一学年の定員は、全「学門」あわせて900名程度であり、そのうち650名程度が一般入試組、残りが内部進学者、指定校推薦入学者、帰国生・留学生入試枠合格者である。指定校推薦入学者や帰国性・留学生入試枠合格者は少なく、実質一般入試組と内部進学者がほとんどである。

慶應理工学部では、英語(150点)・数学(150点)・物理(100点)・化学(100点)の4科目(計500点満点)が課される。理工学部は5つの「学門」に分かれており、それぞれに合格定員が設けられているが難易度に大差は無い。それぞれの学門ごとに進学できる学科が概ね決まっているので、まず希望する学科をある程度見据えて学門を選ぶ必要がある。 入試問題は全学門で共通。基礎をしっかり固め、様々な良問や応用問題を解くという王道こそが最も効果的である。 よく誤解されるが、文系学部と同じく1・2年次は日吉校舎で授業が行われ、以降は矢上校舎となる。入試は日吉校舎と三田校舎で行われる。

試験時間は90分、配点は150点。他学部に比べると比較的平易な難易度である。例年、長文読解問題と文法・語法問題(条件英作文)という構成であり、長文としては自然科学系の論説文が出題されることが多い。問題自体は簡単であるが、文章レベルはかなり高いので、相当な語彙力が必要になる。語彙力を身に着けるために単語王などの難関大学受験生用の単語集を一冊しっかりと取り組んでから長文対策はおこないたい。文法・語法問題は法学部のそれほど難易度は高くないが、それでも基礎問題集をしっかりやってから過去問で対策するべきであろう。お勧めは桐原書店の「頻出英文法・語法問題1000」と河合出版の「英文法・語法 正誤問題」の2冊である。これらを何度もやれば、すんなり過去問の問題に取り組めるはずである。最後の和文対照空所補充問題のみ記述式であり、他は客観式。最後の大問は出題傾向が安定していない。イディオムの知識に留意しておけば特に悩む出題はないと思われる。但し稀に、得点調整のためか特異な英文が出題されることもある。

試験時間は120分、配点は150点。大問数は例年5題である。場合の数と確率・整数問題、数Ⅱ図形と方程式が頻出であるが、全体的に数学Ⅲの内容が中心。そして、いくつかの分野にまたがる繁雑な融合問題がほとんどであり、試験時間120分に対し、150分でも足りないくらいの問題量であるため相当の思考力、計算力が要求される。特に、後半の問題は、計算の煩雑さ、計算量の多さも相まって数学が得意な理系トップクラス受験生でも難しい内容になっている。例え穴埋め形式の問題であっても計算量は多く、むしろ記述式問題より多いこともしばしば。また、記述式問題は証明問題が中心に出題されているので、証明の対策も怠らないようにしなければならない。対策としては、まず「チャート式基礎からの数学(青チャート)」もしくは「大学への数学 1対1対応の演習」といった標準レベルの問題集を利用して『典型問題の処理能力』を養い、「理系数学の良問プラチカ」や「大学への数学増刊 新数学スタンダード演習」のような応用力を養う問題集を1冊やって『煩雑な計算にも耐えうる力』を養った後に過去問対策をするとスムーズに対策が出来るだろう。

試験時間は化学と合わせて120分、配点は100点。例年、力学から1題・電磁気(電気)から1題・波動又は熱力学から1題の計3題の構成であるが、2020年度入試では原子が出題された。図やグラフを描く問題が毎年のように出題され、特に力学分野では力の図示の問題、電磁気分野ではグラフを扱った問題の出題頻度が高い。医学部レベルの難問も出題されたり、目新しい題材や一見複雑な出題されることもある。電気分野では、平行平板コンデンサーを扱った問題が頻出される。

スターリングサイクル、カルノーサイクルを題材に使った問題など目新しい出題や高難易度の出題もあったりするが、丁寧な誘導がついているのでそれにうまく乗っていき計算量を少しでも減らしていきたい。特に物理は化学とセットで120分しか与えられない。化学の計算量や難易度などを考えれば物理にかける時間は少しでも抑えたいところである。出題者がどのような考えで問題を作っているのかを日ごろ考えて解いていき、本番でも問題の意図を読みきり解けるところは素早く解けるようにしよう。

勉強の流れとしては、まず基礎・標準部分を固めるために、教科書等で知識を吸収したら「物理のエッセンス(河合塾シリーズ)」と言った基礎固めの問題集を一冊徹底的に取り組もう。そして、難しい頻出問題が解けるように「難問題の系統とその解き方(ニュートンプレス)」に移ってほしいのだが、この本はかなり骨太で難しい。旧帝大・早慶の理系受験生や医学部受験生で物理で高得点を狙いに行く受験生がやる問題集であるため人を選ぶが、当該学部合格のためにも諦めず何周も取り組んで欲しい。そうすれば過去問対策も楽になるだろう。

試験時間は物理と合わせて120分、配点は100点。大問3題の構成。頻出のテーマは、無機と理論計算の融合問題、反応速度、化学平衡、レベルの高い構造決定などである。化学の全範囲にわたって偏りなくしっかりと学習することはもちろんだが、これらの分野には特に力を入れた学習が必要となる。やや難化傾向にあり、高校範囲外から出題されることもある。例えば、2012年度の1(1)の閃亜鉛鉱の構造は、教科書では「参考」や「発展」として扱われることが一般的であり、例え化学が得意な者であったとしてもそこまで馴染みのある内容ではなかったと思われる。

有機化合物は大問3で必ず出題されており、難易度は一貫して高めであることからも深い知識を持ち、それを応用できる実力をつけていくことを平素の学習でも心がけよう。他にも結晶構造や結合の出題をよく見かけるが、上述のテーマより難易度は低いのでこれらの分野は取りこぼすことのないようにしたい。また、全体的に求値計算は煩雑な場合が多く物理との時間の兼ね合いも考えても、完答を目指すならば相当の計算力が要求される。

勉強の流れとしては、まず基礎・標準部分を固めるために、教科書等で知識を吸収したら「実戦化学1・2重要問題集(数研出版)」と言った基礎固めの問題集を一冊徹底的に取り組もう。そして、物理同様に難しい頻出問題が解けるよう「化学Ⅰ・Ⅱの新演習(三省堂)」に移ってほしい。こちらの問題集もかなり難易度は高いが、当該学部合格のためにも諦めず何周も取り組んで欲しい。