中学校の学習 > 中学校数学 > 中学数学3年 > 中学数学3年 2次方程式

今までに習った方程式は、

  • 一次方程式(一元一次方程式)
  • 連立方程式(二元一次連立方程式)

の2つであるが、3年生では新しい方程式を学ぶ。たとえば、次の問題を考えてみよう。

問題
一辺が3mである正方形の花壇があります。今度、この花壇の大きさを変えることになりました。縦、横をそれぞれ同じだけ長くしたところ、面積は16m2増えました。何m長くしたでしょうか。

縦横をそれぞれx m長くしたとすると、

(3+x )2 = 32+16

という式ができる。しかし、左辺を展開すると

x2+6x +9

となり、左辺が二次式となる。これは、今までのやり方では解くことができない。では、いったいどのようにしてこのような方程式を解けばよいのだろうか。この章で学んでいこう。

二次方程式とは何か

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先ほどの問題を考えてみよう。

(3+x )2 = 32+16

という式を立てることができた。この式を整理すると

x2+6x -16 = 0

という式になる。この方程式は、左辺がxの二次式であり、右辺は0となっている。一般に、移項したり展開して式を整理したときに、「xについての二次式が0に等しい」という形になる方程式を二次方程式(にじほうていしき)という。

3x2-72 = 0、 x2-2x+1 = 0

なども、左辺がxの二次式で右辺が0であるから、二次方程式であるといえる。

xの二次方程式について、式を満たすx の値をその方程式の(かい)といい、解を求めることを方程式を解くという。

二次方程式の解き方

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平方根

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前章では平方根を学んだ。平方根の定義を利用して、二次方程式を解くことができる。

平方根の章でも学習したが、「x2=a を満たす数x は、a の平方根である」という。これを利用して解いてみよう。

ax2 = b

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最初に、この形の二次方程式を解いてみよう。

例題
ある数x を2乗して3倍したところ、12になりました。x の値を求めなさい。

問題から方程式を立てると、 3x2 = 12 となる。このような、ax2 = b の形の式は、両辺をa で割り、x2 = n という形にすることで解くことができる。

 

ここで、記号±はプラスとマイナスを組み合わせたもので、 と書くと「 または 」という意味になる。

この問題は、

 
答え、±2

と解くことができる。


(x + a )2 = b

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上の二次方程式を拡張する。先ほどは左辺が(単項式)2の形だったが、今度は(多項式)2の形である。

例題
ある数x に3を加え、2乗したところ、答えは64になりました。ある数x を求めなさい。

これを式にすると、(x +3)2 = 64 となる。このような(x + a )2 = bの形の式は、かっこの中をひとつのまとまりとして考え、平方根を使って2乗をはずすことで解くことができる。

x +a =A とおくと、(x + a )2 = bA2=b と変形できる。これは、先ほどやった方程式と同じ形である。

これを踏まえて解いてみよう。

 

上では(x +3)をA で置き換えているので、5行目で元に戻している。式を文字で置き換えるのは便利であるが、置き換えたら必ず戻すようにしなければ、正しい解が得られないため、注意が必要である。

また、6行目で左辺の"+3"を移項している。普通は、±の前に移項した項を書く。その次の7行目では-3 ± 8の計算をしているが、このときに注意が必要である。±8とは、+8と-8をあわせて書いたものだから、正負両方の場合について計算しなければならない。

最後に、x =5,-11としているが、二次方程式では普通、解は2つできる。2つの解が得られた場合は、このように2つ並べて書く。2つの解があることを示す","は、小数点と見間違えることがないように書く。

このような解き方で、次の問題も考えてみよう。

例題
二次方程式 2(x -3)2 = 10 を解きなさい。


これも先ほどと同じように解くが、前の問題とは違って左辺のかっこの前に係数2がついている。最初にこの係数をとり、前の問題と同じ形にしてから解く。

 

3と とは足すことも引くこともできないので、このままにしておく。また、このような場合は、 というように分けて書くことはせず、±でひとつの式にまとめておくのが普通である。


因数分解

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二次方程式の解き方にはもうひとつ、因数分解を用いた方法がある。ここでは、その練習をしよう。

例題
x2+3x -4 = 0 を解きなさい。


このようなものは、因数分解を用いて解くことができる。

左辺が因数分解できる形なので、因数分解をしてみる。すると、

(x -1)(x +4) = 0

となる。ここからはどうやって解けばいいだろうか。

左辺は2つの式の積の形になっている。また、右辺は0である。つまり、(x -1)という式と(x +4)という式をかけた結果、0になったということである。かけて0になるのだから、どちらか一方の式は0でなければならない。つまり、

x -1 = 0 

x +4 = 0

が成り立つようにxの値を求めればいいわけである。どちらの式が0になってもかければ0になるから、両方の場合について解を求める。

x -1 = 0 のとき、 x = 1
x +4 = 0 のとき、 x = -4

であるから、解はx =1と、x =-4の2つが考えられる。この2つを元の式に代入してみると、式は正しくなるから、解はこの2つで正しいことになる。だから、この問題の答えはx = 1, -4となる。

