高等学校政治経済/経済/市場の機能と限界

市場経済の性質

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完全競争市場

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価格と需要と供給との関係。
このようなグラフを需要供給曲線(じゅよう きょうきゅう きょくせん)と言う。
横軸が量であり、需要量または供給量である。
図によっては、たて軸と横軸の取り方が逆の場合もあり、たて軸に量をとり横軸に価格を取る場合もある。

需要供給曲線のグラフを描く時、一般に縦軸に価格を取り、横軸に数量を取るので、需要曲線は右下がりであり、供給曲線は右上がりとなる。

需要と供給の数量により市場価格が決定される。価格の変化で均衡がもたらされることを、価格の自動調節機能という。

しかし、このような調節機構が働く場合とは、市場で自由競争が行われている場合である。 くわしく言うと、今の経済学でいう「完全競争市場」(かんぜん きょうそう しじょう)というのが、価格の自動調節機能の前提である。 完全競争市場とは、売り手と買い手には充分な人数が存在していて、価格の情報について売り手も買い手も同じ情報を持っている、などの条件を満たす市場である。箇条書きで書けば、完全競争市場とは、

売り手と買い手には充分な人数が存在していて、
価格の情報について売り手も買い手も同じ情報を持っている、
市場に参入するのも退出するのも自由であり、
売り手どうしは価格を固定しておらず、買い手どうしも価格を固定していないという市場、

という条件を見たすような市場である。今でいう「完全競争市場」を、アダム・スミスなどの理論は前提にしていた。


※ 完全競争市場の上記4つの条件のうち、どれか一つでも満たされてない市場のことを「不完全競争市場」という。(後述の『独占』などの単元で不完全競争市場について説明する)

(※ 範囲外: )大学の教科書など:では、説明の簡便(かんべん)のため、用語の末尾の「市場」を省き、単に「完全競争」または「不完全競争」のように競争の性質について言及するだけの用例も多い[1][2]


※ 高校の「公共」教科書には、コラムのページで、需要曲線の「シフト」などの話題もある(清水書院の教科書で確認)。※ 当wikiでは図を書くのが面倒なので省略。誰か書いて。

独占と寡占

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市場で、売り手となる企業・生産者が、一社の場合であり、その一社の企業が市場を支配してる場合を独占(どくせん、monopoly)という。独占された市場の場合は、この市場は完全競争市場ではないので、独占の状態では価格調節の機能が働かない。

同様に、売り手となる生産者・企業が、少ない会社数の場合を、寡占(かせん、oligopoly)といい、この場合も価格調節の機能が働きにくくなる。

このように、独占や寡占などのみられる市場を不完全競争市場(imperfect market)という。

※ 経済学的には、不完全競争市場とは、完全競争市場の上記4つの条件のうち、どれか一つでも満たされてない市場のことである[3][4]

そのうち、寡占市場で、有力企業がプライス・リーダーとなって一定の利益を確保できる価格を設定し、他の企業がこれに倣うときの価格を管理価格(かんり かかく)という。この管理価格では、不況でも価格が下がりにくい。一般の市場よりも価格が下がりにくい性質を、価格の下方硬直性(かほう こうちょくせい)という。管理価格では、価格の下方硬直性がみられる。


もし独占や寡占などが起きると、消費者に不便であり、また産業の発展が阻害されてしまう。なので、多くの国では、独占を法規制している。日本でも、独占禁止法(どくせんきんしほう)がある。

このような価格の硬直した寡占市場では、企業どうしの競争で、価格競争は起こりにくい。価格以外の宣伝広告やブランドや意匠(いしょう)などで、企業どうしが競争することになる。このように、価格以外の面で競争することを非価格競争という。寡占市場では非価格競争がみられやすい。

企業の集中

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企業の集中

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ある産業に参入している企業の数が複数であっても、その業種の参入企業どうしが、価格について協定をしあったりすれば、価格競争は起きないので、実質的に独占や寡占と同じである。あるいは株式の持ち合いなどをしていたりすれば、価格競争は起きにくい場合がある。

企業の集中には、つぎのカルテル(企業連合)、トラスト(企業合同)、コンツェルン(企業連携)という3つの形態がある。

カルテル(Kartell)とは、価格などについて協定をすることである。日本では、独占禁止法により、カルテルが原則的には禁止されている。

トラスト(trust)とは、同一業種の企業どうしが合併や統合をして、ひとつの企業になることである。合併は原則的に自由であるが、市場を独占・寡占するおそれの場合には、独占禁止法によって禁止される。

コンツェルン(Konzern)とは、一つの持株会社(もちかぶ がいしゃ)が、さまざまな業種の企業を傘下(さんか)におくことである。日本では戦前の財閥が、コンツェルンの状態である。

独占・寡占の取り締まり

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かつて独占禁止法の例外として、不況時の不況カルテルが、1953年の法改正から認められていたが、1999年の法改正により不況カルテルは禁止された。合理化カルテルも、1953年から認められていたが、1999年の法改正で禁止された。合理化カルテルとは、品質向上を目的としたカルテルである。


日本では、市場の独占・寡占を行う企業などを取り締まる行政委員会として、公正取引委員会が設置されている。

規模の利益

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商品によっては、生産量を増やすほど、商品1個あたりの費用を削減できるものがある。 このような商品を生産している産業の場合、生産量の多い大企業ほど、商品1個あたりの費用を下げることができるので、さらに売れ行きがあがり、利益を増やせ、その大企業の市場でのシェアが上がっていく。このような利益を、規模の利益(きぼのりえき、scale merit スケールメリット )という。

このような、規模の利益の発生する産業では、政府が関与せず自然にまかせておくと、大企業による市場の独占や寡占が発生しやすい。

石油化学コンビナートや、電力の発電・送電、ガスの生産なども、このような規模の利益が発生しやすい産業である。

電力産業やガス産業では、例外的に、政府は、その地域に一社に独占をみとめるかわりに、公共料金で規制をかけている。

ダンピング

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生産者・販売者が、採算を度外視して価格を無理に下げることを不当廉売(ふとう れんばい、ダンピング dumping)といい、独占禁止法などによりダンピングは禁止されている。

なぜ、採算を度外視して価格を下げることが独占につながるのかというと、市場価格を低価格化させるので、競合他社の撤退などにつながったり、あるいは、競合他社を倒産・破産させかねないから、などの理由である。

  1. ^ 塩澤修平『経済学・入門』、有斐閣、2021年4月30日 第3版 第5刷 発行、P94
  2. ^ 柳川隆 ほか著『ミクロ経済学・入門』、有斐閣、2019年11月15日 新版 第4刷 発行、P5
  3. ^ 塩澤修平『経済学・入門』、有斐閣、2021年4月30日 第3版 第5刷 発行、P94
  4. ^ 柳川隆 ほか著『ミクロ経済学・入門』、有斐閣、2019年11月15日 新版 第4刷 発行、P5