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鋼と鋳鉄

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炭素鋼

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工業的には (こう、steel) とは炭素C濃度が0.02% < C < 2.1%の鉄のことである。 鋼は炭素の含有率により、機械的特性や焼入れなどの熱処理による影響が変化するので、この炭素濃度による分類分けがよく用いられる。なおC=0.02%は、のちに述べるα鉄フェライトに固溶する炭素Cの最大固溶度(このとき温度727℃、0.0218%)である。 C =2.1%はγ鉄オーステナイトに対するCの最大固溶量(このとき温度1148℃、2.11%。)である。(フェライトやオーステナイトについては後述する。)

  • 純鉄

炭素濃度が0.02%より小さい鉄は 工業用純鉄 (じゅんてつ、iron)に分類される。

  • 鋳鉄

また、炭素濃度が2.1%よりも高い鉄を 鋳鉄 (ちゅうてつ;Cast Iron) という。

鋼とくらべて、炭素濃度の低い純鉄はやわらかく、炭素濃度の高い鋳鉄は硬い。

炭素C以外に合金元素を含まない鋼を、 炭素鋼 (たんそこう、carbon steel)という。 鋼に、マンガンやアルミニウムなどの炭素以外の合金元素も添加したものを合金鋼(alloy steel)とよび、区別することもある。ただし、炭素鋼自体に炭素と鉄との合金という意味合いもあるため、合金鋼の定義は、あまり明確ではない。別の分類方法では普通鋼(plane steel)と特殊鋼(special steel)とに分類する分け方もあるが、ここでは述べない。

温度変化による相変態

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鉄-炭素系 平衡状態図
図中の「L」は融液の状態、同様に「α」はα鉄の状態、「β」はβ鉄の状態、「γ」はγ鉄の状態
(※ 温度は文献によって1~2℃ほど値が異なっており、暗記の必要は無い。%も同様に、文献によって0.02~0.03%ほど異なる。)


 
鉄-炭素系 平衡状態図(全体)

図中の「N」(左軸付近の1392℃付近)がA4点。
破線は鉄-黒鉛系(安定系)、実線は鉄-セメンタイト系(準安定系)。


まず、純鉄は常温・常圧の通常では体心立方格子(BCC構造)をとる。 純鉄は912℃ 以下では体心立方格子(Body Centered Cublic ; bcc )の結晶構造を持つ。この912℃以下でのbcc 相の鉄を(純鉄か炭素鋼かに関わらず)、 α鉄 (アルファてつ)と言う、またはα Feという。

また、このα鉄に炭素が固溶した状態のことをα 固溶体と言う。

(※ α鉄の意味はあまり厳密ではなく、「α固溶体」のこともα鉄という場合もあり、検定教科書でも実教出版の科目『工業材料』では固溶体としても「α鉄」という言い回しをしている。なお、科目『機械工作』の実教出版の検定教科書に「α固溶体」という用語はある。)

さきほど示した図の、鉄-炭素系の平衡状態図中の「α」の箇所が、α鉄(またはα固溶体)の状態である。

※ 同様に文献によって「β鉄」と「β固溶体」、「γ鉄」と「γ固溶体」、と言う用語のバラツキがある。

炭素鋼では温度により結晶構造が変化し、この現象のことを変態と呼ぶ。フェライトにおける変態点は912℃であり、A3点とよぶ。 α鉄の定義は純鉄の場合だけでなく、炭素鋼や合金鋼も含む。以下に述べるγ鉄や δ鉄の定義も、同様に純鉄だけでなく炭素鋼・合金鋼も含む。 ただし、合金の場合は、添加物の濃度により、変態点が変わる。鉄-炭素の2元型において純鉄から炭素濃度を増加させた場合、炭素量が増えるにしたがって変態温度が低くなり、A3変態点は炭素量が約0.8%で約730℃になる。(γ固溶体オーステナイトの共析点はC0.77%、温度727℃)


  • A3点

純鉄は912℃で変態をする。このとき体積が収縮する。収縮の理由は、より密な結晶構造に変態するからである。純鉄での変態点の912℃を A3点 とよぶ。純鉄では912℃以上では面心立法格子(Face Centered Cublic ; fcc )の結晶構造になる。この状態での鉄は(純鉄か炭素鋼かに関わらず)、 γ鉄 (ガンマてつ)、あるいはγ Feと呼ばれる。合金の場合は、添加物の濃度により変態点が変わる。 充填率を計算すると面心立方構造fcc のほうが体心立方構造bcc よりも密なので、A3点での収縮を説明できる。X線解析によって、この検証はされている。

  • A4点

γ鉄を加熱しつづけて、1394℃になると、さらに変態が起きて、1394℃以上では(純鉄か炭素鋼かに関わらず)、δ鉄(デルタてつ)、δ Feと呼ばれる体心立方格子bcc の相になる。この変態点を(純鉄か炭素鋼かに関わらず)、 A4点 とよぶ。 γ Fe→δ Feへと変態するF・c・c構造からb・c・c構造への変態のとき、体積が若干、膨張する。

