波とは

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湖などの静かな水面に小石を投げ込むと、石の着水した箇所を中心にして、波紋(はもん)が広がっていく。

学校のプールに、ボールを投げ込む実験でも、同じように、着水した箇所を中心にして、波紋の広がりがみられる。(もし実験する場合には、学校の理科教員の許可を得ること。)

湖に小石を投げ込む例の場合、このとき水面に浮かんだ木の葉は、波の上下につられて、木の葉の位置も上下に振動はするが、しかし木の葉は波紋の広がる方向には流れていかない。木の葉は、前後左右方向には移動しない。

なお、このように水面にできる波のことを、水面波(すいめんは)という。

このように、波(なみ、wave)というのは、振動の方向(水面波の場合は上下方向)と、波の伝わる方向(水面波の場合は前後左右方向)との2種類の方向を持っている。

この水面波のような、振動の方向と、波の伝わる方向とが、別方向の波を、横波(よこなみ)という。

※ 厳密にいうと、水面波は、横波ではない。液体の表面の波は、横波とは、やや違う機構である。縄跳びなどで一端を持ち上下に振動させると、波のような振動ができるが、それが横波である。厳密には、横波は、固体にしか伝わらない。地学などを学ぶときは、液体の表面の波は横波ではないとして扱うので、注意のこと、
※ 厳密には水面波は横波ではないが、だが読者は初学者なので、当面は、水面波も横波として扱う。
※ なお、海岸の津波(つなみ)で物体が流される場合があるが、実は「津波」は波でない。「津波」は、「波」というよりも、むしろ「流れ」に近い。流体の物理については、高校物理の範囲外なので説明を省略する。
※ なお、海の通常の波は、横波とは違い、もっと複雑である。説明が複雑になるので、海の波については省略する。


水面波における水のように、波を伝える物質のことを媒質(ばいしつ、medium)という。

また、小石の着水した場所のように、波において最初に振動が起きる場所を、波源(はげん)という。

波の発生と進行

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波の発生と進行

波とは、右図のように、波源での振動が、媒質を変位が伝わっていく現象である。

右図のように、波形のもっとも高い場所を(crest)といい、もっとも低い場所を(trough)という。

右図の場合、波源は、手である。波が伝わるには、時間が掛かる。波形が伝わる速度を v とすると、波形の移動距離をΔxとした場合、その間の時間をΔtとすれば、

 

である。

正弦波

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横波
y-x図
ある時刻での波形

波における、山の高さ、あるいは谷の深さを、振幅(しんぷく、amplitude)と言う。振動の大きさは、減衰(げんすい)が無ければ、波源で起きた振動の大きさと等しい。

右図のような波の場合、ある山から、次の山までの長さを、波長(wavelength)という。波長は、谷と谷との間の長さでもある。

山と山との間の長さは、谷と谷との間の長さに等しい。


 
正弦波の発生

一般に波は様々な形を取るが、高校物理では議論の簡単化のため、波の形をある程度、簡単な形状に限定する。

さて、もっとも基本的な形の波として、まず、正弦波(せいげんは、sinusoidal wave)が、高校物理で扱われるので、この正弦波の形の波の物理を考えていこう。正弦波(せいげんは)とは、波形が正弦曲線となる波である。また、右図の手の振動のように、波形が正弦波になるような波源の振動を、単振動(たんしんどう)という。

 
バネによって吊り下げられた重りの振動は、平衡点まわりでは正弦波として近似できる。
 


(※ ここに波のy-t図)

波の波形は移動するが、1つの yーxグラフ だけでは、その移動の速度などを図示できない。

波形と時間に関する関係を図示するため、yーtグラフが描かれることも多い。

波形は形が繰り返してるので、ある位置を1つの山が通過しても、しばらく時間が経過すれば、次の山が到来してきて、同じ形を繰り返す。ここで、同じ波形が現れるまでの時間を周期(しゅうき、period)と呼ぶ。周期は時間経過であるので、単位は秒 [sec] である。また、周期の記号は、しばしば T を用いて書かれる。

