たとえばヒトは、動物界・セキツイ動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒト である。 イヌは、動物界・セキツイ動物門・哺乳綱・食肉目・イヌ科・イヌ属・イヌ である。
このように、属(ぞく、genus)・科(か、family)・目(もく、order)・綱(こう、class)・門(もん、divisio)・界(かい、kingdom) という階層に分類される。
リンネの二名法
編集ある生物の種(しゅ)の名前には、世界共通の学名がある。学名のつけかたには、二名法(にめいほう、binominal)という命名法にもとづく国際規約が定められている。 たとえばヒトの学名は Homo sapiens 。 このように、二名法では2単語のラテン語で表す。最初の Homo は属名(ぞくめい、genus)。 sapiens が種小名(しゅしょうめい、species epithet)である。このように二名法では、属名と種小名を併記する。このようなな命名法を、18世紀の中ごろにカール・フォン・リンネが確立した。
属名 | 種小名 | |
---|---|---|
イネ | Oryza | sativa |
ヒト | Homo | sapiens |
トキ | Nipponia | nippon |
イヌ | Canis | familiaris |
ネコ | Felis | domesticus |
いっぽう、ヒト や イヌ や ネコ などと言った、ある種について、日本で一般的に使われる呼び名は、和名(わめい)である。
界とドメイン
編集かつて生物の分類で「界」というのが、よく使われ、「二界説」や「五界説」などが使われていたが、1977年代ごろからリボソ-ムRNAなどの研究が進み、やがて、それらRNAなどの研究の知見を反映した「ドメイン」という分類が生物の分類に使われるようになった。
界の分け方
編集- 二界説
植物界と動物界の2つに分ける。昔からある分類法。
- 三界説
単細胞生物からなる原生生物界(げんせい せいぶつかい)を加えて、植物界と原生生物界と動物界の3つに分ける。ヘッケルが提唱した。また、へッケルは生物の分類を、樹木形であらわす系統樹(けいとうじゅ、phylogenetic tree)として表現した。
- 五界説
全ての生物は真核生物と原核生物とに分類される。この知見を生物の分類に反映して、五界説などが提唱された。 五界説は、つぎの5つの界からなる。
- 原核生物よりなるモネラ界。真核生物のうち、単細胞生物や、構造の単純な生物からなる原生生物界。いわゆるキノコなどの分解者からなる菌界。そして植物界と動物界。
この5つの界からなる。
ホイタッカーやマーグリスによって提唱された。 原生生物界は、他の界に入らなかった系統の寄せ集めである。
食物連鎖の観点から見ると、植物界・動物界・菌界は、それぞれ、植物=生産者、動物=消費者、菌=分解者というふうに理解できる。
生物の3ドメイン
編集リボソームRNAの構造をもとにした分類が、カール・ウーズにより1977年代後半に提唱された(六界説)。
そして、この分類のためウーズは、ドメインという分類を提唱し、すべての生物は 細菌ドメイン または 古細菌ドメイン または 真核生物ドメイン の3つのグループのうちの、いずれかのグループに属すると1990年に提唱した(3ドメイン説)。 ドメインは界より上位の分類である。
遺伝子などの解析結果から、古細菌は、細菌よりも真核生物に近いことが分かっている。 五界説における原生生物界、菌界、植物界、動物界の4つの界は、真核生物ドメインに属する。
- 古細菌(アーキア)
- メタン生成菌、好塩菌、好熱菌。
- 細菌(バクテリア)
- 大腸菌、ネンジュモ(シアノバクテリア)、枯草菌、硝酸菌、クラミジアなど。