  • A0点

Fe3Cの磁気変態点のこと。

これらの炭素濃度と温度と相の関係を図示した場合は、平衡状態図として表す。(平衡状態図では、ある温度、濃度条件において最も存在しやすい相を簡単に知ることができる) 鉄と炭素の合金の場合の平衡状態図の名称は、 炭素鋼平衡状態図やFe-C系平衡状態図やFe-Fe3C系平衡状態図などと言われることが多い。縦軸に温度、横軸に炭素濃度を採るのが一般的である。


  • キュリー点(A2点)770℃ 磁気変態点

常温の鉄Feは磁石がくっつく強磁性体である。だが、鉄が770℃を超えると、常磁性になり磁石がくっつかなくなり磁性を失う。 鉄にかぎらず、このように加熱により物体の磁性が焼失する温度を キュリー点 と呼ぶ。鉄のキュリー点を A2点 とよぶ。強磁性体は、キュリー点以上の温度で磁性を失う。だが、温度をキュリー点以下に冷却すると再び、磁石がつくようになり、強磁性を取り戻す。 なお、常温で強磁性を示す元素は鉄Fe,ニッケルNi,コバルトCoの3つのみである。


純鉄の融点は、1811Kである。


純鉄の用途

主に電気材料・時期材料などの用途に使われる。

炭素鋼の熱処理

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まず、先に熱処理の話を説明する。そのあとで炭素鋼の結晶組織の説明をする。

 
鉄-炭素2元合金図の概略図
 
鉄-炭素2元合金図(一部。共析点の付近)
  • 焼入れ

俗に、鋼を真っ赤に熱して、これを水や油の中に入れて冷却する処置を焼入れという。 焼入れによって炭素鋼は硬さを増す。しかし純鉄は焼入れをしてもほとんど硬さは増えない。 固溶した溶質原子(炭素)が、焼入れによる硬化に必須なのである。

焼入れをする鋼の温度は、純鉄のγ相に相当する(オーステナイト相と呼ばれる)温度の鋼である。焼入れ後の硬さは固溶している炭素濃度が高くなるほど硬さも得られる。 γ相の鉄は2.11%までの炭素Cを固溶できる。このγ鉄と炭素Cの固溶体をオーステナイトと呼んでいる。なおアルファ鉄(α鉄)に炭素Cが固溶したものをフェライトという。アルファ鉄が固溶できる炭素Cの濃度は727℃のとき0.02%である。オーステナイトが0.02%以上の炭素Cを含んでいるときこれを、ゆっくりと徐冷(じょれい)すると、過飽和の炭素Cが析出またはセメンタイトFe3Cが析出したフェライトが得られる。

※ 「徐冷」(じょれい)とは、ゆるやかに温度を下げること。徐々(じょじょ)に冷却するので「徐冷」(じょれい)という。

フェライトとセメンタイトが層状に積み重なった構造をパーライトといい、炭素濃度や冷却方法にもよるが、右図(鉄-炭素2元合金図の概略図)の下側(700℃以下の領域)にある「フェライト+セメンタイト」の領域では、徐冷していった場合には結晶構造の一部または大半がパーライトの構造をとっている場合が多い。

※ もし炭素鋼をいったん加熱してオーステナイトにしても、徐冷していけば最終的にその炭素鋼の結晶構造はパーライトになる。けっして、オーステナイトのままではないので、気をつけよう。
このように、鋼の結晶構造は、温度と炭素濃度のほかに冷却速度などにも依存する。後述するが、温度のほかにも冷却速度の大小によって、マルテンサイト(冷却速度が大)、パーライト(冷却速度は小)や微細パーライト、トルースタイト(冷却速度は中)、など、鋼はさまざまな結晶構造をとる。(マルテンサイトや微細パーライト、トルースタイトなどについては、次の節で後述する。)
  • マルテンサイト鋼

だが、水冷や油冷で急冷して焼入れをすると、析出はおきない。このとき徐冷した場合よりも硬い鋼が得られる。これはフェライトの結晶構造のなかに、炭素Cが過飽和に固溶(無理やり、溶け込むこと)することにより結晶格子にひずみが生まれることに起因する。この時の結晶構造はフェライトのfcc構造とは異なりbct構造をとるようになる。これは急激な温度変化により変態するための時間が十分でなかったことが原因である。 結晶構造の変化には原子の移動を伴う拡散変態によるものと原子の移動を伴わない無拡散変態によるものが存在する。徐冷された場合は原子移動の時間が十分にあるため、拡散変態となり急冷された場合は時間がほとんどないため無拡散変態となる。原子が移動しないにもかかわらず、結晶構造が変化するのは、fcc構造とbct構造の原子の並びが同じであることが理由であるが、本項の内容から大きく逸脱するので詳細は控える。 このような、α鉄中に炭素が過飽和に固溶した鋼を マルテンサイト (martensite)とよぶ。マルテンサイトはフェライトとくらべて硬い。

