早稲田大対策/政治経済学部
早稲田大学の看板学部。現在は政治学科、経済学科、国際政治経済学科の3学科を擁する。パラグラフリーディングや自由英作文、国語や地歴公民でも論述問題が出題されており、明確にセンターから2次試験まで経験する国公立大学受験者に有利になるような問題構成である。
政治経済学部の英語の難易度は国際教養学部と並んで早大随一の難易度である。また、地歴の難易度も非常に高く、教科書レベルの知識で解くことは難しい。一方で、数学は標準~やや難の典型問題ばかりが出題されるため、地歴と数学が両方出来るのであれば、数学を選択することを強く勧める。地歴の難易度が得点を稼ぎにくいとされているため、私立専願者は英語と国語で出来るだけ点数を稼いでおきたい。
なお、2021年度入試から政治経済学部は一般選抜と大学入学共通テストを利用した入試の改革を他学部に先駆けて着手し、大学入学共通テスト、英語外部検定試験、学部独自試験の合計点で選抜する方式に変更すると公表した。
具体的には、「大学入学共通テスト」(100点)、「英語外部検定試験」および「学部独自試験」(100点)の合計200点満点。大学入学共通テストにおいては、外国語、国語、数学I・数学A、選択科目(地理歴史・公民・数学・理科)の4科目を25点ずつ換算する。 そして、学部独自試験は、日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とする。
全科目を満遍なくバランスよく学習した高校生に有利になっていく入試になると思われる。政治経済学部の受験生には従来通り特定の科目に偏った勉強ではなく広くどんな分野にも対応できるバランスの良い学習がますます必要になっていくものと思われる。
大学入学共通テスト(2021年~)
早稲田政治経済学部の受験生は大学入学共通テストの受験を必須とする。 まず、主要3教科の英語と国語と数学は、「英語」(200点)「国語」(200点)「数Ⅰ」(100点)とし、各科目の配点はそれぞれ、25点、25点、25点に圧縮される。
残りの選択科目は、「世界史B」「日本史B」「地理B」「現代社会」「倫理」「政治・経済」「倫理、政治・経済」「数学Ⅱ」「数学B」「理科基礎から2科目」「基礎なし理科」から1科目(選択科目、100点)を選択して、その科目の配点は25点に圧縮される。 以上の方法によって、その4教科の各配点(25点、25点、25点、25点)の合計点を、早稲田政治経済学部の入試の得点として、まずカウントする。
学部独自入試 (2021年~)
2021年スタートの早稲田政治経済学部の学部独自入試は、日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する形式とし、記述式解答を含む「総合問題」となっている。試験時間は120分。マーク式と記述式である。
総合問題は以下の3つの問題で構成される。
大問Ⅰ・・・日本語の長文問題
大問Ⅱ・・・英語の長文問題
大問Ⅲ・・・自由英作文
日本語の長文問題と英語の長文問題は、いずれもボリュームがあり、表やデータグラフなども出てくる。問題の難易度はとても高く、200字の記述問題が例年出題される。受験生は試験時間内に早く正確に読んで内容を理解することが重要である。 自由英作文は、あるテーマについて、賛成か反対かを英語で論じる問題が例年出題される。現在、自由英作文は、多くの大学でよく出題されるので、早稲田政治経済学部の受験生は早稲田の過去問だけでなく他大学の英語の過去問を解いて、自分の意見をすぐに英語にして述べる訓練をする必要がある。
一般入試(~2020年まで)
英語(90分/90点) 1998年までは読解4題、英作文形式の対話文完成1題の計5題が基本だったが、1999年は作文2題の計6題に(但し、もともと和文英訳と会話文の完成で1つの大問にしていたものを別々に切り離しただけ)、2000年以降は読解問題3題と英作文1題が、2008年からは会話文と自由英作文が定着している。2000年は読解問題が1題減ったがそれぞれの長文の語数は99年以前とほとんど変わらず、平均点が37.17点から55点と大幅に易化、そのため合格最低点も143点から170点と一気に上昇し、この傾向は2001年も続いた。2002年は大問Ⅰの語数が700語超と長文化したが、大問Ⅲが約180語と短くなった。2003年以降は語数がさらに増加、2005年にはついに1000語超の文章が出題された。難化の傾向は地歴から英語へ合否の要をシフトするための大学側の思惑だと考えられる。合格の為の具体的な学習法として、全文和訳に固持する必要こそないが、普段から英文構造の正確な理解を意識した精読型の勉強を入念にする事が重要。出題される英文は比較的平易な文章が多いが、抽象度の高い評論文も出題される(1999年以前の大問4、2000年以降の大問3等)。特に2004年度の問題は一見平易に見えるが、論理的展開をつかめないと全く解けない問題が出題されており論理的思考力がかなり要求された。勿論本学部の過去問演習も疎かにしてはいけない。また、最近は断続的ではありますが、小説問題が主題されるのが政治経済学部の特色である。微妙な心理描写や間接話法の表現になれるため日ごろから小説文に的を絞った対策も欠かすことはできない 。余裕があるなら出題傾向が似ている東大の英語の大問5の小説問題などで対策を練っておこう。2008年以降自由英作文を出題形式とすることもあるので受験生は英語の総合力を問われる。
