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主な工作法編集

鋳造編集

高温に加熱して溶解させた金属は流動するようになるから、これを中空の鋳型に流しこんで製品を作ることが出来る。このような、作ろうとする製品と同じ形状の空洞部に、溶かしこんだ金属を注ぎ込んだあと、冷えるのを待って、目的の形状に固まるのを待つ工作法を鋳造(ちゅうぞう、英: casting)という。また鋳造してできた製品を鋳物(いもの、casting )という。 中空部を持ち、溶融金属が注ぎ込まれる型を鋳型(いがた、mold)という。 鋳造用に溶かされた金属を、(ゆ、molten metal)と呼ぶ。 鋳型の材質には、普通は、砂で型を作る砂型(すながた、sand mold)が使われる事が多い。この砂は、けい砂を主成分とし、粘土などを結合剤として混合された鋳物砂(いものすな、molding sand)である。 なお、鋳型には金型が使われる場合もある。 砂が使われることが多い理由は、繰り返して使うことができ、耐熱性もあり、取り扱いも簡単なのが主な理由である。 鋳型の空洞部を作るには、木材などで原型(げんけい、pattern)を用いる。(模型ともいう) このような木材の原型を木型(きがた、wood pattern)という。

模型の種類編集

現型(solid pattern)には、次の単体型と割り型との2種類がある。

  • 単体型

鋳物とほぼ同じ形状(後述する縮み代などのため、若干、鋳物と形が変わる。)を、分割しないで全体が一体になった模型でつくる型。

  • 割り型(split pattern)

全体を二つ、または二つ以上に分割して作った模型 割り型の結合および位置合わせ用に、ダボとダボ穴がある。


鋳物の形状に対称性があって、かつ形が単純で、型が砂型の場合、制作の手間を抑えるため、引き型やかき型で型を作る場合がある。製作数は少ない場合に向く。  

  • ひき型(回し型)

砂型で、軸対象な鋳物を作る際、引き板を回転させて、砂型を作る。

  • かき型

管状のような、軸方向に変化の無い断面を持つ砂型を作る際、板状の模型をスライドさせて砂をかきとって,砂型を作る。


中子と外型編集

中子(なかご、core)とは、鋳物に穴などの中空な部分を持たせたいときに用いる砂型である。中空部に相当する砂型を作って、これを外側の全体の鋳型である主型(おもがた、master mold)という。外型ともいう。外型を作る際に、空洞部の所定の位置に中子を組み込むための窪みが必要である。外型の形状を木型で型をとる場合、この窪みに相当する木型の突起部分を幅木(はばき)という。 中子を用いるか決める際の注意事項として、中子による中空の鋳物では、薄肉の鋳物は避けなければいけない。仕上がり精度などの理由による。


原型の製作での留意事項編集

縮みしろ編集

(縮み代)。鋳込んだ湯(molten metal)は、冷却および凝固に伴い収縮するので、原型はそれを見込んで、あらかじめ寸法を大きく作る。 鋳鉄の場合、原型の寸法1000mmあたり、縮み代は8mm ~ 10mmである。 鋳造用の主な金属の縮み代をまとめると、おおよそ以下のとおり。(文献により縮み代の数値は、若干、変化する。)

  

  • 鋳鉄 : 1000mmに付き8~10mm
  • 鋳鋼 : 1000mmに付き16~20mm
  • 黄銅 : 1000mmに付き14mm
  • Al合金 : 1000mmに付き12mm

縮みしろの計算の手間を省くための物差しとして、あらかじめ鋳造計算用に目盛間隔の伸びた物差しである鋳物尺、伸び尺がある。鋳型の材質、寸法、場所などによって違った伸び尺を用いる。  

仕上げしろ編集

(machining allowance)、削りしろ。 仕上げしろとは、鋳物を機械加工して仕上げるための寸法で、模型を大きめに作る。 鋳物の表面(黒皮)は粗く、寸法も不正確な場合がある。そのため精密な寸法および表面にするために、表面を削り取る必要がある。なので、加工分を見込んで模型を大きめに作る。 鋳鉄の場合は仕上げしろは、ふつうは3mm~5mmである。大きい鋳造品の場合は 5mm~10mmになることもある。      

