法学民事法コンメンタール民事訴訟法

条文

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(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)

第115条
  1. 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
    1.  当事者
    2.  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
    3.  前2号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
    4.  前3号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
  2. 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

解説

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既判力の主観的範囲といわれる。

法的安定性の観点からいえば、既判力の主観的範囲はできるだけ広いほうが望ましい。しかし、それでは手続保障が全く与えられなかった者も既判力を生じる判断に拘束されることになり、手続的正義に反する。そこで、既判力はその訴訟における当事者にだけ及ぶのが原則である(本条第1号)。ただし、例外的に、何らかの形で代替的手続保障が図られている者、また固有の手続保障を与える必要のない者には、既判力を拡張してよいと考えられる(本条第2号ないし第4号)

  • 第2号
    訴訟担当の場合がこれにあたる。訴訟担当の典型例である債権者代位訴訟(民法第423条)を例にとると、G(代位債権者)は、S(債務者)に代位して、SがD(第三債務者)に対して有する債権を行使することができる。このとき、原告はG、被告はDであるが、本条2号の規定により判決の効力はSにも及ぶ。その趣旨は、G(訴訟担当者)の訴訟追行によって代替的手続保障が図られている点に求められる。
  • 第3号(口頭弁論終結後の承継人)
  • 第4号(所持人)
    例えば、X(賃貸人)がY(賃借人)に対して、賃貸借契約の終了に基づく建物明渡請求を提起した場合に、Yの妻A、子Bは「所持人」にあたり、判決の効力が及ぶ(民法上の占有補助者)。その趣旨は、占有補助者には固有の手続保障を与える必要がない点に求められる。

参照条文

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旧法

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第201条〔既判力の主観的範囲〕

  1. 確定判決ハ当事者、口頭弁論終結後ノ承継人又ハ其ノ者ノ為請求ノ目的物ヲ所持スル者ニ対シテ其ノ効力ヲ有ス
  2. 他人ノ為原告又ハ被告ト為リタル者ニ対スル確定判決ハ其ノ他人ニ対シテモ効力ヲ有ス
  3. 前二項ノ規定ハ仮執行ノ宣言ニ之ヲ準用ス

