「物理数学I 解析学」の版間の差分

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3 行
==解析学==
 
解析学は高校までの数学の延長としてとらえることも出来るが、高校までの数学を厳密に基礎づける科目ととらえることも出来る。例えば、高校までの範囲では数列の極限や関数の連続は厳密には定義されていなかった。解析学ではこのような極限を取る手法を扱う。また、微分や積分に関するより進んだ計算も扱う。ここで学んだ手法は線形代数と並んで、より進んだ計算を行なうための基礎となるので、ここで学ぶ手法には十分習熟する必要がある。
解析学は高校までの数学の延長としてとらえることも出来るが、高校までの数学を
厳密に基礎づける科目ととらえることも出来る。例えば、高校までの範囲では
数列の極限や関数の連続は厳密には定義されていなかった。
解析学ではこのような極限を取る手法を扱う。また、微分や積分に関するより進んだ
計算も扱う。ここで学んだ手法は線形代数と並んで、より進んだ計算を行なう
ための基礎となるので、ここで学ぶ手法には十分習熟する必要がある。
 
===1変数の計算===
 
ここでは、1つの変数を扱う関数を用いて収束や連続性の定義を扱う。また、それらを用いて厳密に定義された手法を用いてテイラー展開やより複雑な積分を導入する
また、それらを用いて厳密に定義された手法を用いてテイラー展開や
より複雑な積分を導入する。
 
 
====実数の連続性====
 
最初に、無理数を定義する手法を考える。高校までの範囲では、実数のうちで有理数でないものを無理数と定義した。ここで有理数とは、2つの互いに素の整数n,mを用いて、
有理数でないものを無理数と定義した。ここで有理数とは、2つの互いに素の
整数n,mを用いて、
:<math>
\frac n m
</math>
とかかれるもの全体を指す。しかし、この構成ではそもそも実数が何なのかが示されていないため、無理数というものがとらえにくいという難点がある。
示されていないため、無理数というものがとらえにくいという難点がある。
ここで、実数の性質について1つの仮定をおく。
:実数が全て書かれた直線を数直線とする。この数直線上でただ1点に対する切断を考えるとき、その点はその点より小さい数の集合と大きい数の集合を作りだす。このとき、この数自身は小さい数の集合に含まれて、大きい数の集合には含まれないものとする。
この定義はデデキントの切断([[w:en:Dedekind cut]])と呼ばれる。このとき、ある実数をその数より小さい有理数の集合によって定義する。この定義は有理数と無理数の両方に対して適用できる。なぜなら、切断で選ばれた点が有理数だったときには、その点自身までの有理数の集合を選んだ有理数を表わす有理数の集合として扱えばよい。一方、切断によって選ばれた点が無理数だったときには、その切断は必ずその近くにある別の数を表わす切断とは区別される。なぜなら、ある数を選んだときその数と別の数の間には必ずある有理数が存在するからである。有理数のこの性質は有理数の[[w:稠密]]性と呼ばれ、有理数の重要な性質である。これは、どんな数でも数値として書くならその値はどんな場合でも無限小数で書くことが出来、無限小数はどれほど小さい数でも有理数で書かれ循環小数を含んでいることから確かに成立するのである。このようにして、無理数はその数より小さい有理数全体の集合によってとらえられた。
この定義はデデキントの切断と呼ばれる。このとき、ある実数をその数より小さい
有理数の集合によって定義する。この定義は有理数と無理数の両方に対して適用できる。
なぜなら、切断で選ばれた点が有理数だったときには、その点自身までの有理数の
集合を選んだ有理数を表わす有理数の集合として扱えばよい。
一方、切断によって選ばれた点が無理数だったときには、その切断は必ずその近くに
ある別の数を表わす切断とは区別される。なぜなら、ある数を選んだときその数と
別の数の間には必ずある有理数が存在するからである。有理数のこの性質は
有理数の稠密性と呼ばれ、有理数の重要な性質である。これは、どんな数でも
数値として書くならその値はどんな場合でも無限小数で書くことが出来、無限小数は
どれほど小さい数でも有理数で書かれる循環小数を含んでいることから確かに
成立するのである。このようにして、無理数はその数より小さい有理数全体の
集合によってとらえられた。
 
