6.3 構文解説
文1 は 4.1の例文1 の主語をなす男性名詞 הַדׇּבָר を複数形に変えたもの.
־ִים (-īm)が男性・複数の接尾辞である. 既に繰り返し述べたように、主語が複数形を取ると、述部もそれと呼応して(同じ性の) 複数形になる。同じく文2 は 5.1の例文1 の主部をなす女性名詞 הַמַּלְכָּה を複数形に変えたものである。 וֹת (-ṓt)が女性・複数の接尾辞である。
文3の主部は אַבְרׇהׇם (男性)+ שׇׂרׇה(女性)である。このように、男性名詞と女性名詞とが連結されて出来た 名詞句が複数の指示対象を表すとき、これは文法上、男性・複数として扱われる。 従って述部は男性・複数形 זְקֵנִם となっている。 文4の主部名詞句もその例である、すなわち、ここでは הַנְּעׇרִים (男・複)+ הַנְּעׇרוֹת (女・複)という名詞句が הׇרׇעִים (男・複)によって修飾されている。
文5 では、被修飾部が定名詞句なので、修飾部の、וְ で連結された二つの名詞が それぞれ冠詞を取っている(5.1 の例文6 を参照)。ヘブライ語の「冠詞」は、それが付いた名詞だけを支配する接頭辞であるから (4.4参照)、 英語の the boys and girls などのように、名詞句全体を一つの冠詞で限定するということはできないのである。 もし הַנְּעׇרִים וּנְעׇרוֹת とすれば《その(特定の)若者たちと、(不特定の)娘たち》という意味になるであろう。 文4の אַיֵּה は意味的にはいわゆる疑問副詞であるが、構文的には述部として機能する。 必ず文頭に立ち、主部となる名詞句を従える。
文5 の פֹּה と文6 の שׇׁם も、副詞として用いられることが多い(《ここで、そこで》)が、日本語のココ、ソコのように名詞または指示詞であって、ここではそれが述部として機能しているのである。ただし性・数という文法規範に関しては中和されている―すなわち、その特徴を失っていて、どの性・数の名詞ともそのまま統合する。