理科総合B 地学分野
このページは高等学校理科総合Bのうち地学分野の内容をまとめたものである。
単元
地表の様子
編集地球の表面は、大気圏、水圏、岩石圏の3つに分けることができる。 このうち、大気圏と水圏を除いたものを、固体地球と言う。
さまざまな地形
編集地球には多様な地形が存在し、それぞれが特定の自然作用や力によって形成されている。以下に代表的な地形を挙げる。
- 海底の地形
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- 海溝
- 海底に見られる非常に深い溝状の地形。海洋プレートが大陸プレートや他の海洋プレートの下に沈み込むことで形成される。深度は数千メートルに達し、マリアナ海溝などが有名である。
- 海山
- 海底に存在する山状の地形。多くはかつて活発な火山であったが、現在は活動を停止しているものが多い。海山の頂上が水面下にある場合もあれば、島として海面上に顔を出す場合もある。
- 海嶺
- プレートが引き離される場所で生じる長大な山脈状の海底地形。ここでは新しい海洋地殻が形成され、海嶺に沿って火山活動も活発に行われる。大西洋中央海嶺などが知られている。
- 大洋底
- 海嶺や海溝に囲まれた広大な海底平原。プレートの沈み込みや隆起がほとんど見られないため、比較的平坦である。
- 大陸棚
- 大陸の縁に広がる、浅くて緩やかな傾斜を持つ海底。水深はおよそ200メートル以内で、漁業資源が豊富であることから経済的にも重要な地形である。
- 陸上の地形
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- V字谷
- 河川が長期間にわたって浸食を繰り返すことで形成される、鋭い谷。谷の形状が「V」字に似ていることからこの名が付けられている。急峻な山地などでよく見られる地形である。
- U字谷
- 氷河の侵食によって形成された谷。V字谷に比べて谷の底が広く、谷の形状が「U」字に似ている。氷河期に形成されたものが多く、現在でも山岳地帯などで見ることができる。
- 火山
- マントルが部分的に融解し、地表にマグマが噴出することで形成される地形。噴火のタイプやマグマの粘性によって、成層火山や盾状火山など、さまざまな形状がある。
- 扇状地
- 山地と平地の間で、河川が山から運んできたれきや砂が堆積してできる扇形の地形。急な流れが平地に出ることで運搬力が弱まり、土砂が一気に堆積する。
- 三角州
- 河川の流れが海や湖に達したときに、運ばれてきた砂や泥が堆積して形成される低平な地形。ナイル川の三角州が有名で、農業などに適した肥沃な土地が広がる。
- 断層崖
- 地殻変動によって地面がずれ動き、段差となった崖。大規模な地震などによって急激に形成される場合もあり、断層面が露出することもある。
これらの地形は、地球内部のエネルギーや外部からの太陽エネルギーの影響を受けながら、長い時間をかけて形成されてきた。各地形はその成り立ちが異なるものの、地球のダイナミックな活動を反映していると言える。
大陸と海洋の姿
編集地球の高さごとの面積を500mごとに測ると、標高0mから500m付近と、水深-4500mから-5000m付近の面積が特に大きいことがわかる。標高の高い部分が大陸地域であり、低い部分が海洋地域である。ただし、その境界は海岸線ではなく、水深およそ1000m付近に存在する。
大陸地域の姿
編集大陸地域には、地質学的な歴史や地殻変動の活動に応じて、さまざまな地形が存在する。
- 安定大陸
- 先カンブリア時代以降、大規模な地殻変動を経験していない安定した地域。別名で盾状地とも呼ばれる。地質的に古く、平坦で広大な土地が広がる。
- 台地
- 盾状地の周辺に位置し、かつて浅い海であった地域が地殻運動で隆起して形成された平坦な土地。
- 古い山脈(古期造山帯)
- 約3億年から5億年前の古生代に形成された山脈。侵食が進んでおり、険しさが少ない低い山脈が特徴。