一般に、二次方程式

ax2 + bx + c = 0

の左辺を因数分解できるとき、その因数分解の結果から解を求めることができる。

さて、この様な方程式はどうだろうか。

例題
2x2+8x +8 = 0

これを解いてみよう。


まず、左辺を因数分解して、

2(x +2)2 = 0

となる。かっこの前に係数がついている。かっこの前の係数を取るために両辺を2でわって、

(x +2)2 = 0

ここで、x の値を考えてみよう。2乗して0になるのだから、かっこの中は当然0になるはずである。かっこの中が0になるようにx の値を求めると、x =-2 がでる。この他には考えられない。

答え:x = -2

このように、二次方程式では解がひとつだけの場合がある。

このような解は二つの解がだぶっていると考えて「重解(じゅうかい)」という。詳しくは高等学校の数学で学習する。
注意

最後になるが、

x2 = 4xxを両辺から1つずつ消去して
x = 4

としてはいけない。何故か考えよ。


因数分解できない場合の解き方

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次の問題を考えてみよう。

問題
x2+8x -4 = 0 を解きなさい。


この式の左辺を因数分解しようとしてみてもうまくいかない。そこで、このような方程式は(x + a )2 = b の形に変形して解く。これは、2乗を完成させるので、平方完成(へいほうかんせい)とよぶ。

まずは-4を移項する。

x2+8x = 4

次に左辺を(式)2の形に変形したい。しかし今のままでは左辺はそのような形にすることができないので、両辺に同じものを加えてうまく調節する。公式

(a + b )2 = a2 + 2ab + b2

と思い出す。いま作りたい形は という形の式なので、公式のaをx、bを とすればうまくいくことがわかる。つまり、元の式の両辺に を加えればよい。

x2+8x +42 = 4 +42

左辺が因数分解できるようになったので、因数分解し、右辺も計算をする。

(x +4)2 = 20

後は前に学習したとおり計算する。

 


二次方程式の解の公式

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では、この解き方を応用して「二次方程式を解く公式」を作ってみよう。

スタートは二次方程式の一般的な形である。

ax2 + bx + c = 0

二次方程式を解くときにはx2に1以外の係数がついていると計算が大変になる。そこで、両辺をx2の係数aで割る。a=0のときはこの方程式はそもそも二次方程式ではないので今は考えない。

 

つぎに、定数の項を移項する。

 

左辺を平方の形に因数分解できるようにするために、両辺にx の係数の半分の2乗を加える。

 

左辺を因数分解し、右辺を整理する。

 

左辺のかっこをはずす。

 

 のときはこのような変形はできないので、今は のときだけを考えることにする。この後の計算をしやすくするため、±は分子に入れておいた。ここで、左辺をx のみにするために、移項する。

 

これで完成である。二次方程式の解を求めるときにはこの公式に当てはめて考えると簡単に解を求めることができる。

二次方程式の解の公式
 の二次方程式について、
 

これを利用して問題を解いてみよう。

問題1
x2-3x +1 = 0 を解きなさい。


a =1、b =-3、c =1を公式に代入して、

 
問題2
  を解きなさい。


a =1、b =4、c =-3を公式に代入して、

 
問題3
  を解きなさい。


a =2、b =-1、c =-6を公式に代入して、

 
 
 


二次方程式の利用

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例題
一辺の長さが10mの正方形がある。この正方形の縦の長さをx m短くし、横の長さをx m長くしたところ、面積が64m2になった。正方形の縦と横の長さを何mずつ変えただろうか。

この問題を二次方程式を用いて解いてみよう。

辺の長さを変えたあと、長方形の縦の長さは10-x (m)、横の長さは10+x (m)となるから、長方形の面積は (10-x )(10+x ) (m2)となる。 辺の長さを変えると、面積が64m2になるので、次のように方程式を立てることができる。

 

この方程式を解いてみると、

 

方程式の解は6と-6の2つが得られたが、ここでxとは辺を長くしたり短くしたりする長さであった。長さは必ず0以上のはずであり、-6mという長さはない。しかし、6mだけ長くしたり短くしたりすると、きちんと問題文のようになる。したがってこの問題の答えは6mである。

このように、方程式を用いて問題を解いたとき、方程式の解として得られた解のすべてが問題の条件を満たすとは限らない。方程式を解くことによって問題を解こうとする際には、方程式の解が問題の条件を満たしているかどうか、よく吟味する必要がある。