高等学校政治経済/経済/公害と環境保全

時事

編集

温室効果ガス削減を目指す京都議定書の期限は2020年まで。2015年にパリで開催されたCOP21で採択されたパリ条約が、温室効果ガス問題についての後継の条約。(2017年センター試験に出題。知らなくても解ける。)

その他

編集

四大公害病

編集

日本でも、かつて、大きな公害をおこしたことがある。公害は第二次大戦よりも前の昔からあるが(明治時代の足尾銅山の鉱毒事件なども公害であろう)、第二次大戦以降は以下の4つの公害および公害による病気が、とくに被害が大きい公害として有名である。

  • 新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)
  • 四日市(よっかいち)ぜんそく
  • 富山のイタイイタイ病
  • 熊本の水俣病(みなまたびょう)

この4つの公害を四大公害(よんだいこうがい)と言う。

上記の4つの公害が、1950年〜1960年ごろの高度経済成長に重化学工業が成長たが、環境対策が遅れたことが、この4大公害の原因の一つだろう。

四大公害の裁判は別々に行われたが、判決は4つとも患者側の全面勝訴である。(※ 検定教科書に被告企業名が記載されてる。)

  • 新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)
  新潟水俣病
被害地域  新潟県阿賀野川(あがのがわ)流域
被告  昭和電工
提訴  1967年6月
主な原因  水銀による水質汚濁
判決  1971年9月
患者側全面勝訴
  • 四日市(よっかいち)ぜんそく
  四日市ぜんそく
被害地域  三重県四日市市
被告  三菱油化、昭和四日市石油など6社
提訴  1967年9月
主な原因  亜硫酸ガスによる大気汚染
判決  1972年9月
患者側全面勝訴
  • イタイイタイ病
  イタイイタイ病
被害地域  富山県神通川(じんづうがわ)流域
被告  三井金属工業
提訴  1968年3月
主な原因  カドミウムによる水質汚濁
判決  1972年8月
患者側全面勝訴
  • 水俣病(みなまたびょう)
 
熊本水俣病
赤:水俣市、青:葦北郡、薄黄色:その他の熊本県
  水俣病
被害地域  熊本県八代湾(やつしろわん)沿岸
被告  チッソ
提訴  1969年6月
主な原因  水銀による水質汚濁
判決  1973年3月
患者側全面勝訴


公害対策

編集
公害・環境問題の年表
1890年頃 足尾銅山の鉱毒被害
1955年 神通川流域でのイタイイタイ病の学会発表
1956年 水俣病を熊本大学が確認
1961年 四日市ぜんそく多発
1965年 阿賀野川流域で新潟水俣病の表面化
1967年 公害対策基本法制定
1968年 大気汚染防止法制定、カネミ油症事件
1969年 政府、初の『公害白書』発行
1971年 環境庁発足
1972年 国連人間環境会議
1973年 公害健康被害補償法制定
1992年 国連環境開発会議
1993年 環境基本法制定
1995年 容器包装リサイクル法制定
1997年 環境影響評価法制定
1999年 ダイオキシン類対策特別措置法制定
2000年 循環型社会形成推進基本法制定
2005年 京都議定書発効
2006年 石綿健康被害救済法制定

四大公害などの発生を受け、公害対策の気運が高まる。

1967年に公害対策基本法(こうがいたいさく きほんほう)が制定される。さらに1970年には環境規制が強化される。(1993年の環境基本法にともない廃止される。)
1971年に環境庁(かんきょうちょう)が設置。それまで省庁ごとにバラバラに公害に対応していたことが問題視されたのが、環境庁の設置のきっかけ。(2001年に環境省(かんきょうしょう)へと変わった。)
1970年に水質汚濁防止法(すいしつおだく ぼうしほう)が制定される。
1972年に自然環境保全法(しぜんかんきょう ほぜんほう)が制定される。
1993年に、環境基本法(かんきょう きほんほう)が制定される。(これにともない、公害対策基本法は廃止された。)環境基本法では、公害対策だけではなく、その他の多くの環境問題にも対策をした法律である。

これらの、環境関連の法制化などによって、企業が汚染を発生させた場合は、その程度の大小に関わらず、その企業自身が負担するべきという汚染者負担の原則PPP, polluter pays principle)が確立された。このPPPの考え方は、1972年にOECD(経済協力開発機構)が加盟国に勧告したもの。