" T秒ごとに正弦波中の1点が現れる"が周期の定義であった。ここで、"1秒間にf回正弦波中の1点が現れる"によって振動数(しんどうすう、frequency)を定義する。振動数は、しばしば記号に f を用いて書かれる。上の例では、T秒間に点が1度現れるのだから、1秒間には 1/T回の点が現れる。このことから、一般に正弦波については、

 

が成り立つ。振動数の単位はHz(ヘルツ)が用いられるが、この単位は1/secと等しい。

ここで、物質中を振動が伝わる速度を v と置く。物質の性質によって異なる定数であり、振動の性質にはよらない。例えば、音が空気中を伝わる速度は音の高低に関わらず一定である。波が伝わる速度と波の周期が与えられたとき、波が1周期のうちに進む距離を計算することができる。これは、例えば正弦波では波のある1点(例えば最も振動が正の向きに大きいとき)間の距離に対応する。この距離を波の波長(はちょう、wavelength)と呼ぶ。

波長の図

波長は通常 で表される。波長 は振動が1周期内に進む距離なので、波の速度vと周期Tを用いて計算できる。一般に

 

が成り立つ。

波の波形における位置xと時間tと、その地点での変位 y の関係を式で表せる。なお、式の角度の単位は度数法(°)とする。90°で直角の単位である。

  (公式)

あるいは、

  (公式)

のような式になる。

(※ 2015年の検定教科書では式での表示が発展の単元となってるが、たしか90年代くらいの過去には物理Iで基礎として習っていたと思う。)

なぜ、上記のような式になるかを考えよう。

証明の簡単化のため、

 

の場合を考えよう。

まず、位置x=0のとき、周期と時間の定義から、その波形は、周期と同じ時間が経ったときに波形が1周するはずだから、

 

のような形になるはずである。

つぎに、この振動が速度vで広がることを考えると、点 x での式は

 

となる。なぜなら、地点 x では、振動が   だけ遅れて来るからである。

この式   でも正弦波の公式なのだが、さらに  の関係を用いると、この式は

 

と変形できる。

また、上の式の仮定では 時刻t=0 で 点x=0 では、振動が 0 だったと仮定しているが、実際にはその地点でちょうど正弦運動の最も高い部分や最も低い部分にいてもその波は正弦波となる。この分を取り入れるため、上の式に

 

のように定数(ここでは )を入れることもある。ここで は位相(いそう、phase)と呼ばれる。


  • 問題例
    • 問題

振幅3[m], 周期2[s], 波長0.5[m]で与えられる正弦波の式を述べよ。ただし位相は0としてよい。

    • 解答
 

を使えばよい。答えは

 

となる。


備考(※ 範囲外)

水面を一定リズムでつついた時などの水面波は、たとえそのリズムの周期が精密に一定周期であっても、厳密にいえば、正弦波ではない。なぜなら、水面波の波面の発生のさい、水面の表面張力などが水面に作用していたり、さまざまな力が混ざっており、このため、水面波の波面の形状は、正弦波とは、ややズレている。また、媒質の水が部分的に円運動をしているなど、横波なのか縦波なのか、あまりハッキリとは区別できない。このように、水面波の仕組みは複雑である。

しかし、計算のための概略的な近似として、水面波の水面の形状にも近似的に正弦波を用いる場合がある。


縦波

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縦波の模式図

図のように、ばねを水平に置き、端部を持ち、ばねの長さ方向に振動させると、波の振動の方向と、波の進行方向とが、同じ方向になる。

このように、振動の方向と、進行の方向とが、同じ方向である波を縦波(longitudinal wave)という。

ばねの縦波の場合、図のように、ばねが引き伸ばされて(そ)になった部分と、ばねが集中して(みつ)になっている部分が、出来る。

ばねに限らず、一般に、縦波では必ず、粗密(そみつ)が出来るので、縦波のことを疎密波(compression wave)ともいう。

音の正体である音波も、縦波である。音(音波)は、空気中や液体中を、縦波として伝わる振動である。

※ 数式で縦波を表したい際は、縦波の強さも、(高校レベルでは)三角関数で近似してよい。(入試などでも、そのような出題は多い。)
 
