慶應義塾大対策/商学部
一学年の定員は約1,000名であり、そのうち600名程度が一般入試組、残りが内部進学者、指定校推薦入学者、帰国生・留学生入試枠合格者である。指定校推薦と帰国・留学生の人数は少なく、実質的に一般入試組と内部進学者がほとんどである。
受験方式は英語・数学・地歴のA方式(定員480名)と、英語・論文テスト・地歴のB方式(定員120名)が存在する。定員比が明らかに数学選択に傾斜しているため、大学側が数学ができる受験生を特に需要しているのは明白である。逆に言えば、B方式はその分狭き門となっている。
地歴の中で、地理を受験科目として選択できるのは慶應の中でも商学部だけである。なお、地歴よりも学習量が少なく合格点を取りやすい政治・経済の選択は認められていない。
- A方式(英語・数学・地歴受験)
- A方式では、英語(200点)・数学(100点)・地歴(100点)の3科目(計400点満点)が課される。地歴は世界史・日本史・地理から1科目選択である。数学・地歴が2次試験で必要な国立大学を第一志望にする受験生は、A方式で受験するべきである。受験方式上、東大、京大、一橋受験生の併願や地理受験ができるため医学部志望等理系でも受ける人が多く、受験生のレベルは経済に次いで非常に高い。専願の受験生は上位国立志望の受験生との戦いになる。ただし一流国立大志望者といえども英語の苦手な受験生には厳しい。経済学部と同じく速読速解が要求されるため、過去問を参考にしながら速いペースでの処理能力を付けておくべきである。数学は発想力とスピーディな計算力を求める問題が多いため、数学が得意な者でも過去問対策をして傾向を掴めるよう努めるべきである。合格最低点は数学が難しい年で240点台後半、標準の年で250点台と62〜63%ほどになっている。数学は基本難しいため差が付きにくく英語と地歴で逃げ切るという合格の仕方をする人が多い。
- B方式(英語・地歴・論文テスト受験)
- B方式では、英語(200点)・地歴(100点)・論文テスト(100点)の3科目(計400点満点)が課される。地歴は世界史・日本史・地理から1科目選択である。募集人数がA方式の4分の1と極端に少ない。出題の殆どはマークシート或いは記述短答であり、英作文や地歴論述、小論文などの本格的な論述系問題は出題されない。しかし合格最低点は400点満点中290点~320点程度であるため、全科目で高得点を取らなければ合格は厳しい。
- 英語に関しては、経済学部と同じく速読速解が要求されるため、過去問を参考にしながら高速で正確な処理能力を付けておくべきである。
- また、論文テストは数理パズル的な問題が多く出題される。数学が受験科目に無いといえども数理的思考能力が低い受験生を排除しようとしているのは明白なので、過去問をよく研究するべきである。
試験時間は90分、配点は200点。例年大問が7,8題出題される。そのうち3題が長文読解問題(本文は合計約2500語)で、その他の大問では400語程度の文章の空所補充、文法・語法問題、100語程度の短い文章4つを読んでそれぞれ1問だけ答える内容一致問題、語形変化・派生語の空所補充も出題される。大問1~3の長文以外の問題も含めた総語数は約3500語であり、とにかく本文設問共に量が多く、時間制限が厳しい。合格点の目安は8割であり、高得点勝負である。方式問わず英語の出来が合否を決めると言っても過言ではない。
本文については、商学部だけあって、社会科学系の様々な文章が出題されている。経済、政治体制、自然環境破壊、社会保障や福祉、科学技術などなど、どこまでも広範な出題テーマはどことなく面白い。そのため経済学的な単語(例:austerity緊縮財政、progressive taxation累進課税)といった過去問で出てきた単語は覚えるべきである。しかも商学部ゆえに「企業と競争」に視座をおいたミニ論文が目立つのも特徴。いわば社会人向けの常識力を問う課題ともいえる。「実学の慶應」らしい出題である。
いかに速読速解を円滑にできるかが合格点を取る鍵である。当該学部を受験する者は、日ごろから正確な高速処理に力を入れなければならない。 ちなみに、設問の形式は全体的に比較的スタンダードであり、あまり癖が無い。しかし、長文のそれぞれの大問の空所補充1〜2問、内容一致1〜2問は難問であるため、英語全体で8割を安定して取るのは想像以上に難しい。解答のスピードに加えて正確性も高く要求されるハイレベルな試験となっている。
試験時間は70分、配点は100点。数学I・数学II・数学A・数学B(数列・ベクトル)が範囲。試験時間70分に対し、大問4,5題と問題量が多いため、すべての問題に取り組むには相当スピーディな計算力が求められる。また、近年は難化傾向にあるため、適度な取捨選択も重要である。
全範囲からまんべんなく出題されているが、特に「微分・積分」、「場合の数と確率」は毎年出題されている。チャートシリーズ(数研出版)のような網羅系の参考書には載っていないような発想力を求められる問題や複数分野の融合問題(例:2014年大問5の三角関数と期待値の融合問題)が最低でも半分を占めるので、まずは着実に解答が出来る問題から解いていくこと。特に「場合の数と確率」の分野で見たこともないような問題が出題される傾向が強いか。
共通テスト風の実生活をモデルにした問題も過去に出題されている(例:2018年大問3の銀行の手続きの確率を一般化して数学的帰納法で証明する問題)ため、過去問演習でどのような問題が出ているかを確認すべきである。
