慶應義塾大対策/医学部
一学年の定員は110名であり、そのうち66名程度が一般受験組、残りの44名程度が附属高校推薦入学者である。
慶應医学部の1次試験では、英語(150点)・数学(150点)・理科2科目選択(200点)の4科目(計500点満点)が課される。慶應医学部は、第一志望の受験生だけでなく東大理Ⅲなどの受験生の大部分も併願受験するため、合格難易度は非常に高い。
出題傾向はあまりはっきりせず、全科目記述・論述問題が多く出題される。よって、過去問題集をしっかりとやり込み、医学部特有の難問にも取り組める深い思考力を養うべきである。
文系科目の英語は他学部と比較しても標準レベルであるが、理系科目、特に生物、数学の難易度はずば抜けて高い。例えば、数学は短時間で相当な量の計算を要求され、難度の高い問題が多く出題される。 全問完答を狙うのはまず無理なので、標準レベルの問題を確実に取り、難度の高い問題も部分点を少しでも取れるように訓練していくのが大切だ。
例年、実質倍率は8~10倍程度である。
1次試験
編集試験時間は90分、配点は150点。文・経済・法ほどの難易度ではないが、それでも受験英語の中では最高レベルの英語力が求められる。非常に高い語彙力、構造解釈力が求められる。大学受験用の単語帳に載ることはまずないような単語・構文が含まれた英文を和訳させる問題も出題される。慶應義塾大学の出題英文は接続詞が少なく文脈の方向を把握しにくい傾向にあるが、医学部の英語では特にその傾向は目立たない。稀に難度調整(得点調整?)のためにとてつもなく特殊な英文が出題されることもあるが、それらの例外を除けば、概して真面目に受験勉強に取り組んでいれば対処出来るはず。かつ、医学部の出題文は文系理系などという瑣末な範疇を超越した、質の高い「名文」が多く、他学部の受験者でも医学部英語をトレーニング素材としていることはよく知られている。 なお出題文中、比較的特殊性の高い語彙については特に解釈リファレンスが付録でついている。さらに、英作文は「書き手の主客を変えて書いてみる」など大きな発想転換を求めるものが多く、これまた極めて良質な出題といえる。学力上位の受験生の得点差はこの英作文で大きく発生すると思われる。
試験時間は100分、配点は150点。慶應医学部の数学は理系最高峰の受験生らを篩に掛けることを意識して作られているため、難易度も大学受験最高レベルである。 大問は4題あり、毎年半分は数ⅢCから出題されている。特に微積からは毎年出題されている。大問1だけは例年標準レベルの小問(空所補充問題)で構成されることが多い。そして、毎年1、2題はかなり難易度の高い問題が出題されているが、受験生のレベルと倍率を考えると、これらの問題にもしっかりと食らいついていくことが求められる。2次曲線・行列・微積分(解析系)・数列・数列(漸化式)が多く、100分で完答するには予備校講師でさえも厳しい。問題の特徴としては、いくつかの分野が融合されている総合(融合)問題(2つの粒子が複雑に動く確率漸化式、帰納的に処理する関数列、多項式の漸化式など)が頻出である。したがって、単純に解法パターンを暗記するだけの勉強をしてきた人では全く歯が立たない。大学入試数学の中でも最高レベルの論証能力・計算処理能力が求められる。よって、しっかりと基礎を固めたら様々な応用問題に挑戦していき、発想力を高め、過去問演習をすることでその計算力をさらに高める必要がある。
また、近年、大問2、3では「操作(T)」の確率問題が出題されることが多くなっているため、この分野は徹底的に対策し得点できるようにしよう。予備校には長年の慶應医学部数学対策のノウハウもあるので、過去問研究には予備校の冬期講習や直前講習の「慶医数学」みたいな講座を受講すると良いかもしれない。
試験時間はもう一つの選択科目と合わせて120分、配点は100点。論述問題・作図問題・数値計算問題が頻出。日本国内では見慣れないレベルの題材が出され、実力が無いと現象を理解することすら難しい。1999年度以降、大問は3題でⅠは小問集合という構成が続いている。学習指導要領の「物質と原子」の「原子・電子と物質の性質」及び「原子と原子核」が出題範囲に含まれているため、原子分野を重要だと考えている教授が多い為か、必ずと言って良い程、原子物理が出題され、力学も必ず出る。難易度は化学・生物に比べると易しい。グラフ作図の練習、数値に対する勘を養い、京大・東工大等の過去問演習も有効であろう。また、日本の大学入試物理最高難易度と呼ばれている滋賀医科大の問題もやってみるとよい。
