電流とは単純には電気の流れのことである。電気の流れで実際に動いているのは電子であり、金属などの電気を通すもので電子は動くことが出来る。ここでは、電流の細かい性質には触れず、電流の基本的な性質について扱う。

電流

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ここでは、電流の性質についてまとめる。しかし、電流について述べる前に、電流がどのようなものから出来ているかについて簡単にまとめる。

静電気

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電気を通さない物質を不導体または絶縁体(ぜつえんたい)(英語: insulator、インサレイター)という。絶縁体同士をこすり合わせることで、物質に静電気(せいでんき)(英語: static electricity)を貯めることが出来る。静電気が溜まった状態のことを帯電(たいでん)(英語: electrostatic charge)しているという。 静電気は磁石と同じく、触れることなくお互いの間に力を働かせることが知られている。例えば、下敷きをこすった後に髪の毛に近づけると髪の毛が逆立つが、これは静電気によって、髪の毛が下敷きに引っ張られているということである。また、静電気にはプラスとマイナスがあり、磁石のNとSのようにプラス同士、マイナス同士を近づけると反発し、プラスとマイナスを近づけると引き合う性質がある。こすった時にプラスとマイナスのどちらに帯電しやすいかは、絶縁体の性質による。

静電気は電流と関係があり、帯電したものを金属に近づけると瞬間的に電気が流れ、放電(ほうでん)(英語: electrostatic discharge)が起こることが知られている。冬に金属で出来た物に触れようとするとパチッと痛みを感じるのは、皮膚表面が帯電していて、金属に触れた瞬間に放電が起こるからである。実際には静電気として蓄積されているものと電流として流れているとされているものは、どちらもw:電子(でんし)と呼ばれるw:粒子であることが知られている。電子は容易に観察することは出来ないため、ここではその性質については詳しく述べない。(詳しくは高等学校理科 物理Iなどを参照。)

電気回路

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空気といった電気をほとんど通さない物に比べて、金属は電気をかなり通しやすい。正しい方法で金属の導線を繋ぎ合わせることで、電流の流れる「道」を作ることが出来る。この「道」を繋いだ一セットをw:電気回路(でんきかいろ)(英語: electric circuit)と呼び、電気回路の要素を記号を使って表した設計図を電気回路図と呼ぶ。電気回路図は形式が標準化されているので、電気回路図を見て電気回路を組み立てたり、逆に作った電気回路を電気回路図に表したりということが誰にでも出来る。例えば、電池(直流電源)は

 

と表される。

抵抗(ていこう)(電流を流れにくくする物体のこと)は、回路図では

 

と書く。抵抗器とも言う。電熱線は電流を流すと発熱する抵抗器である。

「抵抗器」=「抵抗」=「電熱線」

これらは、高校入試の範囲では、基本的には同じものである。



また、導線は直線で表される。電池には正極(+極)と負極(-極)があるが、回路記号では線が長い方が正極に対応する。円柱形の乾電池では突起のある方が正極である。

電池と抵抗だけをつないだ簡単な電気回路図は

 

で与えられる。電気回路の中では各点でその点を流れる電流が決まる。

導線などの導体内の電気の流れおよび、その流れている電気の量を電流(でんりゅう、electric current)という。電流の強さの単位は、アンペアという単位で表す。アンペアの記号は A で表す。

 Aのことを1ミリアンペアといい、ミリアンペアの単位はmAである。


電気回路に電流を流す、働きの大きさのことを電圧(でんあつ)(英語: voltage)という。一般にw:電池の電圧は、その電池の中の物質によって定まる。電圧の単位はボルトといい、記号は V で表す。

 Vのことを1ミリボルトといい、ミリボルトの単位はmVで表す。
参考

このような電池の電圧を起電力(きでんりょく)(英語: electromotive force, EMF)という。起電力は、電池内の物質の種類によって、一定に定まる。電池内の物質の量には影響されない。物質の種類によって、起電力が定まる。 たとえば、家庭用のマンガン乾電池1個の電圧は1.5Vである。 歴史的には、乾電池の発見と発明によって、一定の電圧で電気回路に電気を送り続ける定電圧源が人類の手に入るようになり、電圧と電流とを明確に区別することができるようになった。