====数列の収束の定義====
 
ここからは、上で述べた実数の連続性を用いて、数列の収束を定義する。まずは、収束の定義を述べる。任意の(小さい)ある数<math>\epsilon</math>をとったとき、あるNが存在してn <math>>=</math> N を満たす全てのnについて
 
ここからは、上で述べた実数の連続性を用いて、数列の収束を定義する。
まずは、収束の定義を述べる。
任意の(小さい)ある数<math>\epsilon</math>をとったとき、
あるNが存在して
n <math>>=</math> N を満たす全てのnについて
:<math>
|a _n - a| < \epsilon
</math>
が成り立つとき数列<math>a _n</math>は、定数aに収束するという。
数列<math>a _n</math>は、定数aに収束するという。
 
 
ここで、実数の連続性は無限にある定数aに近い数がただ1つしかないということを見るために用いられている。これは、ある定数aと異なった点bは、定数aとの間に何らかの有理数を持つため、定数aと無限に近くにあることは出来ない。そのため、数列<math>|a _n-a|</math>が、定数aと選んだ点bの距離よりも小さい<math>\epsilon</math>よりも小さいという条件を満たすとき、<math>a _n</math>が収束する点は確かに点bではなく、点aであることが
ここで、実数の連続性は無限にある定数aに近い数がただ1つしかないということを
保証されるのである。上の定義は高校までに行なった極限の定義に適合しているはずなので、実際に極限の計算を行なうときには、これまでに用いた結果をそのまま用いてもよい。<!-- ただし、この定義によると収束する数列の和や、積に関する結果は、この定義から直接導出することができるため、以前よりも少ない仮定で計算が進められるといえる。-->この定義を用いたとき、以下が成り立つ。
見るために用いられている。これは、ある定数aと異なった点bは、定数aとの間に
何らかの有理数を持つため、定数aと無限に近くにあることは出来ない。そのため、
数列<math>|a _n-a|</math>が、定数aと選んだ点bの距離よりも小さい<math>\epsilon</math>よりも小さいという条件を
満たすとき、<math>a _n</math>が収束する点は確かに点bではなく、点aであることが
保証されるのである。
上の定義は高校までに行なった全ての極限の定義に適合しているはずなので、
実際に極限の計算を行なうときには、これまでに用いた結果をそのまま用いてもよい。
ただし、この定義によると
収束する数列の和や、積に関する結果は、この定義から直接導出することができる
ため、以前よりも少ない仮定で計算が進められるといえる。
具体的には以下が成り立つ。
 
定数a,bに収束する数列<math>a _n</math>,<math>b _n</math>に対して、
83 ⟶ 44行目:
*導出
 
(I)について、数列<math>a _n</math>がaに収束することから、ある定数<math>\epsilon _1</math>を取ったとき、ある定数<math>N _1</math>が存在し、<math>N _1 < n</math>を満たす全てのnについて
ある定数<math>\epsilon _1</math>を取ったとき、ある定数<math>N _1</math>が存在し、
<math>N _1 < n</math>を満たす全てのnについて、
:<math>
|a _n - a | < \epsilon _1
</math>
が成立する。同様に数列<math>b _n</math>がbに収束することから、ある定数<math>\epsilon _2</math>を取ったとき、ある定数<math>N _2</math>が存在し、<math>N _2 < n</math>を満たす全てのnについて、
が成立する。同様に
数列<math>b _n</math>がbに収束することから、
ある定数<math>\epsilon _2</math>を取ったとき、ある定数<math>N _2</math>が存在し、
<math>N _2 < n</math>を満たす全てのnについて、
:<math>
|b _n -b | < \epsilon _2
117 ⟶ 73行目:
< \epsilon _1 + \epsilon _ 2
</math>
が成り立つ。しかし、<math>\epsilon _1</math>,<math>\epsilon _2</math>はNを大きく取ることでいくらでも小さくできるため、全ての<math>\epsilon</math>に対して
小さくできるため、全ての<math>\epsilon</math>に対して
:<math>
\epsilon _1 + \epsilon _ 2 < \epsilon
153 ⟶ 108行目:
< ( a + \epsilon _ 1 ) \epsilon _2 + |b| \epsilon _1
</math>
が得られる。ここで、<math>\epsilon _1</math>,<math>\epsilon _2</math>はNを大きく取ることでいくらでも小さくできるため、a,bが有限のときa,bの値に関わらず上の値は限りなく小さくなる。よって、
小さくできるため、a,bが有限のときa,bの値に関わらず上の値は限りなく
小さくなる。よって、
:<math>
\lim (a _n \times b _n) = a b
214 ⟶ 167行目:
\lim ( 2 \times \frac 1 n) = 2 \times 0 = 0
</math>
が成り立つ。一般に定数倍や定数の足し算は、極限値に定数倍や定数の足し算をすればよい。
が成り立つ。
一般に定数倍や定数の足し算は、極限値に定数倍や定数の足し算をすればよい。
 