横波の伝わり方。
 
縦波のイメージ。地震のP波は縦波である。



重ね合わせの原理

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重ね合わせの原理

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重ね合わせの原理

2つ以上の波が出会った場合を考えよう。2つ波が重なりあったとき、そこで得られる波の変位は、それらの波の変位を足しあわせたものになる。これを重ね合わせの原理(principle of superposition)という。

つまり、2つの波が重なっている、ある位置での波の変位を、それぞれ元の波の変位を y1 および y2 としたとき、その位置での、重ね合わさった波の変位 y は

 

である。

波どうしは、ぶつかっても壊れず、そのままお互いを通り抜ける。また、波の速度も、重なっても、それぞれの波のもとの速度と同じままである。波が出会ったり、重なったりしても、けっして、相手の波の進行を妨げたりはしないし、相手の波から進行を妨げられたりもしない。つまり、相手の波と接触しても、波の進行は、相手の波とは無関係に、そのまま進行し続ける。このような性質を波の独立性という。

図では、単純な形の横波であらわしたが、縦波や、もっと複雑な形の波(横波・縦波とも)でも、同様に、重ね合わせの原理が成り立つ。

なお、複数の波が重なり合ってできた波を合成波(ごうせいは)という。


定常波

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これからの節では、ひもの波が端(はじ)で反射することを考える。

まず、そのための準備として、2つの波で、波長、振幅の等しくて方向の逆な2つの波があったとして、その波が重なることを考えよう。

 
ウェーブマシン。この動画では、定常波の実験は、していない。

ウェーブマシンを使うと、このような波が端部で反射して、波長・振幅の等しくて方向の逆な波の重なりあう様子が観測できる。

また、ギターの弦(げん)など、弦の振動では、このような波長、振幅の等しくて、方向の重なり合った波形が観測できる。(なお、ギターの場合、両端が固定されているが、このような状態を固定端(こていたん)という。のちの節で後述する。)

これらのような波の合成では、下図のような、波形の進行しない波ができ、これを定常波(ていじょうは、stationary wave)という、または定在波(ていざいは、standing wave)ともいう。

いっぽう、もとの波のように、波形が進む波を進行波(しんこうは)という。

 
両端を固定した場合の定常波。振動していない赤い点が、節(ふし)。節と節の中間に位置する振幅が最大の場所が、腹(はら)。波形が進行していない様子がわかる。

定常波で、まったく振動していない部分を(ふし、node)といい、大きく振動する部分を(はら、loop)という。


では、理論的に定常波を考えていこう。

先ほどの節の合成波のように、こんどは2個の、大きさと波長の等しい進行波の波形を書いて、合成していこう。

1/4 周期ごとに波形を描くと、節と節の間の長さは、もとの波の波長の   となることが分かる。

 
定常波と進行波の関係

節の部分では、合成結果がプラスマイナス0になるので、節では変位しないのである。


自由端反射と固定端反射

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波は、媒質が変化する場所で反射する。また、波は端部で反射する。この節では、端部での波の反射について考える。

  • 固定端
 
固定端反射
合成波は省略してある。波線部は仮想的な波形で、実際には観測できない。
 
合成波つきの固定端反射の図

端部が固定されている場合を固定端(こていたん、fixed end)という。端部では変位が0であるから(端部の変位が0でないと「固定」という条件と矛盾する)、入射波と反射波とを合成した結果は、端部では合成波の変位が必ず0である。このためには、反射波の変位は、入射波と上下が反転していて、大きさは同じある必要がある。

結果的に、固定端の場合の反射波は、変位が上下の反転をしていて、変位の大きさ(絶対値)は同じで、進行方向が逆向きである。


  • 自由端(じゆうたん、free end)
 
