LLVM/WebAssemblyサポート

WebAssembly（Wasm）は、軽量かつセキュアなバイナリフォーマットであり、主にWebブラウザでの実行を目的とした仮想マシンで動作するコードを提供します。LLVMは、WebAssemblyターゲットのためのバックエンドを提供しており、C/C++やRustなどの言語をWebAssembly形式にコンパイルすることが可能です。

WebAssemblyの特徴

WebAssemblyは次のような特徴を持っています。

プラットフォーム非依存性 - Webブラウザを含む様々な環境で動作するコードを生成できます。
高速性 - 事前にコンパイルされたバイトコードを実行するため、JavaScriptよりも高速に動作します。
セキュリティ - サンドボックス内で実行されるため、安全な実行環境を提供します。

LLVMのWebAssemblyバックエンド

LLVMのWebAssemblyバックエンドは、LLVMの他のバックエンドと同様に、コンパイルの最終段階でWebAssemblyバイトコードを生成します。これにより、既存のLLVMベースのコンパイラ（例: Clang）を使用して、WebAssembly向けのバイナリを生成することができます。

主な機能

C/C++のサポート: Clangを使用して、CおよびC++プログラムをWebAssemblyにコンパイル可能。
最適化: LLVMの最適化パスが使用できるため、効率的なWebAssemblyバイナリを生成。
デバッグサポート: WebAssemblyにはデバッグ用の情報を埋め込むことができ、ソースマップなどを利用したデバッグが可能。

WebAssembly対応のLLVMツール

LLVMには、WebAssemblyをターゲットとするための以下のツールがあります。

Clang: C/C++コードをWebAssemblyにコンパイルするために使用します。

  clang --target=wasm32-unknown-unknown -o output.wasm input.c

LLD: LLVMのリンクツールで、WebAssembly用のバイナリをリンクします。

  lld --target=wasm32-unknown-unknown input.o -o output.wasm

WebAssemblyのユースケース

LLVMによるWebAssemblyのサポートにより、以下のようなユースケースが考えられます。

Webアプリケーション: C/C++で書かれたアプリケーションをWebブラウザで高速に実行する。
ゲーム開発: 高パフォーマンスが求められるゲームの一部をWebAssemblyで実装し、ブラウザ上で動作させる。
エンベデッドシステム: 安全で高速な実行環境が求められるシステムでWebAssemblyを利用する。