- 新しい山脈(新期造山帯)
- 中生代から新生代にかけて形成された山脈。地殻変動が活発で、アルプス山脈やヒマラヤ山脈のように、高くて険しい山々が特徴的である。
海洋地域の姿
編集海洋地域にも特徴的な地形が広がっている。これらはプレートの運動に伴い形成され、変動が続いている。
- 海嶺
- プレートが拡大する境界に形成される長大な山脈状の海底地形。海嶺からは新しい地殻が生まれ、地球内部の熱エネルギーによる活動が見られる。
- 深海底
- 水深4000mから5000mに広がる平坦で広大な地域。堆積物がゆっくりと積もり、地球上で最も広い面積を占めている。
- 海山
- 海底にそびえる火山性の山。かつて活発に火山活動をしていたが、現在は活動を停止しているものが多い。
- ギヨー
- 海山の頂上が長期間の侵食を受けて平坦になったもの。平頂海山とも呼ばれ、海洋地域の特徴的な地形の一つ。
- 海溝
- 大陸地域と海洋地域の境界に存在する深いくぼみ。プレートが沈み込む地点であり、マリアナ海溝のように非常に深い場所では水深1万メートルを超えることもある。
プレートの動き
編集地球の内部は、地殻、マントル、核の三つに分けられる。
プレートとアセノスフェア
編集地下70kmより先に、地震波の速さが遅くなる場所がある。ここを、低速度層という。 低速度層は、地下250kmまで続いている。低速度層と、深さ600kmくらいまでのマントル上部の柔らかい層を合わせてアセノスフェアという。低速度層の上のかたい層をリソスフェアといい、プレートにあたるとされている。地球表面はいくつかのプレートにわかれている。プレートは常に動いており、それらの境界ではプレート同士が押し合ったり、離れて拡大したり、すれ違ったりしている。
プレートが押し合っている境界では、プレートが沈み込んで海溝ができたり、大陸が衝突して山脈ができたりする。この考え方をプレートテクトニクスという。
地形と地質構造
編集- 段丘 - 海岸や川岸の隆起によって形成される階段状の地形
- リアス式海岸 - V字谷の沈降で形成される複雑な海岸線
- 多島海 - 沈降で形成
- 不整合 - 隆起し、地表で侵食などを受けた地層に、再び堆積が起こることで生じる地層の不連続
- 褶曲 - 地層が圧縮によって歪んだもの
- 断層 - 地層が圧縮によってずれた場所
島弧-海溝系の地形
編集海洋プレートが沈み込むところでは、海溝ができ、火山活動も盛んで、島弧が発達する。この付近では、地震や、地殻の変動も盛んである。このようなところを島弧-海溝系といい、日本列島もこの1つである。 島弧-海溝系の火山は、海溝から100~300km以上離れている。火山分布の海溝側の限界線を火山前線といい、海溝とほぼ平行している。プレートの沈み込みによる強い圧力のため、隆起し、地底でマグマができて、大山脈ができる。南アメリカのアンデス山脈は、このように形成された。インド大陸も、プレートの動きによって、ユーラシア大陸と衝突、ヒマラヤ山脈ができた。ヒマラヤ山脈では、数千メートルの高地からアンモナイトなどの化石が発見される。インドは、現在もユーラシア大陸を押し続け、ヒマラヤ山脈は隆起を続けている。
- 海嶺
- 海嶺は、プレートが互いに、離れるところで形成される。マグマが上昇し、溶岩や熱水が噴出している。
- 海山列
- ハワイ諸島では、島がいくつも列になっていて、その先には、海山が列状に並んでいる。(天皇海山列)このような列を海山列という。ハワイ島の地下のアセノスフェアには、ホットスポットという高温な場所があり、そこから、リソスフェアをつきやぶって、マグマが噴出し、火山島が形成される。火山島はプレートに乗って移動するが、ホットスポットは移動しないので、やがて火山島はホットスポットから外れ、新たな火山島が形成される。このようにして火山島の列になる。火山島は浸食され、やがて、海山になる。
地球の形成
編集地球の形成
