Bash

概要

Bash（Bourne Again Shell）は、Brian Foxによって開発されたUNIXシェルで、GNUプロジェクトの一環として1989年にリリースされました。Bourneシェルの後継として設計され、現在最も広く使用されているコマンドラインインターフェースの1つです。

基本構文

コマンドライン基礎

プロンプト表示: 通常ユーザーは$、root（管理者）は#
コマンド実行: コマンド名 [オプション] [引数]
基本的なショートカット:
- Ctrl + C: 実行中のコマンドを中断
- Ctrl + D: EOF（End of File）を送信、シェルを終了
- Ctrl + L: 画面をクリア
- Tab: コマンドやファイル名の補完

変数

変数の定義: 変数名=値（空白を含まない）
変数の参照: $変数名または ${変数名}

name="John"
echo $name    # John
echo ${name}  # John

環境変数

PATH: コマンド検索パス
HOME: ホームディレクトリ
PWD: 現在の作業ディレクトリ
USER: 現在のユーザー名
SHELL: 現在使用中のシェル

制御構造

条件分岐

if文

if [ 条件 ]; then
    コマンド
elif [ 条件 ]; then
    コマンド
else
    コマンド
fi

case文

case 値 in
    パターン1)
        コマンド
        ;;
    パターン2)
        コマンド
        ;;
    *)
        コマンド
        ;;
esac

ループ構造

for文

for 変数 in リスト
do
    コマンド
done

while文

while [ 条件 ]
do
    コマンド
done

関数

関数定義

function_name() {
    コマンド
    return 値
}

引数の扱い

$1, $2, ...: 位置パラメータ
$#: 引数の数
$@: 全ての引数（配列として）
$*: 全ての引数（単一の文字列として）

入出力制御

リダイレクション

>: 標準出力のリダイレクト（上書き）
>>: 標準出力のリダイレクト（追記）
<: 標準入力のリダイレクト
2>: 標準エラー出力のリダイレクト
&>: 標準出力と標準エラー出力の両方をリダイレクト

パイプライン

|: コマンドの出力を次のコマンドの入力として渡す

command1 | command2

文字列処理

文字列操作

${#string}: 文字列の長さ
${string:position}: 部分文字列の抽出
${string//pattern/replacement}: パターン置換

パターンマッチング

*: 0個以上の任意の文字
?: 任意の1文字
[...]: 文字クラス
[^...]: 否定文字クラス

配列

配列操作

配列の定義: array=(要素1 要素2 ...)
要素の参照: ${array[index]}
全要素の参照: ${array[@]}
配列の長さ: ${#array[@]}

スクリプト作成のベストプラクティス

エラーハンドリング

set -e: エラー時に実行を中断
set -u: 未定義変数参照時にエラー
trap: シグナルハンドリング

デバッグ

set -x: コマンドトレース
set -v: 入力行の表示

セキュリティ考慮事項

入力のバリデーション
適切な権限設定
セキュアな一時ファイル作成

高度な機能

プロセス制御

ジョブ制御
バックグラウンド実行
プロセス置換

正規表現

=~演算子による正規表現マッチング
grep, sed, awkとの連携

ヒストリー機能

コマンド履歴の基本

history - コマンド履歴の表示
!n - 履歴番号nのコマンドを実行
!! - 直前のコマンドを実行
!文字列 - 最近の「文字列」で始まるコマンドを実行
!?文字列 - 最近の「文字列」を含むコマンドを実行
!$ - 直前のコマンドの最後の引数を参照
!* - 直前のコマンドの全ての引数を参照

履歴の制御

HISTSIZE - メモリ上の履歴サイズ
HISTFILESIZE - 履歴ファイルのサイズ
HISTFILE - 履歴ファイルの場所（デフォルト: ~/.bash_history）
HISTCONTROL - 履歴の制御オプション
- ignorespace - スペースで始まるコマンドを履歴に残さない
- ignoredups - 連続する重複したコマンドを履歴に残さない
- ignoreboth - 上記両方を有効化

履歴の検索

Ctrl + R - 履歴の逆方向検索
Ctrl + S - 履歴の順方向検索（要設定）
検索中のキー操作:
- Enter - 検索したコマンドを実行
- → - 検索したコマンドを編集
- Ctrl + G - 検索をキャンセル

ジョブコントロール

ジョブの基本操作

command & - コマンドをバックグラウンドで実行
Ctrl + Z - 実行中のジョブを一時停止
jobs - バックグラウンドジョブの一覧表示
fg - 一時停止したジョブをフォアグラウンドで再開
bg - 一時停止したジョブをバックグラウンドで再開

ジョブ指定子

%n - ジョブ番号nのジョブを指定
%+ または %% - 現在のジョブを指定
%- - 一つ前のジョブを指定
%文字列 - コマンドラインが「文字列」で始まるジョブを指定

ジョブの終了制御

wait - バックグラウンドジョブの終了を待機
disown - ジョブをシェルのジョブリストから削除
nohup - HUPシグナルを無視してコマンドを実行

ディレクトリスタック

基本操作

pushd ディレクトリ - ディレクトリをスタックに追加して移動
popd - スタックから最上位のディレクトリを削除して移動
dirs - ディレクトリスタックの表示
- dirs -v - 番号付きでスタックを表示
- dirs -c - スタックをクリア

スタックの参照

~n - スタック内のn番目のディレクトリを参照
cd ~n - スタック内のn番目のディレクトリに移動
pushd +n - スタック内のn番目のディレクトリを回転

行編集とキーバインド

基本的なキーバインド

カーソル移動

Ctrl + A - 行頭に移動
Ctrl + E - 行末に移動
Ctrl + F - 一文字前に移動
Ctrl + B - 一文字後ろに移動
Alt + F - 一単語前に移動
Alt + B - 一単語後ろに移動

編集操作

Ctrl + U - カーソル位置から行頭までを削除
Ctrl + K - カーソル位置から行末までを削除
Ctrl + W - カーソル位置から単語の先頭までを削除
Alt + D - カーソル位置から単語の末尾までを削除
Ctrl + Y - 最後に削除したテキストを貼り付け
Ctrl + T - カーソル位置の文字と1つ前の文字を入れ替え

履歴操作

Ctrl + P - 前のコマンド
Ctrl + N - 次のコマンド
Alt + < - 履歴の最初に移動
Alt + > - 履歴の最後に移動

キーバインドのカスタマイズ

bind - キーバインドの表示と設定
~/.inputrc - キーバインド設定ファイル

# .inputrcの例
"\C-x\C-r": re-read-init-file
"\e[A": history-search-backward
"\e[B": history-search-forward

編集モード

set -o emacs - Emacsモード（デフォルト）
set -o vi - viモード
編集モードの確認: echo $EDITOR

補完機能

Tab - コマンド/ファイル名の補完
Tab Tab - 複数の補完候補を表示
Alt + ? - 補完候補の表示
Alt + * - 全ての補完候補を挿入

カスタム補完

complete - 補完の設定
compgen - 補完候補の生成
~/.bash_completion - 補完スクリプトの保存場所

この内容は、Bashの対話的な使用を効率化する重要な機能を網羅しています。特にヒストリーとキーバインドの機能は、日常的なシェル操作の効率を大きく向上させます。

外部リンク

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