政治経済学部の特徴は、受験生が苦手とする空所補充及び文整序が多い事である。一般の熟語集レベルのイディオムを十分に押さえておく事は前提であり、それに加え英文構造の正確な理解が不可欠。英文を文法的に観察する事により、同一の文法形式が繰り返される部分は内容的にも同一である事が予測可能な為である。選択肢の中の単語の役割(接続詞、動詞、名詞それぞれがどれと結びつくか?イディオムになっていないか?等)を検討し組み立てる作業に日頃から慣れる為にも、センター試験の同類の問題を多く解く事をお勧めする。その上で過去問を研究し、出題者の意図を見抜く事が大切である。文整序は1993年に初登場し、2007年以降は毎年出題、2009年からは読解問題3題すべてに出題されている。論理的な流れも大切ではあるが、その前に指示語・代名詞に注目する事である程度の見当はつけられる。1995年と1996年にはパラグラフ整序が出題されており、今後出題される可能性も全くないわけではないので、類似の問題を出題する東大の英語の大問1の(2)のパラグラフ整序の過去問を通じて演習を深めておきたい。
国語(90分/70点) 現代文、古文ともに重厚な堅い文章が使われ、対策・演習が必要となる。この学部を受けるならどの受験生にも言える事だが国語常識(漢字、慣用句、カタカナ語等)は出来て当たり前である。文学史は古典文学史のみならず近代文学史からの出題もあり、内容も早稲田ならではのマニアックな問題が多い。日本史選択者は点の取りどころと言えよう。かつては古文が、受験生間に差が生じないほど難しく、その結果「古文無勉」でも受かる例が多数あったが近年は易化(それでもハイレベル)したので人並みに出来る必要がある。古文対策として、古典単語、古典常識、文法(助動詞、敬語、識別、接続条件等)を完璧にしておく事。所謂受験頻出と言われる中世の有名作品からではなく、センター試験の出典のように受験生に馴染みの薄い近世の文章からの出題が多く、初見の文章でも問題が解けるための基礎力の積み重ねが重要。現代文、古文ともに「特定の段落の文から使われていない動詞を探す」や「文脈上合わない表現を抜き出せ」といった時間のかかる設問が有る為、必ず設問に最初に目を通すべき。2009年度は記述式問題が出題されたので、時間配分に細心の注意をはらうように。漢文は白文(記述回答用紙)に返り点を付ける等、独特な出題が有るので過去問で対策しておこう。
大問(1)では主として古文漢文融合問題が出題される。受験生になじみの薄い近世の文章が多く使われている。問題の特徴として空欄補充問題、それも古文の長い文を入れさせることが多い。中心はやはり意味を問う解釈問題だが、それぞれの関連を考慮しなければならない。文法問題は標準的なものが多いですが、答えを文中から抜き出す問題が多いので注意深さと幅広い知識が必要であるといえる。
大問(2)では明治文語文など古い文体の文章が近年多く出題されている。夏目漱石が2年連続で出題された事もあるので森鴎外なども出題される可能性もある。また、毎年近代文学史の出題もあるので取りこぼさないように。ただ2009年度は例外的に出題はなかった。しかし今後とも対策をしておくことに越したことは無い。
大問(3)では空欄補充中心の問題が中心となる。ただし、数年前までは傍線部説明問題が中心であり過去のパターンに戻る可能性もあるので注意が必要。文化論、芸術論も出題され山崎正和、多木浩二、市川浩など抽象的な文章が多い。また2009年度には本格的な記述問題が出現した。書き慣れていない私立専願の受験生にとっては厳しかったかもしれないが、慣れないと厳しいので日ごろから文章をまとめる練習をしておくことが重要。もちろん国立大の現代文の問題を練習するのも十分力になる。
なお2017年度入試では、これまで大問(1)にあった古文が大問(3)に回り、現代文が(1)(2)で出題された。