編集約46億年前、宇宙空間に存在する星間ガスの濃いかたまりが収縮し、原始太陽が形成された。原始太陽の周囲では、星間物質が原始太陽とともに回転していた。この状態を原始太陽系星雲と呼ぶ。星間物質中の個体微粒子が合体して微惑星(直径1〜10 km)が形成され、微惑星同士が衝突や合体を繰り返すことで、より大きな原始惑星が誕生した。原始地球もこの過程で形成された。
微惑星が衝突した結果、地球の温度は上昇し、水蒸気、二酸化炭素、窒素を主成分とする原始大気が形成された。この大気は、温室効果を持っていたため、地表の温度をさらに上昇させた。大気が存在する中で、地表はますます高温になり、1500〜4700℃に達したため、岩石は溶けてマグマオーシャンが形成された。マグマオーシャン内では、重い物質と軽い物質が分離し、ニッケルや鉄で構成される内核とマントル、および岩石質の地殻が形成された。
地球に衝突する微惑星の数が減少すると、表面は冷却されて地殻ができた。また、水蒸気が冷やされて雨となり、原始海洋が形成された。地表の温度は約100〜200℃程度に冷却され、二酸化炭素は原始海洋中に溶け込んだ。この結果、温室効果は相対的に弱まった。
生命の誕生
編集生命の誕生については不明な部分が多いが、ミラーの実験によれば、アミノ酸などの有機化合物が自然に生成されることが示されており、これらが生命の基礎となったと考えられている。
惑星の特徴
編集惑星は、固体表面を持つ地球型惑星と、ガス状の表面を持つ木星型惑星に分類される。これらの違いは、惑星が誕生したときの原始太陽からの距離に関連していると考えられている。地球型惑星は主に岩石と金属で構成され、木星型惑星は主に水素とヘリウムから成り立っている。
地球型惑星の特徴
編集- 水星
- 半径約2400kmの小さな惑星。昼間の表面温度は300~400℃に達し、夜は氷点下170℃まで冷え込む。水や大気はなく、浸食作用がほとんどないため、クレーターなどの地形が比較的保存されやすい。ただし、隕石の衝突などによる地形の変化は続いている。最近の探査ミッションによると、水星の極域には氷が存在する可能性があることが示唆されている。
- 金星
- 半径約6000kmで、地球とほぼ同じ大きさ。大気の96%を二酸化炭素が占め、気圧は地球の約90倍。温室効果により表面温度は約460℃に達し、液体の水は存在できない。大気中の水蒸気は紫外線によって水素と酸素に分解され、宇宙空間へと逃げている。火山活動の痕跡はあるが、地球のようなプレート活動は見られない。最近の研究では、金星の雲中に微生物の存在可能性が提唱されている。
- 火星
- 半径約3400kmで、地球の約半分。重力が小さいため気圧は0.006気圧と非常に低く、大気はほぼ二酸化炭素で構成されているが、その量は少なく、温室効果も小さい。平均気温は−58℃で、自転周期や自転軸の傾きが地球と似ているため、季節の変化が見られる。また、火星の地形には浸食の痕跡があり、過去には液体の水が存在していたと考えられている。最近の探査により、地下に塩水が存在する可能性が示唆されている。
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水星
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金星
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火星
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火星表面の地形
木星型惑星の特徴
編集- 木星
- 太陽系最大の惑星で、半径は地球の約11倍以上。大気の90%が水素、10%がヘリウムで構成されており、これは太陽の化学組成と類似している。木星には明暗の縞模様があり、明るい部分が上昇気流、暗い部分が下降気流を表す。大赤斑という巨大な嵐が約160年以上続いていることも特徴的で、最近の観測ではそのサイズが縮小していることが報告されている。