鋼を焼入れ後そのまま使うことはまれであり、普通は 焼戻し (やきもどし、tempering)という熱処理をくわえて、靭性を与える。 焼戻しの温度は、材料によっても異なるが、一般的に500℃から680℃である。 焼入れのままでは、以下の様な不便がある。

  • マルテンサイトは硬いが延性がなく脆い。降伏点や弾性限度も低く、引張強さも大きくないので、そのままでは実用的ではない。
  • 結晶構造的に相が不安定であり、相変化により寸法変化を生じやすい。
  • 焼入れのままでは残留応力があり、変形や割れを生じやすい。

ただし、焼き戻し温度が200℃から400℃だと、もろくなる。この脆化を焼戻し脆性(やきもどし ぜいせい、temper brittleness)と言う。 この焼戻し脆性を起こす温度を避けて焼戻しが行われる。 200℃以下での焼戻しを低温焼戻しと言い、550℃程度以上の焼戻しを高温焼戻しという。 低温焼戻しは硬さの維持や耐摩耗性に重点を置いている。高温焼戻しは靭性の付与に重点を置いている。 高温焼戻しで焼き戻しても、そこから冷却するときに200℃~400℃の状態になるので、この時、高温焼戻し脆性にならないように注意する必要がある。高温焼き戻し脆性はモリブデンMoを添加すると起こりにくくなる このように、焼き入れ焼戻しといった熱処理によって、金属材料の性質の改善を測ることを調質という。

 
共析鋼の冷却速度と変態の関係


なお、オーステナイト相からの油冷でなく(オーステナイト相からの)空冷の場合は、マルテンサイトではなく、微細パーライトといわれる組織構造になる。

※ 微細パーライトのことをソルバイトという場合もあるが、この組織とは別にマルテンサイトの焼き戻しのこともソルバイトと呼ぶこともあるので、最近は区別のため、この組織(オーステナイトからの空冷によって得られる組織)は微細パーライトと呼ぶのが普及している。


オーステナイト相からの冷却速度によって、微細パーライトになるか、トルースタイトになるか、マルテンサイトになるかが決まる。



さて、固溶された炭素はどのようにして鉄に加えられたのだろうか。炭素の加え方について、説明をする。それは、浸炭と言った処理を加える。

  • 浸炭

鋼は融点の1500℃に加熱せずとも、900℃~950℃に加熱してオーステナイト相に変態した状態で鋼を高炭素の濃度の液体または炭素ガスなどの気体、または炭素の個体を接触させて十数時間ほど加熱させることによって、炭素を固溶させる事ができる。 浸炭については後述する。これだけで、数ページになるような分量であるから。


結晶構造の話に戻る。 固溶している炭素Cの状態は、Feと化合している場合としてない場合に分かれる。 炭素は鉄と化合してFe3C(セメンタイト、Cementite)として存在し、このセメンタイト Fe3C が鉄と固溶する場合と、 炭素C単体が鉄に固溶する場合とに別れる。 室温においてセメンタイトは、鉄と黒鉛に分解されるので、セメンタイトは準安定相と見なされる。セメンタイトは486Kで磁気変態を起こす。これを A0 と言い、Fe3Cのキュリー点である。A0点以下の温度では、キュリー点の定義通りにFe3Cは強磁性を示す。 炭素鋼はセメンタイトが多いほど、硬くなるが、延性がなく、もろくなる。

α鉄に炭素C が固溶した状態を フェライト (ferrite)と呼ぶ。α鉄とフェライトの定義の区分けは明確では無く、同じ意味で使われることもある。 γ鉄は2.11%までの炭素を固溶でき、そのγ鉄状態の鉄と炭素の固溶体を オーステナイト (austenite)という。γ鉄に多くのCが固溶できるのはγ鉄の結晶構造が大きいためである。α鉄、γ鉄のどちらとも炭素Cは侵入型固溶の位置を占める。γ鉄とオーステナイトの定義の区分けは明確では無く、同じ意味で使われることもある。

  • 共析鋼

炭素鋼を900℃以上に加熱するとオーステナイト相になる。 これを徐冷すると、

γ→α+Fe3c

のような2種の個相に分解する共析変態が起こる。 この変態は、低倍率では黒く見えるが、高倍率ではフェライトとセメンタイトが層を成しているのが観察できる。共析炭素鋼のフェライトとセメンタイトとの、この層状組織を パーライト (pearlite)という。

 
エッチングされたパーライト。(2000倍)SEM顕微鏡写真。

パーライトの発生機構は次のように考えられる。 まず、セメンタイトが析出したとしよう。すると、周りのC濃度がその分だけ減少するからフェライトになる。フェライトはCをあまり固溶しないから、その周囲で固溶されないCを元にセメンタイトがまた析出する。そして、そのセメンタイトの周囲ではCが少なくなるのでフェライトが有利になる。 このような繰り返しにより、交互に層状にフェライトとセメンタイトが析出すると考えられている。 共析組成の鋼を 共析鋼 (きょうせきこう)という。