では、電池電圧というのは、そもそも何であろうか? 電池(電源)を省いて電気回路を作ったとしても何も起こらない。例えば輪っかのようにため池を作っても、エッシャーの滝のように水が急に流れだすことはなく、止まったままである。だが、池に高低差を作って、低い方から高い方へポンプで水を送ってやれば、水は自然と流れだすことになる。このポンプの役割をするのが電池であり、水の高低に対応するのが電位(でんい)である。また、高低の傾斜をきつくすれば水の流れる勢いも速くなるが、同じように電位の高低差こそが電圧(でんあつ)の正体である。

したがって、電池の両端には、かならず電位差がある。更に、一般に、電池については陽極がより電位の高い方とする。さて、このとき電気回路図中の2点についてその2点が異なった電位を持っていることが分かる。上の電気回路中でも電位差があるので電位が高い点から低い点へと電流が流れるが、この際に電気抵抗(でんきていこう)(英語: resistance、レジスタンス)を通過するため、ここで電圧降下をおこす。電気抵抗は導線と比べて「電気の流れにくい場所」と理解することが出来る。その場所を電流が通ることで熱が発生し、また電流が勢い(=電圧)を失う。このことによって電気回路中に異なった電位があることと整合的になるのである。ここまでの話では、電圧降下の量が電気抵抗の性質によって変化し、電位の差を埋めるのに十分でなくなるように思えるかも知れない。しかし、このような場合には常に、抵抗の値と合わさってちょうど電位差を埋めるように対応する電流が流れるのである。電気回路中の電位についてより(詳しくは高等学校理科 物理Iを参照。)

電池を2つ縦に並べるようなつなぎ方を、w:直列接続(ちょくれつせつぞく)または直列つなぎ(ちょくれつつなぎ)と呼ぶ。

 

また、直列に対して電池を横に平行に並べるようなつなぎ方を、w:並列接続(へいれつせつぞく)または並列つなぎ(へいれつつなぎ)と呼ぶ。

 

直列接続を用いると、電池全体の両端に対する電位差は、各々の電池の両端に対する電位差の和になる。一方並列接続では両端の電位差は1つの電池を用いたときの電位差と比べて変化しない。ただし、電池の寿命は、1本だけを用いたときと比べて、並列つなぎに用いた電池の数だけ長くなる。

同様にして抵抗の接続の仕方にも直列接続と並列接続がある。このときの全体としての抵抗値を計算することが出来るが、これは高等学校物理の範囲である。

オームの法則

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電流の流れにくさを電気抵抗、または単に抵抗(ていこう)という。 流れにくさと、その物体とを区別したい場合には、電流を流れにくくする素子のことを抵抗器(ていこうき)あるいは抵抗体(ていこたい)と呼んで区別する場合も有る。 本節でも、混同を避けるため、流れにくさのことは抵抗と呼び、物体側は抵抗器あるいは抵抗体と呼ぶことにしよう。 抵抗(電気の流れにくさ)の単位は、オーム(英:ohm)といい、記号は で表す。

一般に抵抗器の両端で、ある電位差があるときに、抵抗器に流れる電流は

 

で与えられることが知られている。ここで、Vは抵抗の両端の電位差、Iは抵抗を流れる電流、Rは抵抗の大きさである。 上の式は電圧と電流の関係を表わす式であり発見者の名前にちなんでw:オームの法則と呼ばれる。

  • 問題例
    • 問題

抵抗300Ωを持つ電気抵抗に9Vの電位差を与えたとき、抵抗中を流れる電流は何Aか。

    • 解答

オームの法則を用いればよい。V = 9, R = 300を用いると、

 

を得る。よって流れる電流は0.03Aである。

一般に抵抗の大きさは使われている物質が同じ材質なら用いられている材質が長いと抵抗も大きくなり、材質が細いと大きくなる。また、同じ長さでの抵抗値は 物質によって異なっている。

導線の長さと、抵抗の大きさについて

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導線の太さや長さによって抵抗の大きさは変わる。直感的に、導線が太いほうが電流が流れやすいのは分かるだろう。 実際に電気抵抗は、導線の断面積に反比例することが、実験的に確認されている。

さらに、導線は材質や太さが同じならば、導線が長いほど抵抗が大きくなり、長さに比例して抵抗が大きくなることが、実験的に確認されている。

電気回路図の図記号

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記号はすべてを覚える必要はないが、最低限、固定抵抗器と乾電池、豆電球、スイッチ、電圧計および電流計、接続している交点と接続していない交点との区別、などは覚えてもらいたい。


