ。」と言い、見舞いに来た者どもは(言い)「これは一体、なんで、このように(平然と笑ったりして)立っているのか。あきれたものだなあ。霊の類でも、(良秀に)取りついたのか」と言うと、 (良秀は答えて)「どうして霊が取り付いていようか。(笑っていた理由は、取りつかれているのではなく、)長年、不動尊の火炎を下手に描いていた、それが今見た火事の炎によって、炎はこういうふうに燃えるのかという事が(私は)理解できたのだ。これこそ、もうけものだ。(たとえ家が燃えようが、才能さえあれば、金を稼げる。) この絵仏師の道を専門に世に生きていくには、仏様さえ上手にお描き申し上げれば、たとえ百軒や千軒の家ですら、(金儲けをして)建てられる。 (いっぽう、)あなたたちは、(あまり)これといった才能が無いから、物を惜しんで大切にするのでしょう。」 ( ← 皮肉 )( あなたたち才能の無い人々は、せいぜい物でも惜しんで大切にしてください。) と言って、(人々を)あざ笑って立っていた。 その後(のち)の事であろうか、(良秀の絵は、)良秀の よじり不動 といわれて、今でも人々が、ほめ合っている。 |
- 語句
- あさまし - 大変なこと。
- 来とぶらひけれど - 見舞いに来たが。複合動詞で、 動詞「来」(く) + 動詞「とぶらふ」。 古語「とぶらふ」には、現代の「見舞う」の意味がある。「とぶらふ」には「訪問する」などの意味もあるが、文脈から「見舞う」と判断した。
- 年ごろ - 長年。 ※ 現代語とは違い、「適齢期」の意味は無い。
- しつる せうとくかな - 「せうとく」は所得の意。「しつる」は「した」の意。「せうとく しつるかな」の転置。
- 物 - 悪霊などの霊や、魔物など。物の怪(もののけ)。
- なんでふ- 反語表現。どうして・・・か(、いや、・・・ではない)。「なにといふ」が変化した形。
- 不動尊 - 不動明王(ふどうみょうおう)。不動明王の絵は、背後に炎を負った形で描かれる。
- 悪しく(あしく) - わるく。ここでは「下手に」の意味。
- 心得(こころう) - 理解する。
- わ党たち - おまえたち。
- めで合へり - 複合動詞で、動詞「めづ」 + 動詞「合へり」(あえり)。「めで」は「めづ」の連用形。「めづ」の意味は、ここでは「賞賛する」・「褒める」などの意味。
- 備考
後の時代だが、この作品が、近代の芥川龍之介の作品「地獄変」の題材にもなっている。
品詞分解
編集これ(代名詞) も(格助詞) 今 は(係り助詞) 昔、 絵仏師 良秀 と(格助) いふ(動詞・四段・連用) あり(動詞・ラ変・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 家 の(格助) 隣 より(格助) 火 出で来(動詞・カ変・連用) て(接続助詞)、 風 おしおほひ(動詞・四段・連用) て(接助) せめ(動詞・下二段・連用) けれ(助動詞・過去・已然) ば(接助)、 逃げいで(動詞・下二段・連用) て(接助) 大路 へ(格助) 出で(動詞・下二段・連用) に(助動詞・完了・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 人 の(格助) 描か(動詞・四段・未然) する(助動詞・使役・連体) 仏 も(係助) おはし(サ変・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 また(接続詞)、 衣 着(動詞・上一段・未然) ぬ(助動詞・打消・連体) 妻子 など(副助詞) も(係助)、 さながら(副詞) 内 に(格助) あり(ラ変・連用) けり(助動詞・過去・終止)。 それ(代名詞) も(格助) 知ら(四段・未然) ず(助動詞・打消・連用) 、 ただ(副詞) 逃げ出で(下二段・連用) たる(助動詞・完了・連体) を(格助) こと に(格助) し(サ変・用) て(接助)、 向かひ の(格助) つら に(格助) 立て(四段・已然) り(助動詞・完了・終止)。