抜け勾配編集

(あるいは、抜き勾配)(taper) 模型を鋳型から抜き出しやすくするために、模型を抜き取る方向に広げた勾配をつける。これを向け勾配という。JIS規格に勾配を2/100~5/100と定められている。

面取り編集

(rounding)、および、すみ肉。 鋳物に角ばった部分があると、亀裂が生じやすい。なので丸みをつける。


鋳型の構造編集

  • 湯だまり(ゆだまり)

湯が注ぎ込まれる部分。鋳型への湯の経路は、湯だまりから湯口(ゆぐち)、湯道(ゆみち)、せきを通って、鋳型に達する。受け口ともいう。 スラグが内部に入らないようにするために鋳物本体の空洞部から距離を離して上に設けている。

  • 湯口(ゆぐち)

湯だまりからの湯を湯道に導き、鋳型に注ぎ込むための通路。

  • 押し湯

鋳物の冷却・凝固による収縮によって、そのままでは鋳型の内部に空洞部ができるので、湯を補給するために押し湯が設けられる。

  • 上がり(揚がり、あがり)

湯が空洞部を満たしてることを見て確認するために設ける、鋳物部分から上方向への穴である。また、他の目的として、ガス抜き穴を兼ね、鋳型内の空気を追い出したり、スラグなどの不純物や酸化物を鋳型の外に出すために設ける。

  • ガス抜き穴

鋳型内部にあった空気ガスを鋳型外部に逃がすために設ける、鋳物部分から上方向への穴である。


鋳型の種類編集

  • 生砂型

砂粒に粘結剤と水分を加えて混練した鋳物砂をもちいる。この砂粒は、石英を主成分とする、けい砂である。天然の砂粒はケイ素を主成分とすることが多いので、このようなケイ素を主成分とした砂を生砂という。粘結剤には粘土とかベントナイトbentoniteを用いる。「生砂型」は、「生型」とか「砂型」とも言われる場合がある。鋳物砂の粘結剤が天然由来の粘土の場合、この鋳物砂を「山砂」ということがある。土木用語でいう「山砂」と、鋳造用語の「山砂」は、定義が異なるので注意。

  • 金型

金属で作った鋳型のことである。 砂型よりも製品の肌触りがよく出来る

  • ベントナイト

なお、ベントナイトbentoniteとは岩石名で、主成分としてモンモリロナイトmontmorilloniteやバイデライトbeidelliteを主成分とする粘土の総称であり、火山灰や溶岩が風化して粘土状になったときにできる。ベントナイトを膨潤土とも呼ぶ。

  • CO2 プロセス(CO2 precess)、炭酸ガス法

無機質 自硬性 鋳型の一種。 原料として

  • けい砂、
  • 濃い珪酸ナトリウム水溶液 Na2 O・n SiO2(水ガラス、珪酸ソーダ)

などを混錬する。 造型後に、CO2 ガスを吹き込むことで、以下の反応が起こり硬化する。

Na2O・nSiO2 + CO2 →Na2CO3(炭酸ナトリウム、炭酸ソーダ) + nSiO2

反応後にアルカリ性の炭酸ナトリウムを生じるのでケイ砂が再利用できない。 後述するフラン樹脂を利用した方法が、砂の再利用が可能であり、CO2 プロセスは減っている。


  • フラン樹脂型

フラン樹脂は、フルフラール(furfural)(C5H4O2。芳香族アルデヒドの一種。示性式は(C4H3O)CHO 。)からや、またはフルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)(C5H6O2。構造式C4H3O-CH2-OH)から作られる樹脂の総称。フラン (furan)とは、4個の炭素原子と1個の酸素原子から構成される5員環の複素環式化合物C4 H4Oである。 原料として・ けい砂、フラン樹脂などを混錬する。これは常温で硬化する、また加熱すれば速やかに硬化する。

  • 熱硬化性鋳型

例として後述するシェルモールド法のように、熱硬化性樹脂を混ぜた砂で、鋳型を作る方法。

  • コールドボックス法

コールドボックス法(cold box)は、ウレタン樹脂を混ぜた鋳物砂で作った砂型にアミン系ガス(トリエチルアミンなど)を通気して鋳型を瞬時に硬化させる方法。 硬化速度は速い。

