高等学校地学/地学/地球の内部

地球の内部構造 編集

地球内部の層構造 編集

 
走時曲線 と モホ面 との関係。

地震波の観測によって、地球内部での地震波の伝わる速度が分かる。地震波の速度の解析から、地下の深さ30km〜60kmあたりで、地震波の速度が急激に変化する深さがあることが発見された。これは、地殻とマントルとの境界である。この境界面をモホロビチッチ不連続面モホ面)(英:Mohorovičić discontinuity)という。モホ面より上が地殻(ちかく、crust)である。モホ面より下をマントル(mantle)としている。

地震波が観測地点に到達するまでの時間を走時(そうじ)という。 横軸に震央からの距離を取り、縦軸に走時を取ってグラフにしたものを走時曲線(そうじきょくせん)という。

地殻の厚さは、大陸の地殻と海洋下の地殻とでは、厚さが大きく違う。 一般に大陸地殻は厚さ 30km〜60km であり、海洋地殻は厚さ 5km〜10km である。

地球の半径は 約6400km であるので、地球半径と比べると、地殻は、とてもうすい。

大陸下の地殻を大陸地殻(たいりく ちかく、continental crust)という。海洋下の地殻を海洋地殻(かいよう ちかく、oceanic crust)という。

大陸地殻の上部は花こう岩質であり、大陸地殻の下部は、玄武岩(げんぶがん)質である。この上部地殻と下部地殻の境界をコンラッド不連続面という。

海洋地殻は、ほとんど玄武岩質である。

アイソスタシー 編集

 
2次元モデルで示したアイソスタシーの説明図。比重の大きいマントルの上に、比重の小さい地殻が浮かんでいる。
1: 山岳、2: 高地、3: 普通の大陸、4: 大洋底、5: 海洋面、6: 地殻、7: マントル

水には、木などの密度の低い物質が浮かぶ。さて、マントルの密度と比べて、地殻の密度は小さい。よって地殻はマントルの上に浮かぶような浮力を受けていると見なせる。たとえば、海中に氷山が浮かぶようなものである。

さてマントルに浮かぶ地殻について、ある地点の付近での、地殻が安定するためには、力学的に直感的に考えれば、標高の高い地殻は、そのぶん浮力も多く必要なので、地下深くにまで地殻が続いている必要がある。

このような地殻とマントルの、浮力と重力の釣り合いを、アイソスタシー(isostacy)という。

ある一定深さでは、その地点付近では、ある面にかかる圧力は同じである。

このように地殻が地下まで続いているため、ブーゲー異常については、山などの高い地形がある場所では、アイソスタシーによって地下に密度の低い地殻があるため、山の付近ではブーゲー異常が負になるのが一般である。


シャドーゾーン 編集

 
地震のシャドーゾーン

走時曲線を分析してみると、震央距離を地球中心からの角度で表した場合(これを角距離(かくきょり)という)、角103°から 先の領域にはS波が伝わらない。この領域を「S波のシャドーゾーン」と言う。また震央距離の角103°から角143°にあたる地域はP波が直接伝わらない。これを「P波のシャドーゾーン」という。結局、角距離103°〜143°にあたる地域ではP波もS波も伝わらない。このような、地震波の伝わらない地域をシャドーゾーンという。シャドーゾーンのできる理由は、深さ2900kmのあたりで地下の構成物質が変わるため、P波の速度が急に遅くなり、よって物理でいう「波の屈折の法則」により、地震波が地表の方向へと屈折するためである。


 


 
地球の内部構造

この深さ2900kmあたりから、地球内部に向けて存在している物質を(かく、英:core コア)という。 マントルと核の境界をグーテンベルク不連続面という。核の存在は、グーテンベルクによって、1926年に発見された。

復習として、モホロビッチ不連続面は地殻とマントルとの不連続面であることを指摘しておく。

核は、さらに内核と外核に分けられる。これは、P波の速さが5100kmに相当する場所で不連続になるからである。なお、この5100kmにある不連続面をレーマン不連続面という。

また、外核はS波が伝わらないことから、外核は液体であると考えられている。内核は、P波が速くなることから、固体であると考えられている。

S波は横波であるので、固体にしか伝わることができない。(水面などの表面波は、横波ではなく、べつの機構の波である。) P波は、固体・液体・気体中を伝わる。固い物質ほど、地震波が速く伝わる。

マグマオーシャンから分離した鉄が地球中心部に核を形成したが,時代を経るにつれて冷え,鉄が固体となって中心部に沈み,内核を形成した。


地球内部の状態と物質 編集

(※ 範囲外 :)地球の内部には不明な事も多い。

かつて、地球の内部の色は、火山マグマなどの色から類推して、基本的には赤色、高温で光を放ってもせいぜい白色かと思われていた時代もあった。図鑑などでも、赤く描かれた地球中心部の絵などをよく見かけるだろう。

しかし最近では、その赤色説は根拠不十分として、異論や反論も出されている。

地球内部の色は、箇所にもよるが、深さによっては、もしかしたら緑色の部分もあるかもしれない、という説も近年には出されているMacro Scope『地球の内部は、キラキラ光る“宝石”だ!』Text=入倉由理子、インタビュー対象・マントル岩石学者 阿部なつ江、 『マントルは何色ですか?』、ベストアンサー 2012/04/01 22:37:58

かんらん岩は基本的に緑色であるのだが、上部マントルの主成分がかんらん岩なのだから、「もしかしたら深さによっては地球内部は緑色なのでは?」というのが、緑色説の基本的な考えである。なお、数千度もの高温になると物体は光を放ち、その温度によっても色は変わるので、実際の色はもっと複雑であるという可能性もある。

このように、地球の内部の状態や成分については、実は現代科学でも不明な部分は多い。教材によっては「地球の内部は○○だ」と断言している場合もあるが、しかし断言されている内容はあくまで仮説でしかない。

現代の科学で確実に分かっているのは、採掘が可能な地表付近の部分だけでしかない。それよりも深い部分は、科学者たちの仮説という想像の産物でしかない。

たとえば、地球以外の太陽や金星・火星などの研究成果を活用して地球の内部を想像しようにも、「そもそも太陽(または火星や金星)の学説をそのまま地球に当てはめていいのか?」といった事すらも、証明が不可能または困難な状態である。そしてその太陽や火星や金星の構造すらも、ほとんどは仮説でしかない。

地球外の天体で解明されているのは、地球から天体望遠鏡などで観測できる部分と、火星や金星ならNASAなどの探査機で具体的に降り立つなどして成分採取したりした部分しか、人類は解明できていない。

どんなに偉い肩書きの立派な学者が「火星は○○です」など断言しようにも、実際に人類が実験や観測や採取などを具体的かつ直接的に対象物に行って証明された事以外は、科学においては本来は仮説でしかない。たとえ、間接的な実験によって多く補強されていて「いかにもありそうな仮説」であっても、あるいは数学や物理学などの先端の数式を駆使して裏づけされた仮説でも、直接的な実験や観測や採取をともなわないかぎりは「よくできた仮説」でしかない(残念ながら小中高レベルの地球科学や天文学などでは、ときどき、この原則がうやむやになりやすいが。大学教養の地球科学ですら、あまりこの原則は守られていない)。

高校生としては、「地球の内部は○○だ」と単に暗記するのではなく、上述のように「なぜ○○だと判断できるのか?」と科学的に根拠をもって考えるようにしたい。なぜなら、そうしないと(学説の根拠を把握するようにしないと)、もしも定説が変わったときに、今までの暗記が無意味になる。なにより、自然の科学的真実を追及するのではなく科学出版物の流行を追及してしまうのは、本末転倒であろう。