なお大腸菌もネンジュモも、単細胞の原核生物である。現在では、「細菌」の分類の条件として、原核生物であることを要求するのが一般的である。
- ※ 「ネンジュモ」とは聞きなれない生物だが、センター入試に良く出た。2014年センターと2015年センターに出た。
シアノバクテリアは光合成を行える。なのでシアノバクテリアをついつい植物に分類しがちであるが、しかし上述のような理由からシアノバクテリアは細菌に分類する場合が多い。
(光合成などを行う)独立栄養生物であるかどうかは、「細菌ではない」かどうかは無関係である。もし、シアノバクテリアは「光合成を行うので独立栄養生物である」という理由で、仮に「細菌でない」(仮)と仮定すると、硝酸菌の硝酸からのエネルギー摂取の行為も独立栄養生物の行為なので、硝酸菌が「細菌ではない」(仮)になってしまい、不合理である。
また、「細菌は原核生物」とする前提をもとにすると、酵母菌は単細胞であるが真核生物なので、「細菌」でないことになる。(※ 教科書では特に明記されてないが、センター試験で出題された。)そのため酵母菌は、カビやキノコ(ともに真核生物)の仲間であると考えられている。
「菌」であるかどうかは、原核生物とは無関係。たとえばキノコなどは「子のう菌」(しのうきん)に分類される。(※ 詳しくは、後述する。)
動物の分類と系統
編集胚に、内胚葉(endoderm)、中胚葉(mesoderm)、外胚葉(ectoderm)というふうに、3つの胚葉がある動物を三胚葉性という。
いっぽう、外胚葉と内胚葉というふうに2種類の胚葉しかない動物を二胚葉性といい、クラゲやサンゴやカイメンなどが二胚葉性である。 海綿動物と刺胞動物は二胚葉性の動物である。
クラゲは刺胞動物門であり、クラゲの胚は、中胚葉を持たない。
海綿動物と刺胞動物を除く、他の多くの動物は三胚葉性である。 三胚葉性の動物のうち、原口(げんこう、blastopore)が口になるのが旧口動物(きゅうこう どうぶつ,protostomes)。原口または、その付近が、肛門(こうもん、anus)になるのが新口動物(しんこう どうぶつ,deuterostomes)。
脊椎動物は新口動物である。ヒトデ、ウニは新口動物。
旧口動物はゴカイ、プラナリア、イカ、昆虫、エビなど。
無胚葉性
編集カイメンは、胚葉が分化しない、無胚葉性の動物である。カイメンには、組織・器官の分化が無い。 カイメンには神経が無い。
体内の体壁に、多くの えり細胞 が存在し、体内に取り入れた水とともに、プランクトンをこしとって食べる。 えり細胞には、1本の べん毛 がある。このべん毛の動きで水流を作り、体内に水を取り入れている。
カイメンの えり細胞 が、原生生物の えりべん毛虫 に似ているので、えりべん毛虫から進化してカイメンが出来たと考える研究者が多い。
カイメンは、海綿動物である。
二胚葉性の動物
編集- 刺胞動物(しほう どうぶつ)
クラゲやヒドラやイソギンチャクなどが、刺胞動物。
形状は、放射相称である。 動物食性である。接触したものを、刺胞(しほう)で刺し、捕食する。 肛門が無い。排泄物は、口から排出する。
触手には刺胞(しほう)という細胞小器官があり、これを外敵などに刺して、外敵から身を守ったり、食物を捕食したりする。
神経が分化しており、散在神経系である。
三胚葉性の動物
編集冠輪動物
編集扁形動物(へんけいどうぶつ)、環形動物、輪形動物、軟体動物をまとめて、冠輪動物(かんりんどうぶつ)という。 近年の分子データの解析から、これら冠輪動物どうしは、比較的、近縁であることが分かってる。
扁形動物(へんけいどうぶつ)、環形動物、輪形動物、軟体動物は、旧口動物である。
- 扁形動物(へんけいどうぶつ)
プラナリアなどが扁形動物。 体腔を持たない。頭部に脳や眼を持つ。呼吸器や循環器を欠く。肛門が無い。口は体の中央にあり、腹部のあたりに口がある。
