高等学校工業 原動機/送風機と圧縮機

気体を吸込み、吸込んだ気体を圧力を上昇させて、吐出し口から吐出す機械が、送風機および圧縮機である。 送風機と圧縮機の違いは、圧力の上昇値の違いで分類される。送風機と圧縮機の境目は、100kPaの圧力上昇が境目である。100kPa以下の圧力上昇値のものを送風機と言う。100kPa以上の圧力上昇値のものを圧縮機(compressor)という。送風機の中で、圧力上昇が10kPa以下のものをファン(fan)と言い、圧力上昇が10kPa~100kPaのものをブロワ(blower)という。つまり、まとめると、以下のようになる。

  • 送風機:圧力上昇が100kPa以下
  • ファン:圧力上昇が10kPa以下
  • ブロワ:圧力上昇が10kPa~100kPa以下
  • 圧縮機:圧力上昇が100kPa以上

送風機、圧縮機ともにターボ型と容積型がある。


羽根の向きの分類 編集

羽根が取り付いた状態のときに、羽根の向きを羽根の内側から外側へと見たときの向きが、回転方向と同じ方向を向くのを、前向き羽根という。羽根が半径方向を向いているのを、径向き羽根という。羽根の向きが、内側から外側へと見たときに、回転方向と反対向きになる羽根を後ろ向き羽根という。


軸流式 編集

軸流送風機 編集

 
大型軸流送風機

軸流送風機(axial fan)とは、吸い込みは軸方向に吸込み、吐き出しは軸方向に吐出す送風機である。原理や構造は軸流ポンプと類似している。羽根車の形状は、プロペラファンなどが多い。 低圧で大容量である。 小型のものは、家庭用の台所や居間などにある換気扇などで用いられることが多い。 冷房で用いられることのある、扇風機で見かけることの多いプロペラ式の扇風機は、たいていは軸流式送風機の一種である。

軸流圧縮機 編集

 
多段軸流圧縮機の原理図.
 
ジェットエンジンでの軸流式圧縮機

軸流圧縮機(axial compresser)は、多段にすることで圧縮性能を高めている。多段化する場合は、原理的には、軸方向に羽根車を増設すれば済むので、多段化がしやすい。 動翼と静翼が、交互に配置している。静翼の羽根の向きは、動翼とは反対向きである。固定翼の逆向きの羽根の目的は、動翼による気体の速度を圧力へと変換する目的と、動翼による流れの旋回を軸方向へと整流する目的である。 出口に近づくほど羽根を太くするなどして、流路を狭めていく事によって、圧縮性能を高めている。 ガスタービン、ジェットエンジンなどの分野に多様されている。

遠心式 編集

遠心型送風機 編集

 
遠心型送風機
  • 多翼送風機(multiblade fan)あるいはシロッコファン(sirocco fan)

羽根は、軸方向に長く半径方向に短い羽根を多数、備え付けている。この羽根は前向き羽根である。 低圧で大風量である。

  • ラジアルファン

ラジアル型では、羽根が半径方向に向いた径向き羽根であり、平板の羽根が、軸中心から放射上に付いている。

  • ターボファン

後ろ向き羽根の送風機のこと。 効率が良い。


容積式 編集

回転式 編集

 
二葉ブロワ型コンプレッサー
 
ベーン圧縮機の原理


  • 二葉ブロワ

二葉ブロワ(two lobe blower)は、ケーシング内に、まゆ形の2個の回転子が取り付けられている。回転子が回ることで、密閉空間が移り行くので、それを利用して、気体を吐出す方式である。 ルーツブロワ(roots blower)とも呼ばれる。 ケーシングと各ロータとの間には隙間が設けてあり、ロータ同士の間にも隙間がある。このため、羽根の磨耗防止のための潤滑油が不要になる。(軸受の潤滑など、他の用途の潤滑は必要。)用途は、油による汚染を嫌う用途で用いられることが多い。

  • ベーン圧縮機

ベーン圧縮機(vane compressor)は、ベーンポンプと類似の原理の圧縮機である。一般にロータがケーシング内に偏心して置かれており、ロータにはベーン羽根を納めるための溝が多く、つけられており、スプリングによりベーンがケーシングへと押し付けられて密閉を行い。ロータの回転とともにベーンも回転して、気体を吐出し口へと圧送する圧縮機である。ベーンとケーシングが接触する摺動面には、潤滑油による潤滑が必要である。

 
ねじ圧縮機のツインスクリュー
  • ねじ圧縮機

ねじ圧縮機(screw compressor)は1対をなす、2個のロータがある。ロータの向きは同じ向きである。それぞれ雄ロータと雌ロータと呼ばれる。2個のロータが、歯間に気体をはさみ、回転とともに、吐出し口へと圧送する。 給油式のものと、無給油式のものがある。給油式は、2個のロータが接触し、油で潤滑および密封をさせる方式のものである。圧縮性能は、給油式のほうが高い。


往復圧縮機 編集

  • レシプロ圧縮機
 
レシプロ圧縮機の原理

原理は、ピストン式の容積ポンプと類似している。シリンダ内を往復するピストンによって、直接、圧縮をするので、さまざまな気体が圧縮できる。また、圧縮比を高く、とれる。圧縮された気体は、吐き出し弁を通って吐出される。 冷凍機用の圧縮機として、用いられることがある。


運転 編集

低流量のときにおこりやすい振動現象のサージングは、圧縮機や送風機でも同様に発生するので注意が必要である。 起動時や停止時の弁の状態についても、注意が必要である。詳しくは、各製品の製品カタログや、作業手順書などで確認のこと。