地政学/はじめに
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地政学(Geopolitics)とは世界地理的な環境における国際政治権力の動向を観察する学際的な研究である。[1]この地政学という学問は特に日本においては研究者が非常に少ない学問でもある。これは地政学という学問が国際政治における力学を地図上において大胆に示すという試みを、近代に国家指導者たちが自らの国家政策の理論的な基礎として用いたことに起因している。
しかしその影響力が示している通り、地政学には国家戦略を読み解く極めて興味深い考察が数多く含まれており、国際政治学、安全保障学または国際関係学等を学びまた研究する学者や学生にとっても重要な知識と言える。大航海時代に始まる世界の一体化は従来の国際関係を大いにグローバル化し、国際政治の列強はグローバル化した世界情勢をより巨視的に観察する必要に迫られるようになったため、政治家、外交官、軍人は地政学の理論を理解してしばしば情勢判断の中にその理論を生かしている。
これから地政学の学習に取り掛かる全ての人々が注意すべき注意点がある。これは地政学のいくつかの研究を教条的に妄信することである。これは極めて無批判であり、理論から政策へと考えが及ぶ際にその教条が思考を全面的に支配する危険性がある。これは科学的な客観性を損ねるものであり、また読者自身の政策的な判断力を大いに減じるものである。ただし地政学的な視点は国際政治を読み解く上で現在非常に興味深い学問分野であり、またこの学問分野が今後の研究を経てより高精度でさらなる研究を求めるような可能性があるとも考えられることは強調しておきたい。
これはつまり地政学という学問の理論の部分と政策の部分を混合せずに学問的な発展を促進し、また従来の地政学研究を批判的に継承することで地政学の発展性を保持し、そして複雑化する国際社会を巨視的、動態的かつ近似的に観察しようとする努力を怠らないことが重要であると言える。本書を通じて読書諸氏の地政学への関心を満たし、地政学の研究や地政学的な視点の教育へと繋げることが出来れば幸いである。
脚注欄
編集- ^ 曾村保信『地政学入門』(中央公論社、2004年)の定義を参考にして導入的な定義とした。地政学の定義には諸説ある。