『源氏物語』 作者:紫式部

光源氏(ひかるげんじ)の誕生

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  • 本文/現代語訳

いづれの御時(おほんとき、オオントキ)にか、女御(にようご、ニョウゴ)、更衣(かうい、コウイ)あまた候ひ(さぶらひ、サブライ)給ひ(タマイ)けるなかに、いとやむごとなき際(きは、キワ)にはあらぬが、すぐれて時めき(ときめき)給ふ(タマウ)ありけり

どの帝の御代(みよ)であっただろうか、女御(にょうご)や更衣(こうい)がたくさんお仕え申し上げていた中に、それほど高貴な身分ではないが、格別に帝のご寵愛(ちょうあい)を受けておられる方があった。


  • 語句(重要)
・いづれの御時(おおんとき)にか - どの帝の御代(みよ)であったか。
・女御、更衣 - 両方とも天皇の夫人である身分。皇后・中宮の地位に次いで女御があり、女御に次いで更衣がある。
あまた - たくさん。数多く。
・やむごとなし - 身分が高い。並々でない。
・際(きわ) - 身分。
・時めき - この語を女性に使う場合、「寵愛を受ける」の意味。現代語での「寵愛」の読みは「ちょうあい」。古語一般には「時めく」の意味は「時流に乗る」の意味。
・ - 。

作者・作品解説

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  • 源氏物語

物語。作者は紫式部。平安時代の作品。五十四帖(じょう)からなる。

  • 紫式部

藤原為時(ためとき)の娘。生没年未詳。 ( 九七○年? ~ 一○一九年? ) 宮仕え先は中宮彰子(ちゅうぐう しょうし)に仕え、女房として仕えた。中宮彰子は、一条(いちじょう)天皇の中宮である。


『源氏物語』の大まかな内容

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恋物語。光源氏が女ったらしな男性貴族なので、いろんな女との恋愛をする。光源氏はモテるという設定である。容姿は素晴らしいという設定である。そもそも呼び名の「光源氏」の「光」が、その美貌を元に付けられた呼び名である。よって「光」は、べつに本名ではない。光源氏は、教養も知性も高いという設定である。

作中には、ほぼ、まったく政治や行政などの実務的な話は出ず、ほとんどが恋愛に関する内容である。

  • 予備知識

『源氏物語』の主人公は光源氏(ひかるげんじ)という男である。冒頭の章の内容は、光源氏が生まれる前の話で、母親を紹介する話である。父親は帝で桐壺帝(きりつぼてい)である。光源氏の母親は「桐壺の更衣」(きりつぼのこうい)などと呼ばれる。

光源氏は、天皇の子である。よって、光源氏の身分は、地位のそこそこ高い貴族である。

作中の時代背景は、はっきりとは書いていないが、おおむね平安時代のような記述である。そもそも『源氏物語』は平安時代に書かれた作品である。

  • 注意事項
・鎌倉幕府や平家物語などでの武士の「源氏」とは、光源氏は無関係である。

品詞分解

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いづれ(代名詞) の(格助詞) 御時(名詞) に(助動詞・断定・用意) か(係助詞)、女御(名詞)、更衣(名詞) あまた(副詞) 候ひ(動詞・四段・連用) 給ひ(補助動詞・四段・連用) ける(助動詞・過去・連体) なか(名詞) に(格助詞)、いと(副詞) やむごとなき(形容詞・ク・連体) 際(名詞) に(助動詞・断定・用) は(係助詞) あら(補動・ラ変・未) ぬ(助動詞・打消・体) が(格助詞)、 すぐれて(副詞) 時めき(動詞・四・用) 給ふ(補動・四・体) あり(動・ラ変・用) けり(助動詞・過去・終止)。