※ 2020年代の高校入試の理科の電気の問題では、電球の代わりに、発光ダイオードが使われる場合もある。発光ダイオードの回路記号を習っていないが、公立高校の入試では発光ダイオードっぽい絵のある配線図が書かれて説明されるので、記号を知らなくて良い。ただし、発光ダイオードの実物の写真は、きちんと覚えておこう。

 
発光ダイオード


電流計や電圧計

電流を測る計器を電流計という。形状や使い方は、学校教科書などを参考にしてください。

電圧を測る計器を電圧計という。形状や使い方は、学校教科書などを参考にしてください。

電流計や電圧計は、つなぎ方を間違えると、故障する場合があります。

電子線
 
陰極線管(上)と、放電のようす

放電管に、高い電圧をかけると、電気回路が導線でつながってなくても電気が流れることがある。このような現象を放電(ほうでん)という。 歴史的には、真空放電管の実験で、マイナス側の陰極から、なにか(これは電子の線である。)が放射されるのが発見された。 なので、陰極から出る電子の線は、電子線(でんしせん、cathode ray)と呼ばれる。 また、この実験から、電子は負の電荷をおびていることが、人類に分かった。

(※注意

電子線の実験は、高い電圧を用いるので、危険な実験です。なので、学生のかたは、実験をしないほうが良いと思います。)

電流による発熱

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ここでは、電流を電熱線に流す実験と、電球に流す実験を行なう。ここでは、電流を流すことで電熱線では発熱が得られ、電球に流すことで光が得られることがわかる。得られる光や発熱の強さは、それらにかける電圧を大きくすることで強くなる。

ここで、得られる光や発熱の強さは、電熱線や電球が消費する電力(でんりょく、electric power)によって定まる。電力は、ある時間当たりに抵抗が消費するエネルギーのことである。電力は

電力 = 電圧 * 電流

で与えられ、電力の単位はW(ワット)である。(詳しくは、高等学校理科 物理Iを参照。) 電力Pを式で書けば、

P = V × I

である。 1000Wのことをキロワットと言い、1kWと表す。

(*参考

オームの法則が成り立つ電気回路の場合、電流Iについて

V = RI

が成立ち、電力の式 P=VI に、この V=RI を代入すれば、

電力P = VI =  

が成り立つ。そのため、発する光や発熱は、かける電圧の2乗に比例するはずである。

同様に、電力の式 P=VI に、 I=V/R を代入すれば、

電力P = VI =  

となる。なお。以上の式は、あくまでもオームの法則が成り立つ場合での式である。 抵抗に流れる電流による抵抗熱を利用した機器なら、たいていの機器ではオームの法則がなりたつ。 中学の学習で扱う機器なら、ほとんどの電気回路でオームの法則が成り立つので、この結果が成り立つと思って良い。 )

熱量

電熱を利用して水を熱することを考えよう。1Wの電力を1秒間、加えた時の熱量を1ジュールという。ジュールの単位記号は J (※ アルファベットのジェイ)なので、1ジュールは式では 1J とあらわす。

電気の発熱量を表す場合は、カロリーではなく、ジュール単位で表すのが一般的である。

なお、カロリーとは、水1グラムを1℃上昇させるのに必要な熱量である。

カロリーは現在は

1cal = 4.184J

で定義されている。

読者は「カロリーという単位があるのに、なぜ、わざわざジュールという単位をつくったのだろうか?」と疑問を持つかもしれない。その質問に、お答えしよう。

ジュールという単位は、力学という物体の運動法則を調べる学問での「仕事」という物理量が元になっているのである。力学で「仕事」という物理量があり、その「仕事」の単位がジュールなのである。

仕事の大きさW(J)=力の大きさF(N) × 力の向きに動いた距離S(m)

上記の式で、単位の読みは、Jはジュール。Nはニュートン。mはメートル。

詳しくは後のエネルギーに関する節で習う。

ここでは、ともかく、電気の発熱量はジュールという単位で表すのが一般的だと知っていただければ良い。

電力量

ジュールという単位は、ワットを基準に考えれば、1Wの電力を1秒間、発熱させた時の熱量だった。 実生活では、30Wの蛍光灯を3時間ほど使用したりと、1Wよりも、もっと大きな電力を、1秒よりも、はるかに長い時間、用いることが多い。

