はじめに

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NetBSDは、高い移植性とクリーンな設計を特徴とするオープンソースのUNIX系オペレーティングシステムです。1993年に誕生し、そのモットー「Of course it runs NetBSD」が示す通り、多様なハードウェアアーキテクチャに対応しています。NetBSDは、組み込みシステムから大規模サーバーまで、幅広い環境で利用されています。このハンドブックでは、NetBSDの基本的な使い方から、その特徴や応用までを解説します。

NetBSDの基本概念

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NetBSDの特徴

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NetBSDは、以下のような特徴を持っています。

  1. 高い移植性:
    • NetBSDは、50以上のハードウェアアーキテクチャに対応しており、組み込みシステムからサーバーまで幅広い環境で動作します。
    • クリーンでモジュール化された設計により、新しいプラットフォームへの移植が容易です。
  2. 安定性と信頼性:
    • NetBSDは、堅牢なカーネル設計と徹底したテストにより、高い安定性を実現しています。
    • セキュリティにも注力しており、定期的なセキュリティアップデートが提供されます。
  3. Pkgsrc:
    • NetBSDのパッケージ管理システムであるPkgsrcは、20,000以上のソフトウェアパッケージを提供します。
    • Pkgsrcは、NetBSD以外のOS(Linux、macOS、Solarisなど)でも利用可能です。
  4. ライセンス:
    • NetBSDは、BSDライセンスの下で提供されており、商用利用や改変が自由です。

NetBSDのインストール

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インストールメディアの準備

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NetBSDのインストールには、公式サイトからインストールイメージをダウンロードします。ISOイメージやUSBインストーラを作成し、起動可能なメディアを準備します。

インストール手順

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  1. インストールメディアからシステムを起動します。
  2. インストーラの指示に従い、言語、キーボードレイアウト、ディスクパーティションなどを設定します。
  3. ネットワーク設定を行い、必要なパッケージを選択します。
  4. インストールが完了したら、システムを再起動します。

基本的なシステム操作

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ログインとシェル

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NetBSDのデフォルトシェルはAlmquist Shellash)です。これは、Bourne Shellと互換性がありながら、軽量で効率的な設計が特徴です。ログイン後、シェルプロンプトが表示されます。

$ echo $SHELL
/bin/sh

ユーザー管理

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新しいユーザーを追加するには、useraddコマンドを使用します。

doas useradd -m -s /bin/sh username
doas passwd username

パッケージ管理(Pkgsrc)

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Pkgsrcを使用してソフトウェアをインストールします。まず、Pkgsrcツリーを取得します。

cd /usr
doas cvs checkout -P pkgsrc

次に、パッケージをビルドしてインストールします。

cd /usr/pkgsrc/category/package
doas make install clean

バイナリパッケージをインストールする場合は、pkg_addコマンドを使用します。

doas pkg_add package_name

ネットワーク設定

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ネットワークインターフェースの設定

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NetBSDのネットワーク設定は、/etc/rc.confファイルで行います。例えば、静的IPアドレスを設定するには、以下のように記述します。

auto_ifconfig=YES
ifconfig_em0="inet 192.168.1.100 netmask 255.255.255.0"
defaultroute="192.168.1.1"

設定を反映させるには、ネットワークサービスを再起動します。

doas /etc/rc.d/network restart

ファイアウォールの設定

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NetBSDでは、pf(Packet Filter)を使用してファイアウォールを設定できます。/etc/pf.confファイルにルールを記述し、pfを有効にします。

doas pfctl -f /etc/pf.conf
doas pfctl -e

システム管理

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プロセス管理

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実行中のプロセスを確認するには、psコマンドを使用します。

ps aux

特定のプロセスを終了するには、killコマンドを使用します。

kill -9 PID

ログの確認

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システムログは、/var/log/ディレクトリに保存されます。dmesgコマンドでカーネルメッセージを確認できます。

dmesg | less

セキュリティ

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ユーザー権限の管理

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NetBSDでは、doasを使用して特権コマンドを実行できます。doasを設定するには、vidoasコマンドで/etc/doasersファイルを編集します。

doas vidoas

セキュリティアップデート

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NetBSDのセキュリティアップデートは、定期的に提供されます。システムを最新の状態に保つために、以下のコマンドで更新します。

doas sysupgrade

カスタマイズとチューニング

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カーネルの再構築

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NetBSDでは、カーネルをカスタマイズして再構築できます。カーネルソースを取得し、設定ファイルを編集します。

cd /usr/src/sys/arch/$(uname -m)/conf
doas cp GENERIC MYKERNEL
doas vi MYKERNEL

カーネルをビルドしてインストールします。

doas ./build.sh kernel=MYKERNEL
doas ./build.sh install=/

起動サービスの管理

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起動時に実行されるサービスは、/etc/rc.confファイルで管理します。例えば、sshdを有効にするには、以下のように記述します。

sshd=YES

NetBSDの応用

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組み込みシステム

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NetBSDは、組み込みシステム向けのディストリビューションとしても利用されます。rump kernelを使用することで、最小限のリソースでNetBSDの機能を活用できます。

仮想化

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NetBSDは、XenVirtualBoxHyper-VBhyveなどの仮想化環境で動作します。また、rump kernelを使用して、ユーザースペースでカーネル機能を実行することも可能です。

おわりに

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NetBSDは、その高い移植性と安定性から、多様な環境で利用される強力なオペレーティングシステムです。このハンドブックが、NetBSDの基本的な操作から高度なカスタマイズまでを理解する一助となれば幸いです。NetBSDの世界を探索し、自分に合った使い方を見つけてください。

参考資料

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