自由端反射
合成波は省略してある。

]

自由端反射は、図のように、単に折り返しただけである。

 
合成波つきの自由端反射の図
(※ 記述中)


平面波

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波の干渉

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波の干渉。(イメージ画像)
 
2波の干渉

水面上で2点が振動すると、それぞれの点を波源に波紋が広がる。その2個の波紋が水面上で平面上に広がるので、波紋どうしが重なり合うので、合成波が出来る。

合成した場所によっては、山と山とが重なり合って大きく振動する場所もある。またある場所では、山と谷が重なり合って、振動を打ち消しあって、弱めあう場所もある。

このように、波と波とが重なって、振動を強めあったり弱めあったりすることを 波の干渉 という。(「干渉」、かんしょう、英:interference)

高校物理では、簡単のため、2つの波源の振動数が同じ場合を考える。

どこで干渉が強めあうかは、波長が決まれば、計算できる。この計算法を、高校物理の波の単元で習う。

 
干渉条件の作図が出来上がるまで、「二重スリットの実験」の図で代用。

ある点Pの、波源1からの距離を l1 として( l1 はベクトルではなく絶対値)、波源2からの距離を l2 とした場合(ベクトルではなく絶対値)、距離の差が波長λの整数倍であれば、山と山とが重なり合い、谷と谷とが重なり合うので、

 

である。

また、山と谷の間隔は、  なので、

 

のときに、波が弱めあう。

(※ 記述中)
(※ 作図をお願い)

ホイヘンスの原理

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波の位相が等しい点をつないだ面を、波面(はめん)と呼ぶ。波面についての実験を紹介する。

波面が直線の波を「直線波」(ちょくせんは)などという。

いっぽう、波紋を考えれば分かるように、波源の振動は、円弧上に広がっていく。このような円弧上の波面に注目して、このような、円弧の波面の波を「球面波」などという。

 
ホイヘンスの原理。図の左側が直線波をホイヘンスの原理で考えた例である。

ホイヘンスは、波面を無数の波源の集まりと見なせる、と考えた。次の図を参照せよ。 直線波の場合は、右図の通り。

また、このような ホイヘンスの原理(Huygen's principle) で考えた場合の、無数の波源の1つ1つの作る波の1つ1つを素元波(そげんは、elementary wave)という。


光が空気中からガラスに入ると屈折するが、境界上での波の屈折(くっせつ)などの現象は、ホイヘンスの原理(Huygens' principle)によって、図のように解釈できる。

たとえば直線波は、波源が直線上に並ぶ無数の素元波の重ね合わせと見なせる、とホイヘンスの原理では、考えることができる。

 
ホイヘンスの原理による波の屈折


ある1点から伝わる波(例えば水面に何かを落とした場合)を作り、その様子を観察する。

この場合、生じる波は波が生じた1点(波源)を中心として、円になるはずである。これは、波源からの距離が等しい点は、同じ時刻に等しい位相を持つからである。

上の例は波がある1点から始まる場合である。波が複数の点から始まる場合には生じる波は既に述べた重ね合わせの原理から、これらの重ね合わせになるはずである。このことは例えば、波面が直線になる場合(平面波)のように、波源が連続的に存在する場合にも同様である。

ホイヘンスの原理を用いると波面の進行についていくつかの事柄を述べることができる。これらは個別に実験的に確認できる。

平面波(へいめんは、plane wave)の各点を波源とした場合、平面波の波面上の各点から等距離にある包絡線は、波面に平行な直線となる。このことから、平面波は直進することがわかる。


屈折

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ホイヘンスの原理による波の屈折。(再掲)

また、光が空気中からガラスに入ると屈折(くっせつ、refraction)するが、媒質が変化すると屈折が起きるのは、速度が変わるからである。ホイヘンスの原理の図から分かるように、境界面から先では速度が変化してしまうから、波面が屈折してしまうのである。

また、この屈折の角度の比率から、波の速度の比率を出せる。

  (公式)