 
 
次に数列の発散の定義をする。ここでも上の場合と同様無限個の数列の値がある値より大きくなることが重要である。あるNが存在してn <math>\ge</math> N を満たすすべてのnについて任意に取った(大きい)Rに対して、
ある値より大きくなることが重要である。あるNが存在して
n <math>\ge</math> N を満たすすべてのnについて任意に取った(大きい)Rに対して、
:<math>
a _n > R
</math>
が成り立つとき、<math>a _n</math>はn無限大で正の無限大に発散するという。このことを
このことを
:<math>
\lim a _n = \infty
254 ⟶ 202行目:
a _n = n \ge R = N
</math>
が成り立つ。値Rはいくらでも大きくできるので、このことは数列の発散の条件を満たしている。よって、数列
満たしている。よって、数列
:<math>
a _n = n
262 ⟶ 209行目:
 
 
同じ様にして、 あるNが存在してn <math>\ge</math> N を満たすすべてのnについて任意に取った(小さい)Rに対して、
任意に取った(小さい)Rに対して、
:<math>
a _n < R
</math>
が成り立つとき、<math>a _n</math>はn無限大で負の無限大に発散するという。このことは
負の無限大に発散するという。
このことは
:<math>
\lim a _n = - \infty
275 ⟶ 219行目:
と書かれる。
 
このうちのいずれにも当てはまらない場合もある。例えば、次の場合は数列はどの値に収束することもないため、数列は極限値を持たない。
 
このうちのいずれにも当てはまらない場合もある。例えば、次の場合は数列は
どの値に収束することもないため、数列は極限値を持たない。
 
 
286 ⟶ 228行目:
a _n = (-1)^n
</math>
が上の定義のいずれも満たさないことを示し、この数列が収束も発散もしないことを導出せよ。
導出せよ。
 
 
**解答
このとき、非常に大きなNを取ったとしても、そのNから先の全てのnについて<math>a _n</math>がきわめてaに近い値に留まるようなaは存在しない。例えば、a = 1と取ったとすると、ある値kにおいて
<math>a _n</math>がきわめてaに近い値に留まるようなaは存在しない。
例えば、a = 1と取ったとすると、ある値kにおいて
:<math>
a _n - a = 0
</math>
となり、両者は非常に近くなる。しかし、n=k+1においては既に、その値は-1となり、
しかし、n=k+1においては既に、その値は
-1となり、
:<math>
|a _n - a| = 2
</math>
となり、任意に小さい数<math>\epsilon</math>に対してより小さい数であり続けることはできない。これはどれほど大きなkをとっても、もしくはa = -1 もしくはそれ以外の量を選んでも同じである。よって、この数列はn無限大である値に収束することは無い。一方、この数列は1と-1しか値を取らないため、どのような数よりも大きくなるような数列ではない。よって、この数列は正負の無限大に発散することもない。よって、この数列は収束も発散もしないことが示された。
となり、任意に小さい数<math>\epsilon</math>に対してより小さい数であり続けることは
できない。これはどれほど大きなkをとっても、もしくはa = -1 もしくは
それ以外の量を選んでも同じである。
よって、この数列はn無限大である値に収束することは無い。
一方、この数列は1と-1しか値を取らないため、どのような数よりも大きくなるような
数列ではない。よって、この数列は正負の無限大に発散することもない。
よって、この数列は収束も発散もしないことが示された。
 