電力のワットに、時間(=60分のこと)を掛けた量を電力量(でんりょくりょう)という。単位はワット時Whあるいはキロワット時kWhである。

計算例として、たとえば使用電力が30Wの蛍光灯を3時間ほど用いたら、使用電力量は 30W×3h=90Wh である。


なお、電力量の単位 Wh の末尾のhは英語のhour(「アワー」、1時間、2時間と言った「時間」の意味。)の略である。

電流の利用

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磁場

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磁石に鉄などを近づけると鉄は磁石に引きよせられることが知られている。このような磁石の性質を見るために、w:磁場(じば)という考え方を用いる。磁場とは磁石の 回りの各々の点にある矢印が張りつき、その矢印によって、その点の近くに鉄などが現われたときにそれらが引きよせられる方向を記述する方法である。 このとき、鉄などが引きよせられる強さは矢印の長さで表わす。


一般に、ある磁石にはN極とS極があるが、磁場は通常N極からS極に向けて伝っていくように書かれる。磁場は途中で途切れることが無い。

 
磁力線

磁場の向きが分かるように図示しよう。磁石の作る磁場の方向は、砂に含まれる砂鉄の粉末を磁石に、ちりばめて、ふりかけることで観察できる。

これを図示すると、下図のようになる。(画像素材の確保の都合上、写真と図示とでは、N極とS極が逆になっています。ご容赦ください。学校教科書などで、磁力線(じりょくせん)の図示を確認してください。)

 
磁力線の図示

このような磁場の図を磁力線(じりょくせん)という。磁力線の向きは、磁石のN極から磁力線が出て、S極に磁力線が吸収されると定義される。棒磁石では、磁力の発生源となる場所が、棒磁石の両端の先端付近に集中する。そこで、棒磁石の両端の先端付近を磁極(じきょく、magnetic pole)という。

磁力線の向きを、どうやって確認するかというと、方位磁針(ほういじしん、compass)を用いればいい。その場所の方位磁針の向きが、その場所での磁力線の向きである。

永久磁石が作る磁力線を図示する場合は、N極から力線が出て、S極で磁力線が吸収されるように書く。磁力線は、磁場を図示したものなので、磁極以外の場所では、磁力線が分岐することはない。N極以外の場所では磁力線が生成することもなく、S極以外の場所で磁力線が消滅することもない。

また、磁力線が交わったりしてはいけないし、枝分かれもしてはいけない。もし、交わらして磁力線を書くと、その場所での方位磁針の向きが2通りあることになり、不合理な図となる。

磁化

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鉄やコバルトやニッケルに磁石を近づけると、磁石に吸い付けられる。また、鉄やコバルトやニッケルに永久磁石などで強い磁力を与えると、鉄などから磁石を遠ざけても、鉄やコバルトやニッケルそのものが磁場を周囲に及ぼすようになる。 このような、もともとは磁場を持たなかった物体が、強い磁場を受けたことによって磁場を及ぼすようになる現象を磁化(じか、magnetization)という。

また、(英:iron)とコバルト(英:cobalt)とニッケル(英:nickel)は、磁化されることのできる金属であり、このような磁化される物質を磁性体(じせいたい)という。

必ずしも、すべての金属が磁性体とは限らない。たとえば、銅は磁化されないので磁性体ではない。 また、金属以外の物質は、一般に磁化はされず、したがって金属以外の物質は磁性体ではないのが一般である。


磁化された鉄などは、べつに永久磁石ではないので、反対方向から磁化すれば磁気が打ち消されて磁化が消える。また、外界との磁場との相互作用などで、磁化された鉄などの磁力は、自然に磁化が消失していく。


電流の作る磁場

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電流は、その周囲に磁場を作る。これは方位磁針を電気回路の近くに置くことで確認できる。

右ねじの法則

直線電流がつくる磁場の向きは、電流の向きに右ねじを進めるときに、右ねじを回す向きである。この電流と磁場の向きとの関係を右ねじの法則、あるいはアンペールの法則(Ampère's circuital law)と言う。

コイルのような曲線部を持つ電気回路が作る磁場の向きも、電気回路の各部分の電流が右ねじの法則に従って、磁場を作っている。

電流の周りに生じる磁場の強さは電流の強さと導線からの距離だけで決まることが知られている。(しかし、ここでは具体的にその強さを求めることはしない。詳しくは高等学校理科 物理Iなどを参照。)

