いまや我々は演算子法を完成させ得る段階に達した.
が微分で, が積分を表すというのであるから,
微分と積分の関係を表す次の二つの公式,
(1.10)
がまず頭に浮かぶ.初期値 を含んでいる前者を採用するのが妥当であろう.
そこで,すでに述べたように,
によって式 (1.10) を記号 を用いて表せば,
(1.11)
ここに
となる.いま を普通の数と同じように取り扱ってよいものとすれば, を両辺に掛けて,
(1.12)
なる関係式を得る.ここではもはや は微分という意味をもたない.
もし ならば となってしまうからである.
もちろん のときは, は微分と考えてなんら差し支えはないであろう.
式 (1.12) のように変形しておいたのは,
先に を で置き換えたように,今度は を で置き換えようという下心である.
ここで式 (1.12) の興味深い応用を示そう.
この式に を代入すると,
これを について解くと
(1.13)
となる.
この公式は実質的にはすでにこの式およびこの式にて得られている.
この式を について 回微分すると,
よって,
(1.14)
[1]
を得る.特に とおくと,
(1.14a)
となる.これもすでに得られた式 (1.9) と一致する.
例7
を解け.
これは例5 で とおいたものである.
前節のやり方では解決できなかったことを思い出してもらいたい[2].
この式を で表すと,
[3]
これを について解くと
ここで公式 (1.13), (1.14) を用いて の関数に戻すと,
例8
これが正しい解であることを確かめよ.
解答例
のとき,
また
例9
を解け.
式(1.12), 式(1.9)を用いて, の式に書き換えると,
について解くと,
となる.これを時間関数に戻すにあたって,(1.13), 式(1.9) が使いやすいように、部分分数に分解すると,
[4]
となる.これは
に他ならない.
例10
これが正しい解であることを確かめよ.
解答例
のとき,
.
ゆえに
.
また
.
以上より は のひとつ.
例11
を解け.
解答例
-
-
-
-
-
-
-
験算をする.
-
-
-
で与方程式を満たす.
さらに 2 階微分に対する公式を導いてみよう.
式 (1.12) を 2 度用いると,
となる.よって
(1.15)
を得る.ここでも のときは となり, が微分を表すと考えてよいことを示している.
式 (1.15) において とおけば,
(1.16)
を得る.また,
[5]
これは の Taylor 展開である.
例12
(1)
(1.17)
(2)
を示せ.
解答例
式 (1.15) に を代入して,
すなわち
これらの結果(式(1.16),式 (1.17) を用いると
を得る.ここに は虚数単位である.また,
[6]
同様に,
[7]
を得る.これらは有名な Euler の公式 である.
例13
を解け.
公式 (1.15) 等を用いて, の式で表すと,
[8]
[9]
ここで公式(1.16), (1.17) を用いて の関数に戻すと,
例14
例12 の解の正しいことを確かめよ.
解答例
よって
は与方程式の解のひとつ.
例15
を解け.
解答例
第一項
とおいて
より
したがって
同様に第二項は
第三項は
ゆえに
- ^ この注は第二章読了の後にわかるものであるが,分母の に対して と置換する形となっている.もし置換対象の の出現位置が一か所に限定されるのなら甚だ都合がよい.ラプラス変換を ではなく, と定義する理由がここにもある.
- ^
なぜならば, にて を代入すると,分母が になってしまう.
- ^
なぜならば(1.13)に を代入して
- ^
とおいて
(右辺)=
これが となるから より より .
すなわち
この第一項の処理は (1.13) が適用できる形を目標として変形したもの.
- ^ 初項 ,公差 の無限等比級数
- ^
ここで に持ち込むのはうまくない. の整数倍と の整数倍の和から虚数部 かつ の係数が と仮定できても定数項が が という条件を記述する方法がない.この方法で記述できる条件は 2 個しかないのだから.あるいは仮に と の部分分数展開に持ち込めたとしても,それから の関数に置き換える公式がない.
- ^
同じく, とおいて, を解き, .
- ^
- ^
とおいて,
より , よって .