プラナリアは淡水中で生活する。
- 環形動物
ミミズやゴカイやヒルが環形動物。
多数の体節を持つ。太い2本の神経を持つ、はしご形神経系。
発生の過程で、トロコフェア幼生の時期を持つ。
- 軟体動物
イカやタコなどの頭足類や、貝などが軟体動物。 外とう膜という、内臓を保護する膜を持つ。殻は外骨格であり、外とう膜から分泌されたカルシウムなどによって、殻が作られている。
貝殻は炭酸カルシウムなどの石灰質。
発生の過程で、トロコフェア幼生の時期を持つ。
なお、イカやタコなどの頭足類は、体の中央の眼がある部分が頭部である。つまり、頭部から足が生えている。(だから、「頭足類」と呼ぶ。) 頭足類を、足を下にした向きで見た場合、頭足類の体の上端のほうの、ふくらんでいる部分は、胴であり、頭部ではない。頭足類の上部のほうのふくらんだ部分は胴なので、中には内臓がつまっている。
脱皮動物
編集線形動物と節足動物をまとめて、脱皮動物(だっぴどうぶつ)という。 近年の分子データの解析から、これら脱皮動物どうしは、比較的、近縁であることが分かってる。
線形動物と節足動物は、旧口動物である。
- 節足動物
エビやカニなどの甲殻類。昆虫類。クモなど。 動物の中で、最も種類の多いのが、節足動物である。
体表の殻は、キチン質からなる外骨格。 体節からなる。神経系は、はしご形神経系。
成長の過程で脱皮(だっぴ)を行う。
排出器は、甲殻類は、腎管が排出器。 甲殻類以外は、マルピーギ管という器官が排出器。
- 線形動物
センチュウなどが線形動物。 クチクラに被われている。脱皮する。
新口動物
編集キョク皮動物(きょくひどうぶつ、棘皮動物)、原索動物、脊椎動物が、新口動物である。 ヒトデ、ウニは新口動物。
- キョク皮動物
ヒトデやウニ、ナマコが、キョク皮動物。
水管系を持つ。この水管系が、呼吸器や循環器として働いている。運動は管足(かんそく)で行う。管足は、水管系と、つながっている。
- 原索動物
原索動物には、ナメクジウオやホヤなどがある。
発生の段階で、脊索(せきさく)を持つ。ナメクジウオは、終生、脊索を持つ。ホヤの場合は、幼生のときには脊索を持つが、成体になると脊索が退化する。
環状神経系を持つ。
ホヤの幼生は、オタマジャクシのような形をしており、名前も「オタマジャクシ幼生」という。
- 脊椎動物
脊椎動物では脊索は退化し、脊椎が出来る。
植物の分類と系統
編集植物の外表面はクチクラ層で覆われている。 光合成色素(photosynthetic pigment)として、クロロフィルaとクロロフィルbを持つ。
種子植物・コケ植物・シダ植物がある。
シダ植物と種子植物には、維管束(いかんそく)がある。
コケ植物とシダ植物は、胞子で繁殖する。種子植物は、種子で繁殖する。
コケ植物
編集胞子で繁殖する。光合成をしない。維管束を持たない。ゼニゴケ、ツノゴケ、スギゴケなどが、コケ植物。
普通に見かける植物体は配偶体(核相:n)である。
胞子は、受精せず、発芽して、株の形状である配偶体になる。
胞子には、雄になる胞子と、雌になる胞子とが、別々にある。このように、雄と雌とは、株が異なるのが、普通。それぞれ雄株または雌株という。
普通は、コケ植物には、根・茎・葉の区別が無い。
雄株の造精器で精子が作られる。雌株の造卵器で卵が作られる。
シダ植物
編集胞子で繁殖する維管束植物である。
普通に見かける植物体は胞子体(核相:2n)である。減数分裂によって、胞子が生じる。
胞子体には根・茎・葉の区別があり、維管束がある。
胞子は発芽して、前葉体という配偶体(n)になる。配偶体には、維管束は無い。前葉体が成熟すると、造精器または造卵器が生じる。造精器で精子(n)が作られる。精子が、雨の日などに、水を伝わって泳いで、造卵器の内部にある卵細胞(n)に到達すれば、受精して、受精卵(2n)となる。 この受精卵から、胚発生と体細胞分裂によって、胞子体が発生する。