また、排出する汚染物の濃度を規制する濃度規制だけでなく、汚染物の排出の総量も規制する総量規制も行われるようになった。

また企業側に故意や過失がなくても、企業が汚染させたり被害を発生させたりした場合は、企業に負担させる無過失責任が確立された。大気汚染防止法や水質汚濁防止法で、汚染者の無過失責任が明文化された。(なお、製造物責任法(PL法)でも、無過失責任の方式が採用されている。)

1997年に土地開発などが自然環境に与える影響を事前に調査しなければならない環境アセスメント法(環境影響評価法)が制定された。
2000年に循環型社会形成推進基本法(じゅんかんがたしゃかいけいせいすいしんきほんほう)が制定された。
2002年に土壌汚染対策法(どじょうおせん たいさくほう)が制定された。

近年では、焼却処理施設などから出るダイオキシン(dioxin)など、新たな公害問題が社会問題になった。ダイオキシンには発がん性がある。 2000年、ダイオキシン類特別対策法が施行された(制定は前年の1999年)。

ハイテク汚染

編集
(※ 山川出版などの検定教科書に記述あり)

IC産業では、回路の洗浄に、発がん性の高いトリクロロエチレンなどの有機溶剤が洗浄剤に使われているが、きちんと処理されないと、地下水汚染などの水質汚染になる。

関連項目

編集

職業病

編集

企業の活動による健康被害だが、工場の中の従業員だけに健康被害がある場合については、「公害」と呼ぶ場合もあるが、ふつうは「職業病」(しょくぎょうびょう)などと呼ぶ。

近年では、「アスベスト」(石綿, いしわた、せきめん)という素材をあつかう労働者の健康被害が問題になった(※ 高校の「政治経済」の教科書でも記述あり)。アスベストは、断熱材などとして長いあいだ使われていたが、2009年に禁止になった。 アスベストは、肺がん など肺病の原因になる。

ISO 14000

編集
(※ 山川出版などの検定教科書に記述あり)

製造業などの国際規格の ISO では、ISO 14000シリーズで環境に配慮する事項も含まれている。

国際的な活動をしている企業は、必要に応じて、ISOの認証を受けたりする。

リサイクル

編集
(※ 山川出版などの検定教科書に記述あり)

2000年に、循環型社会形成推進基本法が制定された。

1995年に容器包装リサイクル法が制定され、分別収集などが義務化された。 2001年に家電リサイクル法が施行され、消費者が家電リサイクルの費用を負担することになった。

2005年に自動車リサイクル法が完全施行され、自動車所有者が自動車リサイクルの費用を負担することになった。

新しいタイプの公害

編集
(※ 山川出版などの検定教科書に記述あり)

都市では、自動車の排気ガスによる大気汚染や、光化学スモッグなどが発生している。また、ヒートアイランド現象も、都市に多い。

公害ではないが、ゴミ問題も、都市では大変である。

環境ホルモン

編集
(※ 山川出版などの検定教科書に記述あり)

環境ホルモンが、各地の河川や地下水などで、たびたび検出される。

環境ホルモンとは、生体中のホルモンに似た化学構造を持つために、体内のホルモン作用をかく乱し、生殖機能などの異常をもたらす。 環境ホルモンのことを「内分泌かく乱物質」(ないぶんぴつ かくらんぶっしつ)ともいう。

典型七公害

編集

環境基本法では、以下の7つの種類の公害を、典型七公害(てんけい ななこうがい)としている。(※ 中学公民で教育済み。高校の検定教科書では深入りしてないが、高校の「政治経済」の参考書には紹介されてるので、参考に。)

  • 大気汚染(たいき おせん) ・・・ 排煙などで、空気が、よごれること。
  • 水質汚濁(すいしつ おだく) ・・・ 川や海などの水がよごれること。
  • 土壌汚染(どじょう おせん) ・・・
  • 騒音(そうおん) ・・・
  • 振動(しんどう) ・・・
  • 地盤沈下(じばん ちんか) ・・・ 地下水を大量に取り出すと、地面が低くなる地盤沈下が起きることがある。
  • 悪臭(あくしゅう) ・・・