冷却速度が大きくなると平衡状態での変態温度よりも低温で変態が起こるようになる。このように変態温度以下でも凝固しない冷却を 過冷却 (かれいきゃく、super cooling)という。鋼の場合の過冷却を考察していく。 オーステナイトからの析出現象には、析出される新たな結晶構造へと鉄原子や炭素原子が移動し拡散する必要がある。その拡散には時間が掛かる。

平衡状態とは違い、実際の加熱や冷却は平衡状態と外れる。そのため加熱の時の変態点と、冷却の時の変態点は実際には異なる。加熱の時の変態点を Ac1点 といい、冷却の時の変態点を Ar1点 という。また平衡の変態点を Ae1点 という。この変態の観測の確認には膨張を観測する。 空冷では、Ar1変態は過冷されて、やや低い温度で変態( Ar’変態 という)が起こる。これが焼ならしである。 油冷ではAr’変態が完全には起こらず、未変態のまま残ったオーステナイトが、さらに低温に過冷されて変態し、2度めの膨張を起こす。この油冷や水冷で急冷した場合の、膨張を起こす変態を Ar’’変態 という。Ar’’変態の別名は、結晶組織から名づけた マルテンサイト変態 ともいう。 水冷のような冷却速度が大きい場合は、Ar'変態が阻止されて、Ar’’変態のみとなる。このとき、組織はマルテンサイトだけである。

オーステナイトから急冷しマルテンサイトに変態させて硬化させる熱処理が 焼入れ である。

鋳鉄

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鋳鉄 ( ちゅうてつ、cast iron)は、鉄と炭素の合金の内、炭素 Cを濃度2.14%~6.7%を含む合金である。あるいはその合金組成をベースにケイ素Si (1.0%~3.0%)やマンガンMn (0.1%~0.9%)などを少量含む鉄 Feの合金である。 なお、炭素濃度が1.0%以下の鋼を鋳造したものは、鋳鋼(ちゅうこう、steel casting)と言い、鋳鉄とは区別する。 2.14%はγ鉄中での、Cの固溶限である。Cの添加の目的は、融点を下げることが主な目的である。Fe-C(2成分系)状態図の共晶点(炭素含有量4.2~4.3%)付近で融点が低いため。

鋳鉄は、鋼よりも低温度で溶けるため、鉄製品の鋳造(溶融させた金属を型に流し込み製造するプロセス)に用いられる。鋼に比べて、展性や延性が少ないので、伸びがなく硬くて脆い。

鋳鉄は、炭素が鋼より多いので、鉄と化合したセメンタイトFe3C以外に、炭素が単体でも存在する。この鋳鉄内で単独のときの炭素の状態は黒鉛grafiteである。炭素の状態によって、ねずみ鋳鉄・白鋳鉄・まだら鋳鉄の三つに大別できる。以下に鋳鉄のおもな種類を示す。

  • ねずみ鋳鉄(gray cast iron):

鋳鉄は炭素量が多いと黒鉛(グラファイト)が晶出する。 黒鉛は黒色をしており、炭素量の多い鋳鉄はその断面の色からねずみ鋳鉄と呼ばれる。グラファイト(黒鉛)が片状で破断面がねずみ色。切削加工が容易で耐摩耗性が大きいなどの長所があるが、粘りや引張強さが弱いという欠点がある。

  • 白鋳鉄(white cast iron) :鉄の炭化物であるセメンタイトFe3Cが析出して、破断面が白い。
  • まだら鋳鉄 (mottled cast iron) :ねずみ鋳鉄と白鋳鉄の混合型。

ねずみ鋳鉄は以下のように分類される。

  • パーライト鋳鉄 :パーライトと黒鉛の混じりあったもの。ねずみ鋳鉄の一種。
  • フェライト鋳鉄 :フェライトと黒鉛の混じりあったもの。ねずみ鋳鉄の一種。


  • 可鍛鋳鉄

白鋳鉄で鋳物を作り、これに焼きなましを施して、脱炭やセメンタイトの黒鉛化により、粘り強くしたものが 可鍛鋳鉄(かたんちゅうてつ、malleable cast iron)である。炭素は、セメンタイトの状態で含まれていると材料が脆くなるので、可鍛鋳鉄ではこれを黒鉛化している。 熱処理の仕方により白心可鍛鋳鉄と黒心可鍛鋳鉄に分かれる。JISでは、これにパーライト可鍛鋳鉄を加え、3種類に分類している。

  • 白心可鍛鋳鉄(FCMW)

脱炭剤で白鋳鉄の炭素をのぞいたもの。900℃~1000℃で70時間~100時間ほど焼き鈍す。周辺部が脱炭されフェライトになり、内部はパーライトとFe3Cが分解してできた黒鉛になる。用途は、肉厚が3mm~5mm程度の薄肉の製品、または小さな製品に用いる。破面が白い。脱炭剤は酸化鉄や鉄など。

  • 黒心可鍛鋳鉄(FCMB)

白鋳鉄を焼なまし(900℃〜950℃と、680℃〜730℃の2段階に保ち、それぞれ20時間〜30時間ほど、保つ。)して、成分中のセメンタイトFe3Cを分解し、球状の黒鉛に変えたもの。破面は黒い。