試験時間は60分、配点は100点。しかし、マークが120個程度あり、マークシートに記入するだけで15分弱はかかってしまうため、実質的には45分で全ての問題の答えを出すことが必要である。
近年、大問3題の構成となっている。文化史に関する出題が多く、20字程度の短論述問題が頻出である。問題の数が多いが、ほとんどがマーク式或いは短答記述式の空所補充問題であり、出題形式は単純である。
難問・奇問が数問は見られるが、教科書レベルで解答可能な問題がほとんどである。慶應大の世界史の中では形式・内容共に最も平易である(とはいえ、センター試験や共通テストよりは明確に難しい)。しかし、得点調整によって10点程度減点されるため、平易な問題が多いからこそ合格するには9割以上の高得点を取る必要がある。受験は相対評価であるため、問題自体の難易度が低かったとしても、その分高得点勝負になってミスが許されなくなるため、問題が難しいときとは別種の難しさが発生する。
学部の性格上、経済史からの出題の可能性がとても高くなっている。特に、産業革命や大航海時代、アジア・アフリカの植民地化、世界恐慌、経済のグローバル化などの経済上の変化には要注意である。大きく経済が変わっているポイントなので、その変化に注意して学習を深めなければならない。
試験時間は60分、配点は100点。しかし、マークが120個程度あり、マークシートに記入するだけで15分弱はかかってしまうため、実質的には45分で全ての問題の答えを出すことが必要である。
社会史、経済史、文化史の出題割合が高い。法学部同様、与えられた文章の穴埋めをしていき、例年3題ほど短文論述が出題されており、稀に正誤問題が出ることもある。問題の数が多いが、ほとんどがマーク式或いは短答記述式の空所補充問題であり、出題形式は単純である。
難問・奇問が数問は見られるが、教科書レベルで解答可能な問題がほとんどである。慶應大の日本史の中では形式・内容共に最も平易である(とはいえ、センター試験や共通テストよりは明確に難しい)。しかし、得点調整によって10点程度減点されるため、平易な問題が多いからこそ合格するには9割以上の高得点を取る必要がある。受験は相対評価であるため、問題自体の難易度が低かったとしても、その分高得点勝負になってミスが許されなくなるため、問題が難しいときとは別種の難しさが発生する。
商学部では、ここ数年で、何度か戦後史までが問われている。また、銀行再編という時事問題も一部扱われている。近・現代史や時事問題に関しては、学校の授業だけでは対応できない。なので、近・現代史や時事問題に関しては、独自で対策を進めていくことが必要である。そのためには、日本史の枠におさまらないことが重要である。日本史の教科書だけで勉強するのではなく、普段から新聞やニュースで流れている政治・経済の状況は確実にチェックするようにするべきである。
用語記述は難しめの単語を記述させたこともあり、日頃から歴史用語を正しく漢字で書けるように練習すべきである。
2007年の銀行史、2015年の平賀源内の生涯など、数年に一度教科書範囲外は言うまでもなく、用語集にすら載ってない単語が出題される年がある。もしそのような問題に本番直面したなら他の設問に力を入れて得点調整に期待するほうが良い。
試験時間は60分、配点は100点。大問数は3題で、出題形式は選択式・短答記述式の空所補充がほとんどである。時事的なテーマが多く、詳細な地名・人物名を問う問題も見られる。問題の数が多いが、ほとんどがマーク式或いは短答記述式の空所補充問題であり、出題形式は単純である。
難問・奇問が数問は見られるが、教科書レベルで解答可能な問題がほとんどである。しかし、得点調整によって10点程度減点されるため、平易な問題が多いからこそ合格するには9割以上の高得点を取る必要がある。
商学部の地理では、時事問題がかなりの頻度で出題されている。時事問題対策を無視して、合格点まで届かせることは不可能なので、きちんと対策をすべきである。まず、日頃から新聞・テレビなどのニュースに普段から関心をもつことが大切だ。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)などを利用して、世界経済や国際情勢、民族問題、環境問題に関して、最新の知識を身につけることがポイントとなる。
試験時間は70分、配点は100点。教養や論理的・数学的思考力、国語的読解力を求める独特の科目である。受験生の地頭を見る科目と言ってもよい。年によって問題難易度の差が激しいため、問題難易度の乱高下に左右されない実力をつけるべきである。
数学の確率・集合・命題の基礎を復習し、論理学を身につける必要がある。一朝一夕に対策ができる科目ではない。例えば、確率・統計に関する問題、科学理論についての課題文を読ませたうえでの論理学分野の出題、ゲーム理論などの商学分野の問題、古典を読ませた上での要約問題やシンプルな現代文的な読解問題などの国語に近い問題は頻出である。また、例年かなり特殊な問題も出題されている。2012年度の場合、ノーベル経済学賞受賞者ミルトン・フリードマンの企業の社会的責任や渋滞学に関する問題も出題された。
これらの問題に対処するには、政治・経済の知識があれば取り組みやすいものの、本文の内容把握を正確に行える国語力があれば問題ない。とはいえ、テーマに関して全く未知だと、概念を理解して文脈を追うのに時間がかかる上に正確さも下がるため、ある程度の背景知識は付けておくべきである。
慶應大他学部とは異なり、論述式の小論文ではなく、マーク式の論文「テスト」であり、比較的マーク式の国語に近い問題形式である。