- 土星
- 太陽系で最も密度の低い惑星。半径は地球の約9倍だが、組成の96%を水素が占めるため、もし水に浮かべれば浮くとされる。土星には木星と同様に縞模様があり、さらに氷や岩石でできた大規模なリングが特徴的である。土星の衛星タイタンは濃い大気を持ち、表面にはメタンの海が広がっていると考えられている。最近の探査データから、タイタンの地下に液体水が存在する可能性も指摘されている。
- 天王星と海王星、冥王星
- 天王星と海王星は、半径が地球の約4倍。大気には水素のほか、メタンやヘリウムが多く含まれているため、青みがかった色をしている。冥王星はかつて惑星とされていたが、現在では準惑星に分類されている。冥王星はメタンが凍結した表面を持ち、軌道が他の惑星とは異なり、海王星の内側に入ることもある。冥王星の外側には微惑星が数多く存在していると考えられている。最近の研究では、冥王星の衛星カロンの表面に氷が存在することが確認されている。
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木星
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土星
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天王星
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海王星
生命の生まれる環境
編集現在、生命が確認されているのは地球だけである。太陽系内では、金星と火星が地球に似た特徴を持つが、金星は温室効果が強すぎて水が蒸発してしまった。一方、火星は温室効果が小さく、太陽から遠いため水は氷となっている。太陽から適度な距離にある地球では、水が液体の状態で存在し、二酸化炭素が水に溶け込むことで、安定した気候を保つことができている。近年では、エクストラソーラー惑星(太陽系外惑星)においても生命が存在する可能性が考慮されており、特にハビタブルゾーン内にある惑星が注目されている。
大気と熱収支
編集地球の周りにある大気の層を大気圏と呼び、上に行くほど薄くなり、宇宙空間まで続いている。単位面積にかかる大気の重さを気圧といい、1気圧は1013hPa、水銀柱760mmの圧力に相当する。大気は約700kmの高さまで広がっており、それ以上はだんだんと希薄になって宇宙空間となる。大気の密度は地表付近が最も高く、山などの高所では低くなる。また、大気圏は温度の変化により、いくつかの層に分けられる。
- 対流圏
- 高度約11kmまでの範囲で、気象変化が起こる。高度が上がるにつれて気温が下がり、成層圏との境界を圏界面と呼ぶ。
- 成層圏
- 高度11kmから50kmまでの範囲で、ジェット機が飛行する。ここにはオゾン層があり、紫外線を吸収している。成層圏では、温度が徐々に上昇する。
- 中間圏
- 成層圏の上部、80kmまでの範囲。この層で宇宙からの塵が燃えて流れ星として観測される。
- 夜光雲
- 中間圏と熱圏の境目付近には、夜光雲という雲が観測されることがある。通常の雲は対流圏で発生するが、この雲は中間圏で水蒸気に太陽光が反射してできる。19世紀に発見され、メタンや二酸化炭素の増加により発生が促されている。
- 熱圏
- 紫外線を吸収し、温度が高い。この層の外側は外気圏と呼ばれる。
- オーロラ
- 熱圏に発生する現象で、太陽からの帯電粒子が空気中の分子や原子に衝突して発光する。
大気の成分
編集大気の成分は窒素が78%、酸素が21%を占める。残りの成分は、アルゴン0.9%、二酸化炭素0.03%、ネオン0.002%、ヘリウム0.0005%で構成されている。また、水蒸気の含有量は場所により異なり、空気の3%を占めることもある。
太陽からの放射
