法学民事法借地借家法コンメンタール借地借家法

条文 編集

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)

第28条
  1. 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

解説 編集

借家法第1条の2を継承

参照条文 編集

旧・借家法第1条の2

建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入レヲ為スコトヲ得ス

判例 編集

  1. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和25年2月14日)
    1. 借家法第1条の2にいわゆる「正当ノ事由」の有無の判断
      借家法第1条の2にいわゆる「正当ノ事由」の有無は、貸家人の事情だけでなく、借家人の事情をも考慮し、双方必要の程度を比較考慮して決しなければならない。
    2. 借家法第1条の2の「正当ノ事由」の有無を判断するに当り参酌すべき借家人側の一事情
      貸家人の解約申入後、借家人において他に家を捜がす努力をせず、2カ年の日時を徒過した事実は、右の「正当ノ事由」の有無を判断するに当り、参酌すべき借家人側の一事情たり得る。
    3. 6カ月の猶予期間を附さない家屋賃貸借契約の解約申入の効力
      借家法第3条(現.借地借家法第27条)による解約の申入れは、必ずしも当初から6カ月の猶予期間を附さなくても、解約申入後6カ月を経過すれば、解約の効力を生ずる。
  2. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和26年9月14日)
    借家法第1条の2にいわゆる「正当ノ事由」
    借家法第1条の2に規定する建物賃貸借約解申入の「正当事由」とは、賃貸借の当事者の双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照し妥当と認めるべき理由をいうのであつて、特に賃借人側の利害のみを重視して判定すべきものではない。
  3. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和26年12月21日)
    建物賃貸借の更新拒絶に正当の事由がある一事例
    貸家用に建てたものでない家屋に祖父の代より居住していた者が、勤務上転住するに際し、留守番程度以上の者には賃貸を禁じて親類筋の者に家屋の管理を託したところ、右管理者が委託の趣旨に反し、写真営業をなす者に、期間を10年と定めて賃貸し、賃貸人において既に営業設備を了していたため、右賃貸借を余儀なく承認した事情にある賃借人に対し、期間満了の6月前より屡々期間満了と同時に明渡方を求めていたが、賃借人は当時比較的容易な移転先を求めることをせず、現在賃貸人は勤務先寮内に単独居住し、その妻子は、本件家屋の裏の座敷に居住する情況にあり、賃貸人は近く退職し本件家屋で自らは食糧品店を営み、長男には医師を開業させ、妻子と共に生活する希望を有し、他に所有する貸家はあるが現在明渡を求め得ないものであり、賃借人家の家族8人中現在長男夫婦は写真師として京都市に出稼している等の事情にあるときは、賃貸人が賃貸借の更新を拒絶するについて正当の事由がある。
  4. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和29年1月22日)
    賃貸人の自己使用の必要と借家法第1条の2の「正当事由」の有無
    借家法第1条の2にいわる「正当の事由」とは、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照し妥当と認むべき理由をいい、賃貸人が自ら使用することを必要とする一事により、直ちに「正当の事由」ありとはいえない。
  5. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和29年3月9日)
    解約申入後の事情の変更により正当事由があることになつた場合と建物明渡請求の許否
    正当事由にもとずく賃貸借の終了を原因とする建物明渡の請求訴訟において、たとい賃貸人の解約申入当時正当事由がなくても、賃貸人がその後引きつづき明渡を請求するうち事情が変つたため正当事由があることになり、かつそのときから口頭弁論終結当時までに六月を経過したときは、裁判所は右請求を認容すべきである。
  6. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和32年3月28日)
    代りの家屋の賃貸および引渡の提供を条件と定めて家屋明渡を命ずる判決の適否
    甲家屋の賃貸人が代りの乙家屋を提供してした解約申入が正当事由を具え、右申入により賃貸借が終了した事実に基き賃貸人の家屋明渡の請求を認容する判決の主文において、賃貸人が乙家屋の賃貸および引渡の提供をすることを条件と定めて、賃借人に甲家屋の明渡を命じても、違法ではない。
  7. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和38年3月1日)
    移転料の提供により借家法第1条の2にいわゆる正当の事由を具備したと認め引換給付の判決をしても違法ではないとされた事例。
    家屋賃貸人において借財返済のため賃貸家屋を高価に売却する必要があるが、他方賃借人が理髪業者であつて、他に適当な移転先がない等原判決認定のような事情がある場合において、賃貸人が移転料を支払うという申出と同時に解約の申入をし、かつ移転料と引換えに明渡を求める申立をしたときは、それをもつて正当事由を具備したと判断し、移転料と引換えに明渡を命ずる判決をしても違法ではない。
  8. 店舗明渡請求(最高裁判決昭和46年11月25日)
    借家法1条の2に基づく解約を理由とする家屋の明渡訴訟において当事者の明示の申立額をこえる立退料の支払と引換えに明渡請求を認容することを相当と認めた事例
    借家法1条の2に基づく解約を理由として家屋の明渡を求める訴訟において、その正当事由として、右家屋が京都市屈指の繁華街にある店舗でありながら老朽化して建替えを要する等原審認定のような諸事情があるほか、家主がその補強条件として300万円もしくはこれと格段の相違のない範囲内で裁判所の決定する額の立退料を支払う旨の意思を表明し、これと引換えに家屋の明渡を求めている場合には、500万円の立退料の支払と引換えに右明渡請求を認容することは相当である。
  9. 家屋明渡請求(最高裁判決昭和48年7月19日)
    無断転貸を理由とする解除の意思表示と借家法1条の2の解約申入
    無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の意思表示は、それ以外の理由によつては解除をしないことが明らかにされているなど特段の事情のないかぎり、同時に借家法1条の2の解約申入としての効力をも有する。
  10. 建物明渡請求(最高裁判決昭和62年2月13日)
    公営住宅建替事業の施行に伴い事業主体の長が入居者に対してする明渡請求と借家法一条の二の要件を具備することの要否
    公営住宅建替事業の施行に伴い事業主体の長が公営住宅法(昭和55年法律第27号による改正前のもの)23条の6に基づき入居者に対して明渡請求をする場合には、借家法1条の2所定の要件を具備することを要しない。
  11. 家屋明渡等(最高裁判決平成3年3月22日)
    建物の賃貸人が解約申入後に提供又は増額を申し出た立退料等の金員を参酌して当該解約申入れの正当事由を判断することの可否
    建物の賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申し出、又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても、右の提供又は増額に係る金員を参酌して当該解約申入れの正当事由を判断することができる。
    • 建物の賃貸人が解約の申入れをした場合において、その申入時に借家法1条ノ2に規定する正当事由が存するときは、申入後6か月を経過することにより当該建物の賃貸借契約は終了するところ、賃貸人が解約申入後に立退料等の金員の提供を申し出た場合又は解約申入時に申し出ていた右金員の増額を申し出た場合においても、右の提供又は増額に係る金員を参酌して当初の解約申入れの正当事由を判断することができると解するのが相当である。

前条:
借地借家法第27条
(解約による建物賃貸借の終了)
借地借家法
第3章 借家
第1節 建物賃貸借契約の更新等
次条:
借地借家法第29条
(建物賃貸借の期間)
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