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[[飼育法]] > ニホンイシガメの飼育法
[[画像:Mauremys japonica 01.JPG|thumb|right|250px|三重県伊勢市で見られた日本ニホンイシガメ]]
 
ニホンイシガメ(日本石亀、''Mauremys japonica)japonica'')は、爬虫綱カメ目イシガメ科イシガメ属に分類される日本固有のカメです。甲長は雄で8~13cm程度、雌では約13~20cm程度。この文章では、ニホンイシガメの飼育法について解説します。
 
== はじめに ==
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ろ過槽、水槽の大きさにもよりますが、上記のろ過方式のおおよそのろ過能力とメンテナンス性は以下のようになります。
 
; ろ過能力: 底面式>外部式>外掛け式>投げ込み式
* ろ過能力
; メンテナンス性: 底面式>外部式>外掛け式>投げ込み式>外部式>底面
 
'''・; 底面式ろ過'''
* メンテナンス性
: 一番ろ過能力の高い底面式は水槽に敷き詰めた砂利などの底床をそのままろ過材にすることで、抜群のろ過能力を誇ります。ろ過材の全てが生物ろ過(底床に住み着くバクテリアによる水の浄化)であるためろ過材である砂利にゴミや糞などの沈殿物が蓄積していきます。特にカメなどのように大量の糞をする生き物を飼う場合、定期的に砂利を含む大掃除が必要になります(数ヶ月に一度砂利をかきまぜて、汚れを浮かせポンプなどでそれを取り除く作業が生じます)。そのため、複雑なレイアウトや水草を栽培しながらのニホンイシガメの飼育には向きません。
: 外掛け式>投げ込み式>外部式>底面式
'''・; 外掛け式ろ過'''
 
: 外掛け式ろかは水槽の横に引っ掛けるろ過器で観賞魚用に用いられる上部式ろ過装置の小型版のような感じになります。メンテナンス性はとてもよく安価ですが、ろ過材の量が少ないのでろ過能力は落ちます。そのため、外部式や底面式にくらべ頻繁に換水する必要があります。
'''・底面式ろ過'''
'''・; 投げ込み式ろ過'''
一番ろ過能力の高い底面式は水槽に敷き詰めた砂利などの底床をそのままろ過材にすることで、抜群のろ過能力を誇ります。ろ過材の全てが生物ろ過(底床に住み着くバクテリアによる水の浄化)であるためろ過材である砂利にゴミや糞などの沈殿物が蓄積していきます。特にカメなどのように大量の糞をする生き物を飼う場合、定期的に砂利を含む大掃除が必要になります(数ヶ月に一度砂利をかきまぜて、汚れを浮かせポンプなどでそれを取り除く作業が生じます)。そのため、複雑なレイアウトや水草を栽培しながらのニホンイシガメの飼育には向きません。
: 投げ込み式のろ過は水槽内に放り込みエアーポンプを接続するだけの手軽で安価なろ過方式ですが、ろ過材の量が少なくカメ飼育においてはろ過能力は期待できません。
 
'''・外掛け式ろ過'''
外掛け式ろかは水槽の横に引っ掛けるろ過器で観賞魚用に用いられる上部式ろ過装置の小型版のような感じになります。メンテナンス性はとてもよく安価ですが、ろ過材の量が少ないのでろ過能力は落ちます。そのため、外部式や底面式にくらべ頻繁に換水する必要があります。
 
'''・投げ込み式ろ過'''
投げ込み式のろ過は水槽内に放り込みエアーポンプを接続するだけの手軽で安価なろ過方式ですが、ろ過材の量が少なくカメ飼育においてはろ過能力は期待できません。
ただし、ろ過器無しの換水のみで飼育する場合に比べればやはり違いは歴然で、止水で飼育した場合すぐに水が腐ってしまいます。水を回す目的でエアレーションを行うのであれば、ついでに入れておくといいでしょう。
また、子ガメのうちは小さいプラケースなどで飼育することがありますが、その場合は投げ込み式ろ過が主流となります。
'''・; 外部式ろ過'''
 