  • パーライト可鍛鋳鉄(FCMP)

黒鉛化を妨げるMnを0.6%~0.8%添加し白鋳鉄としたもの。段階の熱処理をし、第一段階として900℃~950℃で保持し、第2段階で740℃〜780℃から600℃〜650℃へ冷却していく。ノジュラ鋳鉄(nodular cast iron)、ダクタイル鋳鉄(ductile cast iron)ともいう。

黒心可鍛鋳鉄やパーライト可鍛鋳鉄は、表面が脱炭されて軟らかいので、耐摩耗性のため、表面焼入れなどの熱処理を行うことがある。


  • 球状黒鉛鋳鉄

球状黒鉛鋳鉄(きゅうじょうこくえんちゅうてつ、spherical graphite cast iron)とは、溶湯にマグネシウムMg、セリウムCe 、カルシウムCaなどを加えて黒鉛を球状化したもの。 なぜ、球状化するかは定説は無い。おそらくは脱酸によって発生の核を与えられるものと考えられている。これに対して、通常の鋳鉄を片状黒鉛鋳鉄とも言う。


  • マウラーの組織図
 
マウラーの組織図

実際の鋳鉄では、炭素だけが添加元素だけでなく、ケイ素Siなど他の元素も含まれることが多い。一般的に、C、Si、Pが多いほど析出黒鉛量が多くなる。またMnが多いほど黒鉛量が少なくなる。

そのため添加元素にケイ素を加えた場合の影響を考慮した図として、マウラーの組織図 というのがある。 マウラーの組織図(Maurer's structual diagram)とは、条件として1250℃から鋳型に鋳鉄を鋳込んで、直径φ75mmの丸棒にしたときに、炭素濃度とケイ素濃度が鋳鉄の結晶組織に,どう影響を与えるかを図示したものをいう。 マウラーの組織図では縦軸に炭素濃度、横軸にケイ素濃度をとることが多い。

図中での結晶組織の略記のための凡例として、以下のⅠI 、IIa、IIIなどが用いられる。

    • I :白鋳鉄 。 セメンタイト+パーライト。(θ+P)
    • IIa :まだら鋳鉄。 セメンタイト+パーライト+グラファイト。(θ+P+G)。I とIIの中間。
    • II :ねずみ鋳鉄 。 パーライト+グラファイト。(G+P)
    • IIb :ねずみ鋳鉄 。 パーライト+グラファイト+フェライト。(G+P+α)。II とIII の中間。フェライト・パーライト鋳鉄とも言う。
    • III :ねずみ鋳鉄 。 フェライト+グラファイト。(G+α)。フェライト鋳鉄とも言う。

C 1.7% の線は、この線より上の部分を鋳鉄とみなすことに由来している。(※ 参考文献: 関口春次郎『要説 機械工学』、理工学社、2004年3月20日 第4版 第1刷 発行、98ページ)

  • グライナー・クリンゲンシュタインの組織図

実際には冷却速度によっても結晶組成が変わる。そして冷却速度は肉厚の影響を受ける。 このことを考慮した図として、グライナー・クリンゲンシュタイン(Greiner Klingenstein)の組織図がある。縦軸にC+Si%をとり、横軸に肉厚mmをとるのが一般的である。

合金鋼

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用途の代表例として、以下の用途がある。 ・機械構造用鋼 ・工具鋼 ・特殊用途鋼


機械構造用鋼

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SC材と呼ばれる普通炭素鋼と,これにクロムとモリブデンを添加した クロム・モリブデン鋼 (SCM材)と,さらにニッケルを加えた ニッケル・クロム・モリブデン鋼 (SNCM材)とが、これに当たる。 SS材は機械構造用には含めない。SS材は一般構造用に分類される。 SC材の特性を説明する際、よくSS材との比較で説明される。

SC材で良く用いられるS45Cを例に記法の見方を説明する。 S45C: 数値は炭素の含有量(0.45%)を表す。 SCのSはSteel(鋼)、CはCarbon(炭素)の略。

SS材 (機械構造用鋼では無いので注意。比較説明のために記述。) 最低引張り強度が指定され、SSの後に来る数字は最低引張強さ(N/mm2)を示す。 SSはSteel(鋼)とStrength(強さ)の略。 SS材は、炭素量が保障されていないため、焼入れなどの熱処理には用いない。 SS材で良く用いられるSS400を例に記法の見方を説明する。 SS400:SSの後の数値は引張り強さ(N/mm2)を表す。

SCM材およびSNCM材など

  • Cr鋼

約1%クロムCrと約0.75%マンガンMnを加えている。 Mnは脱酸の効果もある。焼入れ性に優れる。焼入れでマルテンサイト組織にしてから焼き戻しをする。焼き戻し脆性があるので、高温焼き戻し温度からは急冷する。

