宇宙の膨張とビッグバン

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宇宙の膨張とビッグバンでは宇宙論の中でも基礎の分野とされる宇宙の膨張とビッグバンについて扱う。

膨張とその始まり 編集

天体の距離の測定ではハッブル-ルメートルの法則を紹介した。エドウィン・ハッブルは遠い銀河ほど後退速度が大きいことを見つけた。これは宇宙が膨張していることを示している。

しかし、これは宇宙膨張の中心が地球であることは示していない。例えば仮に宇宙が点Aを中心に膨張しているとすると地球はAから離れていく。そうすると他の星との位置関係もズレが生じるためそれが後退速度として観測される[注 1]。つまり、後退速度を宇宙の膨張する中心からの距離と考えてはいけない。

そして今膨張が起こっていると分かっているが、今膨張しているということは宇宙のいちばん初期の頃のとても小さい点が膨張して今に至ったということが考えられる。この小さい点から大爆発が起こり、宇宙の膨張が始まっていったということをビッグバン[注 2]という。ビッグバンはまだ理論上のことであり、この理論はビッグバン宇宙論と言われる。これを初めて提案したのはジョージ・ガモフである。余談だがこのビッグバンという名称はこれに反対するフレッド・ホイルが揶揄してつけた名前であるが逆にこれが皮肉となってしまったのは有名である。

ビッグバン初期はこの小さい点に密集していたと考えられるため密度と温度はかなり高いはずである。その頃にはヘリウムの元素合成が行われ、今の重量比24%とほぼ同じになった(原子数の比では8%である)。この元素合成のことをビッグバン元素合成という。ビッグバン元素合成ではリチウム程度までの軽元素しか作られておらず、後に恒星で核融合反応が起こることによって我々にとって身近な炭素や窒素、酸素などが作られていった。

宇宙背景放射 編集

ビッグバンから38万年後になると温度は絶対温度で約3000Kになった。それより前には陽子(水素イオン)、ヘリウム原子核、電子がそれぞれ電離した状態であった。すると光のもととなる光子という素粒子は電子により散乱させられていたため、直進することができなかった。3000Kにもなると電離していたものが結合し光子は電子の影響を受けなくなるようになった。これを宇宙の晴れ上がりという。

宇宙の晴れ上がりの時点では温度が3000Kだったが現在までに膨張は続いているため、現在の宇宙の温度は2.7Kほどとなっている。ウィーンの変位則によると

2.7 × λ = 2.9 × 10-3

よりλ ≒ 1.07 × 10-3 m

これは約1mmの波長であり、マイクロ波を放射しているということである。この宇宙空間を満たしている約2.7Kの放射のことを宇宙マイクロ波背景放射、または単に宇宙背景放射という。狭義ではどちらの単語もビッグバンに由来する背景放射であるが、宇宙背景放射の方は広義では活動銀河に由来するX線の背景放射などを含めて宇宙背景放射ということがあるので宇宙マイクロ波背景放射の方が誤解がない。

 
宇宙マイクロ波背景放射の図。WMAP製作。

宇宙マイクロ波背景放射は2.7Kと先述したが、10万分の1程度温度に差がある。これを温度ゆらぎという。宇宙マイクロ波背景放射の温度ゆらぎはCOBEやWMAPなどにより計測された。

宇宙と無限 編集

ビッグバン理論によると宇宙は膨張し続けているのだから宇宙は無限ではないと言える。しかし、昔は宇宙は無限であるということが信じられていた。これに疑問を投げかけたので有名なのがオルバースである。オルバースは宇宙は無限であれば夜も星が空を埋め尽くすので明るいはずであると思った。これはオルバースのパラドックスと言われる。

脚注 編集

  1. ^ 実は宇宙は一様で等方的だという宇宙原理により中心を決めることができないのでこの説明は間違っているのだが膨張のイメージと地球が中心ではないということを伝えるためにあえてこのような説明をしている。
  2. ^ ビッグバンをビックバンと綴り誤る人もいるが、ふつうはビッグバンなので間違えないように。