: 外部式ろ過は水槽の外に密閉されたろ過槽を置き、そこに飼育水を通すことで物理ろ過(物理的に水中のゴミをこし取る)と生物ろ過を行います。外部ろ過は水槽とは別の場所に設置できるため、ろ過槽の大きさが水槽の大きさに左右されないうえ、水槽の水位を低くすることも自由にできます。比較的強力なろ過能力を期待でき、ニホンイシガメの長期飼育に適したろ過方式だと言えます。ただし、外部式ろ過は他のろ過に比べ値段が高く(小規模なもので3000円程度から大型のもので数万円程度)やや扱いが複雑になります。また、ろ過槽へ飼育水を送るのにサイフォンの原理を使用してるので、濾過装置を水槽内の水面より下に配置する必要があります。そのため、直接床に水槽を置いたり低い位置に水槽をおいて飼育する場合は外部式ろ過を使用することができないので注意が必要です。
'''・外部式ろ過'''
外部式ろ過は水槽の外に密閉されたろ過槽を置き、そこに飼育水を通すことで物理ろ過(物理的に水中のゴミをこし取る)と生物ろ過を行います。外部ろ過は水槽とは別の場所に設置できるため、ろ過槽の大きさが水槽の大きさに左右されないうえ、水槽の水位を低くすることも自由にできます。比較的強力なろ過能力を期待でき、ニホンイシガメの長期飼育に適したろ過方式だと言えます。ただし、外部式ろ過は他のろ過に比べ値段が高く(小規模なもので3000円程度から大型のもので数万円程度)やや扱いが複雑になります。また、ろ過槽へ飼育水を送るのにサイフォンの原理を使用してるので、濾過装置を水槽内の水面より下に配置する必要があります。そのため、直接床に水槽を置いたり低い位置に水槽をおいて飼育する場合は外部式ろ過を使用することができないので注意が必要です。
 
 
上記のようにニホンイシガメの長期飼育では外部式ろ過がもっとも優れています、ただし設置場所等の問題で外部式が使用できない場合は、外掛け式などを使用したり、補助として投げ込み式を併用してもいでしょう。
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====給餌方法====
給餌は太陽が上って、またはバスキングランプが点灯する午前中が良いでしょう。<br>
気温がさがる夕方や夜に与えると、体温が下がってしまい食物を消化できず、体内で腐敗してしまいます。<br>
しまいます。<br>
カメは食後日光浴やバスキングをして体温をたかめ食物を消化します。<br>
最低でも消灯3時間前までにはあげておきたいところです。
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換水の頻度が良くわからない場合は3~4日に1回程度行って様子を見ます。<br>
餌を兼ねてメダカや小さいエビなどを一緒に入れておくと水換えの指標になります。<br>
換水の方法はろ過を行っている関係上全ての水を一度に換えることはろ過バクテリアにダメージを与えるため避けます。<br>
ダメージを与えるため避けます。<br>
一度に換える水の量はおおよそ全体の3分の1から2分の1程度にします。<br>
水換えに使用する水は水道水の汲み置きや市販のカルキ抜きなどを入れ、水道水に含まれる塩素を抜きます。水温も水槽に合わせてあげるとなお良いでしょう。<br>
含まれる塩素を抜きます。水温も水槽に合わせてあげるとなお良いでしょう。<br>
 
====ろ過を使用しない場合(水槽飼育2)====
ろ過を使用していないため、頻繁な換水が必要になります。<br>
換水頻度は水量と水温、ニホンイシガメの大きさによって変わります。<br>
水量が少ない、水温が高い、カメが大きかったり飼っている数が多かったりするほど頻繁な換水が必要になります。気温の高い夏場などは毎日行う必要があります。<br>
換水方法はろ過を行っていないので全ての水を新しい水に入れ替えます。<br>
頻繁な換水が必要になります。気温の高い夏場などは毎日行う必要があります。
<br>換方法ろ過水道水使用しましょう。汲み置きの水や塩素の入っていない井戸水などは雑菌が繁殖しやすいので全て避け、カルキ抜き水を新薬品なども使用よう入れ替えます。<br>
水は水道水を使用しましょう。汲み置きの水や塩素の入っていない井戸水などは雑菌が繁殖しやすいので避け、
カルキ抜きの薬品なども使用しないようにします。<br>
飼育水と水道水で極端に水温差がある場合は、お湯を足すなどして合わせてあげるとなお良いです。<br>
 
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野生下では池沼の底や河川のよどみや横穴で越冬していることが観察されています。また、河川の横穴で集団越冬を行っている場合もあり、そのような環境で交尾をおこなっているとも考えられています。<br />
一方で、ニホンイシガメは特にオスで通常の爬虫類では考えられない低温下でも活動してることが知られています。これは、大きさの違うメスの不活発な時期に交尾を行うために動いていると考えられています。そのため、ニホンイシガメにおいて、冬眠とは他の爬虫類の生理とは異なることに留意しましょう。<br />
 