  • SCM材

Cr-Mo鋼。 Moにより焼き戻し脆性の改善を図ったもの。

  • SNCM材

Ni-Cr-Mo鋼。 現在の構造用合金中で、耐久性が最も優れている。


工具鋼

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JISで工具鋼(tool steel)といった場合、切削工具用、対衝撃工具用、冷間金型用、熱間金型用の4種類に分類している。 切削工具用では、工作機械で用いるバイト・ドリル・カッタ・リーマ・ブローチなどの切削工具に使用する鋼を想定してもらいたい。 切削加工では、切削工具が高温や高負荷などの過酷な条件にさらされるから、材料にも耐久性が求められるためであろう。 一般的には「工具鋼」は、工具鋼は広義には工具に使用する鋼であり、やすり・かんな・たがねなどの手工具や、ゲージ類などの計測工具など、工具全般の材料をさす場合もある。

  • 切削工具用

硬さと対磨耗性は、当然、切削工具には必要である。そのため炭素C含有量を高め、熱処理で焼きいれ焼き戻しをする。 切削時の熱発生は焼き戻しと同じ作用がある。したがって、工具鋼には熱に対する、焼き戻し軟化抵抗が必要である。工具鋼に要求される耐熱性とは、切削時の発生熱に対する耐熱性のことである。

特に高速切削のとき、熱が発生しやすいので、高速度工具鋼(High speed tool steel)には耐熱性が必要である。Cr、W、V、Co等を加える。

  • 金型用
    • 熱間加工用

熱間圧延・鍛造・ダイカストに用いる。炭素量を減らしている。理由は、使用中に熱サイクルが加わるため熱サイクルによる膨張収縮量を減らす必要がある。そのため、炭素量を減らしている。 また、膨張収縮に伴う、き裂を生じる。このき裂をヒートチェックという。 MoやCrなどを添加して耐熱性を高めている。


ステンレス鋼

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stainless steel 。 鉄にCrを加えると酸化に対する耐食性を増す。これは表面の不働体皮膜が保護膜となり、酸化の内部への進行を妨げるためである。 硝酸や硫酸といった酸化性の産に対する耐食性はCr添加で向上する。しかし、塩酸などの非酸化性の酸に対しては効果が無い。 Crはステンレス鋼の主要の添加元素であり、ステンレス鋼には不可欠である。 Crの他に、更にNiを加えると、塩酸などの非酸化性の酸に対しても耐食性を得る。

ステンレス鋼の材料記号は「SUS」であり,通常「サス」と読む。Steel Use Stainlessの略。

  • SUS304
  • SUS316

などが代表的である。特にSUS304は使用量がステンレス鋼の中でも最も大きい。 炭素を減らしたものは、SUS316Lのように、末尾にLを付ける。 炭素を減らす理由として、一般的なのは、機械加工で、被削材が硬すぎる場合にやや硬さを落として加工性を高めるためであるのが一般的である。 他の場合として、化学装置などで耐食性のためステンレス鋼SUSが必要だが、純度の高い材料を作る際、炭素や炭素ガスが不純物として働く場合などに、対策としてSUS316の代わりにSUS316Lを用いる場合がある。例えば、半導体工場の配管部品などでSUS316Lを用いる場合がある。

軽金属材料

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銅 Copper

純銅

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銅は、鉄と比べて酸化されにくい。天然でも純度が高く自然銅として産出する。精錬も容易なので古くから使われる。 銅は硫酸H2SO4に溶ける。銅を溶かした硫酸を電気分解すると陰極に銅が析出する。これを 電気銅 (でんきどう)といい、工業的に使われる銅材料の原料に電気銅が使われる。 電気銅は、そのままでは銅粉であり構造材料としては実用に供しないので、溶融などをして固化する。

純銅の機械加工的な性質として、金属の中では延性があり、強度も比較的に高い。延性の理由として、面心立方晶で転位が移動しやすいのが理由だと考えられる。 冷間加工によって、銅は加工硬化する。

電気的な性質は、銅は電気伝導率が高い。銅は反磁性体である。磁場を嫌う場所で使われる。 電気伝導が良いことから電線などに使用される。 詳しくは電気材料の節で説明する。

化学反応的な性質は、銅はイオン化傾向が水素より小さい。また、空気中では、表面に酸化皮膜Cu2Oを作り内部への参加を食い止める。Cu2Oの色はあずき色であり、光沢はない。 H2OとCO2が存在すると緑青Cu2 (OH)2 CO3が生じ、緑色になる。ただし、アンモニアが存在すると結晶粒界が腐食される。特に引っ張り応力がかかった状態では腐食が加速される。このように応力と腐食が相互作用をして腐食が加速されることを 応力腐食 (おうりょくふしょく)と呼ぶ。

耐食性は、純鉄と比較した場合は、銅は耐食性が良い。 酸に対する耐食性は、希塩酸や希硫酸には溶けにくいが、濃度が高い酸の場合には溶ける。また硝酸に溶ける。 塩基に対しては、アンモニアによって腐食される。

純銅の分類として、不純物の程度や種類から、以下に分類される。

  • タフピッチ銅(tough pitch copper、略称:TPC)