 
====連続の定義====
 
ある関数についてその関数が定義された区間においてどんな<math>\epsilon</math>についてもある<math>\delta</math>が存在して<math>|x - a| <\delta</math>を満たす全てのx について
ある関数について
:<math>
その関数が定義された区間において
どんな<math>\epsilon</math>についても
ある<math>\delta</math>が存在して
<math>
|x - a| < \delta
</math>
を満たす全てのx について
<math>
| f (x) - f(a)| < \epsilon
</math>
347 ⟶ 271行目:
\frac 1 {n!} f ^{(n)} (\xi ) (x -a)^n
</math>
が成り立つ。(<math>\xi</math>はaとxの間にある,ある実数。)これを発見者にちなんで[[w:テイラー級数]]と呼ぶ。これは複雑な関数をべき級数という比較的分かり易い関数で近似することが出来るということを表わす定理である。
が成り立つ。
(<math>\xi</math>はaとxの間にある,ある実数。)
<!-- 導出? -->
これを発見者にちなんでテイラー級数と呼ぶ。
これは複雑な関数をべき級数という比較的分かり易い関数で
近似することが出来るということを表わす定理である。
 
 
*テイラー展開の定義
 
上で述べたテイラー級数はn次までのべき級数によって展開したが、ある性質のいい関数については最後のややこしい項からの寄与が無限に小さくなり、単にその項をよりわかりやすい無限和で置き換えることが出来る。このときテイラー級数は
展開したが、ある性質のいい関数については
最後のややこしい項からの寄与が無限に小さくなり、
単にその項をよりわかりやすい無限和で置き換えることが出来る。
このときテイラー級数は
:<math>
f(x) = f(a) + f'(a)(x -a ) + \frac 1 2 f''(a) (x - a)^2 + \cdots +
\frac 1 {n!} f ^{(n)} (a ) (x -a)^n + \cdots
</math>
と書き換えられるが、これを[[w:テイラー展開]]と呼ぶ。テイラー展開は短く
テイラー展開は短く
:<math>
f(x) = \sum _ {n=0} ^{\infty} \frac 1 {n!} f^{(n)} (a) (x-a) ^n
</math>
と書くことが出来る。無限回微分が可能な関数は、テイラー展開可能である。
無限回微分が可能な関数は、テイラー展開可能である。
(多分)
 
*重要なテイラー展開の例
381 ⟶ 293行目:
f(x) = e^x
</math>
に対してx=0のまわりでのテイラー展開を導出する。
導出する。
:<math>
f(x) = f'(x)=f''(x)= \cdots = f^{(n)}(x) = \cdots = e^x
</math>
であることを用いると、テイラー展開の定義の式で
テイラー展開の定義の式で
:<math>
f^{(n)}(a)= f^{(n)}(0)=1
404 ⟶ 314行目:
(1+x)^a
</math>
についてテイラー展開を考える。実際には、aが整数の場合にはこの値は通常のべき級数展開に一致する。例えば、
実際には、aが整数の場合にはこの値は通常のべき級数展開に
一致する。
(導出?)
例えば、
:<math>
(1+x)^2
423 ⟶ 329行目:
</math>
となり、
2次の代数式であるので3階以降の微分は0になることを考慮すると、そのテイラー展開は、
考慮すると、そのテイラー展開は、
:<math>
\begin{matrix}
433 ⟶ 338行目:
となり、確かに通常の展開と一致する。
 
aが整数でない場合にはこの展開は無限に続く。この展開の係数をaが整数の場合の2項定理の拡張として、
この展開の係数を
aが整数の場合の2項定理の拡張として、
:<math>
\begin{pmatrix}
442 ⟶ 345行目:
\end{pmatrix}
</math>
と定義し、2項定数と呼ぶ場合がある。ここでaは<math>(1+x)^a</math>のaであり、nはxについてのn次の項を表わす。この係数を用いると、このテイラー展開は、
ここでaは<math>(1+x)^a</math>のaであり、nはxについてのn次の項を表わす。
この係数を用いると、
このテイラー展開は、
:<math>
(1+x)^a = \sum _{n=0}^\infty =
454 ⟶ 354行目:
x^n
</math>
と書くことが出来る。例えば、a= 1/2では、x=0のまわりの展開について
例えば、
a= 1/2
では、
x=0のまわりの展開について
:<math>
(1+x)^{1/2}
472 ⟶ 368行目:
f''(0) = -\frac 1 4
</math>
が得られることから、2項目までのテイラー展開として
2項目までのテイラー展開として、
:<math>
\begin{matrix}
480 ⟶ 375行目:
\end{matrix}
</math>
が得られる。もちろん根気があればどこまででも値を得ることが出来る。よって、
値を得ることが出来る。
<!-- maximaで計算できるのだろうか? -->
よって、
:<math>
\begin{pmatrix}
510 ⟶ 402行目:
** <math>\sin x, \cos x</math>のテイラー展開
 