  • ジョルトスクイーズ造型機(jolt squeeze molding machine)

溶解炉編集

溶解炉には、コークスの燃焼熱を用いるキュポラcupola furnace、るつぼ炉、アーク熱を用いるアーク炉arc furnace、地金に誘導電流を流し抵抗熱で溶かす誘導電気炉などがある。


キュポラ編集
  • 構造

キュポラは、地金とともに入れたコークスの燃焼熱で地金を溶かし鋳物を得る溶解炉である。 たいていの構造は、鈑等を円筒形に加工した構造物が縦型に設置され、その内壁には耐熱れんがや耐火モルタルで内貼り(lining)している。下部には空気を送るための羽口がある。炉内にコークスを積み(ベッドコークス )、その上に地金とコークスを装入する。

  • キュポラの操作方法

地金の溶解方法は、炉の底の薪やコークスに着火し、その上に初込めコークスを投入する。羽口(はぐち)から送風機で空気を送って火を強める。 初込めコークスが全体的に燃え始めてから、挿入口から地金と石灰石を入れ、ついで追い込みコークスを入れる。 くわえた石灰石の役目は、不純物の酸化鉄や砂、灰分に流動性を与える溶剤(flux)である。


===== るつぼ炉 =====るつぼに入れた地金をその外部から重油、都市ガスなどの燃焼熱で溶解する

アーク炉編集

arc furnace 。 アーク放電時に強い熱(アーク熱)と光が放出される。アーク炉ではアーク熱を利用して材料を溶解する。エルー式電気アーク炉が有名である。電極は消耗するので、必要に応じて繰り出す。アーク炉は電弧炉ともいう。


誘導電気炉編集

induction furnace。 一次コイルに高周波電流を流すことで,誘導電流を地金に生じさせ地金を抵抗熱などで溶解させる。誘導電流による熱のメカニズムには鉄損や銅損、ジュール熱やヒステリシス損など様々あるが、それの解説は機械工作の目的とは離れるので、本書では電気磁気学的な考察には立ち入らないとする。 電源周波数には50Hzまたは60Hzぼ商用電源を用いる低周波誘導電気炉と、500Hz~10000Hzの電源周波数を用いる高周波誘導電気炉がある。


特殊鋳造法編集

ロストワックス法編集

Lost wax casting(インベストメント法Investment casting)。 まず鋳造する製品と同じ形状の原型を、ワックスwax(ろう)などの融点の低い材料で製作する。次に原型の周囲を耐火性の鋳型材料で焼き固める。耐火性の鋳型材料には、例えば、けい砂にエチルシリケート水溶液を混ぜたものを使う。このとき原型のワックスは熱で溶けるので、そしてワックスを流出させる。こうして鋳型が完成する。


シェルモールド法編集

shell mold process 。 けい砂に熱硬化性樹脂のフェノール樹脂や尿素系樹脂などのプラスチックを混ぜた型砂を、加熱した金型にかけて硬化させ、鋳型の硬化に利用している。型砂にはフェノール樹脂を5%くらい混ぜた砂をレジンサンドとして用いる。または、けい砂の表面を熱硬化性樹脂で被覆したレジンコーテッドサンドを用いる。このレジンサンドを、あらかじめ加熱した金型にふりかけてレジンサンドが硬化しシェルとなる。これを砂で周辺を固めて鋳型とする。 シェルモールド造型機によって作られる。

利点は

  • 通常の砂型を使用した鋳物と比較して、寸法精度が高い。
  • 機械製造のため、大量生産に適している。
  • 未使用の鋳型は、水分を含まないため長期保存が可能。

欠点は

  • 鋳造時には粘結剤が加熱され臭気を発する。
  • 鋳物砂を再利用が原則として不可能。


ダイカスト編集

(Die Casting)。 まず精度の高い金型(ダイス)を作り、金型に溶融した金属を、加圧注入装置を用いて高圧で注入し、凝固させる方法。 鋳造にはダイカスト機(Die Casting machine)を用いる。 金型を用いるので、砂などの混入がなく、高い寸法精度の鋳肌の優れた鋳物を、一工程で得られる。大量生産する場合に用いる事が多い。 金型を使うので、融点の高い鋳物には適さない。ダイカスト法で使用する金型は、鋳造したダイカストを取り出せるように少なくとも2つの部分よりなっている。 金型には型抜き方向にテーパーが必要である。 ダイカストはダイキャストとも言われる。

