放射線 編集

原子力発電の核燃料(nuclear fuel)には、ウラン(ドイツ語: Uran)などが用いられる。

ウランなど、一部の物質からは放射線(ほうしゃせん)(英:radial rays ラディアルレイズ)が出る。放射線は、とてもエネルギーが強いので、多く浴びすぎると危険である。 放射線の性質として、目に見えないが、ぶつけられた物を電離してイオン化する性質がある。また、透過能力を持ち、物体を通りぬける。

まとめると、放射線の代表的な性質として

  1. 目に見えない。
  2. 物体を通り抜ける能力(透過力)がある。
  3. 原子や分子をイオン化する能力(電離能、電離作用)がある。

放射線によって、放射線をあびた物が電離をする理由は、放射線のエネルギーがとても強いので、電子をはじきとばすためである。

この放射線の電離作用などにより、生物のDNAが傷ついてしまう。ウランや核燃料・核廃棄物など、放射性物質の管理に、厳重な管理が必要な理由の一つは、人体および生物の健康上の理由である。

放射性同位元素が放射性崩壊を起こして別の元素に変化する性質を、放射能(ほうしゃのう)(英: radioactivity) と言う。 ウランなど、放射線を出す物質をまとめて、「放射性物質」などと言う。


核燃料などの無い自然界にも、ごくわずかながら、放射線があり、自然放射線(しぜんほうしゃせん)と言う。 自然放射線の由来は、宇宙からの自然放射線や、あるいは大地や大気などの、ごくわずかな放射性物質(天然のウランなど)などの影響である。

(地上での)自然放射線については、自然界での量は少なく被害をおそれる必要は無い。

しかし、核燃料や、核廃棄物などによる放射線は、自然の放射線と比べて、とても量が大きいので、人工の放射線および放射能は危険である。よって、これらの核物質の取り扱いには厳重な注意や管理が必要である。


放射線の種類 編集

 
放射線の透過性

放射線には、いくつかの種類がある。 アルファ線(α線)、ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)のほか、エックス線(X線)がある。ウランなどの放射性物質からはアルファ線、ベータ線、ガンマ線が発される。

なお、放射線の「α線」、「β線」などのように、通常、放射線の表記ではギリシャ文字を小文字で「α線」、「β線」、「γ線」を書く。
いっぽう、エックス線を英字で書く場合は、大文字で「X線」を書くのが普通である。

これら放射線は、それぞれ特徴がちがう。

アルファ線(α線、英:alpha ray アルファレイ)
アルファ線の正体は、ヘリウムの原子核であることが分かっている。原子ではなく、電子をもたない状態の原子核である。つまり、陽子2個と中性子2個のみである。電子を持たないため、アルファ線はプラスの電気をもっている。(プラスの電気は、陽子に由来。)
ベータ線(β線、英:beta ray ベータレイ)
正体は電子である。よってベータ線は、マイナスの電気である。
ガンマ線(γ線、英:gamma ray ギャンマレイ)
正体は電磁波の一種である。よってガンマ線に電気は無い。
エックス線(X線、英:X ray エックスレイ)
正体は電磁波の一種である。よってエックス線に電気は無い。

これら放射線の正体が明らかになった方法の一つは、放射線を電界や磁界に置くと、その電気に応じて放射線の進行方向が変わるので、正体が分かった。

ヘリウムそのものは、危険ではない。同様に、電子そのものも危険ではない。「電磁波」というと聞きなれないが、じつは自然界の光も電磁波の一種である。

放射線の応用 編集

 
CT機器

放射線の応用は、原子力発電のほか、その透過能力をいかして、エックス線が医療のレントゲンなどにも用いられている。

医療のCT(シー・ティー)スキャンとPET診断では、放射線を利用している。(※ 備考: PETとは、陽電子放射断層撮影装置のことであるが、PET診断のために、被験者に放射性物質をふくむ特殊なブドウ糖やグルコース類を摂取してもらっている。)


また、工業では、透過能力をいかした非破壊検査(ひはかいけんさ)(英: Non Destructive Inspection, 略:NDI)などにも応用されている。

空港の荷物検査の機器(カバンなどの中身を見る機器)も、放射線を利用しているのが一般的である。(※ 参考文献: 大日本図書 および 教育図書)

また、自動車タイヤなどに使われるゴムやプラスチックなどで、ある種類のゴムやプラスチックの製造工程において、放射線を照射することで、耐熱性を向上させることができるゴムやプラスチックがあることが知られており、実際に自動車産業で活用されている。(※ 最近の中学理科の教科書には、この話題が書いてある。)

ジャガイモに放射線を照射すると、芽が出にくくなり、長期保存できるようになるので、すでに実用されている。

(※ 範囲外: )余談だが、日本ではジャガイモ以外の食品に放射線を照射することは、食品衛生法などの法律で禁じられている[1](一方、アメリカでは食肉の滅菌の目的での放射線照射が合法であり、実用されている[2])。

その他、歴史研究の分野での放射性年代測定など、放射線には多くの活用がある。

放射線の観測と測定 編集

霧箱(きりばこ) 編集

(※ 中学理科のの検定教科書の範囲内。)

霧箱(きりばこ)という装置により、飛行機雲のように、放射線のとおった道筋(みちすじ)が見える装置がある。

霧箱のなかには、蒸気がつまっている。放射線が入射すると、その放射線の作用により、飛行機雲のように道筋が液化するので、放射線の道筋が見えるという仕組みである。

(ウィキペディアに霧箱のわかりやすい画像がないので、検定教科書などを参照してください。)

放射線測定器 編集

 
放射線測定器(※ 外国製かもしれないので、あまり、画像中の数字や文字などは気にしないでください。)


放射線の強さの単位 編集

放射線の強さの単位には、ベクレル(単位:Bq)およびシーベルト(単位:Sv)がある。

シーベルトは、人間が、その量の放射線をあびたときの影響の度合いによる、放射線の強さの度合いである。

自然放射線の強さをシーベルトであらわすと、およそ年間 2.4ミリシーベルトが世界平均である。シーベルトの単位記号の表記は Sv と書く。ミリシーベルトは mSv と書く。 年間 2.4 mSv が自然放射線の世界平均である。

ベクレルは、人体の影響は考えておらず、放射線の強さのみを考えている。


放射線の発見の歴史
 
ウィルヘルム・レントゲン

1895年にレントゲン(人名)は、真空放電の実験をしていたとき、放電管から、目に見えない未知のなにかが出ていて写真フィルムを感光させることを発見し、この(写真フィルムを感光させる)未知のなにかをX線と名づけた。

 
レントゲンが撮影したX線写真

1896年、ベクレル(人名)は、ウランから、X線に似た何かが出ていることを発見しました。(ベクレルの発見した)この何かは、のちに放射線と名づけられました。

レントゲン以降、キュリー夫妻など多くの科学者が、放射線の性質を解明していきました。


  1. ^ John McMurry ほか原著『第4版(原書7版) マクマリー生物有機化学 基礎化学編』、菅原二三男 監訳、平成25年1月25日 発行、p370の訳注
  2. ^ John McMurry ほか原著『第4版(原書7版) マクマリー生物有機化学 基礎化学編』、菅原二三男 監訳、平成25年1月25日 発行、p370のコラム本文