高等学校工業 機械設計/機械要素と装置/管路
工場や業務用の設備などで流体機器を扱う際は、高圧を取り扱い事が多い。なので、取り扱いの際には、厳重に注意を怠らないようにする必要である。
管
編集筒状で、内部に流体を通し、送るためのものを管(「かん」)という。工業では「かん」と呼ぶのが一般だが、「くだ」と呼ぶ場合もある。パイプ(pipe)またはチューブ(tube)と呼ぶ場合もある。
電気ケーブルなどの流体以外のものを通す筒も、管やパイプなどと呼ばれる場合もあるが、本章では、流体用の配管に限定して話を進める。
実務では、管の径の寸法を言う時、それが内径なのか外径なのかは業界ごとに異なる。なので、実務では、特に異業種などとのやりとりをする場合など、安全のために、書類では寸法値が内径なのか外径なのかを明示するのが望ましい。
インチ規格とメートル規格
編集管や管継手などの、径などの規格は、国や業界によってインチ規格かメートル規格かが異なる。業界によってはメートル規格とインチ規格の両規格が混在する場合もある。 工具の取り扱いでは、軸継手などの取り付けでスパナなどの工具を用いる場合がある。モンキーレンチなどの幅を調整できる工具も存在するが、なるべく管継手の規格にあったスパナを用いるのが安全である。
配管の径で「二分」(にぶ)、「三部」(さんぶ)、「四分」(よんぶ)、「六分」などという場合がある。
「二分」は8分の2インチのことであり、メートル系に換算すると約6.35ミリである。
「三部」は8分の3インチのことであり、約9.52ミリである。
1インチは約25.4mmである。
業界によってはパイプとチューブの規格を区別する場合がある。
ともかく、配管関係の規格には、各国の規格や各業界規格の、様々な規格が混在するので、実務の際には勤務先業界の規格を確認のこと。
バルブ
編集バルブの上流側を1次側といい、バルブの下流側を2次側という。1次側と2次側は逆転使用は不可なのが一般である。
- ボールバルブ
弁体がボールであり、そのボールに、穴が1つ貫通しており、そのボールをハンドルで90°回転することで開閉を行うバルブ。ハンドルはレバーハンドルなど。流量調節は可能であり、ボールの回転角度で流量を調節する方式。ボールバルブでの、細かな流量調整は苦手であり、バタフライ弁やニードル弁よりも劣る。 開にしたときは、流路は円形になり、一般の管と同じようになるので、バルブ開の状態での流体抵抗が小さい。 バタフライバルブよりも弁の強度を高めやす、高圧力に耐えやすい。 弁軸がバルブ外壁を貫通している構造なので、グランドパッキンなどで、貫通部の軸封をしている。そのため気密はベローズ方式よりも劣り、流体が気体の場合などでは、ボールバルブなどの弁軸が外壁を貫通する構造のバルブは漏れをしやすい。
- ベローズバルブ
弁体を押し付けて、バルブ内の流路に栓をして流れを止めるバルブ。グローブ弁の一種で、蛇腹によって、弁を押し付ける方式。ハンドル軸が流路に接触しないので、軸封のグランドパッキンを用いる必要がなく、他の方式より気密をしやすいので、高い気密を要するバルブで用いることが多い。流量の調整には向かない。
- ダイアフラムバルブ
レバーを操作したとき、ダイアフラムが変形する構造になっており、その変形したダイアフラム部分で、栓を行う方式。気密をしやすい。流量の調整には向かない。
- バタフライバルブ
弁体が円板。この円板がハンドルに付いた弁棒とともに回転し流れの開閉および流量を調整するバルブ。
- ストップバルブ
別名はグローブバルブ(Glove Valve)。 弁棒を回転させることで、弁棒の先端に付けられた弁体が弁座へと降りて行き、栓をする方式のバルブ。 締め付け過ぎると、弁体を損傷する恐れがある。ボールバルブと違い、ハンドルを一定の回転角度までで留める機構は付いてないのが一般である。弁棒が外壁を通過する構造なので、パッキンなどによる軸封を行っている。
- ニードル弁(Needle Valve)