欠点

  • 空気の巻き込みや不充填

ダイカストでは鋳造時に溶湯を高速・高圧で金型に圧入するため、金型内の空気や離型剤を製品に巻込みやすい。 その結果、不良として製品内部への空気の巻き込みや不充填などが起こりやすい。このため、強度が必要な製品には適さない。

  • 鋳物が一体にならない不具合

砂型に比べ金型は熱伝導率が高いため、溶湯の冷却(凝固)速度が高く、温度差から溶湯が溶け合わないことがあり,、いわゆる湯境(ゆざかい、cold shut)が発生しやすい。なので大型品や肉厚品などへの適用が難しい。


低圧鋳造法編集

低圧鋳造法(low pressure casting)は、密閉された、るつぼ内に、圧縮空気(差圧は1気圧以下)などを吹き込み、浴湯を押し上げて金型に注ぎ込むようにした方法である。金型の注湯には、金型下部の給湯管(ストーク、導管)を通じて、溶湯が低速かつ低圧で注入される。


高圧鋳造編集

High Pressure Die Casting


遠心鋳造法編集

遠心鋳造(Centrifugal casting)あるいは遠心鋳造法(Centrifugal casting process)は、鋳型を軸周りに回転させながら、鋳型に溶湯を注入し、溶湯に作用する遠心力によって内壁に押しつけることを利用した鋳造法。パイプやピストンリングなどの中空の鋳物を作る場合に用いられる。

遠心鋳造の特長は、

  • 中子を用いずに中空の鋳物が生産でき る。
  • 湯口や押湯を必要としないで済みやすく、歩留りが向上する。
  • 遠心分離の原理で、不純物は分離しやすく内面に浮上しやすい。そのため、内部に不純物や気孔などが少なくなるので、強度が良くなる。

欠点は、

  • 溶湯の合金の種類によっては、遠心力で偏析されることがある。
  • 厚肉品では困難。 一因として、外周部と内周部にかかる遠心力が異なるため。


金型鋳造法編集
Vプロセス法編集

減圧鋳造法(Vacuum Sealed Moulding Process)のこと。砂型の材料となる砂を、密閉して減圧すると、砂粒子が結合し粘結剤がなくても結合することを利用したもの。


フルモールド鋳造法編集

フルモールド鋳造法(Full mold casting )とは発泡ポリスチレンで作った模型を、鋳型に埋め込み、造形後、発泡ポリスチレン模型を型抜きせず残したまま、溶湯を注入し鋳物を製造する方法。 注入された溶湯の温度で樹脂は燃焼してガス化するので模型部に浴湯が充填する。 ガスや燃えかすが不良の原因になるので、ガス抜きなどが必要になる。

溶接編集

塑性加工編集

切削編集

研削編集

特殊な工作法鋳造編集

放電加工編集

電解加工編集

参考文献編集

  1. 日本機械学会編、『機械実用便覧』改訂第6版、丸善株式会社、2006年。
  2. 嵯峨常生・中西佑二編 、『機械工作1』、実教出版、平成25年(西暦2013年)。文部科学省検定済教科書。
  3. 嵯峨常生・中西佑二編 、『機械工作2』、実教出版、平成25年(西暦2013年)。文部科学省検定済教科書。
  4. 大西久治、『機械工作要論』第3版、理工学社、2005年。
  5. ウィキペディア記事「フルフラール」 。参考時のリビジョンは2013年5月1日 (水) 11:22。


1.『機械実用便覧』は用語の確認や機械学会での見解の確認に使用した。2.『機械工作1』および3.『機械工作2』は高校での教育範囲の確認および、文部省の見解の確認に使用した。5.フルフラールは、鋳造鋳型用樹脂でのフラン樹脂の物性確認などに使用した。