見れ ば(接助)、 すでに(副詞) わ(代名詞) が(格助詞) 家 に(格助) 移り て(接助)、 煙(けぶり)・炎 くゆり ける まで(副助詞)、 おほかた(副詞)、 向かひ の(格助) つら に(格助) 立ち て(接助) ながめ けれ ば(接助)、
「あさましき(形容詞・シク・連体) こと。」
と(格助) て(接助)、 人ども 来とぶらひ けれ(助動詞・過去・已然) ど(接助)、 騒が(四段・未然) ず(助動詞・打消・終止)。
「いかに(副詞)。」
と(格助) 人 言ひ(四段・連用) けれ(助動詞・過去・已然) ば(接助)、 向かひ に(格助) 立ち(四段・連用) て(接助)、 家 の(格助) 焼くる(下二段・連体) を(格助) 見 て(接助) 、 うちうなづき て(接助)、 ときどき(副詞) 笑ひ(四段・連用) けり(助動詞・過去・終止)。
「あはれ(感嘆詞)、 し(サ変・連用) つる(助動詞・完了・連体) せうとく かな(終助詞)。 年ごろ は(係助) わろく(ク活用・連用) 書き(四段・連用) ける(助動詞・詠嘆・連体) もの かな(終助詞)。」
と(格助) 言ふ(四段・連体) 時 に(格助)、 とぶらひ に(格助) 来(カ変・連用) たる(助動詞・完了・連体) 者ども、
「こ(代名詞) は(係助) いかに(副詞)、 かくて(副詞) は(係り助詞) 立ち たまへ(補助動詞・尊敬・四段・已然/命令) る(助動詞・存続・連体) ぞ(係り助詞)。 あさましき こと かな(終助詞)。 物(もの) の つき たまへ(補助動詞・尊敬・四段・已然/命令) る(助動詞・完了・連体) か(係助)。」
と(格助) 言ひ(四段・連用) けれ(助動詞・過去・已然) ば(接助)、
「なんでふ(副詞) 物 の(格助) つく べき(助動詞・当然・連体) ぞ(係助)。 年ごろ 不動尊 の(格助) 火炎 を(格助) 悪しく かきける なり。 今 見れ ば(接助)、 かう(副詞) こそ(係り助詞、係り) 燃え けれ(助動詞・過去・已然・結び) と(格助)、 心得 つる(助動詞・完了・連体) なり(助動詞・断定・終止)。 これ こそ(係り助詞) せうとく よ(終助詞)。 こ(代名詞) の(格助) 道 を(格助) 立て(下二段・連用) て(接助) 世 に(格助) あら(ラ変・未然) む(助動詞・仮定・連体) に(格助) は(係助)、 仏 だに(副詞) よく(ク活用・連用) 書き(四段・連用) たてまつら(補助動詞・尊敬・四段・未然) ば(接助)、 百千 の(格助) 家 も(係助) 出で来(カ変・連用) な(助動詞「ぬ」・強意・未然) む(助動詞・推量・終止)。 わ党たち こそ(係り助詞、係り)、 させる(連体詞) 能 も(係り助詞) おはせ(サ変・未然) ね(助動詞・打消・已然) ば(接助)、 物 を(格助) も(係り助詞) 惜しみ(四段・連用) たまへ(補助動詞・尊敬・四段・已然結び)。」
と(格助詞) 言ひ(四段・連用) て(接助)、 あざ笑ひ(四段・連用) て(接助) こそ(係り助詞、係り) 立て(四段・已然) り(助動詞・存続・連用) けれ(助動詞・過去・已然・結び)。 そ(代名詞) の(格助) のち に(助動詞・断定・連用) や(係り助詞)、 良秀 が(格助) よぢり不動 と(格助) て(接助)、 今に(副詞) 人々、 めで合へ(四段・已然/命令) り(助動詞・存続・終止)。
『宇治拾遺物語』について
編集鎌倉時代初期に成立した説話集。編者は不明。輪数は約二百話からなる。(百九十七話) 仏教に関した話が多い。
第二グループ
編集空を飛ぶ倉
編集