意匠法
日本意匠法
編集沿革
編集- 1888年(明治21年) 意匠条例施行
- 1899年(明治32年) 意匠法制定、パリ条約加盟対応の法改正。
- 1909年(明治42年) 改正意匠法施行、国内問題に対応するための法改正。
- 1921年(大正10年) 意匠法改正
法目的
編集意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的としている(1条)。
意匠
編集意匠は、物品の
- 形状
- 模様
- 色彩
または1-3の結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいい(2条1項)、形状から離れたモチーフは意匠法で保護されない。また、いわゆるサービス意匠も保護されない。
類似
編集意匠の同一の範囲は狭いため、類似の範囲も意匠権の権利範囲に含まれる(23条)。このため、公知の意匠と類似する意匠は登録すべきではないことが導かれ、登録要件(3条1項3号)においても類似は重要な概念である。
出願
編集組物の意匠
編集商慣行上一組のものとして取引の目的となるものは、同時に使用することで大きな意匠的効果を生じる。このような意匠を構成物品それぞれで権利化するのは煩雑な場合もあるため一意匠一出願(7条)の例外として組物の意匠として保護が認められている(8条)。56の類型が認められている(施規別表第2)。ただし、権利行使の場面を想定すると、可能な限り構成物品についても権利化を図るべきである。
関連意匠
編集類似意匠に代えて創設された制度で、9条の例外として、類似関係にある意匠について登録を認める制度である(10条)。 類似関係にあれば、意匠に係る物品が異なっていても問題ない。
秘密意匠
編集意匠は模倣がされやすいという事実から、実施と公開の時期の調整のため、3年を限度に登録後も具体的な登録意匠の公開が延期される(14条)。
部分意匠
編集独創的で特徴ある創作部分を積極的に保護するため、平成10年改正において、従前の物品の定義を変更し物品の部分に係る意匠を保護する制度を創設した(2条1項かっこ書)。
動的意匠
編集出願書類
編集図面の代わりに、写真、見本、雛形(条文上は「ひな形」)の提出が認められる場合がある(6条2項)。
登録要件
編集適法な意匠登録出願があると審査官が特許庁長官の命を受けて審査する(16条)。以下の拒絶理由(17条各号)が発見されると、拒絶理由が出願人に通知され意見書を提出する機会が与えられる(準特50条)。
- 3条
- 柱書(意匠ではないものについての出願、工業上利用可能性)
- 1項各号(新規性)
- 2項(創作非容易性)
- 3条の2
- 5条
- 7条(一意匠一出願)
- 8条
- 先願(9条1, 2項)
- 10条1-3項
- 権利享有できない者による出願(準特25条)
- 共同出願違反(準特38条)
- 条約の規定に違反する場合
- 意匠登録を受ける権利を有しない場合(冒認出願)
補正と要旨変更
編集本来、補正の効果は出願日まで遡及することとされているため、補正により意匠の要旨が変更されると、当初求めていなかった意匠について権利化を求めていることになり先願主義(9条)に反することになる。このため、補正が要旨変更となることが審査中に発見された場合は、当該補正が決定をもって却下され(17条の2第1項)、設定登録後に発見された場合は、出願日が当該補正に係る手続補正書を提出した時に繰り下がる(9条の2)。
なお、特許法の場合と異なり、実体補正は審査・審判に係属中であれば可能である(60条の24、17条1項ただし書、特17条の2第1項ただし書)。
補正却下後の新出願
編集要旨変更として却下された補正後の意匠について保護を求めたい場合、補正却下後の新出願により却下された補正に係る手続補正書を提出した時に出願したものとみなされ別出願とした場合よりも有利となる(17条の3第1項)。ただし、補正前の意匠についての権利化も図りたい場合には利用できない(同条第2項)。
分割・変更
編集意匠登録出願に2以上の意匠が含まれている場合に、新たな意匠登録出願(分割出願)をすることができる(10条の2)。通常であれば、そのような事態は生じないが(7条参照)、パリ条約上の優先権を主張した出願の場合には2以上の意匠が含まれている場合もある。
特許出願・実用新案登録出願から意匠登録出願へ変更することもできる(13条)。
意匠権
編集登録から消滅まで
編集設定登録により発生し(20条1項)、その日から20年で終了する(21条1項)。ただし、関連意匠の場合は、その本意匠の設定登録の日から20年である(同条2項)。
ライセンス
編集基本的には、特許法#ライセンス節を参照のこと。
権利行使
編集基本的には、特許法#権利行使節を参照のこと。
審判
編集拒絶査定不服審判、意匠登録無効審判、審判手続については同様の規定がある特許法#審判節を参照のこと。
補正却下決定不服審判
編集要旨変更であるとして補正が却下されたことの当否について争う(47条)。補正却下後の新出願とは択一的な手続と考えて差し支えない。補正却下の当否についての判断が容易であることから、特許法・実用新案法で廃止された後も存置されている。
ハーグ条約ジュネーブ改正協定に基づく特例
編集罰則
編集特許法#罰則節を参照のこと。