通常、金属材メーカーなどに「銅をください」と特に種類の指定なく注文したときに来ることの多い銅が、タフピッチ銅である[1]

タフピッチ銅とは、電気銅を反射炉で溶融したものに、木材などで炭素を加え、溶けた銅中の酸素を還元したもの。残留酸素量は、酸素を0.02~0.05パーセントである。大部分の酸素はCu2Oとして材料内の結晶粒界に存在する。

多量生産ができ、導電性、熱伝導性、展延性に富む。しかし、水素還元性の環境中で高温加熱すると、水素と酸素が反応し水蒸気になり脆くなるという、水素ぜい化を起こす場合がある。

※ 酸素を含むため、溶接性が悪い[2]

電気部品に導電材料として使われる銅も、たいていはタフピッチ銅である[3]


  • 無酸素銅

真空中、あるいは還元ガス中でCuを溶解することでCu中の酸素を外部に排出してある。このような方法で、酸素含有量を0.02%以下にした銅を無酸素銅(OFC:Oxygen-Free Coppe)と呼ぶ。 この方法では、酸素、水素以外の不純物は除去出来ないので、あらかじめ電気分解で純度を高くした電気銅を原料とする。水素量が低いので水素脆性は無い。 真空中でのガス放出量が低く、真空機器に使われる。価格はタフピッチ銅よりも高い。

  • りん脱酸銅

脱酸素剤としてリンを添加した銅[4]。溶融したCu中に酸素の親和力が銅Cuよりも高いリンPを加えて酸化リンとして、酸素を取り除いたもの。リンが材料内に残るため、導電率は低くなる。水素脆性がない。


銅合金

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  • 黄銅(brass)

黄銅(おうどう、brass)は、銅Cuと亜鉛Znの合金であり、CuにZnを8%~50%加えた合金である。黄銅は置換型固溶体である。(銅は真鍮(しんちゅう)とも呼ばれる。 固溶硬化によって、単体のときよりも硬くなる。色は黄色である。


亜鉛Znが30%までのものは、銅Cuの中に亜鉛Znが固溶する。 Znはイオン化傾向が銅より高い。黄銅が海水に触れると亜鉛Znが海水中に溶け出す。 (脱亜鉛化現象)

CuとZnの重量費が、7:3の七三黄銅と、6:4の六四黄銅がよく用いられる。 七三黄銅の加工では、冷間加工を用いる。六四黄銅では熱間加工を用いる。Znが4割以上から硬さが急激に増すので、冷間加工は六四黄銅には適さない。

その他、特殊黄銅がある。 CuとZn以外の合金元素を、黄銅の組成に更に加えた銅合金である。 具体的には鉄、すず、鉛などである。


  • 青銅(bronze)
 
銅-亜鉛の二元合金図

青銅(せいどう、bronze)は、銅Cuと すずSnとの合金である。置換型固溶体である。錆びが青い。 固溶硬化によって、単体のときよりも硬い。砲金(ほうきん、gun metal)とも呼ばれる。 工業的には、機械的性質を改善するために第三元素を添加した材料を用いることが多い。

  • りん青銅

脱酸剤としてリンPを追加したもの。P残留が多いともろくなるので、0.5%以下にする。

  • 亜鉛をふくむ青銅

青銅の脱酸剤としての作用と、鍛造性を良くするの作用との目的で亜鉛Znを添加される。 亜鉛Znは黄銅の元素であるが、銅Cuに亜鉛ZnとすずPを加えたものは、通常は青銅に分類する。

  • 銅ニッケル合金

 

  • 白銅

銅Cuと10%~30%ニッケルNiの合金。外観は白色である。400℃の高温でも強度の低下が少ないので、耐熱材料として用いられることもある。

  • その他の銅合金

黄銅、Cu-Ni合金以外は、たとえ亜鉛Znを含まなくても、青銅と呼ぶ。

  • アルミニウム青銅

アルミニウム9~12%含む。あるいはそれをベースに他元素を追加した合金。

アルミニウム

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Al-Cu合金の状態図

電解で得る。 酸化膜Al2 O3のため耐食性が良好。 面心立方晶でやわらかい。融点が低い。耐燃性が無い。

  • ジュラルミン

Al-Cu-Mg 軽量で強度が大きいので、航空機などの材料に用いられる。

 

マグネシウム合金

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マグネシウムMg は金属の中で最も軽いが、化学的に反応しやすく耐食性に劣るので、合金化するときは耐食性を上げる工夫が要される。 耐食性を悪くする不純物として、鉄Fe,ニッケルNi、コバルトCo,銅Cuなどがあるのでこれらを抑えなくてはならない.このうちFeの害は マンガンMnを添加することによって抑えることができる。 Mgを強化するために加える元素は、たとえば、アルミAl,亜鉛Zn,マンガンMn,ジルコニウムZr、Th,Ceである。

チタン

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構造用セラミックス

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陶磁器やガラスなどの材料、いわゆる「焼き物」のような、材料はセラミックスceramicsである。 セラミックスは一般的に耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れる。しかし衝撃荷重に弱い。