である。値  屈折率(くっせつりつ、refraction index)である。


 
屈折率の式計算のための図

なぜなら、右図のように点A,B,C,Dを取ると、

 

よって、

  (公式)

である。

回折

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ホイヘンスの原理による波の回折

回折(かいせつ、diffraction)は、すき間(すきま)が小さいほど、 あるいは 障害物が小さいほど、回折が著しくなる。これは、ホイヘンスの原理によって、すき間などが小さいほど、そのあいだにある素元波の数が少なくなるので、波面を構成している素元波の個数が減り、素元波1つ1つの特徴が露わ(あらわ)になるからだ、と考えられる。

反射
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平面波が壁などにぶつかったとき、壁の各点を波源とした包絡線は、壁と平面波の波面の角度を保って、方向を反対にした平面となる。これは、反射(はんしゃ、reflection)の法則を表す結果である。

 

光の性質

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  • 光の種類

人間が目で感じ取れる光のことを可視光という。その色は光の振動数(波長)によって異なる。太陽光のように、さまざまな波長を含んで色合いの感じ取れない光を白色光という。単一波長のみの光を単色光という。

一般に、光といえば可視光である。しかし、場合によっては赤外線・紫外線も光に含める。これらはともに電磁波の一種である。電磁波については原子分野を参照。

赤方遷移
遠い天体からの光の波長が伸びる現象を赤方遷移という。遠い天体からくる可視光線は地球に到達する頃には波長が長くなって赤外線になっているので、ハワイにあるすばる望遠鏡のような、赤外線にも対応した望遠鏡が有用である。遠くの天体ほど遷移が大きいことが判明しており、宇宙が膨張していると考えられた要因にもなっている。


  • 光の速さ

光が一瞬で伝わることは古代から知られていたが、古代ギリシャの哲学者たちの多くは、光は限りなく速い(光速の値が無限大)と考えていた。

座標の考え方を発明し、虹ができる仕組みを解明したルネ・デカルトや、天体運動論の先駆けとなったヨハネス・ケプラーも、光速の値は無限大と考えていた。

光の速さを最初に求めようとしたのは、イタリアのガリレオ・ガリレイである。ガリレオは、稲妻が輝くとき稲光の始点と終点を観測できることから、光速の値を有限と考え、以下のような実験を行った。

①遠く離れた二つの山の頂上に2人の人物A、Bを立たせ、覆いを被せた灯火を持たせる。
②Aが灯火の覆いを取ってBに光を送る。
③Bは光が見えたら自分の灯火の覆いを取ってAに光を返す。Aはこの間の時間を測定する。
④距離を変えながら同じ測定を繰り返し、距離と時間の差から光速を求める。

この実験では、光速の値が大きすぎたため、求めることはできなかった。しかし、光速が無限ではなく有限の値であると考えた点で意義のある実験である。

デンマークのオーレ・レーマーは、木星を回る衛星の蝕(木星の背後に隠れる現象)を観察し、蝕の間隔が木星と地球の位置関係により異なることから光速の値が有限であることを証明した。この測定結果をもとに、クリスティアーン・ホイヘンスが光速の値を計算した。求まった値は約2.2×108であった。

地球上の測定可能な距離を使って初めて光速を測定しようと試みたのはフランスのアルマン・フィゾーとレオン・フーコーである。2人は初めは共同して光速の測定を試みたが、意見の対立からそれぞれ独自に研究を進めた。

フィゾーは、ハーフミラー(光の一部を反射させ、一部を透過する鏡)と平面鏡の間に歯車を置いた装置で光速を測定した。

歯数N、隙間の数Nの歯車の回転数をf、回転周期をT、平面鏡と歯車の距離をLとする。また、光源は観測者とハーフミラーを結ぶ直線に対して直角の方向にあり、光源を出てハーフミラーに当たった光は平面鏡の方面に反射し、平面鏡から戻ってきた光はハーフミラーを透過して観測者の目に入るものとする。
歯車がゆっくり回転しているときはある隙間Aを通り抜けて平面鏡で反射した光が同じ隙間Aを通って戻るので明るく見える。
fの値を大きくしていくと、反射光が隙間Aの隣の歯Bに遮られ、観測者に届かなく状況が生じる。
最初に最も暗くなるのは、光が往復距離2Lを進む間(1)に歯車の隙間を隣の歯が遮る分だけ回転する(2)ときである。
このとき、(1)に要する時間は 、(2)に要する時間は なので、 すなわち のとき、最初に最も暗くなる。

