高等学校工業 化学工学/単位換算
化学工業においては、物理量の単位系については、原則的に国際単位系(SI単位)が使われます。
かつては、国や業界ごとに異なる単位が存在し、換算の手間がかかるなど不便な面がありました。
そこで単位を統一する必要性が生じました。現在は、可能な限りSI単位系を採用する傾向があります。
日本では、1951年に制定された計量法(旧計量法)によって、1959年に尺貫法は廃止となり、1966年には国際単位系に統一されました。
SI基本単位
編集国際単位系では7つの基本単位と、それ以外の単位は基本単位を組み合わせた組立単位としている[1]。
SI単位系で基礎とする単位は、長さの単位にはメートル法を基礎として、質量の単位はキログラムを基礎とする。時間の単位は秒を基礎とする。温度はケルビン温度を基礎とする。
7つの基本単位をまとめると、 基本単位は時間 (s)、長さ (m)、質量 (kg)、電流 (A)、熱力学温度 (K)、物質量 (mol)、光度 (cd) である。
- SI では、7つの定義定数は次のように定義される。
これらは、定義値であり不確かさを含まない。
表1:SI基本単位 量 基本単位 定義[2] 名称 記号 時間 秒 s セシウム133原子の基底状態の2つの超微細構造準位間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍に等しい時間 長さ メートル m 真空中で1秒間の299792458 メートル毎秒の1の時間に光が進む行程の長さ 質量 キログラム kg 国際キログラム原器(プラチナ90%、イリジウム10%からなる合金で直径・高さともに39mmの円柱の質量
プランク定数を6.62607015×10−34 ジュール秒とすることによって定まる質量電流 アンペア A 無限に長く、無限に小さい円形断面積を持つ2本の直線状導体を真空中に1メートルの間隔で平行においたとき、導体の長さ1メートルにつき2×10-7ニュートンの力を及ぼしあう導体のそれぞれに流れる電流の大きさ
電気素量を1.602176634×10−19 クーロンとすることによって定まる電流熱力学温度 ケルビン K 水の三重点の熱力学温度の1/273.16。
ボルツマン定数を1.380649×10−23 ジュール毎ケルビンとすることによって定まる温度。温度間隔も同じ単位物質量 モル mol 0.012kgの炭素|炭素12に含まれる原子と等しい数の構成要素を含む系の物質量。
モルを使うときは、構成要素 (entités élémentaires) が指定されなければならないが、それは原子、分子、イオン、電子、その他の粒子またはこの種の粒子の特定の集合体であってよい
6.02214076×1023(アボガドロ数)の要素粒子で構成された系の物質量光度 カンデラ cd 周波数 540×1012ヘルツの単色放射を放出し、所定方向の放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源のその方向における光度 2019年に定義が変更され、教科書によっては変更が反映されていないので、 旧定義・新定義を併記した。「w:SI基本単位の再定義 (2019年)」を参照
組立単位
編集SI組立単位、およびその他のSI組立単位を列挙する。世の中に存在する量は限りなくあり、全てを挙げることは不可能であるので、その一例を挙げる。
表2 基本単位を用いて表される一貫性のあるSI組立単位の例
編集表2:基本単位を用いて表される 一貫性のあるSI組立単位の例 組立量(誘導量) 名称 記号 面積 平方メートル m2 体積 立方メートル m3 速さ・速度 メートル毎秒 m/s 加速度 メートル毎秒毎秒 m/s2 密度(質量密度) キログラム毎立方メートル kg/m3 面密度 キログラム毎平方メートル kg/m2 電流密度 アンペア毎平方メートル A·m-2 磁界の強さ アンペア毎メートル A/m モル濃度 モル毎立方メートル mol/m3
表3 固有の名称と記号で表される一貫性のあるSI組立単位
編集いくつかのSI組立単位には、利便性の観点から固有の名称と記号が与えられている。固有の名称を持つSI組立単位は、下記に示す22個である。下方の4つの単位は、健康保護の観点から特別に固有の名称を与えられたものである。
表3:固有の名称と記号で表される一貫性のあるSI組立単位 組立量 名称 記号 他のSI単位
による表し方SI基本単位
による表し方平面角 ラジアン (radian) rad 1 m/m 立体角 ステラジアン (steradian) sr 1 m2/m2 周波数 ヘルツ (hertz) Hz s-1 力 ニュートン (newton) N m·kg·s-2 圧力・応力 パスカル (pascal) Pa N/m2 m-1·kg·s-2 エネルギー・仕事・熱量 ジュール (joule) J N·m m2·kg·s-2 仕事率 ワット (watt) W J/s m2·kg·s-3 電荷・電気量 クーロン (coulomb) C s·A 電位差 (電圧)・起電力 ボルト (volt) V W/A m2·kg·s-3·A-1 電気容量 ファラド (farad) F C/V m-2·kg-1·s4·A2 電気抵抗 オーム (ohm) Ω V/A m2·kg·s-3·A-2 磁束 ウェーバ (weber) Wb V·s m2·kg·s-2·A-1 セルシウス温度 セルシウス度 ℃ K 光束 ルーメン (lumen) lm cd·sr cd·m2/m2 = cd
表4 単位の中に固有の名称と記号を含む一貫性のあるSI組立単位の例
編集固有の名称を持つSI組立単位は、SI基本単位や他のSI組立単位と組み合わせて他の組立量を表すために用いることができる。
表4:単位の中に固有の名称と記号を含む一貫性のあるSI組立単位の例 組立量 名称 記号 SI基本単位
による表し方粘度 パスカル秒 Pa·s m-1·kg·s-1 力のモーメント ニュートンメートル N·m m2·kg·s-2 表面張力 ニュートン毎メートル N/m kg·s-2 角速度 ラジアン毎秒 rad/s m·m-1·s-1 = s-1 角加速度 ラジアン毎秒毎秒 rad/s2 m·m-1·s-2 = s-2 熱流束 ワット毎平方メートル W/m2 kg·s-3 熱容量 ジュール毎ケルビン J/K m2·kg·s-2·K-1 比熱容量 ジュール毎キログラム毎ケルビン J/(kg·K) m2·s-2·K-1 熱伝導率 ワット毎メートル毎ケルビン W/(m·K) m·kg·s-3·K-1
脚註
編集- ^ 2019年の定義改定以前は、SIを定義するために基本単位と組立単位という概念が使われていた。この2つの分類区分は、定義定数に基づく現在のSIにおいて必須でなくなったが、その利便性が高く広く普及していることから、引続き保持される。
- ^ “Table 1: The seven base units of the SI” (英語). A concise summary of the International System of Units, SI. p. 2. 2022年8月4日閲覧。