判例

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  1. 請求異議(最高裁判決昭和26年4月13日)
    1. 裁判上の和解により建物を収去してその敷地を明け渡すべき義務のある者から建物を借り受けその敷地を占有する者と民訴第201条第1項にいわゆる承継人
      裁判上の和解により建物を収去しその敷地を明け渡すべき義務のある者から建物を借り受けその敷地を占有する者は、民訴第201条第1項にいわゆる承継人にあたる。
    2. 民訴第519条第1項にいわゆる債務者の一般承継人の解釈
      民訴第519条第1項にいわゆる債務者の一般承継人には、判決の効力の及ぶ債務者の特定承継人をも含む趣旨に解釈すべきである。
  2. 子の認知無効宣言請求(最高裁判決昭和28年6月26日)
    認知の確定判決がある場合に第三者は認知無効の訴を提起できるか
    認知の判決が正当な当事者の間に確定している以上、該判決は第三者に対しても効力を有するから、これに対し再審の手続で争うのは格別、もはや第三者も反対の事実を主張して認知無効の訴を提起することはできない。
  3. 建物収去土地明渡請求(最高裁判決昭和31年7月20日)
    判決の反射的効力を認めたことが違法とされた一事例
    土地の適法な転借人およびその者からその所有の地上建物を賃借する者等は、賃借人の土地明渡義務が判決により確定されている場合においても、これがために当然賃貸人の土地明渡の請求を拒みえないものと解すべきではない。
  4. 所有権移転登記手続請求(最高裁判決昭和41年6月2日)
    1. 移転登記請求訴訟の被告から二重譲渡を受けた者は民訴法第201条の承継人にあたるか
      不動産買受人甲が売渡人乙に対し所有権移転登記手続履践の請求訴訟を起こし、甲勝訴の判決が確定した場合において、乙から同一不動産の二重譲渡を受けた丙が、右訴の事実審の口頭弁論終結後にその所有権移転登記を経たとしても、丙は、前示確定判決について、民訴法第201条第1項の承継人にあたらない。
    2. 仮執行宣言付判決に基づく登記の効力
      登記義務者の登記申請意思の陳述を求める請求を認容する判決に誤つて仮執行宣言が付せられ、右仮執行宣言付判決に基づいて登記がなされた場合でも、右判決が確定した後は、右登記を有効と解して妨げない。
  5. 室明渡請求(最高裁判決昭和46年1月21日)
    占有移転禁止の仮処分決定に違反した占有の移転と本案訴訟の帰すう
    不動産の執行吏保管・占有移転禁止を命ずる仮処分決定に基づく執行を受けた仮処分債務者が、右決定に違反して第三者に占有を移転した場合においても、仮処分債権者は、本案訴訟において、仮処分債務者の占有喪失を顧慮することなく、同人を被告として、不動産の引渡または明渡を請求することができる。
  6. 所有権確認等請求(最高裁判決昭和48年6月21日)
    通謀による虚偽の登記名義を真正なものに回復するための所有権移転登記手続請求訴訟における被告敗訴の確定判決と口頭弁論終結後被告から善意で当該不動産を譲り受けた第三者
    通謀による虚偽の登記名義を真正なものに回復するための所有権移転登記手続請求訴訟における被告敗訴の確定判決は、口頭弁論終結後被告から善意で当該不動産を譲り受けた第三者に対してその効力を有しない。
  7. 請求異議(最高裁判決昭和51年10月21日)民法第448条
    保証人敗訴の判決確定後に主債務者勝訴の判決が確定した場合と保証人敗訴の確定判決に対する請求異議
    債権者から保証人に対する保証債務履行請求訴訟における保証人敗訴の判決が確定した後に債権者から主債務者に対する主債務履行請求訴訟における主債務者勝訴の判決が確定しても、主債務者勝訴の判決が保証債務履行請求訴訟の事実審口頭弁論終結の時までに生じた事由に基づいてされているときは、保証人は、右の主債務者勝訴の確定判決を保証人敗訴の確定判決に対する請求異議の事由にすることはできない。
    • 保証人が主債務者勝訴の確定判決を援用することが許されるにしても、これは、右確定判決の既判力が保証人に拡張されることに基づくものではないと解すべきであり、また、保証人は、保証人敗訴の確定判決の効力として、その判決の基礎となつた事実審口頭弁論終結の時までに提出できたにもかかわらず提出しなかつた事実に基づいてはもはや債権者の権利を争うことは許されないと解すべきところ、保証人敗訴判決の確定後において主債務者勝訴の確定判決があつても、その勝訴の理由が保証人敗訴判決の基礎となつた事実審口頭弁論の終結後に生じた事由に基づくものでない限り、この主債務者勝訴判決を援用して、保証人敗訴の確定判決に対する請求異議事由とするのを認めることは、実質的には前記保証人敗訴の確定判決の効力により保証人が主張することのできない事実に基づいて再び債権者の権利を争うことを容認するのとなんら異なるところがない。
  8. 執行文付与に対する異議(最高裁判決昭和52年12月23日)
    土地所有権に基づき建物収去土地明渡を命ずる確定判決の基礎となつた口頭弁論の終結後に建物の所有権を取得した者がその終結前に経由した所有権移転仮登記に基づく本登記を経由した場合と口頭弁論終結後の承継人
    土地所有権に基づき建物収去土地明渡を命ずる確定判決の基礎となつた事実審口頭弁論の終結後に債務者から建物の所有権を取得した者は、その終結前に経由していた所有権移転仮登記に基づく本登記を経由した場合であつても、仮登記の時にさかのぼつて被告適格を承継するものではなく、口頭弁論終結後の承継人にあたる。
  9. 損害賠償(最高裁判決昭和53年3月23日)
    不真正連帯債務者中の一人と債権者との間の訴訟において相殺を認めた確定判決の他の債務者に対する効力
    不真正連帯債務者中の一人と債権者との間で右債務者の反対債権をもつてする相殺を認める判決が確定しても、右判決の効力は他の債務者に及ぶものではない。
    • 不真正連帯債務者の一人と債権者との間で実体法上有効な相殺がなされれば、これによつて債権の消滅した限度で他の債務者の債務も消滅するが、他の債務者と債権者との間の訴訟においてこの債務消滅を認めて判決の基礎とするためには、右相殺が実体法上有効であることを認定判断することを要し、相殺の当事者たる債務者と債権者との間にその相殺の効力を肯定した確定判決が存在する場合であつても、この判決の効力は他の債務者と債権者との間の訴訟に及ぶものではないと解すべきである。
  10. 執行文付与(最高裁判決昭和53年9月14日)
    新会社の設立につき旧会社の債務の支払を免れることを目的とするなどの事情が存する場合において旧会社に対する債務名義につき新会社に対する強制執行のため執行文付与を命ずることができないとされた事例
    新会社の設立について旧会社の負担する債務の支払を免れることを目的とするなど判示の事情が存する場合においても、旧会社と新会社を同一の法人格と解し、又は法人格否認の法理に基づいて、旧会社に対する債務名義につき新会社に対する強制執行のため執行文の付与を命ずることはできない。

前条:
第114条
(既判力の範囲)
民事訴訟法
第1編 総則

第5章 訴訟手続

第5節 裁判
次条:
第116条
(判決の確定時期)
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