条文 編集

(横領)

第252条
  1. 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
  2. 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

改正経緯 編集

2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役
(改正後)拘禁刑

解説 編集

 
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ウィキペディア横領罪の記事があります。


参照条文 編集

判例 編集

  1. 横領(最高裁判決 昭和23年06月05日)
    贈賄のためその資金を預かつた者の領得行爲と横領罪
    不法原因の爲め給付をした者はその給付したものの返還を請求することができないことは、民法第708条の規定するところであるが刑法第252条第1項の横領罪の目的物は單に犯人の占有する他人の物であることを要件としているのであつて必ずしも物の給付者において民法上その返還を請求し得べきものであることを要件としていないのである。
  2. 窃盜(最高裁判決 昭和25年11月15日)
    生産管理開始のときから占有していた物を後に領得した行為の擬律
    被告人等が本件生産管理開始のときから判示鉄板を占有していたとしても、それは違法の占有であるから、後にこれを領得しても横領罪とはならず窃盗罪となる。
  3. 業務上横領、横領(最高裁判決 昭和26年01月23日)刑法第247条,刑訴法第405条3号
    銀行の出納係主任が他人と共謀して業務上保管にかかる金品を擅に他人の営業資金に流用費消した行為の擬律と判例違反の主張の適否
    論旨は被告人Aは自己の名義ではなく、判示銀行の名義で判示金員を貸付けたのであるから背任罪を以て問擬すべきであるに拘わらず横領罪として処罰した原判決は大審院判例(昭和10年(れ)第502号同年7月3日刑事第三部判決)に反すると主張する。記録に懲するに第一審判決並に第二審判決は何れも被告人Aが銀行名義を以て判示金員を貸付けた事実は認定していない。ただ原判決は銀行の出納係主任が他人と共謀して業務上保管にかかる金員をほしいまゝに他人の営業資金に流用して費消したときは自己の物として不法に領得する意思を実現したものであるからたとえ右の流用が銀行名義を以てする貸付の形式をとつても出納係主任に金員貸付の権限が全くない以上右の行為は業務上横領罪を構成し背任罪に問擬すべきものでないと判示したことは所論の通りである。按ずるに他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物について権限を有しないに拘わらず所有者でなければできないような処分をする意思を以て自己の保管にかかる物を処分すれば横領罪は成立することは当裁判所判例の示すところである。(昭和23年(れ)第1412号同24年3月8日第三小法廷判決)そのして原判決は右当裁判所判例と同一趣旨であることは判文上明白であるから論旨は理由がない。
  4. 横領(最高裁判決 昭和26年05月25日)
    使途を定められて寄託された金銭と横領罪
    使途を定められて寄託された金銭については特別の事情のないかぎり受託者は刑法第252条にいわゆる「他人ノ物」を占有するものと解すべきであつて、受託者がその金銭について擅に委託の本旨に違つた処分をしたときは横領罪を構成する。
  5. 公文書偽造、業務上横領、横領、臨時物資需給調整法第違反、銃砲等所持禁止令違反(最高裁判決 昭和27年10月17日)銃砲等所持禁止令1条1項,銃砲等所持禁止令附則2項
    横領罪の成立に必要な不法領得の意思を発現する行為の意義
    横領罪は自己の占有する他人の物を自己に領得する意思を外部に発現する行為があつたときに成立するものである。そしてその不法領得の意思を発現する行為は必ずしもその物の処方のような客観的な領得行為たることを要せず、単に領得の意思をもつて為した行為たるをもつて足るのである。
  6. 横領(最高裁判決 昭和30年12月26日)
    不動産の二重売買と横領罪
    不動産の所有権が売買によつて買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従つていわゆる二重売買においては横領罪が成立する。
  7. 横領、たばこ専売法第違反(最高裁判決 昭和31年06月26日)
    1. 他に所有権移転後未だその旨の登記を経ざる不動産を、悪意にて代物弁済として所有権を取得する行為と横領罪共犯の成否
      甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しない場合において、乙がその情を知りながら甲に対する債権の代物弁済として右不動産の所有権を取得しその旨の登記をしたとしても、乙は適法に所有権を取得したものであるから、甲の不動産横領罪の共犯とはならない。
    2. いわゆる事後処分として横領罪を構成しない一事例
      甲がその所有にかかる不動産を第三者に売却し所有権を移転したるも未だその旨の登記を了しないことを奇貨とし、乙に対し右不動産につき抵当権を設定しその旨の登記をするときは横領罪が成立する。従つて、甲がその後更に乙に対し右不動産の所有権を移転してその旨の登記をした場合には前記抵当権設定登記をした時に横領罪が成立し右所有権移転契約後登記の直前に抵当権設定登記を抹消したとしても、更に横領罪を構成するものではない。
  8. 窃盗(最高裁決定昭和32年4月25日)
    窃盗罪を構成する一事例
    他人からその所有の衣類在中の繩掛け梱包した行李を預かり保管中質種に供する目的で梱包を解き行李から衣類を取り出したときは、衣類の窃盗罪を構成する。