試験時間はもう一つの選択科目と合わせて120分、配点は100点。大問は3題の構成で、論述問題は必ず出題される。高校範囲外からの出題や参考書外からもあり、有効数字については問題文には触れられないため、自らで判断する必要がある。受験者層を考慮すれば、標準~やや難なレベルと言えるため、高得点争いが必至であり、1つの取りこぼしが命取りになり、ほぼ満点に近い得点が必要である。理論または無機1問と有機が2問出題されることが多い。生物に絡んだ問題も多く出題される。2008年度入試で易化したことにより、今後の展開が読めない状況になっているが、09・10では難化している。生命化学や高分子化学まで、幅広い知識が必要で、有機分野は重視傾向にある。反応速度・平衡移動・電離平衡等の演習も欠かせない。
試験時間はもう一つの選択科目と合わせて120分、配点は100点。大問は3題であるが、ほとんどが記述・論述であり、時間に対する分量も多い。考察問題では見慣れない題材を扱った実験考察問題及び知識問題では細かな知識が問われ、複雑な考察問題が課されるため、現在では対策無しには高得点を望めない問題構成になっているが、対策次第では7〜8割程度の点数で安定させることはさほど難しくない。そのための対策として、教科書の基本的事項を暗記した後、当該学部の過去問の考察問題を解き、解説を熟読し、自分なりの解答をまとめるといった地道な作業が必要である。論述問題の文章が長いため、相当な考察力と読解力が必要である。また、「Nature」などの科学雑誌で生物関係の記事があればそれを読んでみるのも良い。ブルーバックス等でもそういった生物関連の書籍がいくつもあるはずだから、興味があれば読んでみて、大学入試生物にとらわれずに生物学を学ぼうとする姿勢も重要である。物理と生物を両方履修しているわけではないにも関わらず、物理選択者よりも不利と(主にネット上で)吹聴されている生物選択者だが、高校卒業時点で物理・化学・生物全てを履修し、生物と化学で当該学部を受験した筆者からすれば、その差は個人の努力によるものがかなり大きい。ここを読んだ生物選択者は、物怖じせずに自分の道を突き進もう。あなたの健闘を心より願っている。
2次試験
編集慶應医学部の2次試験は複数回の面接と小論文が行われる。受験できるのは1次試験(学科)で合格ラインを超える成績をおさめた者だけである。この2次試験を突破し入学許可を勝ち取るのは、例年1次試験(学科)を通過した者の5~6割であるので、しっかりと面接対策と小論文対策をしておくべきである。
個人面接
編集医学部にふさわしい人材かどうかの適性をみる質疑応答がされる。医師になる自分をどれだけ具体的に現実的に考えられているかが重要になってくる。医師になる姿勢が本気でないと答えられない質問内容もあるので、「どうして医師になりたいのか」「医師になって何をしたいのか」など今一度じっくり考え、その内容を必ず「自分の言葉で」相手に伝えられるようにすることが重要なポイントである。 通常15分程度の面接が2回行われるが、再受験生や3浪以上、宅浪生などは3回行われる。面接1回目と2回目の内容で言っていることが違わないように注意すること。実施前にカードを記入するので、記入した内容を覚えておくこと。
面接の質問内容例
- 医学部の志望理由
- 本学志望理由
- どのような医師になりたいか
- 臨床と研究どちらに進みたいか
- 進みたい診療科はあるか
- 興味のある研究分野は何か
- 理想の医師像
- 最近気になったニュースは何か
- 自分と集団のどちらを大切にするか
- 高校生活、部活動について
- 失敗・挫折の経験はあるか
- 自分の長所と短所
- 併願校の合格状況
- 国公立医学部と本学両方受かったらどちらに行くか(国公立受験生限定)
試験時間は50分。2008年までは難易度の高い生命科学に関する課題文を読ませて、要約させ、自分の考えを記述させるものであったが、2009年度から内容ががらりと変わり、受験生の人間性を問うような内容が出題されている。他学部と違って問題は非公開。
新傾向の内容例
- 2010年 自分の中の背反する2つの性格に悩む医師の文章を読み、医師へのアドバイスと自分の意見を書く。
- 2011年 大洪水で被災した途上国の衛生状態の実態調査を行うチームのリーダーになったと仮定する。同行する医師A,B,Cの意見(どれもあまり好ましくない)を読んで、このような部下を持ったことについての感想と、今後最も関わりを持つべき部下を一人あげ、その部下とどのように関わるかを述べる。
- 2012年 嘘をつく患者の心理に対する考察
- 2013年 1.あなたの持っている資質について 2.その資質を見極めるために、どのような入試を行うべきか