弁体が細長い円錐状のもの。ハンドルの回転によって、この流路の幅を調節する仕組みであり、流量調整に用いられることが多い。流れの遮断、締め切りには向かない。
- チェック弁
下流側からの背圧によって弁が締まり、逆流を防止する弁。
バルブと管の接続
編集管との接続は、フランジ接続や、管用ねじ接続など。溶接の場合もある。 一般には、修理や点検などのメンテナンスの都合から、取り外し可能なフランジ接続やねじ接続でバルブを接続することが多い。 いずれの場合も、シール面は保護しなければならない。シール面に傷がつくと漏れの原因になる。 フランジの場合、接続時はOリングなどで密封をするのが一般である。ねじ式接続の場合、接続時は、ガスケットやOリングによって保護をするのが一般である。 金属ガスケットで密封する方式の場合、一般に金属ガスケットは、塑性変形で密封をする原理なので、取り外すたびに新品に交換して再利用はしないのが通常である。 ねじ式接続の場合、管側の管継ぎ手の種類は、バルブ側のねじの製品仕様に適合した管継ぎ手を用いること。仕様外のねじを用いた場合は、一般にメーカーの保証外である。仕様外の管継ぎ手でも、大きさが似ていると取り付けられてしまう場合があるので、注意が必要である。
業務などで、バルブの開閉で流量や圧力を調整する場合、目分量ではなく、管路に組み込まれた流量計や圧力計などの計器などを用いて確認することがある。そのため、設計者などは、これら測定機器についても学習する必要がある。また、このようなバルブ調節時の流量確認・圧力確認などの確認作業の都合から、計器の配置場所は、一般的に調節バルブの付近に置くことになる。
バルブについては、種類が多く、規格化もしきれていないので、実務の際は、製品メーカのカタログで仕様を確認すること。
用途に応じて適したバルブの種類や構造も変わるので、製品カタログなどで仕様の確認をする必要がある。
たとえば流体の種類も、液体だけでも、一般の水道水用のものから、腐食性液体などさまざまである。腐食性の高い液体では、材質は耐腐食性の高いステンレス鋼などを用いる必要がある。 温度の種類も、高温で持ちるのか、常温で用いるのか、凍結もありうる低温で用いるのかなどさまざまである。高温の場合では、Oリングなど樹脂部品の仕様に制約がある。 軸封用の油の使用の有無も、用途によっては注意する場合がある。たとえば半導体などの精密電子機器製造ライン用のバルブでは、油を用いて軸封を行っている方式のバルブは、油の混入を製品不良の発生原因として嫌うことから不適である。
ともかく、このように、業界や用途によって、バルブの構造に制約があるので、必ず製品カタログなどで仕様の確認をする必要がある。
空圧弁や電磁弁
編集おもに手動で開閉を行うマニュアルバルブを前提にして解説をしたが、空圧などで開閉を行う空圧弁や、電気ソレノイドで開閉をする電磁弁も存在する。これら空圧弁や電磁弁についても、ボールバルブやベローズバルブ、ニードルバルブなどを内部に搭載した機器が存在する。 空圧機器などについての高校教育は、科目「原動機」で扱われる。 実務の際は、製造メーカの製品カタログを確認のこと。空圧弁や電磁弁の分野は、製造メーカごとに様々なバルブがあり、規格化をしきれない分野である。
管継手
編集単に継手という場合もある。他の分野の継手と区別する場合、管継手などという。
材質は、鋼管や銅管など金属製のものから、テフロンや塩化ビニルなどのプラスチック製のものなどさまざまである。
本書の説明では、特に断りのない限りは、鋼管を例に説明してるものとする。
フランジ管継手
編集フランジどうしが接触するシール面にはOリングなどを入れるための溝がある場合がある。 シール面にキズ等はつけないように注意する必要がある。傷は、漏れの原因になるので、厳禁である。
フランジの取り付け方法には、溶接式、ねじ込み式などがある。
- ねじ込み式フランジ
修理などの際の、取り外しがしやすい。ねじの隙間から漏れをする可能性がある。