この実験において、L=8633 m, N=720, f=12.6 /sであった。求めた式に代入すると、cの値は約3.13×108と求まる。

それから1年後、フーコーは、20ヤード(約18m)の距離で光速を測定できる装置を開発した。装置の改良を進めた結果、光速の値は約2.98×108と求まった。

この装置では、水中における光速も測定できた。フーコーは水中に於いて光速の値が空中での値より小さくなることを証明し、光は粒子ではなく波動だとする説が採用された(光粒子説では、光の屈折を粒子が力を受けて加速するためと考えていたので、それが否定された)。なお、今日では光を粒子でも波動でもあるとする説が採用されている(原子物理を参照)。

現在では、真空中での光速の値は2.99792458×108であることが知られている。この値を元に、今日では光が 秒の間に進む距離を1 mと定義している。


  • 光の分散・スペクトル

白色光をプリズムに通すと、赤から紫まで連続的に分かれた光がみえる。これは、屈折率が光の波長によって異なるためで、それぞれの光がそれぞれの波長に応じた角度で屈折するためである。

このように、光が屈折により様々な色の光に分かれることを光の分散という。光をその波長で分けたものをスペクトルという。光を分散させてスペクトルを得る装置を分光器という。

なお、赤外線・紫外線という名前の由来は、光を分散させたときにそれぞれ赤・紫よりも外側の領域に屈折することである。

白熱灯の光は、高温のフィラメントから出る光であり、そのスペクトルは様々な波長の光が広範囲で連続的に並んでいるので、連続スペクトルという。一方、水銀灯などの光は、幾つかの輝いた線(輝線)が飛び飛びに分布しているので、線スペクトルという。一般に、高音の固体・液体から出る光は連続スペクトル、高温の気体が出す光はその気体特有の線スペクトルである。

ナトリウムを含む化合物をガスバーナーで熱し、高温になった蒸気は黄色の線スペクトルを示す。一方、高温の白熱灯の光をナトリウム蒸気に通すと、白熱灯の連続スペクトルから黄色の線スペクトルが抜けたスペクトルを得る。これは、ナトリウムが黄色の線スペクトルを吸収したことを示し、これを吸収スペクトルという。

太陽の連続スペクトルの中には多くの暗線(フラウンホーファー線)が見られる。これは、太陽から発せられた連続スペクトルを持つ光が、太陽や地球の大気に一部を吸収されて生じた吸収スペクトルである。フラウンホーファー線の波長から、太陽近辺に水素・ヘリウム・ナトリウム・マグネシウム・カルシウム・鉄などの元素が分布することが判明した。

虹は、空気中に浮かんでいる水滴によって太陽光が2回屈折するときの分散で起こる。このとき、入射光と反射する赤色の光との角度は約42°である。通常は入射光の水滴内での反射は1回だが、反射が2回起こることもある。このとき、虹の外側に暗い虹が出現し、内側の明るい虹を主虹、外側の暗い虹を副虹という。虹は本来は完全な円形であり、条件が良ければ環状になった虹を観測できる。虹に関連した自然現象としては、ハロ・幻日・環天頂アーク・環水平アーク・幻日環・ラテラルアークなどがある。


文化的な話をすると、「虹の袂には宝物が埋まっている」とする伝説が世界各地に残っている。また、虹の色の数は文化によって異なる。日本・韓国・オランダ・イタリアでは7色だが、アメリカ・イギリスでは6色、ドイツ・フランス・中国・メキシコでは5色、インドネシアでは4色、南アジアでは2色と、かなり差がある。これは、色の見方・その色を表す語彙の有無が国や文化によって異なるためである。