    • 他人からその所有の衣類在中の縄掛け梱包した行李一個を預り保管していたような場合は、所有者たる他人は行李在中の衣類に対しその所持を失うものでないから、被告人が他から金借する質種に供する目的で擅に梱包を解き右行李から衣類を取出したときは、衣類の窃盗罪を構成し横領罪を構成しない。
  9. 横領(最高裁決定 昭和32年12月19日)
    設立中の株式会社の財産について横領罪の成立する一事例
    株式会社設立のため出資された資金によつて建設された建物が、会社設立前でも出資者の組合財産であると認められる場合は、その組合の事業を委されている者がこれを自己名義に保存登記をした上、自己の債務の弁済に供するため他に譲渡した場合は横領罪を構成する。
  10. 業務上横領、暴力行為等処罰に関する法第律違反(最高裁判決 昭和33年09月19日)労働組合法第1条2項,刑法第253条,憲法第28条
    いわゆる納金ストと横領罪の成否
    労働争議の手段として、集金した電気料金を、会社に納入しないで、一時自己の下に保管し、しかもその保管の方法が会社のため安全且つ確実なものであり、毫も自らこれを利用、処分する意思なく、争議解決まで、専ら会社のため一時保管の意味で単に形式上自己名義の預金としたに過ぎない場合には、右のごとき抑留保管の所為をもつて直ちに横領罪の成立を認むべきでない。
  11. 業務上横領(最高裁判決 昭和34年02月13日)
    農林漁業資金融通法による政府貸付金について業務上横領罪の成立する場合
    社団法人たる森林組合を代表し組合業務一切を掌理する組合長および組合長を補佐し組合業務を執行する組合常務理事が、農林漁業資金融通法(昭和26年法律第105号)の規定により政府から組合に対し組合員に造林資金として転貸交付する目的をもつて貸付され、右転貸資金以外他のいかなる用途にも流用支出することのできない金員を組合のため業務上保管中共謀の上その保管方法と使途の規正に反し、もつぱら第三者たる地方公共団体の利益を図り、その諸経費支払資金に充てしめるため、ほしいままにこれに貸付支出したときは、対政府関係における融資条件違反の罰則の有無にかかわらず、また、たとえその金員が組合の所有に属し、右第三者に対する貸付が組合名義をもつて処理されているとしても、横領罪の成立に必要な不法領得の意思ありと認めて妨げなく、業務上横領罪が成立する。
  12. 横領、器物損壊(最高裁決定 昭和35年12月27日)
    応訴して自己の所有権を主張・抗争する所為は横領罪を構成するか
    登記簿上自己が所有名義人となつて預り保管中の不動産につき所有権移転登記手続請求の訴を提起された場合に、右不動産に対する不法領得意思の確定的発現として、右訴訟において自己の所有権を主張・抗争する所為は、不動産の横領罪を構成する。
  13. 賍物牙保、横領(最高裁判決 昭和36年10月10日)
    賍物の牙保者がその売却代金を着服した場合と横領罪の成否
    窃盗犯人から賍物の牙保を依頼されてその交付を受けた牙保者が、その売却代金をほしいままに着服した場合は、横領罪が成立する。
  14. 業務上横領(最高裁決定 昭和45年03月27日)
    1. 商品市場における売買取引の委託について顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質
      商品市場における売買取引の委託について、顧客から商品仲買人に委託証拠金の代用として有価証券を預託する行為の法律上の性質は、根質権の設定であつて、消費寄託ではない。
    2. 転質と横領罪の成否
      質権者は、質権設定者の同意がなくても、その権利の範囲内において質物を転質となしうるが、新たに設定された質権が原質権の範囲を超越するときは、横領罪を構成する。
    3. 商品仲買人がいわゆる委託証拠金充用証券を担保に差し入れる行為が業務上横領罪にあたるとされた事例
      商品仲買人が、いわゆる委託証拠金充用証券を顧客の同意なく担保に差し入れる行為は、それが原質権の範囲を超越しているときは、業務上横領罪を構成する。
  15. 横領(最高裁決定 昭和55年07月15日)
    自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した所為が横領罪に該当するとされた事例
  16. 電磁的公正証書原本不実記録,同供用,横領被告事件(最高裁決定 平成21年03月26日)
    他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が,金銭的利益を得ようとして,同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立するとされた事例
    甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの,所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を,甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が,甲会社が名義人であることを奇貨とし,乙及び丙から原状回復にしゃ口して解決金を得ようと企て,上記建物に係る電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了した場合には,電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに,横領罪が成立する。

前条:
刑法第251条
(準用)
刑法
第2編 罪
第38章 横領の罪
次条:
刑法第253条
(業務上横領)
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