高等学校工業 土木施工/コンクリート材料
コンクリート材料
編集コンクリート(concrete)は、セメントに、砂利、砂、水をくわえて、固めた物である。
なお、コンクリート材料にふくまれる砂利のうち、5mm以下の砂利を細骨材(さいこつざい)といい、5mm以上の砂利を粗骨材(そこつざい)という。5mmふるい をつかって、細骨材と粗骨材とを区別する。(※ 詳しくは、のちの節で説明する。)
また、必要に応じて、固化のぐあいを調節したり、コンクリートの性能を向上させるなどの目的で、あらかじめ混和材料(こんわ ざいりょう)が、コンクリート施設のさいのセメントの練り混ぜのさいに加えられている。
まとめると、
- コンクリートとは、セメントに、細骨材、粗骨材、必要に応じて混和剤を材料として、水を加えて固めたものである。
セメント
編集建築用のセメント(cement)は、原料に、石灰石、粘土、鉄、セッコウなどを含んでいる。セメント製造のとき、これらの原料のまざった粉末と砂利がまざったものが高熱で処理され、酸化カルシウム CaO などをふくむ粉末と砂利のまざった物になる。この、製造時に高熱で処理する工程を焼成(しょうせい)という。
- ※ セメントは粉末だけでなく、砂利もまざってる事に注目しよう。
このように焼成されて、セメントになる。
セメントの主成分とその成分比(質量比)は、普通ポルトランドセントの場合、酸化カルシウム CaO が成分中で約60%(質量比)ともっとも多く、つづいて二酸化ケイ素 SiO2 が約20%、酸化アルミニウム Al2O3 が6〜8%ていど、酸化鉄 Fe2O3 などである。
焼成によって、ケイ酸3カルシウム(3CaO・SiO2)や、ケイ酸2カルシウム(2CaO・SiO2)、アルミン酸3カルシウム(3CaO・Al2O3)、鉄アルミン酸4カルシウム(4CaO・Al2O3・Fe2O3) などの化合物が発生する。
ケイ酸3カルシウム (3CaO・SiO2) |
ケイ酸2カルシウム (2CaO・SiO2) |
アルミン酸3カルシウム (3CaO・Al2O3) |
鉄アルミン酸4カルシウム (4CaO・Al2O3・Fe2O3) | |
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普通ポルトランドセメント | 53 | 23 | 8 | 10 |
早強ポルトランドセメント | 67 | 9 | 8 | 8 |
中庸熱ポルトランドセメント | 48 | 30 | 5 | 11 |
耐硫酸塩ポルトランドセメント | 57 | 23 | 2 | 13 |
- ※ 上表の数値は、実教出版『土木施行』(検定教科書)より引用。セメント協会「セメントの常識」からの孫引き。
ポルトランドセメントには、普通ポルトランドセメントの他にも、早強ポルトランドセメントや超早強ポルトランドセメントなど、いろいろと種類がある。
JIS R 5210 などにポルトランドセメントの種類が定められている。
なお「ポルトランド」とは、イギリスのポートランド島が由来である。ポートランド島から産出した石灰岩と、セメント硬化後の色が似ていたので、ポルトランドセメントという名前がついた。
セメントは、水をくわえると、発熱しながら、やがて硬化する。このセメントと水との化学反応を水和作用(すいわ さよう、hydration)あるいは水和反応(すいわ はんのう)という。
※ 実教出版の高校教科書『土木施行』では「水和作用」という用語が使用されてる。オーム社『大学土木 土木材料』では「水和反応」という用語が使用されてる。
そして、水を加えられたセメントは、水和しながら発熱し、しだいに固まっていく。このように、水を加えられたセメントが、水和して発熱して固まっていく反応を凝結(ぎょうけつ、set)という。
また、このような凝結反応によりセメントが硬くなること、または硬くなったことを、セメント(またはコンクリート)の硬化(こうか)という。
早強ポルトランドセメントや超早強ポルトランドセメントは、工期を短縮したい場合に使われる場合がある。他の場合として、寒中工事でも早強ポルトランドセメントが用いられる。
なお、早強ポルトランドセメントや超早強ポルトランドセメントは、水和熱が大きい。
中庸熱ポルトランドセメント(ちゅうようねつ ポルトランドセメント)とは、水和熱をおさえた配合のポルトランドセメントであり、ダムなどの大型建造物に用いられる。
低熱ポルトランドセメントは、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに水和熱が低い。
耐硫酸塩ポルトランドセメントとは、地域によっては土壌に硫酸塩が含まれたりしているので、硫酸塩への抵抗性の高い配合になっているポルトランドセメントである。
骨材
編集骨材の分類
編集細骨材(さいこつざい、fine aggregate)とは、10mmふるいを全部とおり、5mmふるいを質量比で85%以上、通過する骨材のこと。
粗骨材(そこつざい、coarse aggregate)とは、質量比で85%以上とどまる骨材のこと。
※ 5mmふるいを基準として考えよう。
骨材としては、川砂利が良質であることが古くから知られているが、近年は産出量が減少してきてるので、かわりに山や海からの砂を利用する場合も多い。
なお、海砂(うみずな)を使う場合、塩害に注意する必要がある。