日本史(60分/70点) 過去は難問奇問のオンパレード、「カルトクイズ」とさえ評された本学部だったが、数年前から易化が見られ、難易度は平易と言えるレベルになった。2006年度の問題は前年度に比べると難化したが、岸内閣の政策·中井竹山が草もう危言(『草茅危言』(そうぼうきげん)のこと?)を松平定信に奏じた事等は、本学は勿論、他学部·他大学の法学部系で既出の問題であり、幅広く過去問研究を行えば高得点を期待出来る。難問に関して、出題内容は山川出版の教科書よりも用語集からの出題が多く、教科書を読み込むよりも用語集を常に確認するようにこだわれば良い。配点はマーク式が1点で記述式が2点と予想され、記述問題での漢字ミスは命取りになる。戦後史に関する論述問題の配点が高いので(12~14点)、軽視することは出来ない。論述問題は国立大受験生に対するサービス問題といえ、私大専願者にはやや難しいが、問われている内容自体は教科書レベルの知識で対処可能。教科書を読み込み、実際に自分の手で書いてみることが重要。東大・一橋大等の本格的な論述問題も参考にするとよい。国立大の論述問題を参考にすればおつりが出るレベルになると思われる。なお、どの学部にも言える事だが、早稲田大学の関係者(大山郁夫など)は徹底的にマークしておく必要がある。
世界史(60分/70点) 日本史同様過去は難問奇問(有名なのは1992年のユトランド半島の図にエルベ川を書き込む問題。ちなみに1993年にはヨーロッパの地図にアルザス・ロレーヌ地方、トリエステ・南チロル、ヴァチカン市国の位置をそれぞれ塗りつぶし、斜線、◎で図示する問題が出題された)のオンパレード、「カルトクイズ」とさえ評された本学部。近年は易化傾向が続いていたが、2008年度入試では一転して往年の入試問題を髣髴とさせる程の難化の様相を見せた。2009年度には反動もありやや易化したが、勿論それでもハイレベル。なんといってもケアレスミスを無くす事が肝要。また本学部は問題数が多く、即座に情報が引き出せるよう問題演習は数多くする事が重要。教科書·用語集を軸とし、他学部過去問を出来るだけ多く解くように(早大世界史独特の問題に対する勘を養うため)。その際、文学部の問題は基本事項の確認に丁度良い難易度なので、まずはこれを8割以上取れる学力を養成していこう。他学部の問題に比べると一問一答的な問題が多く、年号と人名の正確な暗記が政経世界史勝利の秘訣であるといえる。
政治・経済(60分/70点) 政治・経済は基本的な知識を問う問題が中心。かつては政治思想から逸脱し、倫理分野と思われるような出題があったが、これは特定の教授による物なので特別の対策をする必要は無い。近年は、市場機構論や図表問題等からの出題が非常に多くなり、知識問題から思考問題へのシフトが際立っているので、60分という時間をうまく使わなければならない。これは知識に偏らない、考える力を求めている本学部の意図であるといえる。思考能力を問う問題は、一般的な国語力によって解決でき、特別な対策は不要。近年の傾向の変化は激しく、過去に出題された古い問題を基礎とするのではなく、3年程前からの過去問を利用して傾向を掴む事が重要。2009年度の問題の難易度は高いものであった。なお、政治・経済は2017年度の入試を持って廃止となった。
数学(60分/70点) 60分で4題と分量は標準的な問題。国立大併願者で一般入試を受験する場合は数学受験が一番多いようである。また医学部医学科などの理系受験生も併願して受ける事も多い(理工学部や医学部と併願して受ける者も多数存在する)。そのため、数学受験者が選択科目の中で一番多い。マーク式や解答のみを求める客観問題と記述式の問題が混在している。他の私大文系のような教科書レベルの出題ではないが、典型問題がほとんどを占める為、難易度はセンター試験よりやや高いレベル。かつては理工学部の数学に匹敵するか、あるいはそれを上回るレベルの問題を出題していた時期もあったが、最近はそういった難問は影を潜めている。歴史系科目よりはるかに取り組みやすいので、数学にいくらかでも自信がある受験者は選択する価値があるといえる。ただ、選択科目の中では国立大受験生や理系の受験生の併願率が特に高いのが特徴で彼らはほとんど満点に近い点数を取るのでちょっとしたミスが命取りになりかねない。参考書としては、「チャート式基礎からの数学 青」を薦めたい。この問題集の基本例題及び重要例題を全て解けるようになって欲しい。ここまで出来れば7割以上をコンスタントにとれる実力がついてくる。上記の参考書に出て来る幾つかの解法を組み合わせる問題が出題される事が有るので、過去問を時間の許す限り解いて、応用力を身につけて欲しい。早稲田数学の特徴は、その年だけでは全分野の力は試されないが、各年度を通してみると、全分野にわたって問題が作成されている事である。その為、苦手分野を放置してはならない。どの分野が出題されても満足に得点できる力が求められる。
センター試験利用方式
5教科6科目(800点満点)で、合格するには90%以上の得点が必要。センター試験の成績だけで合格できるため、文系受験生のみならず、理系学部の受験生や国公立大学医学部医学科の受験生も多数出願する。