種子植物
編集種子植物のうち、イチョウやマツなどは、子房が無く、胚珠がむきだしなので、裸子植物(らし しょくぶつ)という。
いっぽう、胚珠が子房の中にあるのを被子植物(ひし しょくぶつ)という。
菌類
編集菌糸(きんし)という糸状の構造が、多数、組み合わさって、体が出来ている。
光合成の能力が無い。光合成色素を持たない。 細胞壁の主成分は、多糖類の一種であるキチン。 胞子で繁殖。
種類は、接合菌類、子のう菌類、担子菌類、がある。
- 接合菌類
クモノスカビやハエカビなどが、接合菌類である。
無性生殖が通常だが、有性生殖も行う。
有性生殖では、菌糸が接合して接合胞子を作る。
- 子のう菌類(しのうきんるい)
アカパンカビ、アオカビなどが、子のう菌類 である。
- 担子菌類(たんしきんるい)
マツタケ、シイタケなどが、担子菌類 である。
子実体(しじつたい)
- ※ 酵母菌を、キノコやカビの仲間(つまり 子のう菌類 や担子菌類のグループ)に分類する場合がある。なぜなら酵母菌は、真核生物であるので。(いっぽう、大腸菌や乳酸菌は原核生物。)(※ 数研出版や2015年センター試験が、その見解。)
原生生物界
編集真核生物のうち、植物界・菌界・動物界には、属さないものを、原生生物(げんせい せいぶつ)という。単細胞のものもあれば、多細胞のものもある。
原生動物
編集アメーバやゾウリムシなどの単細胞生物。ミドリムシも原生動物である。ミドリムシは、葉緑体を持ち、光合成を行う。 べん毛や仮足、繊毛などで運動を行う生物が多い。
ミドリムシは、べん毛で運動する。(ミドリムシを原生動物ではなく藻類に分類する場合もある。その場合、ミドリムシはケイ藻類またはミドリムシ類に分類される。)
変形菌類
編集ムラサキホコリなどの真性粘菌類、およびキイロタマホコリなどの細胞性粘菌などが、変形菌類。
藻類
編集分類
編集ケイ藻類など。光合成を行う、独立栄養生物である。水中で生活する。 光合成色素に、クロロフィルaが必ず含まれている。
ミドリムシを藻類に分類する場合もある。(ミドリムシは、藻類のうちのケイ藻類に分類される場合もあれば、藻類のうちのミドリムシ類という独立した類に入れる場合もある。)
藻類には、ケイ藻類、緑藻類、紅藻類、褐藻類、シャジクモ類などがある。
ケイ藻類と褐藻類とは、同じ光合成色素を持つ。
- ケイ藻類
ケイ酸の殻を持つ。 クロロフィルaとクロロフィルcを持つ。(ケイ藻類と褐藻類とは、同じ光合成色素)
ミドリムシが、ケイ藻類に分類される場合もある。
- 緑藻類
アオサやアオノリなど。クラミドモナスやクロレラなどは単細胞生物であるが、緑藻類。 ボルボックスは細胞群体であるが、緑藻類。
緑藻類は、クロロフィルaとクロロフィルbを持つ。
シャジクモ類を、緑藻類に含める場合もある。
- 紅藻類
アサクサノリやテングサ。 クロロフィルaを持つ。
- 褐藻類
コンブやワカメなど。 コロロフィルaとクロロフィルcを持つ。
解説
編集- 光合成色素と水深
光合成色素の違いは、届く波長の違いであり、水深の違いが原因。浅い海にいるのは、緑藻類であり、赤色光を光合成に利用している。深い海にいるのは、紅藻類であり、緑色光を利用している。 中間の深さの海にいるのが、褐藻類であり、青色光を利用している
- 植物の祖先と、光合成色素
植物は、クロロフィルaとbを持ち、これは緑藻類の光合成色素と同じである。 したがって植物は、緑藻類から進化してきた、と考えられている。シャジクモ類と陸上植物で、細胞分裂の様式が似ていることから、近縁だと考えられている。 陸上植物の進化は、緑藻類を祖先として、シャジクモ類を経て、陸上植物が進化してきた、と考えられている。