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制御とは

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JIS(日本産業規格)の「JIS Z 8116:1994 自動制御用語」では、「制御」という語はある目的に適合するように、対象になっているものに所要の操作を加えることと定義され、対応英語(参考)は control とされています。

具体的には、工場で製品を生産する際には、製品の品質や生産量を一定に保つために機械やプロセスを制御する必要があります。同様に、自動車やロボットなどの機械も、目的に応じて適切な動作を行うために制御されます。

制御の手段は多岐にわたり、機械的なものから電気・電子技術、コンピュータを用いたものまでがあります。また、制御対象も機械だけでなく、生物や社会システムなど多様な領域に及びます。

工学の分野では、制御工学がこのような制御に関する理論や技術を研究しています。制御工学では、制御対象を数学モデルとして表現し、それに対して適切な制御則を設計することで、所望の動作を実現することが目指されます。

制御理論と数学

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制御と振動の数学

制御工学の応用範囲

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制御工学の応用範囲は非常に広く、以下のような分野にわたります。

  1. 工業生産や製造プロセスの制御: 製造工程において機械やプロセスの動作を監視し、品質や生産性を最適化する。センサーや制御装置を活用して生産ラインを調整し、効率的な製品生産を実現する。
  2. ロボットや自動車、航空機などの制御: 自動車や航空機、ロボットなどの機械の動作を制御する。センサーやアクチュエーターを活用して、自動運転や自律制御を実現し、安全性や効率性を向上させる。
  3. 電力系統の安定制御: 電力供給システムを安定させるために、発電量や負荷のバランスを調整する。電力系統の周波数や電圧を制御し、停電や電力供給の安定性を確保する。
  4. ネットワーク制御や通信制御: 通信ネットワークやインターネットのトラフィックを管理し、通信品質やデータの送受信を最適化する。ルーティングや帯域制御などを行い、ネットワークの効率性を向上させる。
  5. 医療機器や医療プロセスの制御: 医療機器の動作や医療プロセスを制御し、患者の治療や診断を支援する。医療画像の処理や治療装置の制御などが含まれる。
  6. 環境制御や気象予報の制御: 自然環境や気象現象の予測・制御を行う。気象データの収集や解析を通じて、災害リスクの予測や環境保護のための対策を講じる。
  7. 船舶や海洋構造物の制御: 船舶や海洋構造物の動作や航行を制御する。自動船舶操縦システムや海洋プラットフォームの安定化制御が含まれる。
  8. エネルギー制御や省エネルギー技術の開発: エネルギー供給や消費を管理し、省エネルギー技術の開発を促進する。スマートグリッドやエネルギーマネジメントシステムの導入が含まれる。
  9. 金融市場のモデリングや投資戦略の制御: 金融市場の動向を分析し、投資戦略を最適化するためのモデルやアルゴリズムを開発する。リスク管理や資産配分の最適化が含まれる。
  10. 社会システムの制御や政策決定の支援: 社会全体や組織内の運営を調整し、政策の立案や実施を支援する。経済政策や社会福祉政策の評価や改善が含まれる。



これらの分野において、制御工学の理論や技術は重要な役割を果たしています。制御工学は、高度な数学や物理学の知識を応用し、システムのモデリングや解析、制御アルゴリズムの開発や評価、シミュレーションや実験などを行います。これにより、目的に応じた最適な制御を実現し、高い効率性や安全性、快適性などを確保します。