<math>\sin x</math>と<math>\cos x</math>は微分によって互いに移り変わるのでそのテイラー展開は同時に扱うことが出来る。詳しく計算すると、x = 0のまわりでの展開は
そのテイラー展開は同時に扱うことが出来る。
詳しく計算すると、x = 0のまわりでの展開は
(導出?)
:<math>
\sin x = \sum _{n=1} ^{\infty} (-1)^n\frac 1 {(2n-1)!} x^{2n-1}
520 ⟶ 409行目:
\cos x = \sum _{n=0} ^{\infty} (-1)^n\frac 1 {(2n)!} x^{2n}
</math>
を得ることが出来る。このとき、この値と、
ここで重要な事は、
この値と、
:<math>
e^{ix}
530 ⟶ 417行目:
e^{ix} = \cos x + i\sin x
</math>
の関係が示唆される。この関係は発見者の名にちなんで[[w:オイラーの公式]]と呼ばれる。この公式の正当化は複素関数論を使わないとうまくいかないようなのでこの稿の範囲を超えるが、[[物理数学II]]以降で扱われる予定である。<!-- しかし、今後はこの関係を断わり無く使うことがあるので注意して欲しい。
の関係が示唆されることである。
(導出?)
この関係は発見者の名にちなんでオイラーの公式と呼ばれる。
この公式の正当化は複素関数論を使わないとうまくいかないようなので
この稿の範囲を超えるが、物理数学II以降で
( いつになるのやら... )
扱われる予定である。
しかし、今後はこの関係を断わり無く使うことがあるので
注意して欲しい。
実際、この関係が無いと古典力学でいう単振動の方程式が
いきなり解けなくなるのでこの関係は非常に重要である。-->
 
 
 
**テイラー展開を用いた関数の極限の計算
 
テイラー展開を用いて極限を求めることが出来ることがある。例えば、
例えば、
<math>x
\rightarrow 0</math>で、
574 ⟶ 450行目:
\lim _{x \rightarrow a} \frac { f(x)}{g(x)} = \lim _{x \rightarrow a} \frac { f'(x)}{g'(x)}
</math>
<!-- 導出?? -->
<!-- 出来るだろうか? -->
 
例えば、
<math>
585 ⟶ 458行目:
====積分の定義====
 
ある区間を考え、区間を細かく分割する。ここで、ある関数fに対して、分けられた区間でもっとも大きい部分をとり、区間の広さをかけて、足し合わせたものをその関数の上積分と呼ぶ。同様にもっとも小さい部分を取り足し合わせたものを関数の下積分と呼ぶ。上積分と下積分が一致するとき、それをその関数の積分と呼び、fを積分可能と呼ぶ。
ある区間を考え、区間を細かく分割する。ここで、
ある関数fに対して、分けられた区間でもっとも大きい
部分をとり、区間の広さをかけて、足し合わせたものを
その関数の
上積分と呼ぶ。
同様にもっとも小さい部分を取り足し合わせたものを
関数の下積分と呼ぶ。
上積分と下積分が一致するとき、それをその関数の積分と呼び、
fを積分可能と呼ぶ。
 
Note:連続な関数は積分可能である。
<!-- 導出はきっと判らないだろうな...。 -->
 
*上積分と下積分が一致しない例
607 ⟶ 471行目:
\end{cases}
</math>
について区間<math>0<x<1</math>で考えたとき、どんな小さい区間を使って<math>0<x<1</math>を分割したとしても有理数の稠密性により、上積分は1,下積分は0となる。よってfは積分可能でない。
どんな小さい区間を使って<math>0<x<1</math>を分割したとしても
上積分は1,下積分は0となる。
よってfは積分可能でない。
 
