12.4 詞の名詞的機能
分詞は、動名詞とも言われるように、動詞の働きの一部を兼ね備えた名詞である。従って、これまれに学んだ名詞の文法的機能はすべて備えている。例えば 文1の הַהׂלֵךְ は יהוה を述部とする主部の働きをしている―この場合、名詞句は二つとも定だから同定文(4.3.2)であるが。
文2 の צׂעֲקִים、
文3 の עֹבְרִים、
文4 の אָרוּר、
文5 の בְּרוּךְ、
文6 の כְתוּבָה はそれぞれ、
文2 の דּמֵי אָחִיךָ、
文3 の אַתֶּם、
文4 、文5 の אַתָּה、
文6 の הִיא を主部とする述部であり、文3 の הַיּּׂשְׁבִים はその前の אֲחֵיכֶם を修飾している。その際、各分詞の性・数はそれぞれ相手の性・数と一致している。このように修飾の働きを持ち、同じ語幹から複数形と女性形が規則的に作られる、という点で、分詞は形容詞的である。これは、分詞が動詞から規則的に派生することに由来する。すなわち、動詞の表す行為は、形容詞の表す性質・属性と同じく、必ずその主体となる人なり物なりの存在を前提とするから、その人なり物なりを表す被修飾語を必要とすることが多いのである。
述部として機能し易いのも同じ理由による。単独に名詞として用いられることについては、הַיָּשָׁר《直(すぐ)き者》と הַהׂלֵךְ《行く者》とを比較せよ。分詞はさらに連語句を構成し、人称代名詞を接尾することができる。
一方分詞は、動詞と違って、行為が完了か未完了か、過去か未来かについての情報は含んでいない(ギリシア語等の分詞のような、現在・アオリスト・完了の対立は無い)。能動分詞はその主体が「…している」または「…しようとしている」状態にあることを表し、受動分詞は「…された」状態を表す、と言えよう。この点でも分詞は形容詞と同質である。すなわち、動詞が行為を主体の「動き」において動的なものとして表現するのに対し、分詞は行為をその主体の「状態」として静的に把えるのである。