  • 光の散乱

光が微細粒子に当たると、通常の反射とは異なり、光が四方に散る。このような現象を、光の散乱という。

大気中の気体分子のように光の波長より小さな粒子による散乱では、波長が短いほど散乱される割合が大きい。太陽光が大気を通過するとき、波長の短い青系統の光は大気中で多く散乱され、私たちの目に入る。よって、晴れた昼間の空は青く見える。夕方は太陽光が大気中を長い距離を通過するため、最後まで散乱されずに残った赤系統の光が目に多く入り、空が赤く見える。

なお、大気の密度の(むら)や目の感度などの事情で、空は紫ではなく青く見える。

光の波長と同じ程度の大きさの粒子による散乱では、どの色もほぼ同じ強さで散乱されるので、様々な波長の光が混ざった白色光に見える。雲がほぼ白色なのは、これが理由である。


  • 偏光

太陽光や電灯の光は、様々な方向に振動する横波の集まりであり、このような光を自然光という。一方、自然光が結晶などを通過したとき、振動方向が特定の方向に偏る場合がある。このように、振動方向が偏った光を偏光という。偏光を作る板を偏光板という。自然光を1枚の偏光板に通して見るとき、偏光板を回転させて通過する光の振動方向を変えても、明るさは変化しない。これは、自然光には様々な方向に振動する光が含まれているからである。自然光を2枚の偏光板に通してみるとき、片方の偏光板を回転させると回転角によって明るさが変化し、丁度90度になるところで完全に何も見えないほど暗くなる。

光が縦波であれば、波の進行方向と振動方向が等しいので偏光は起こらない。偏光が起こることから、光は縦波でなく横波であることがわかる。

自然光がガラスや海面などに反射するとき、特定方向の偏光を多く含むようになる。このとき、偏光板を用いて反射光を取り除くと、反射面の先がよく見えるようになる。これは、カメラの偏光フィルタや釣りの際のサングラスなどに応用されている。

屈折

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平面波が[屈折率(くっせつりつ、refractive index)の異なる2つの物質の間を通過したとき、その波面は物質の屈折率の比に応じて屈折(refraction)する。このことも反射の場合と同様の理由で示される。ただし、屈折率の違いに応じて、物質中の波の速度が異なることを用いる。

作図

また、屈折率に応じてある反射角に対する屈折角は変化するが、その大きさを表す式をw:スネルの法則(Snell's law)と呼ぶ。

 

ここで、  はそれぞれ入射角、屈折角、入射する側の物質の屈折率、入射される側の物質の屈折率に対応する。


  • 全反射

屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象が起きる。これを全反射(ぜんはんしゃ、total reflection)という。全反射は、入射角が大きくなると起こる。

 
屈折(左図)と全反射(右図)。

全反射が起こる限界の角度を臨界角(りんかいかく、critical angle)という。 臨界角よりも入射角が大きいと全反射が起こる。

臨界角 θc は以下のように表される。

 
n1 : 入射元の物質の屈折率
n2 : 入射先の物質の屈折率
蜃気楼

レンズ

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  • レンズの種類
  • 凸レンズによる実像
  • 凸レンズによる虚像
  • 凹レンズによる実像
  • 凹レンズによる虚像
  • レンズの写像公式
  • 組合せレンズ
顕微鏡・望遠鏡の原理
{{{2}}}
  • 鏡の種類
  • 凹面鏡による実像
  • 凹面鏡による虚像
  • 凸面鏡による実像
  • 凸面鏡による虚像
  • 鏡の写像公式

回折

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  • 回折とは
 
回折

平面波が細いスリットを通過したとき、通過した後の波は円状になる。これは、波源が1点に収縮されたためである。

  • ヤングの実験
  • 回折格子
  • 薄膜干渉
  • ニュートンリング