ねじ込み式管継手
編集管の外側あるいは内側に、ねじが彫られている継ぎ手。 取り外しがしやすいので、修理や点検の必要がある箇所などに用いられることが多い。
継ぎ手を取り付ける先の、継ぎ手がメス継ぎ手なら、取り付け先のオス側の管にもねじ溝が必要である。継ぎ手がオス継ぎ手の場合も、同様に、取付け先のメス配管にねじ溝が必要になる。
説明の簡略化のため、継ぎ手がメス側として話を進める。 取り付け先のねじ溝の設け方には、専用のねじ彫り機で管にねじ溝を付ける方式と、すでにねじ溝のついたオス継ぎ手を溶接作業などで取り付ける方式がある。 管径の大きなものや厚さの大きいものなどは、管にねじ彫りが可能だが、管径の小さい場合などは、ねじ彫りが不可能な場合があり、その場合は、すでにねじが切られた継ぎ手を溶接する必要がある。
いずれにせよ、管にねじ溝を彫るにせよ、管に管継手取付用の継手を溶接をするにせよ、いずれとも作業が必要になる。
ねじ彫り機を用いる方式の場合、ねじ彫りの際に、加工くずが出るので、それらは除去しなければならないし、製品に傷を付けないように注意しなければならない。
用途によっては、加工後、ねじ溝にシールテープを巻き、気密性を上げることがある。
継ぎ手の種類によっては、シール面をガスケットなどで保護をする場合がある。一般に、どの種類のねじ継ぎ手もシール面に傷がつくと漏れの原因になる。
金属ガスケットでシール面の保護および密封をする方式の場合、一般に金属ガスケットは、塑性変形で密封をする原理なので、取り外すたびに新品に交換し、再利用はしないのが通常である。
配管の溶接
編集配管の種類によっては、管継手を配管に接続する際に溶接が必要になる場合がある。たとえば、管径が小さい場合には、フランジ方式などの、溶接以外の方式の取り付け方法が困難な場合がある。
管継手を溶接して配管に接続する場合は、溶接隙間からの漏れを無くすため、全周溶接で溶接する。管路の溶接ではスポット溶接は行わない。全周溶接の際は、管の外側を全周溶接する外周溶接と、管の内側を全周溶接する内周溶接がある。外周溶接の場合、管の内側に隙間が残ることがある。 用途によって、内周溶接と外周溶接のうち、どちらが望ましいかは異なる。
管継手の管路の種類
編集ねじ込み式のものや、差し込み式のものなど様々である。
- クロス
4つの管を十字に接続する継ぎ手。
- ティー
3つの管をT字状に接続する継手。 ティーズやチーズともいう。
- エルボ
2つの管を90°の直角方向に接続する継手。特に角度指定が無い限り、90°の曲げのものが一般であるが、45°エルボなどのように角度を指定した90°以外のものもある。
- ニップル
まっすぐであり、両端におねじが彫ってある。
- レデューサ
直径の異なる管を接続するための継ぎ手。 異径ソケットでもある。
- プラグ
栓状の形状で、管継手に栓をする部品。
調整機器
編集- レギュレータ
ガスボンベやコンプレッサーなどから送り出される圧力は、一般に高圧であり、そのままでは使用に適さない場合が多い。 特にボンベからの圧力は非常に高圧である。ボンベの場合は、使用時はボンベ専用のレギュレータで必ず減圧してガスを流す必要がある。ボンベ用以外のレギュレータを、ボンベからの直接の減圧には使用してはならない。単に「レギュレータ」とだけいった場合は、レギュレータにはボンベ用以外の物も存在するので、間違えないように注意が必要である。
ボンベは高圧のため、非常に危険であり、取り扱いには、注意が必要である。 他にも、ボンベの取り扱い上の注意点はある。ボンベの詳しい取り扱いは、本科目の範囲を超えるので、詳しくは専門書や勤務先などの指導を参考のこと。
ボンベに限らず、コンプレッサーやポンプなどから吐出される流体も高圧であり、非常に危険であるので、取り扱いには注意が必要である。
工場や業務用の設備などで流体機器を扱う際は、高圧を取り扱い事が多いので、取り扱いの際には、注意が必要である。