 
:双曲線関数
 
:<math>
 
双曲線関数
<!-- ここで導入するのは不自然かも... -->
<math>
\sinh x = \frac {e^x - e^{-x}} 2
</math>
:<math>
\cosh x = \frac {e^x + e^{-x}} 2
</math>
:<math>
\tanh x = \frac {\sinh x} {\cosh x}
</math>
632 ⟶ 490行目:
\cosh ^2 x - \sinh ^2 x = 1
</math>
を満たす双曲線形の関数である。更に
更に
<math>
e ^{ix} = \cos x + i \sin x
655 ⟶ 512行目:
\sin^{-1} x
</math>
を<math>\sin x</math>の逆関数とする。これは多価関数であるので通常
これは多価関数であるので
通常
<math>
-\pi < y < \pi
671 ⟶ 526行目:
-\pi < y < \pi
</math>
の範囲を選んで用いる。一方
一方
<math>
\cos ^{-1} x
705 ⟶ 559行目:
 
y= sin x
とする。このとき、
このとき、
:<math>
\frac{\partial{y}}{\partial{x}} = \cos x
717 ⟶ 570行目:
\end{matrix}
</math>
(<math>\pm</math> はどこへ?)
よって、
:<math>
757 ⟶ 609行目:
 
====有理関数の積分====
[[w:有理関数]]の積分
 
有理関数は必ず[[w:初等関数]]を用いて積分できる。
 
<!-- (
(
*TODO
初等関数の定義
) -->
)
 
*説明
772 ⟶ 624行目:
\int dx \frac {P(x)}{Q(x)}
</math>
の形に書くことが出来る。(P,Qはxの整式。)ここで、次のような手順を実行する。
(P,Qはxの整式。)
ここで、次のような手順を実行する。
 
**上の式の次数が下の式の次数より高かったら、上の式を下の式で割る。
このことによって、被積分関数の分母の次数は、上の式の分子の次数より低くなる。割ることであまった部分は必ず、分数でない形になるので(普通の数やx,<math>x^2</math>などになる。)積分できる。
割ることであまった部分は必ず、分数でない形になるので(普通の数やx,
<math>x^2</math>などになる。)積分できる。
 
**次に、分母を因数分解する。代数式は必ず複素数の範囲で因数分解できることが知られているので、([[w:代数学の基本定理]])
分母は必ず(x-a)の積の形に(aは何らかの複素数。)書ける。ここで、元々の被積分関数が実数だったとすると、(この場合はそのようにしている。複素数だった場合は物理数学IIの範囲となる。)因数分解された式は、必ず、<math>(x-a)(x-a^*</math>)の形になっているはずである。(*は複素共役の意味。)これらの2因数を掛け合わせることにすると、結局これらの式の分母は、1次式か2次式の積で書ける。
知られているので、(代数学の基本定理,証明はほとんどの物理屋にとって事実上
難しい。数学屋コミュニティの努力に期待。)
分母は必ず(x-a)の積の形に(aは何らかの複素数。)書ける。
ここで、元々の被積分関数が実数だったとすると、
(この場合はそのようにしている。複素数だった場合は物理数学IIの範囲となる。
)
因数分解された式は、必ず、<math>(x-a)(x-a^*</math>)の形になっているはずである。
(*は複素共役の意味。)これらの2因数を掛け合わせることにすると、結局これらの
式の分母は、1次式か2次式の積で書ける。
 