<br />
飼育下で冬眠を行う意義として以下の2つの要因が考えられます。<br />
1.# 野外の生態を再現し、繁殖を促すため<br />
2.# 冬季の飼育管理等のコストを最小化するため<br />
 
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どちらかまたは両方の目的であれ、飼育下で冬眠を行う場合、準備を晩夏の肥育より行うと考えておきましょう。<br />
冬眠の流れは以下のようになります。<br />
1.# 晩夏: 肥育期; 食べるだけ給餌を行います。特に成熟したメスは冬眠明け後、一定期間を経て産卵期に入ります。体内で卵が発達してくると、内臓が圧迫されるため絶食気味になります。未成熟のメスは成長期にあたるため、やはり肥満を気にせず食べるだけ与えます。成熟したオスはもともとメスに比べ食べません。しかし、やはり食欲の一番ある時期なので、食べるだけ与えます。気温が高いため、直射日光浴は行いません。よく太ったメスは鼠蹊部より皮膚がはみ出てきます。<br />
2.# 晩秋: 食欲が落ち始めます。食欲に応じて給餌量を落として行きますが、基本的に食べるだけ与えていきます。気温の低下に応じて直射日光浴をする時間が増えていきますが、個体自身が選べるよう、逃げ場をきちんと作っておいてください。体重は1.のピーク期にくらべ10-15%ほど落ちます。交尾を確認することがあります。<br />
<br />
3.# 初冬~初春: 無給餌・無日光浴で、水槽内で沈んでいます。できるだけ水温変化が少ないことが重要ですから、日陰やできるだけ水量を多くすることが重要です。汚泥やわずかながら排泄物が観察されます。神経質にならない程度に換水をすることが薦められます。代謝がきわめて下がるため、体重は2.に比べてほぼ変化がありません。場合によってはわずかに増加することもあります。<br />
2. 晩秋: 食欲が落ち始めます。食欲に応じて給餌量を落として行きますが、基本的に食べるだけ与えていきます。気温の低下に応じて直射日光浴をする時間が増えていきますが、個体自身が選べるよう、逃げ場をきちんと作っておいてください。体重は1.のピーク期にくらべ10-15%ほど落ちます。交尾を確認することがあります。<br />
4.# 初春: ソメイヨシノが咲くころに、動き始めます。食欲はそれほど多くありませんが、食べるようなら少しずつ与えていきます。八重桜が咲くころには食欲も戻っているでしょう。このころには通常の飼育に移行できます。直射日光浴を行うことができますが、急激な温度上昇が起こるころでもあり、逃げ場をきちんと作っておいてください。5月に入ると、成熟したメスの場合、卵の発達により、食欲の減退が見られます。<br />
<br />
 
3. 初冬~初春: 無給餌・無日光浴で、水槽内で沈んでいます。できるだけ水温変化が少ないことが重要ですから、日陰やできるだけ水量を多くすることが重要です。汚泥やわずかながら排泄物が観察されます。神経質にならない程度に換水をすることが薦められます。代謝がきわめて下がるため、体重は2.に比べてほぼ変化がありません。場合によってはわずかに増加することもあります。<br />
===繁殖===
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4. 初春: ソメイヨシノが咲くころに、動き始めます。食欲はそれほど多くありませんが、食べるようなら少しずつ与えていきます。八重桜が咲くころには食欲も戻っているでしょう。このころには通常の飼育に移行できます。直射日光浴を行うことができますが、急激な温度上昇が起こるころでもあり、逃げ場をきちんと作っておいてください。5月に入ると、成熟したメスの場合、卵の発達により、食欲の減退が見られます。<br />
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繁殖<br />
 繁殖は大きくわけて2つのパターンが考えられます。<br />
 1つは気づいたら卵の産んでいた場合、もう1つはねらって繁殖させる場合です。<br />
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 ニホンイシガメの雄の判別は甲長3.5cmほどから可能になります。判別点は総排泄孔の位置が甲羅の後縁を超える点にあります。他方雌は、総排泄孔の位置が甲羅の後縁上程度です。ニホンイシガメの性決定は温度依存性決定(TSD)であることは明らかになりつつありますが、詳しい条件はまだ明確にはされていません。ただし一般的にカメ類にみられる高温雌、低温雄型のようです。<br />
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 環境の制御<br />
 