(※ 範囲外: )日本にかぎらず、世界に存在する ねじ の多くは 右ねじ であり 左ねじ は、特殊な場合にだけ用いられる。身近な実例として、自転車の左ペダルをクランクに取り付ける部分のネジがあげられる。もし、左ペダルが右ねじで取り付けられていると、緩める方向に力を受け続けてしまうからである。


ソレノイドコイルの磁場

導線を棒状のものにまきつけて、ある一定の長さにしたものを、w:コイルと呼ぶ。電気回路用のコイルについてはソレノイド(Solenoid)またはソレノイドコイルと呼ぶ場合が多い。コイルに電流を流したときにも磁石のときに見たような磁場が流れることが知られている。

 

磁場の向きは、方位磁針で確認できる。


電磁石

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電気回路に電流を流すと磁力が発生するのだった。この電流が作る磁場を、永久磁石の代わりに磁力の発生源として利用したものが電磁石(でんじしゃく、electromagnet)である。

実際の電磁石では、磁力を強めるために、コイルのソレノイド部分に鉄の棒を収める構造になっている。鉄芯が磁化させることで、磁力を強めている。

モーターのしくみ

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モーターのしくみ

電流が磁場から受ける力を利用して、モーターがつくれる。モーターの原理は、右図のようなものである。

電流の向きから磁場の向きに、右ねじを回した向きに、力は働く。

整流子とブラシは、半回転ごとに電流の向きを切り換えることにより、つねにコイルを同じ向きに回転させるためのものである。

整流子が切り替わる瞬間は、いきおいで、そのまま回り続ける。



フレミングの左手の法則

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磁場中で導線に働く力の向き。
電流の向きIから磁力線の向きBに右ねじを回した向きが、導線に働く力Fの向き。

磁場の中で、導線に電流を流したとき、導線に働く力の向きは、電流の向きと磁場の向きの両方に直交する。

また、力の向きは、右ねじを、電流の向きから磁場の向きに右ねじを回したときに、その右ねじが進む向きである。

この法則をフレミングの左手の法則という。


電流の向きを逆にすると、力の向きも逆になる。この場合にも、力の向きは、右ねじを電流の向きから磁場の向きに右ねじを回したときに、その右ねじが進む向きになっているので、フレミングの法則が成り立っている。

(※ 範囲外: )フレミングの左手の法則とは逆に、フレミングの右手の法則というものもある。これは、フレミングの左手の法則はモーターなどの動き、すなわち電気エネルギーから運動エネルギーに変換するために用いるため、その逆のフレミングの法則は、運動エネルギーから電気エネルギーの変換のために用いられる。



電磁誘導と誘導電流

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電磁誘導のしくみ

コイルを置き、その輪の中に、磁石の先端を出し入れする実験実験を行なってみる。ただし、コイルの両端には電圧計を接続し、コイルに流れる電流の電圧を測定するものとする。

このとき、図のように、電流が流れる。

近づけたときと、遠ざけているときに、その磁石を動かしているあいだのみ、電流が流れる。遠ざけているときの電流の向きは、近づけているときの電流の向きとは、逆向きである。

この現象を電磁誘導(でんじ ゆうどう)といい、この電流を誘導電流(ゆうどう でんりゅう)という。

電磁誘導で電流が流れるのは、磁力が変化している間のみである。磁石を近づけおわった状態で固定していても誘導電流は流れない。

この電磁誘導を発見した人物は、イギリス人のファラデーである。

電磁誘導では、コイルの巻数が大きければ大きいほど、発生する誘導電流の大きさも大きくなる。

また、磁場の変化の速さが大きければ大きいほど、発生する誘導電流の大きさも大きくなる。


  • 参考: 誘導電流をはかる実験
(※ 中学の範囲外。)

検流計を使えばいい。なお、検流計の内部のしくみは、検流計の中には導線の他にも磁石が入っており、フレミングの法則による力を、巻きバネをバネ計りとして用いて、はかっている。あらかじめ、検流計の製造業者などが、大きさの分かっている電流を流して、どのていどの大きさの電流で、どのていど、フレミングの法則による力が働くかを確かめて調整してある。なので、検流計の使用時に、流れている電流計の大きさが分かるという仕組みである。