編集太陽は半径約696,000kmの恒星で、中心部では高圧状態により水素原子核がヘリウム原子核に変わる核融合反応が発生している。太陽の表面温度は約6000Kで、放射エネルギーは主に可視光線(波長0.4〜0.7マイクロメートルの電磁波)で構成され、紫外線や赤外線も含まれている。地球が受ける太陽放射エネルギーを日射と呼び、地球大気圏の上端で単位面積が受ける直達日射量を太陽定数といい、その値は1.4kW/平方メートルである。このうち約半分は大気で吸収・反射され、地球全体が受ける日射量をEとすると、E = 太陽定数 × 地球の断面積(4πr^2)となり、具体的にはE=1.77×10^14kWとなる。
地球放射と温室効果
編集地表付近の温度は288K(約15℃)で、地球が放射する赤外線は大気中の温室効果ガス(水蒸気や二酸化炭素など)によって95%が吸収される。残りの5%は大気圏外に逃げる。熱が大気圏外に逃げずに温まる現象を温室効果といい、近年ではこの効果により地球の平均気温が上昇している。
地球の熱収支
編集太陽放射のうち、地表に到達するのは約50%である。地表で吸収されたエネルギーの一部は赤外放射として大気圏に戻されるが、その多くは大気中に再放射され、最終的には大気圏外へと放出される。このように、地球全体としてはエネルギーの収支はほぼ釣り合っている。しかし、局地的には赤道付近では日射量が多く、極付近では少ないため、本来であれば赤道が非常に暑く、極は非常に寒くなるはずであるが、実際にはそうなっていない。これは、熱が大気や海流によって輸送されているためである。
大気の大循環
編集高緯度と低緯度では日射量と地球放射量が逆転するため、熱の輸送が行われる。赤道付近と極付近の大気の対流が生じるが、転向力(コリオリの力)の影響で、大気の大循環は3つの主な循環に分かれる。
- 貿易風循環
- 赤道付近で上昇した大気が転向力によって西寄りの風となり、緯度30度付近で下降する。この下降地点を亜熱帯高圧帯と呼び、下降した大気は極方向と赤道方向に分かれる。赤道方向に戻る風を貿易風という。
- 極循環
- 極地方では冷却された大気が下降して極高圧帯が形成され、ここから吹き出した風はコリオリの力によって東寄りの極偏東風となる。
- 中緯度循環
- 亜熱帯高圧帯から極方向に向かう風は、転向力によって西寄りの偏西風となる。偏西風帯の上空では強い西風、いわゆるジェット気流が吹いており、日本付近では11月頃が最も強い。
コリオリの力
編集コリオリの力は地球の自転による見かけの力であり、北半球では運動する物体が進行方向に対して右に曲がるように見える。南半球ではこの力の向きが逆になり、左に曲がるように見える。また、コリオリの力の強さは物体の速度にも比例し、特に上空では風速が大きいため、コリオリの力の影響が大きい。
- 地衡風
- 上空の風は気圧傾度力とコリオリの力によって生じる。上空では地面の摩擦がなく、これら2つの力がほぼ釣り合い、風はそれらに垂直に吹く。これを地衡風と呼ぶ。
- 地上風
- 地上付近では摩擦の影響により、地衡風とは異なる向きに風が吹く。
季節風
編集地上の風は、季節によって変化することが多い。冬は大陸、夏は海洋に高気圧が発達する。北半球は陸地が多く、季節変化がはっきりしている。陸と海のバランスによって季節風の大きさが違う。
- 夏
- 陸地 - 比熱が小さい - 高温
- 低気圧
- 海洋 - 比熱が大きい - 低温
- 高気圧
したがって、海洋から陸地に季節風が吹く。
- 冬は逆になる。
局地風
編集1日周期で吹く風である。昼は、陸地が高温で、海が低温のため、海風が吹く。夜は、陸地が低温で海が高温になるため、陸風がふく。海風と陸風が変わるとき、一時的に風が止まることがある。これを朝凪、夕凪という。
気象変化とその要因
編集私たちの日常生活に深く関わっている気象について考えてみよう。
空気の動きと雲
