QuickJSエンジン
QuickJSエンジンは、Fabrice Bellardによって開発された軽量なJavaScriptエンジンです。ECMAScript 2020の仕様に準拠し、高速な実行と低メモリ消費を特徴としています。
特徴
編集主な特徴
編集- 完全なECMAScript 2020サポート
- 低メモリフットプリント
- 高速な起動時間
- バイトコードコンパイル/実行のサポート
- CやC++との容易な統合
技術的特徴
編集- インクリメンタルガベージコレクション
- 正規表現エンジン内蔵
- JSON解析器内蔵
- BigInt及びBigDecimalサポート
インストール方法
編集Linuxでのビルド
編集git clone https://github.com/bellard/quickjs cd quickjs make sudo make install
実行可能ファイル
編集インストール後、以下の実行可能ファイルが利用可能になります:
- qjs - QuickJSインタプリタ
- qjsc - QuickJSコンパイラ
基本的な使用方法
編集コマンドラインでの実行
編集JavaScriptファイルを実行するには:
qjs script.js
対話モードで起動するには:
qjs
コードのコンパイル
編集JavaScriptファイルを実行可能ファイルにコンパイルするには:
qjsc -o output script.js
プログラミング例
編集基本的なプログラム例
編集import * as std from 'std'; function hello() { std.out.printf("Hello, QuickJS!\n"); } hello();
モジュールの使用例
編集import { readFile, writeFile } from 'std'; async function processFile(filename) { const content = await readFile(filename); // 処理を行う await writeFile('output.txt', content); }
組み込み関数とモジュール
編集標準モジュール
編集- std - ファイルI/O、システムコール等の基本機能
- os - オペレーティングシステム関連の機能
- worker - Web Workerのサポート
グローバルオブジェクト
編集- console - コンソール出力
- performance - パフォーマンス測定
- BigInt - 大きな整数の処理
組み込みオブジェクト
編集console.log( Reflect.ownKeys(globalThis) .filter(q=> typeof q === 'string') .filter(q=> typeof globalThis[q] === 'function') .filter(q=> "prototype" in globalThis[q]) .filter(q=> globalThis[q] === globalThis[q].prototype.constructor) .sort().map(x => `=== globalThis.${x} ===`) .join("\n") );
globalThis.AggregateError
編集globalThis.Array
編集globalThis.ArrayBuffer
編集globalThis.BigInt
編集globalThis.BigInt64Array
編集globalThis.BigUint64Array
編集globalThis.Boolean
編集globalThis.DataView
編集globalThis.Date
編集globalThis.Error
編集globalThis.EvalError
編集globalThis.Float32Array
編集globalThis.Float64Array
編集globalThis.Function
編集globalThis.Int16Array
編集globalThis.Int32Array
編集globalThis.Int8Array
編集globalThis.InternalError
編集globalThis.Map
編集globalThis.Number
編集globalThis.Object
編集globalThis.Promise
編集globalThis.RangeError
編集globalThis.ReferenceError
編集globalThis.RegExp
編集globalThis.Set
編集globalThis.SharedArrayBuffer
編集globalThis.String
編集globalThis.Symbol
編集globalThis.SyntaxError
編集globalThis.TypeError
編集globalThis.URIError
編集globalThis.Uint16Array
編集globalThis.Uint32Array
編集globalThis.Uint8Array
編集globalThis.Uint8ClampedArray
編集globalThis.WeakMap
編集globalThis.WeakSet
編集デバッグとプロファイリング
編集デバッグ機能
編集- --debug オプションでデバッグ情報の出力
- エラートレース機能
- メモリ使用量の監視
プロファイリング
編集- --profile オプションで実行時プロファイリング
- メモリ使用状況の分析
- 実行時間の測定
パフォーマンスの最適化
編集メモリ使用の最適化
編集- オブジェクトプールの使用
- 不要なクロージャの回避
- 適切なガベージコレクション設定
実行速度の最適化
編集- バイトコードコンパイルの活用
- 適切なデータ構造の選択
- ホットパスの最適化
セキュリティ考慮事項
編集サンドボックス化
編集- モジュールアクセスの制限
- ファイルシステムアクセスの制限
- システムコールの制限
セキュアな実行環境
編集- 適切な権限設定
- メモリ保護機能
- 入力検証
トラブルシューティング
編集一般的な問題
編集- メモリリーク対策
- スタックオーバーフロー対策
- モジュール解決の問題
エラー処理
編集- エラーメッセージの解釈
- デバッグ情報の活用
- エラーログの分析
参考文献
編集- QuickJS公式サイト
- ECMAScript 2020仕様書
- QuickJSのソースコードとドキュメント