  • レンツの法則

ロシアのレンツは、磁場を変化させると、その変化をさまたげる向きに電流が流れることを発見した。この法則をレンツの法則という。

※ アンペールの法則により、電流のまわりには、(電流の向きを基準にして)右回りに磁場が発生している。

誘導電流のまわりに発生する右回りの磁場の向きは、磁石の動きによる磁場の変化を打ち消す向きになっている。

このように、磁場が変化している間のみ、誘導電流が流れる。また、その誘導電流の向きは磁場の変化を妨げる向きである。 これをレンツの法則(Lenz's law)という。

※ なお、コイルを固定して磁石を動かすかわりに、磁石を固定してコイルを動かしても、同様の現象が起きる。(中学範囲外か?)

電磁誘導の応用

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  • 発電機

現在の火力発電や水力発電や原子力発電などの発電所では、この電磁誘導の原理を用いて、発電を行なっている。火力発電や原子力発電では、火力などで発生する熱によって水をわかして水蒸気をつくり、固定した磁場の中にあるタービンを、水蒸気を用いてタービンをまわし、そのタービンの軸が発電機の軸とつながっているので、タービンの軸の回転といっしょに発電機も軸が回転し、そして発電機の軸にはコイルが取り付けてあるので、それによって誘導電流を発生させるのである。

(※ 発電機へのコイルの巻き付け方法は、専門的であり、中学範囲を大幅にこえるので、説明を省略する。工業高校の電気学科や、大学の電気工学科などの範囲である。)

水力発電では、上流から下流に流れ落ちる水流の力をもちいて、タービンを回している。


おおざっぱに言うと、火力発電などのしくみは、タービンを回すことで発電機のコイルまたは磁石を回し、発電している。(中学の範囲では、この程度のおおざっぱな理解で充分だろう。)


なお、自転車の発電機では、軸に取り付けられた磁石のほうを回転させる仕組みになっており、コイルは固定されているのが一般である。

  • 鉄道の自動改札の非接触式ICカード
(※ Suica(スイカ)など)

近年、鉄道の自動改札で、専用のICカードをセンサーの近くにかざすだけで、自動的に料金を払うなどの改札の処理を行うを処理がある。これも、電磁誘導を利用している。

まず、改札機に、磁場を発生させる装置が入っている。

また、ICカードの内部には、電源は無い。

そしてICカードの内部には、コイル状のアンテナが入っており、改札の磁場によってカードに誘導電流が発生し、その誘導電流によってカードのICチップが作動し、そして改札とカードがデータのやりとりをし始めて、改札の処理をするシステムになっている。


  • 電磁調理器

電磁調理器(IH調理器)の中にはコイルがあり、そのコイルで磁場を発生させている。そして、コイルの電流の向きがすごく速く変わる仕組みになってるので、コイルによって発生する磁場の向きも、同じようにすごく速く変わる。

そして、調理ナベに誘導電流が流れ、調理ナベの電気抵抗によって発熱することで、熱を発生させている。

なお、コイルから発生した磁場が、調理ナベなどの底面などに、あたっても、もし磁場が変化しなければ、ナベに誘導電流は流れない。

だったら、磁場を変化させれば、調理ナベの底面に、誘導電流が流れる。なので、IH調理器の内部のコイルは、電流の向きがすごく速く変わる仕組みになってるのである。


直流と交流

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乾電池による電流は、電池切れなどが起きてなければ、大きさは変わらずに一定のままである。

いっぽう、発電機の電流は、磁石またはコイルが回転しているため、電流および電圧の大きさが周期的に変わる。


電池切れしてない乾電池による電流のように、大きさが一定のまま変わらない電圧と電流のことを直流(ちょくりゅう)という。

 
オシロスコープ.
交流のばあい、図のように、電圧・電流が波の形になる。

いっぽう、周期的に、電圧と電流の大きさが変わる場合を交流(こうりゅう)という。

家庭用のコンセントに供給されてる電圧は交流である。

オシロスコープという装置で調べると、交流の波形が見られる。


交流の電圧・電流にて、電流の向きの変化が、1秒間あたりに起きる回数を周波数(しゅうはすう)といい、周波数の単位はヘルツ(記号: Hz)である。

(交流の周波数の単位のヘルツは、音の振動数の単位のヘルツと同じ単位。)

