線型方程式序論で書いたように、
-
という線型方程式は、 を用いて、
- と書くことができる。
ここで、 とおくと、
は、 となり、移項すれば、 である。
つまり、方程式 は、
-
と書きなおせる。このとき、 を拡大係数行列という。
次に、この方程式を解く際にどのような操作が許されるか考えよう。
まず、基本行列を左からかける、つまり左基本変形に対して方程式 の解が不変であることは明らかであろう。この操作は、高校までの連立方程式を解くときの操作に対応している。
これ以外の操作として、第n+1列を除いた列の交換を考えてみよう。
第i列と第j列を入れ替えたとき、元の方程式と同値な方程式を得るには未知数 と未知数 を入れ替えればよい。
実際、
-
であるから、 が分かれば、これの第i行と第j行を入れ替えるだけで、元の方程式の解になる。
この操作は足し算の順番を入れ替えることに対応している。
ここで、上の式と同様にして が正則だとすると、
-
となるので、 を求めてもよいのだが、 を右基本変形するたびにその行列を記録してあとからその積を求めなければならない。なので、上に書いた操作だけで求められるのならそちらの方がよいことはわかるであろう。
以上をまとめて、
- に左基本変形を施す。
- のn+1列目を除く列の交換を行う。
という操作だけを許すことにしよう。
定理
は上の2種類の操作によって以下の形にできる。
-
ここで、 は と1対1に対応している。
(証明)証明方法は階数のページのものとほとんど同じである。
のときは求めたい形になっている。
のとき であったとすると、第i行の 倍を第k行に加えることで
-
を得る。次に第i行を 倍して第1行と第i行を入れ替え、さらに第1列と第j列を入れ替えることで、
-
を得る。ここで、
以下 なら、同様の操作を繰り返せば帰納的に求めたい形になる。
また、
-
は に基本変形を施して得られたものであるから、 でなければならない□
この式を連立方程式の形に書きなおすと、
-
これから、次の定理が成り立つことが分かる。
定理
- が解を持つ
(証明)
- が解を持つ
に関しては、 が解となっている。
その他は自明であろう□
上の連立方程式の形から、
を任意の数とし、 とすると、
未知数 を並び換えて、 の順番にすれば の一般解となる。
次の線型方程式系の解を求めよ。
(1)
(2)
(1)
(2) を任意定数として、 この解は幾何学的には、 の平面であり、表示は一意的ではない。例えば、 も同じ解となる。