金属とちがい、セラミックスはすべり変形をしないため、延性・展性は乏しい(つまり、基本的にセラミックスは叩いても延びないで、割れたりする)。

またセラミックスは圧縮荷重には比較的強いが、引張荷重には弱い。

※ 説明の便宜上、構造用セラミックスを先に説明するが、じつはセラミックスは構造材としては、あまり好まれていない。セラミックスは基本的に、金属材料と比べて強度で劣る。
セラミックスの長所として、基本的に、耐熱性が(金属よりも)高い場合が多いという点である。
研究開発では、耐熱性を期待して、ガスタービンなどの表面材料として研究されており、炭化ケイ素や窒化ケイ素が期待されている。強度的にはセラミックスは金属に劣るので、複合材料として、金属の表面にセラミックス成分の多い材料などの開発が研究されている。


工業的なセラミックス構造材料としては、酸化物系としてはアルミナ Al2O3 がよく使われている。アルミナのほかにもジルコニア ZrO2 などの酸化物系セラミックス構造材料もある。

「アルミナ」とは、酸化アルミニウムのことである。(※ 材料工学・機械工学などの分野では、構造材として酸化アルミニウムを使う場合には「アルミナ」と呼ぶ場合が多い。)

非酸化物系としては、炭化ケイ素 SiC や窒化ケイ素 Si3N4 が使われることが多い。

セラミックスは共有結合によって結合した材料によって作った個体状の材料である。 セラミックは硬度がよく、プラスチックなどと比べて、硬い。 共有結合であり、高分子ではなので、ゴムとは違って伸びにくいし、曲がりにくい。傷がつきにくい。しかし、金属結合では無いため、延性がないので衝撃に弱くてもろい。また、成型が困難である。(高分子とは違い融点が高いためと、金属のような延性が無いためから。) 耐燃性が良く、セラミックスは高分子とも違い、燃えにくい。融点も高い。

「無機材料」とは何か?

世間ではセラミック材料のことを「無機材料」という場合もあるが(機械工学便覧などで、そう呼んでいる)、しかし検定教科書では この言い方をしていない。

つまり、『工業材料』検定教科書(実教出版)に、「無機材料」という項目は無い。

検定教科書では、「無機材料」と呼ばない理由は述べられてない。

呼ばない理由として、思いつく理由としては、

・金属を「無機」に含めないのは、普通科の『化学』科目と不整合である。(普通科高校の『化学』科目では、金属原子を「無機」に含めている。)
・骨の成分などで、生体にもセラミック系の分子が(荷重を支えるという意味での)構造材として体内で使われている。
・抽象的な「無機」という表現よりも、「セラミックス」といったほうが具体的だし正確。

などがあげられるだろう。

ただし、世間では字数の関係などから、「無機」材料という言い方をすることも考えられるので、高校以外の場では文脈から判断すること。


  • 生体セラミックス

水酸化アパタイト Ca10(PO4)6(OH)2 という物質は、骨の成分のひとつである。

(※ ここでいう「有機」「無機」とは、単に高分子化合物であることを「有機」、そうでないことを「無機」と言っている。)

これとおなじ化学構造のセラミックで造った人工の骨は、生体と化学的に結合し、安定となる. 生体内で安定であり、生体に害を及ぼさない性質を 生体親和性 (せいたい しんわせい)などという. さらに生体材料を生体に移植したときに、適切に移植すれば、骨組織などと化学的に結合する材料を生体活性材料などという.あるいは「生体活性がある」などという. 水酸化アパタイトは弱アルカリ性の物質である。酸には良く解ける.アルカリには難溶である.骨には65%の水酸化アパタイトが含まれている.

  • バイオガラス

バイオガラスは多量の酸化カルシウムと燐酸を含むガラスである.骨組織との親和性に優れる. 水酸化アパタイト、バイオガラスはともに生体活性である。

  • 生体不活性

アルミナは、生体内で耐食性があり、化学的に安定であり、また、生体に害を及ぼさないので人工骨などに用いられている.アルミナは生体内で骨組織とは化学結合を造らないので、生体活性はない。このような性質を生体不活性という。 化学結合を造らないので、体内に固定する場合には、ねじ溝などを作ることにより機械的に固定する。

エンジニアリングプラスチック

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構造用複合材料

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  1. ^ 畑村洋太郎 編著『実際の設計 新訂新版』、日刊工業新聞社、2023年4月14日 改訂新版 第12刷 発行、P.249
  2. ^ 畑村洋太郎 編著『実際の設計 新訂新版』、日刊工業新聞社、2023年4月14日 改訂新版 第12刷 発行、P.249
  3. ^ 畑村洋太郎 編著『実際の設計 新訂新版』、日刊工業新聞社、2023年4月14日 改訂新版 第12刷 発行、P.249
  4. ^ 畑村洋太郎 編著『実際の設計 新訂新版』、日刊工業新聞社、2023年4月14日 改訂新版 第12刷 発行、P.249