日本では、家庭に供給されている交流の電気では、東日本では50Hz、西日本では60Hzである。

(※参考)ちなみに、日本の東西で、周波数のことなる理由は、明治時代ごろ(1889年ごろ)に日本が海外から発電機を輸入したときにアメリカから60Hz用の発電機を輸入したのが西日本(大坂など)で、ドイツから50Hz用の発電機を輸入したのが東日本(東京など)だから。(参考書などに記述あり。)

電気をおくる場合、電流を大きくすると抵抗熱が大きくなり、よって電力の損失が大きくなるという事実がある。

同じ電力(電力P = 電圧V × 電流I )でも、電圧を高くして電流を低くしたほうが、抵抗熱が小なくなるという事実がある。

なので発電所からの送電では、電圧を高くして、電気を送っている。発電所で発電される交流は電圧が数十万ボルトであるが、送電のとちゅうで変電所(へんでんしょ)にある変圧器(へんあつき)によって段階的に引き下げられて数千ボルトに引きさげられ、さらに家庭に届く直前には電柱の上にある柱状変圧器によって100ボルトや200ボルトに引き下げられ、この100Vや200Vの電気が家庭に届いている。


なお、電池にプラスとマイナスの端子があるように、直流の電源にはプラスとマイナスの向きがある。

しかし、交流では、電圧が交互に向きが変わるので、電源などでは、あまりプラスとマイナスの区別をしない。じっさいに、家庭用のコンセントには、プラスとマイナスの区別が無いのが一般的である。


発展: 変圧器とACアダプター

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変圧器

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変圧器のしくみ

変圧器(へんあつき)は、鉄心(てっしん)に、巻数のことなる2つのコイルを図のように巻いた仕組みになっている。

これで電圧を変圧できる理由は、電磁誘導を利用している。

巻数の多いがわのコイルに高圧電流を流すと、コイルのまわりに電磁石のように磁場が発生し、その磁場が鉄心の中をとおるため、巻数のすくない側のコイルに誘導電流が流れる。

このさい、2つのコイルの巻数の比の関係により、巻数の少ないがわのコイルには低い電圧が発生する。

N1:N2=E1:E2 Nは巻き数、Eは電圧

こうして変圧器では、電圧を変換している。

なお、コイルの巻数の比を変えることで、変圧の比も変えることができる。

例題 一次側の電圧が2500Vあるが、これを100Vに変換したい。一次側の巻き数を6250回とすれば、二次側の巻き数を何回にすればいいか?

答え…N1:N2=E1:E2、6250:N2=2500:100、N2=250回

よってN2の巻き数は250回にすれば良い。

ACアダプター

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携帯電話の充電器やパソコンなどに使われているACアダプターには、変圧器が入っているものもある。

これらのアダプターなどにある「AC」または「DC」という表記がある場合がある。

AC(発音: 「エーシー」)とは、交流の英語の Alternating Current の略である。

また、ACアダプターとは、交流を直流に変換するアダプターである。

パソコンのアダプターに、ACアダプターが使われている理由は、コンピューターは、直流で動くため、電圧を直流に変換する必要があるからである。

いっぽう、DC(発音:「ディーシー」) とは、直流の英語の Direct Current の略である。

発展:半導体

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ケイ素の単結晶のかたまり。これを薄く切断してシリコンウェハーにする。
 
ケイ素(けいそ)の単結晶(たんけっしょう)の、かたまり。シリコン・インゴットと言う。
これをうすく切断して、シリコンウエハ ( silicon wafer)にする。
※ 私立高校受験の範囲.

ケイ素(シリコン)やゲルマニウムの結晶は、導体でもなく、不導体でもない。

シリコンやゲルマニウムの結晶を作ると、電気抵抗が、導体と不導体との中間くらいの「半導体」(はんどうたい)というものになる。


半導体と言われる元素には、けっして単に電気抵抗が中間なだけでなく、さらに他にも普通の物質とは変わった性質がいろいろとある。

そのため、電子機器などに、半導体が使われる事も多い。

世間のコンピュータにも、シリコン半導体が使われている。

※ 中学校の範囲を超えるので、中学の時点では、ここまで知っておけばいい。中学の時点では、あまり高度な話をできないので、ここまでで良い。高校の物理で、もっと詳しく習う。
 
配線形成 済みの300 mmシリコンウェハー。