大学受験国語 現代文の勉強法

傾向概略

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大学入試の現代文は主に以下の内容が出題される。

  • 論理的文章(評論・随筆)
  • 文学的文章(小説・随筆)
  • 実用的文章(資料読解)
  • 文語文(擬古文)
  • 現代文法
  • 知識問題(漢字・熟語・文学史)

中学・高校入試と比べると特に評論文のウェイトが大きい一方、小説はやや出題されにくい。大学入試共通テストでは、2025年度入試から評論1題・小説1題に加えて法令文書等の資料の読み取りをさせる実用的文章が1題追加されることとなった。私立大学・国公立大学の二次試験では評論文だけ1、2題ということも珍しくはない。また、現代文法も大学入試では出題されにくくなっている。理系学部で国語が選べる場合には現代文のみとなっていることがほとんどだが、古文の代わりに明治以降の文語文(擬古文)が出されることもある。

全般

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今までは「傍線部の周辺」のみを読めば正答できるような問題が多かったが、ここ数年の傾向として、「本文の全体から満遍なく出題される」ことが多くなってきた。例えば、傍線部の根拠が傍線部の周辺になかったり、記述で「本文全体を踏まえて記述しなさい」という問題があったり。また、本文前文のリード文の内容を正しく把握していないと本文読解が難しいような問題も出てきている。すなわち、正答するためには出題文の全てを読むことが重要である。

論理的文章

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前述のように大学入試現代文の中心となっている。

哲学・思想、文明批評、言語論といった難解なテーマの文章が高校入試のものよりも多く、内容もより一層硬質となっている。これは大学入学後に触れることの多い学術的な文章に慣れてほしいという大学側の要請もあると考えられる。

文学的文章

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小説について、高校入試までは小中学生くらいのまで子どもを主人公とした文章が中心だったが、大学入試では主人公は老若男女問わないものになっている。そのため、登場人物への感情移入がし難くなっている。また、心情の描写が抽象的になっており、「この表現・描写がどういった心境を表しているのか」を読み解くことが大学入試以前と比べて難解になっている。

随想では、評論に比べると比喩表現の割合が圧倒的に多い。すなわち、比喩表現が具体的に何を言っているのかを正しく認識する必要がある。

たまに台本形式の文章や詩歌を盛り込んだ文章が出題されるが、それらは普通に小説対策をしていれば正答できるであろう。

文学的文章の特徴として、本文の内容の表面的な部分を答えさせる問題が多い。深読みしたり出題範囲外の内容から答えを導き出しても、それは出題範囲の本文に書かれていないから不正解、という論理である。

実用的文章

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法令文書や統計データなどの資料読解が主である。複数の資料を比較させる問題が非常に多い。基本的に、資料の内容を正しく読み取れれば満点を取れる。

これ単体で出題されるのは(実施前時点では)おそらく共通テストのみであろうが、評論的文章・文学的文章で「本文の内容に関連した資料」「本文の内容をもとに生徒が書いたノート」を読解させる融合問題がここ数年の新傾向として見られる。

なお、統計データの読解にはもちろん統計学の知識が必要になるので、数学I「データの分析」、数学B「確率分布と統計的な推測」「数学と社会生活#回帰分析」、数学C「数学的な表現方法の工夫#データの表現方法の工夫」あたりをマスターしておくと助けになるであろう。(基本は数学Iの範囲で十分だと思うが、回帰分析などの数学Iの範囲を逸脱した内容が混じることがあるので、余裕があれば高校範囲の統計学の全内容の学習を推奨する。)

知識問題

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大学入試において、文法は基本的に古典文法中心のため、大学入試ではあまり出ない。ただし、一部私大では特に現代語の敬語や接続詞、助詞の問題が出されることもある。

文学史(近代以降)は出題する/しないが大学ごとにはっきりしており、出ないところではほぼ出ないが、出すところは毎年出ると思ってよい(ちなみにセンター試験では直接文学史を問うことはないが、文学史の知識があればやや解きやすくなる問題も稀に出る)。このあたりは赤本などの過去問を見ておくといい。

漢字の読み書きは、まともに日本語に触れていれば正答できる範疇の問題が多い。ただし、うろ覚えだったり本番に思い出せなかったりするのを防ぐため、普段から手を使って漢字・文章を書く練習をしておくと良いだろう。