**次に、得られた分母を使って[[w:部分分数分解]]を行なう。例えば、
 
**次に、得られた分母を使って部分分数分解を行なう。
(これは、数学IIの範囲だったか...)
例えば、
:<math>
\frac 1 {(x^2-1) }
816 ⟶ 653行目:
\int \frac {x-b} {cx^2 + dx +e}
</math>
が得られることが分かる。これらは共に初等関数の範囲で積分可能である。実際、上の式は
積分可能である。
実際、上の式は
:<math>
\int \frac 1 {x-a}
825 ⟶ 660行目:
= \ln |x-a|
</math>
を満たすことが分かる。下の式については、まず、分母を平方完成すると、分母は、
下の式については、
まず、分母を平方完成すると、
分母は、
:<math>
c(x-\alpha) ^2 + \beta
836 ⟶ 668行目:
y=x-\alpha
</math>
の置き換えをすると、元々の積分は
元々の積分は、
:<math>
\int \frac {y+f} {y^2 +g}
</math>
となる。ここで、このうちの第1項は、
ここで、このうちの第1項は、
:<math>
\begin{matrix}
850 ⟶ 680行目:
\end{matrix}
</math>
が得られ、積分できることが分かる。次に、第2項については
次に、第2項については
:<math>
z = \sqrt {g} y
</math>
の置き換えをすると、定数因子を除いて
<!-- (
定数因子を除いて、
(
*TODO
定数因子の計算
) -->
)
:<math>
\int \frac {1} {z^2 +1}
878 ⟶ 706行目:
\int dx \frac {x+3} {(x+2) (x^2+1) }
</math>
を実際に計算してみる。
<!-- あらかじめ、[[Maxima]]を使って、計算してみた。
integrate((x+3)/((x^2+1)*(x+2)),x);
894 ⟶ 723行目:
 
読みづらいかも知れないが、さしあたり計算値はわかるものと期待する。
-->
手計算を行なうときにはまず、分子の次数が分母の次数よりも低いことを
計算を行なうときにはまず、分子の次数が分母の次数よりも低いことを確認する。次に、部分分数分解を行なうが、このときには、
:<math>
\frac A {x+2} + \frac {Bx+C} { x^2+1}
</math>
とおいて計算すればよい。ここで、分母を通分すると、分子は、
ここで、分母を通分すると、分子は、
:<math>
(A+B) x^2 + (2B+C) x + A+2C
908 ⟶ 736行目:
x+3
</math>
と一致していなくてはならない。よって、
よって、
:<math>
\begin{matrix}
917 ⟶ 744行目:
\end{matrix}
</math>
が得られる。これを解くと、
これを解くと、
:<math>
A= \frac 1 5, B = - \frac 1 5, C = \frac 7 5
</math>
が得られる。元の積分は
元の積分は
:<math>
\int dx (\frac 1 5 \cdot \frac 1 {x+2} + \frac {\frac{-1}5 x + \frac 7 5 }{x^2 +1} )
</math>
に帰着するが、これらの項ははそれぞれ初等関数の範囲で積分できる。実際に積分を行なうと、
実際に積分を行なうと、
:<math>
\int dx (\frac 1 5 \cdot \frac 1 {x+2} + \frac {\frac{-1}5 x + \frac 7 5 }{x^2 +1} )
939 ⟶ 763行目:
====無理数を含んだ積分====
 
関数が有理数だけで書かれない場合、その式はもはや積分が出来るとは限らない。簡単に積分が実行できる場合を挙げる。すぐに積分の仕方が見当たらない場合、それが定積分であったら、数値的に求めることを考えることも必要である。
 
関数が有理数だけで書かれない場合、その式はもはや積分が出来るとは限らない。
簡単に積分が実行できる場合を挙げる。すぐに積分の仕方が見当たらない場合、
それが定積分であったら、数値的に求めることを考えることも必要である。
*<math>
\sqrt{1-x^2}
953 ⟶ 774行目:
x = \sin t ~\textrm{or}~ x = \cos t
</math>
の置き換えをすることで、この式を三角関数の積分に置き換えることが出来る。三角関数の積分は、後に述べる通り有理関数の積分に帰着させることが出来るので、この積分は解析的に実行できる。
三角関数の積分は、後に述べる通り有理関数の積分に帰着させることが出来るので、
この積分は解析的に実行できる。
 
*<math>
985 ⟶ 804行目:
\tan (x/2) = t
</math>
の置き換えをすることで、これを有理関数の積分に帰着させることができる。実際、
ことができる。
実際、
:<math>
\begin{matrix}
1,015 ⟶ 832行目:
dx = d(2\tan^{-1} t) = 2 \frac {dt} {1+t^2}
</math>
となり、確かにtについての有理関数に帰着することが分かる。よって、三角関数だけの関数は初等関数の範囲で積分され得ることが分かった
よって、三角関数だけの関数は初等関数の範囲で積分され得ることが
分かった。
 