編集空気は暖められると上昇し、冷えると下降する。空気の塊(空気塊)が上昇すると、上空では気圧が低いため、空気塊は膨張して冷える。この温度が下がる割合は -1℃/100mで、これを乾燥断熱減率という。空気塊が上昇し続け、温度が下がると、やがて露点に達し、水滴ができはじめ、雲が発生する。このとき凝結によって熱が放出され、温度低下の割合が -0.5℃/100mとなる。これを湿潤断熱減率という。このように雲は上昇気流がある場所で発生し、その地域は低気圧となる。一方で、空気塊が下降すると、雲は消えやすく、その場所は晴天が多く高気圧が形成される。
空気が上昇する場合には次のような要因がある:
- 日射によって地表が暖まった場合
- 低気圧の中心付近
- 風が山に当たった場合 - 山を越えた風が乾燥し、高温になる現象をフェーン現象という。この現象は、風が山の風上側で上昇し、水蒸気が凝結して潜熱が放出されることで、湿潤断熱減率に従って冷却されるが、山を越えて風下側に下降する際には、断熱圧縮により急速に気温が上昇するため、乾燥した高温の風が吹き下ろされる。このプロセスがフェーン現象の特徴である。
- 前線の接近
前線とその種類
編集- 温暖前線 - 暖かい気団からの気流が寒冷な気団にぶつかる場所。300から500キロメートルにしとしとした穏やかな雨を降らせる。層雲などの雲ができる。
- 寒冷前線 - 寒冷な気団からの気流が暖かい気団にぶつかるところ。70キロメートルほどの範囲に強いにわか雨を降らせる。積雲などの雲ができる。前線通過後は北(南半球では南)よりの風に変わり、気温が下がる。
- 閉塞前線 - 寒冷前線が温暖前線に追いついたところ。
- 停滞前線 - 寒冷な気団と暖かい気団がぶつかった時、その勢力がつりあった場合にできる前線。長期にわたる雨を降らせる。
雲と雨
編集- 雲粒 - 雲の粒子(水滴・氷晶)
- 中心核 - 土壌微粒子・塩の微粒子
雲粒が成長し、1mm前後の雨粒、雪の結晶となる。氷晶を含む雲を冷たい雨、含まない雲を暖かい雨という。
日本の天気
編集日本には一年を通じて、変化に富んでいる。
気団の種類
編集- シベリア気団 - ユーラシア大陸東部で発生。冷たく、乾燥している。主に冬。
- オホーツク海気団 - 千島列島付近で発生。冷たく、湿っている。梅雨や秋。
- 小笠原気団 - 太平洋で発生。湿っていて、暖かい。主に夏。
- 揚子江気団(現在は分類されない) - かつては揚子江流域で発生する暖かく乾燥した気団として分類されていたが、移動性が高く気団の定義に合致しないことから、令和3年以降の教科書ではシベリア気団や小笠原気団に統合され、独立した気団としては扱われなくなった。それでも、春や秋に影響を与える移動性高気圧として言及されることがある。
冬の天気
編集冬、シベリア高気圧から千島方面に発達している温帯低気圧に寒気が吹き込む。これが、北西季節風であり、このときの状態を西高東低という。乾燥した空気は、日本海で湿気を含み、日本海側に雪を降らせる。そして、太平洋側で乾燥する。
春の天気
編集2月ごろになると海洋と大陸の温度差が小さくなり、季節風が弱まる。そして、3月下旬頃低気圧と高気圧(移動性高気圧)が交互に通過する。低気圧が日本海側を通過し、南風が吹くようになる。特に春先に吹く強い南風を春一番という。
梅雨の天気
編集梅雨は、東アジアに特徴的な現象である。梅雨前線という停滞前線の一種が通過する。オホーツク海気団が優勢となる。
夏の天気
編集北太平洋高気圧が日本全体を覆い、天気は快晴が多い。このとき弱い南風が吹き、南高北低型の気圧配置となる。
台風
編集夏から秋にかけて発生する熱帯低気圧で、風速が17.2m毎秒以上の物である。 台風の渦巻きは北半球では左巻き、南半球では右巻きである。そのため進行方向の右側では風速に加えて進行速度が加わるので風速は大きくなる。
参考文献
編集この記事の作成にあたっては、下記の書籍を参考にした。
- 大田次郎・山崎和夫編 文部科学省検定済教科書『高等学校理科総合B - 生命と地球』 - 啓林館 2004年度版