この章では、2年生で学んだ三角形と四角形の性質をもとにして、円周角と中心角の性質を扱います。

円周角と中心角

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円周角と中心角

中心がOである円を円Oと呼ぶ。円Oにおいて、円周上の2点A , Bをとったとき、AからBまでの円周の部分を 弧AB (こAB)といい、 と書く。  を弧ABに対する 中心角(ちゅうしんかく) という。また、弧ABを中心角   に対する弧(こ)という。

円Oの周上の点で、弧AB上にはない点Pをとったとき、  を弧ABに対する 円周角(えんしゅうかく) という。また、弧ABを円周角   に対する弧という。

右の図のように、弧ABに対する円周角は   のようにいくつもできる。しかし、弧ABに対する中心角   は1つに決まる

円周角の定理

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中心角と円周角には次の性質がある。

円周角の定理

1つの弧に対する円周角の大きさは一定であり、その弧に対する中心角の半分である。

この定理を証明するためには、円Oの弧ABに対する円周角の1つを   として、  を示せばよい。

中心Oが 直線PAまたは直線PB上にある場合

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中心Oが   の辺上にある場合

Oが直線PB上にある場合について示せば十分である。   の外角であるから、三角形の1つの外角はそれととなり合わない2つの内角の和に等しいので

 

  の辺OP , OAは等しいから

 

(1)、(2)より

 

したがって

 

よって、中心Oが 直線PB上にある場合、  が成り立つ。

中心Oが ∠APB の内部にある場合

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中心Oが   の内部にある場合

直線POと円Oとの交点のうちPでない方をCとすると、   の外角であるから

 

  の辺OP , OAは等しいから

 

したがって

 

   の外角であるから

 

  の辺OP , OBは等しいから

 

したがって

 

(1)と(2)の左辺どうしと右辺どうしをそれぞれ加えると

 

したがって

 

すなわち

 

よって、中心Oが   の内部にある場合、  が成り立つ。

中心Oが ∠APB の外部にある場合

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中心Oが   の外部にある場合

直線POと円Oとの交点のうちPでない方をCとすると、   の外角であるから

 

  の辺OP , OAは等しいから

 

したがって

 

   の外角であるから

 

  の辺OP , OBは等しいから

 

したがって

 

(1)と(2)の左辺どうしと右辺どうしをそれぞれひくと

 

したがって

 

すなわち

 

よって、中心Oが   の外部にある場合、  が成り立つ。

以上で考えられるすべてのPの位置について証明されたので、「1つの弧に対する円周角の大きさはすべて等しい」ことが成り立つことがわかった。

半円の弧に対する円周角

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半円の弧に対する中心角は   であるから、円周角は   である。半円の弧に対する弦は直径であるから、次の定理が得られる。

直径と円周角(ターレスの定理)
 

線分ABを直径とする円の周上にA、Bと異なる点Pをとれば

 

である。

円周角と弧

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円周角と弧

右の図の円Oで、円周角   が等しい場合、円周角の定理により

 
 

となる。

  であるから、(1)、(2)より

 

となる。

1つの円において等しい中心角に対する弧の長さは等しいので、

 

が成り立つ。


また、右の図の円Oで、 が等しい場合、1つの円において等しい長さの弧に対する中心角は等しいので

 

となる。

よって、円周角の定理により

 

が成り立つ。


円周角と弧

1つの円において

  1.  等しい円周角に対する弧は等しい。
  2.  等しい弧に対する円周角は等しい。

円周角の定理の逆

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高等学校数学A/図形の性質#円周角の定理の逆も参照。

円Oの周上の点をA,B,Cとし、  とする。また、直線ABについて点Cと同じ側に点Pをとる。このとき、Pが円Oの周上、内部、外部にある場合について、   との大きさを比べる。

点Pが円Oの周上にある場合

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点Pが円Oの周上にある場合

円周角の定理により

 

点Pが円Oの内部にある場合

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点Pが円Oの内部にある場合

APの延長と円周の交点をQとする。   における   の外角であるから

 

となる。 円周角の定理により、  であるから、

 

よって

 

点Pが円Oの外部にある場合

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点Pが円Oの外部にある場合

APと円周の交点をQとする。   における   の外角であるから

 

となる。 円周角の定理により、  であるから、

 

式を変形すると

 

よって

 

円周角の定理の逆

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上で調べたことから、点Pを直線ABについて点Cと同じ側にとったとき

 

ならば、点Pは円Oの周上にあることがわかった。したがって、円周角の定理の逆として次のようにまとめられる。

円周角の定理の逆
 
円周角の定理の逆

4点A,B,P,Qについて、P,Qが直線ABについて同じ側にあるとき,

 

ならば,この4点は1つの円周上にある。

円周角の定理の応用

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円の接線

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まずは1年生で学んだ円の接線について復習する。

直線が円とただ1点で出あうとき、この直線は円に接する(せっする)といい、この直線を円の 接線(せっせん) といい、出あう1点を 接点(せってん) という。

円の接線
 
円の接線

円の接線は、接点を通る半径に垂直である。

円外の点からの接線

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円外の点からの接線

円O外の点Aから円Oにひけたとし、その接点をP,P'とする。 AP,AP'は円Oの接線であるから、

 
 

であるから、点P,P'はAOを直径上とする円周上にあることがわかる。


このことをふまえて、円O外の点Aから円Oに接線をひくには、次のようにすればよい。

 
円外の点からの接線のひき方
  1.  点AとOを結ぶ。
  2.  線分AOの垂直二等分線をひき、AOとの交点をO'とする。
  3.  点O'を中心として半径OO'の円を書き、円Oとの交点をP,P'とする。
  4.  直線AP,AP'をひく。

接線の長さ

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接線の長さの証明

   において

AP,AP'は接線だから

 

共通な辺だから

 

円Oの半径だから

 

(1)、(2)、(3)より斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいから

 

したがって、 


線分APまたはAP'の長さを、Aから円Oにひいた接線の長さという。

上で調べたことから、次のようにまとめられる。

接線の長さ

円外の1点からその円にひいた2つの接線の長さは等しい。