<!--
*TODO 周期が<math>\pi</math>であるとき
-->
 
 
*問題例
1,063 ⟶ 879行目:
====偏微分====
 
多変数で定義された関数fがあるとき例えば、
例えば、
<math>
\frac {f(x _1 + h, ... ,x _n) - f(x _1, ...,x _n) } h
1,077 ⟶ 892行目:
 
====偏微分による計算====
多変数関数ではあらゆる独立変数による偏微分がすべて0になる点で、関数が最大値又は最小値を取ることが期待される。
関数が最大値又は最小値を取ることが期待される。
 
例えば
1,113 ⟶ 927行目:
\frac{\partial f}{\partial x_n}(P)=0
</math>
なる点([[w:臨界点]])とする。この行列のPにおける固有値が全て正であれば、関数は点Pで極小値を持ち、全て負であれば、点Pで極大値を持つ。どちらでもないなら点Pは[[w:鞍点]]である。
なる点(臨界点)とする。
この行列のPにおける固有値が全て正であれば、
関数は点Pで極小値を持ち、
全て負であれば、点Pで極大値を持つ。
どちらでもないなら点Pは鞍点である。
 
例えば、
1,150 ⟶ 960行目:
\frac{\partial{F}}{\partial{y}}
</math>
が存在したとすると、この関数は
この関数は
:<math>
y = y(x)
</math>
の形に(局所的には)表わすことが出来る。このとき、
このとき、
:<math>
y' = - \frac { \frac{\partial{F}}{\partial{x}}}{\frac{\partial{F}}{\partial{y}}}
1,166 ⟶ 974行目:
F(x,y) = ax+by
</math>
(a,bは定数)について考えてみると、上の式は、
について考えてみると、
上の式は、
:<math>
y' = - \frac a b
1,174 ⟶ 980行目:
となっており、通常の仕方で見たyの傾きと一致している。
 
この定理は結局のところどんな複雑な曲線でも、ある点のすぐ近くに限れば、それはほとんど直線と同じ様になっているということを述べている。
それはほとんど直線と同じ様になっているということを述べている。
 
====Lagrangeの未定定数法====
1,183 ⟶ 988行目:
z = f(x,y)
</math>
の最大値を求める問題を考える。このとき
このとき
:<math>
g = f + \lambda F
1,193 ⟶ 997行目:
\frac{\partial{g}}{\partial{x}} = \frac{\partial{g}}{\partial{y}} = \frac{\partial{g}}{\partial{{\lambda}}} = 0
</math>
で与えられる<math>x,y,\lambda</math>を計算する。得られた点が極大か極小値を取る点である。
得られた点が極大か極小値を取る点である。
 
*計算例
1,210 ⟶ 1,013行目:
y= -x +1
</math>
を代入することで答を得ることもできる。平方完成した形は
平方完成した形は
:<math>
z = 2(x-\frac 1 2)^2 + \frac 1 2
1,219 ⟶ 1,021行目:
x= y = \frac 1 2
</math>
で極値を取ることが分かる。未定定数法を用いると
未定定数法を用いると
 
:<math>
1,236 ⟶ 1,037行目:
\frac{\partial{g}}{\partial{y}} = 2y +\lambda = 0
</math>
が得られるが、これはx,y,<math>\lambda</math>についての連立1次方程式となっている。これを解くと、答は、
これを解くと、答は、
:<math>
\lambda = 1, x = y = \frac 1 2
1,245 ⟶ 1,045行目:
====多重積分====
 
複数の文字について積分を行なうときこれを多重積分と呼ぶ。例えば、
例えば、
<math>
\iint f(x,y) dx dy
1,264 ⟶ 1,063行目:
</math>
で書き変えられる。
<!-- これの条件が判る日はきっと来ないだろう...。 -->
 
 
===数列の収束===
1,287 ⟶ 1,084行目:
</math>
は、<math>\alpha =< 1</math>のとき発散し、<math>\alpha > 1</math>のとき収束する。
<!-- 何故だろうか...? -->