 ニホンイシガメは与えられた環境に対してうまく適応をするだけの柔軟性を持っていますが、繁殖に関しては季節的な環境の変化や、適切な環境の設定が欠かせません。季節的な変化は上記の冬眠の項も参考にしてください。また繁殖のための適切な環境とは、雌が安心して産卵できる産卵床の設置や、雌の個体ごとの好みが選択できるような平面的な広さや安心して穴掘り・穴埋めが行える上空からの遮蔽物(たとえば植物など)が挙げられます。飼育下での繁殖の成功例は野外での粗放的な環境が多く、水槽のような狭い空間での繁殖の成功例は極めて少ないようです。<br />
 
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 雌の肥育・栄養管理<br />
292 ⟶ 275行目:
産卵床の材質には、砂、土、園芸用土など、およびそれらの混合が挙げられます。それぞれを十分に湿らせます。ここで大事なのは雌がここに埋めれば卵が孵化するという環境にしておくことが必要です。具体的には雌が掘っても途中で崩れない粘度が必要であること、孵化するのに必要な温度が確保されていることです。野外の飼育では適切な微小環境を雌がにおいを嗅ぐようなしぐさで吻先を地面につけるように判断しているようです。<br />
産卵床の厚さは、15cmほどもあればよいようです。<br />
 
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抱卵の確認<br />
抱卵の確認は、雌が拒食または摂餌量が減ってから確認します。X線によるレントゲン撮影のほか後肢の脇(股甲板と鼠蹊甲板の間)に小指を入れて、小指をやさしくかき回すことで判断できる場合があります。この確認方法は、充分に卵殻が形成されてから判断できます。<br />
 
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産卵<br />
産卵は産卵巣の作成→産卵→埋戻しの流れで行われます。<br /><br />
302 ⟶ 285行目:
冬眠明け後、充分に成熟した雌は一定期間のち卵殻を形成して産卵を行います。産卵に先立ち3-4週間程度の食欲の減退または拒食が見られます。産卵適期を迎えた雌は産卵巣を掘るための場所選びを行います。この時、産卵場所の基質(砂や土など)に吻端をつけ臭いを嗅ぐようなしぐさを行います。その場所が気に入った場合、後肢を使い深さ15cm、直径10cm程度の産卵巣を掘ります。後肢で基質を掻き出せない程度の深さになった場合に産卵が行われます。卵はほぼ1分ごとに生み出されます。産卵が終わると十分な時間をかけて埋戻します。産卵巣の決定から埋戻しが終わるまでは約1時間程度です。産卵が終わった雌はその直後から摂餌を始めます。次の産卵または体力の回復のためにも産卵直後から充分なん給餌を行ってください。<br />
産卵場所が気に入らない、または産卵床がない場合、産卵を行いません。ある程度の期間(1-2か月程度)は卵を体内に持ち続けることができますが、最終的には飼育槽内の水の部分や陸上部分に産み捨てられます。<br />
 
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孵卵<br />
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思いがけず産卵した場合は見つけた場所が水中であれ陸上であれ、水苔入りタッパーなどに収容しますが、一時的であれば湿らせた布などの上に置き、乾燥しないようにフタ付き容器に仮収容してから孵卵の準備をしても十分間に合います。<br />
 
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328 ⟶ 311行目:
 
受精班が出現し、安定した環境で孵卵を行い、順調に発生が進んだ場合には産卵後4-6週間ほどで検卵を行うことができます。これは懐中電灯を使うキャンドリングと呼ばれる方法で卵の一部に光をあて、血管の発生や個体の動きを確認する方法です。6-8週目に地面方向から光を当てると天井方向にカメの形に影が見え、その前肢や後肢の動きまで観察できます。<br />
 
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孵化<br />
335 ⟶ 318行目:
 産卵後約2か月で孵化してきます。孵化直前の卵は卵殻がぼろぼろになり、水を吸収することで産卵時より1回り大きくなっています。また硬い鶏卵様の感触から、皮革のような感触に変化してきます。同じクラッチの子ガメの孵化はほぼ同時(36時間以内)におこります。発生していない、発生初期で止まってしまった場合はこの時期になっても卵殻の変化が現れません。また発生後期に死籠りした場合は皮革のような感触に変化してからほかの子ガメ孵化しても48時間以上たっても孵化しません。<br />
 孵化のときに、子亀は卵嘴(らんし)を呼ばれる吻端の棘を使って卵膜を破ります。卵膜を破ったあとに肺呼吸へ移行すると考えられます。卵膜を破った後でも、卵黄嚢には卵黄をもっている場合があるため、数日間は卵膜から這い出てこないことがよくあります。無理やり孵出させると、四肢の動きによって卵黄嚢を傷つけてしまうことがあります。自力で孵出するまでそっとしておきましょう。
 
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 孵化仔の管理<br />