制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換/f(t) の積分および微分の Laplace 変換

  の不定積分は,次のように合成積

 

と書けることに注意しよう.すなわち,積分するということは,合成積の意味で   を掛けることを意味する. Laplace 変換の基本性質の(1)(3)を用いると,

 

よって

(2.6)
 

を得る.すなわち   領域での積分は   領域[1]では   で割ることに対応する.

さて,

 
 

以下同様にして,帰納的に,

(2.7)
 

を得る.この左辺の Laplace 変換は,基本性質のLaplace 変換の基本性質の(1)(3)を用いれば,

 

であるから,

(2.8)
 

を得る.


例20 

(2.8) を Laplace 変換の定義式から直接導け.

解答例 

(2.8b)
 
 

すなわち

 

これと,基本性質(1)すなわち

 

および基本性質(2)とを再帰的に適用して式(2.8)を得られる.実際、

 
 
 
 

すなわち

 

これに基本性質(2)を適用すれば,

 

この導出方法は基本性質(1)(2)を使ってしまっているし,あと,こういうのは数学的帰納法で記述するべきであるが,基本性質(1)(2)は容易な積分なこともありこれで勘弁してほしい.

 

これらの結果を用いて、次の Cauchey の公式と呼ばれるものを示そう.

(2.9)
 

証明 

合成積の記号を用いて表せば一目瞭然である.すなわち,

 

となるが,この式の正しいことは式(2.7)から明らかである.  


なお Cauchy の公式を Laplace 変換すれば,その像は,左辺右辺ともに,

 

になることを注意しておこう.

  の導関数を   とする.微分積分法の基本公式,

 

の両辺を Laplace 変換すると

 [2]

となる.  を払えば,

(2.10)
 

となる.  ならば,

 

となり,  領域での微分は,  領域で   を掛けることに対応し,微分と積分が逆演算であることが鮮明となる.

(2.10) を 2 度繰り返すと

 

よって

 

以下同様にして,[3] 帰納的に

(2.11)
 

を得る.初期値がすべて   の場合,この公式は,

 

とみなしてよいことを示している.なお    の第   階導関数である. 式(2.11)Taylor の公式を示す.事実,  について解くと,

 

となるが,式(2.8)および Cauchey の公式 (2.9) を用いて,この原像を求めれば,

(2.11a)
 [4][5]

例21 

 

を解け.

解答例

(2.11a)  を代入すればよい.

 

 

  1. ^ Laplace 変換した領域をこのように略称する.
  2. ^  
  3. ^  
     
     
  4. ^  
  5. ^ Taylor 展開の剰余項の積分表示について復習する.定積分の定義より
     
    よって
     
    これ以降、  は定数とする.最後の積分の項を部分積分する。   で積分すると   になるとする.実際    で微分すると  
     
     
    さらに積分の項を部分積分する。   で積分すると   になるとする.実際    で微分すると  
     
     
    さらに積分の項を部分積分する。   で積分すると   になるとする.
     
      の指数が   になるまでこの過程を繰り返すと次の最終形になる.
     
    厳密には数学的帰納法で記述するべきであるが,これで勘弁してほしい….