骨材の含水状態
編集
骨材は、その含水の状態によって、上図「骨材の含水状態」のように分類される。
一般に、セメントの配合を計算するために骨材の密度を考える場合には、骨材の密度には表面乾燥状態(saturated surface dry condition)の密度が用いられる。
表面乾燥状体とは、骨材の表面には水がなく、骨材の内部の空洞は水で飽水している状態である。
一般にコンクリート骨材の密度は、細骨材も粗骨材も、おおよそ 2.50×103 〜2.70×103 kg/m3 の密度である。
絶対乾燥状態とは、骨材に、表面に水はなく、内部に空隙にも水がない、いっさい水がない状態の骨材の状態のことである。現実には、100℃〜110℃の炉で24時間ていど乾燥させた状態の骨材を、絶対乾燥状態としている(※ 参考文献: オーム社『大学土木 土木材料』、町田篤彦 編、)。
さて、つぎに吸水率(きゅうすいりつ)を定義する。
まず、上図のように、吸水量は、表面乾燥質量から絶対乾燥質量を引いた値である。
つまり、
- 吸水量 = 表面乾燥質量 ー 絶対乾燥質量
である。
そして、絶対乾燥状態から表面飽和水状態になるまでの吸水量を、絶対乾燥状態の密度で除算した量をパーセントであらわしたのを吸水率という。
つまり
- 吸水率 = {(表面乾燥質量 ー 絶対乾燥質量)/ 絶対乾燥質量 } × 100
である。
一般に、吸水率は、骨材密度と反比例する。つまり、密度の大きな骨材は、ふつう、吸水率が小さい。
一般に細骨材の吸水率は1〜5%のていどである。
- (※ 編集者へ: チャップマンフラスコについて記述してください。)
混和材料
編集混和材料(こんわ ざいりょう)とは、セメント、水、骨材の他で、打ち込みの前のコンクリート配合や練り混ぜの際などに、必要に応じて、固化のスピードや固化のぐあいを調節するなどの目的で、加えられる材料である。
混和材料のうち、薬品的に少量添加されるだけのものを混和剤(こんわざい)という。いっぽう、混和材料のうち、追加量の大きいものを混和材(こんわざい)といい、混和剤とは区別する。
コンクリートの配合における容積計算のさい、混和剤の容積は、その使用料が少ないため、無視される。 いっぽう、混和材は、コンクリートの配合計算の際、混和材の容積を考慮する必要がある。
混和材
編集- フライアッシュ
混和材として、フライアッシュなどがある。フライアッシュ(fly ash)は、火力発電所で発生する排ガスにふくまれる灰を集塵器で集めたものである。フライアッシュを加えることで練り混ぜのさいの流動性が増し、また、使用する水量を減らせ、また、長期強度が増大する。
フライアッシュの主成分はケイ酸化合物などであり、これがセメントと水と加わると、セメントにふくまれる水酸化カルシウム Ca(OH)2 と反応し、化合物を生じる。 また、このような反応をポゾラン(pozzolan)反応という。
フライアッシュによってセメントの流動性が増す理由は、このポゾラン反応によって生じた化合物によるものだろうと一般に考えられている。
- 高炉スラグ
混和剤
編集- AE剤
AE剤(air entraind agent)は、練り混ぜ中のセメント中にもともと存在する大きめの気泡を、微小で独立した気泡にさせる。
※ オーム社『大学土木 土木材料』(町田篤彦 編)によると、AE剤は界面活性剤の一種であり、この界面活性の作用によって、気泡を微小化させてるらしい。
また、こうしてAE剤で生じた気泡をエントレインドエア(entraind air)という。
AE剤によって生じた微細気泡によって、ワーカビリティーがよくなる。また、水の凍結の際、凍結による応力・圧力を気泡が吸収・緩衝(かんしょう)するので、凍結への抵抗性が向上する。
一方、AE剤によってコンクリート中の空気量が増えれば、そのぶん圧縮強度は低下する。
- 減水剤
減水剤は、セメントの粒子を打ち込み前のコンクリートに分散させる目的で加える。
その仕組みは、イオンによる静電反発である。
減水剤は、セメントの粒子に接着しやすい物質であり、なおかつイオンを帯びた物質なので、セメント粒子を静電気で分散させているのである。じっさいには、減水剤の化学的な仕組みは、たいてい、界面活性剤のうち、電荷をもった部分をもつという仕組みである。(※参考文献: オーム社『大学土木 土木材料』、町田篤彦 編、)
このような、電荷反発による分散の作用により、使用する水量が減らせるので、減水剤という。
コンクリート用水
編集セメントおよびコンクリートの練り混ぜにふさわしい水としては、ふつうの場合、一般の上水道の飲料水・水道水が、コンクリート用水として使用可能である(※ 参考文献: コロナ社『土木材料学』、中村聖三・奥松俊博 共著、)。海水は塩分が悪影響を与えるので、海水のコンクリート用水としての使用はダメである。
セメントの管理
編集セメントは、空気中の水分により、しだいに風化して、性能が劣化する。 セメントが風化すると、凝結が遅れる。
このため、セメントの貯蔵庫として、防湿性の良い場所でセメント袋に入れて、セメントを保存する必要がある。
また、セメント入手後は、なるべく早くセメントを使い切る必要がある。
このため、そのセメントの入荷日が分かるように管理する必要がある(※参考文献: オーム社『ハンディブック土木』)。