熟語については、高等学校現代文/重要単語に載っている単語を網羅すれば心配ない。普段使っている熟語の正しい意味を認識し、難解な語句も頭に入っていれば、基本的に点を取れる。なお、文学的文章で「この語句の本文での意味を答えよ」という文言を見つけたら、それは辞書に載っている意味で答えよというニュアンスが含まれているので、注意する必要がある。

勉強法

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現代文全般で大事になってくるのが、「広く深い語彙」「論理展開の正しい把握」である。前者に関しては既に述べたが、後者に関しては、接続詞が鍵となる。例えば、「つまり〜」「すなわち〜」という接続詞が来た場合、その後の文章は前文の言い換えだと明確に判断できる。「しかし〜」「だが〜」という接続詞が来た場合、その後の内容は前文を否定していることがわかる。このように、接続詞の用法を正しく理解していれば、文章の論理的構造を明らかにすることができる。論理的構造が明らかになれば、「この内容の根拠はこの文である」と判断できるので、選択肢を消したり記述で正しい根拠を持って記述することができる。

総括して、文章をたくさん読むことが大切である。量を重ねることで語彙力が身につき、接続詞に注意して読むことで文章の論理展開を把握する練習にもなる。英語にも言えることだが、出題されたテーマを知っていることで本文理解が進むことも多いので、様々な文章に触れて知見を広げることにも繫がる。


参考書

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現代文はその性質上、どの科目の参考書もそうであるが、特に解説が丁寧で詳しい参考書を要求する科目である。

選ぶ基準としては、解説されている解き方がどんな問題でも応用できるものであるかどうかを見るのがいい。現代文は他科目に比べて知識系問題が少ないので、問題の説明や解説の仕方、参考書によって内容の差異が大きいので、見比べればある程度わかる。著者が選んだ問題文で都合よく設けられた設問に限って使える解き方が実しやかに解説されているものはやめたほうがいい。

また現代文はなんといっても日本語なので、最初から標準~やや難レベルから始めても問題ない。英語のように英単語や構文等の基礎が固まっていないとまるっきり読めないということはまずないので、出来るだけ質の高い文章に多く触れた方がいいこともあり、場合によっては志望校のレベルに合わせてやってみてもいい。

  • マーク式基礎問題集現代文(河合)

センター試験に照準を当てた参考書。解説が詳しく丁寧で、やや易~標準レベルまで広くカバーしており、国公私立大・文理系問わず総合的な国語力の基礎がために有効。初めて手を出す参考書として手ごろ。

  • 入試精選問題集現代文(河合)

スタンダードな参考書。解説が詳しく丁寧で、標準~やや難レベルまで広くカバーしており、中堅国公立大・難関私大向けで総合的な国語力を伸ばすのに有効。

  • 得点奪取現代文記述・論述対策(河合)

記述対策に特化した参考書。解説が詳しく丁寧で、難関国公立大の記述対策に有効。

  • 現代文のトレーニング・入門編 (Z会)

センター・中堅レベル対応の参考書で、現代文の本当の意味での基礎力をつけたい受験生が主な対象。段落分け、指示語、空欄補入、傍線部説明、内容判定問題、要約などなど現代文の基礎をオリジナル問題を使いつつ懇切丁寧に解説。

  • 現代文のトレーニング・必修編 (Z会)

中堅~難関レベル対応の参考書。文章の構造を図示しながら、必修ポイントをかなりわかり易く解説してあり、正答選択肢を選ぶ根拠の見つけ方、記述のまとめ方など、現代文の総合的な実力アップに役立つ。またコラムも充実している。

  • 現代文のトレーニング・私大編 (Z会)

早稲田、上智などの最難関レベルにまで対応した参考書。必修編のステップアップ版私大向け。

  • 現代文のトレーニング・記述編 (Z会)

東大、京大を始めとした難関国公立二次対策用。必修編のステップアップ版国公立大向け。

  • 頻出現代文重要語700(桐原書店)

日本語だからといって全て言葉の意味が分かるわけではないだろう。それらをでたらめに解釈して、先延ばししていると本番で痛い目を見ることになる。これは受験生がぜひとも覚えておきたい語句を多数収録しており、読解力向上につながるだけではなく、センター試験、私大の試験で「意味を直接問う」設問の対策など直接的な得点力にもつながる。