Carbon
Carbon は、Googleによって開発が進められている次世代プログラミング言語です。C++の後継として設計され、既存のC++コードベースとの高い互換性を保ちながらも、最新の言語設計思想や開発効率を取り入れています。本ハンドブックでは、Carbon言語の基本的な特徴、使用方法、ツールチェーンのセットアップ方法を解説します。
特徴
編集Carbonの主要な特徴は以下の通りです:
- C++との互換性: 既存のC++コードとシームレスに連携。
- モダンな設計: 簡潔な構文と安全なメモリ管理。
- 高速なコンパイル: コンパイラの効率化により短いビルド時間を実現。
- 移行のしやすさ: C++からの段階的な移行をサポート。
対象読者
編集- C++の後継言語に興味がある開発者
- 新しいプログラミング言語の学習を楽しむエンジニア
- モダンな言語設計を探求するプログラマー
目次
編集Carbonとは
編集Carbonは、以下の課題を解決するために設計されています:
- C++の複雑な構文を簡略化
- 安全性の向上(特にメモリ管理と型安全性)
- モダンなプログラミングパラダイムの採用
Carbonはオープンソースプロジェクトとして開発されており、GitHub上で公開されています。
インストール
編集必要な環境
編集Carbonの使用には以下が必要です:
- LLVM/Clangツールチェーン
- CMake(バージョン3.15以上)
- Python 3.x(ビルドスクリプト用)
ソースコードからのビルド
編集以下はCarbonコンパイラをビルドする手順です。
手順
編集# 必要なリポジトリをクローン $ git clone https://github.com/carbon-language/carbon-lang.git $ cd carbon-lang $ ./scripts/run_bazelisk.py run //toolchain -- help
動作確認
編集ビルド後、Carbonコンパイラが正常に動作するか確認します。
$ ./carbon --version Carbon Compiler version 0.1.0
基本文法
編集"Hello, World!"プログラム
編集以下はCarbonでの"Hello, World!"プログラムの例です。
- hello.carbon
package sample api; fn Main() -> i32 { Print("Hello, World!"); return 0; }
実行
編集$ ./carbon hello.carbon Hello, World!
変数と型
編集- var.carbon
package sample api; fn Main() -> i32 { var x: i32 = 10; var y: i32 = 20; Print("{0}",y / x); return 0; }
関数定義
編集Carbonでは関数はfn
キーワードを使って定義します。
- fn.carbon
package sample api; fn Addition(a: i32, b: i32) -> i32 { return a + b; } fn Main() -> i32 { Print("5 + 7 = {0}",Addition(5, 7)); return 0; }
C++との相互運用性
編集Carbonの最大の特徴の一つは、既存のC++コードと連携できる点です。
C++コードの呼び出し
編集CarbonからC++関数を呼び出す例です。
C++コード
編集- example.cpp
#include <iostream> extern "C" void Greet() { std::cout << "Hello from C++!" << std::endl; }
Carbonコード
編集- example.carbon
package sample; extern "C" fn Greet(); fn Main() -> i32 { Greet(); // C++関数を呼び出し return 0; }
コンパイルとリンク
編集$ clang++ -c example.cpp $ ./carbon example.carbon example.o
高度な機能
編集Carbonの高度な機能として以下があります:
- ジェネリクス: 型安全な汎用プログラミングをサポート。
- オプション型:
null
を回避する設計。 - 強力なエラーハンドリング: 例外ではなくエラーコードを推奨。
演習問題
編集問題1: 基本文法の理解
編集Carbonでフィボナッチ数列を計算するプログラムを作成してください。
問題2: C++との相互運用
編集CarbonからC++のクラスを呼び出すプログラムを作成してください。